4月30日は「図書館記念日」です。いまから70年前の1950(昭和25)年4月30日に「図書館法」という法律が公布されたことから、日本図書館協会が「4月30日を図書館記念日にしよう」と提案。1971(昭和46)年の全国図書館大会で「図書館記念日」が決まりました。
図書館法は、図書館の設置や運営について必要な事項を定め、健全な発達をはかり、もって国民の教育と文化の発展に寄与することを目的とした法律。公立図書館と私立図書館に設置や運営について、また、司書などの資格について定めています。なお、国立国会図書館と学校図書館については、それぞれべつの法律があります。
図書館法は、この目的にもあるように、行きつくところは「国民のため」といえます。いっぽうで日本図書館協会は「図書館のため」ともいえる「図書館の自由に関する宣言」を1954年に採択してもいます。図書館は広く国民のためにあるので、この宣言も行きつくところは「国民のため」のものといえますが。
図書館司書の資格を得るための勉強では、「図書館の自由に関する宣言」はよく話題になるものの、人びとに広く知られているとはいえません。
「図書館の自由に関する宣言」は、1946(昭和21)年11月に交付された日本国憲法の第21条「表現の自由」が、憲法でうたう「国民主権」に欠かせないものだという考えに基づいています。図書館は、人びとがなにかを表現するためにあるというより、ものごとを知るためにあるものですが、宣言には「知る自由の保障があってこそ表現の自由は成立する」と書かれています。
では、「図書館の自由」とはどういうものか。宣言では「国民の知る自由を保障するため」という原則に立って、図書館はつぎのような「自由」をもっていると述べています。
「第1 図書館は資料収集の自由を有する」。図書館は、みずからの責任でつくった収集方針にもとづいて資料を選んだり、集めたりするのだとしています。
「第2 図書館は資料提供の自由を有する」。すべての図書館資料は、原則として国民の自由な利用に供されるべきであるとしています。
「第3 図書館は利用者の秘密を守る」。「自由」ということばは出てきませんが、読者の「なにを読むか知られない自由」を守ることを宣言しています。この第3の宣言については、1979(昭和54)年に加えられたもの。
「第4 図書館はすべての検閲に反対する」。国民の思想や言論の自由を抑圧する検閲に反対する立場を明らかにしています。
そして、宣言を「図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る」と結んでいます。
「図書館の自由に関する宣言」が出された背景として、戦前の図書館が、国民に対する「思想善導」の機関になっていたという反省があります。思想善導とは、大正時代からじょじょに高まっていた、自由主義や社会主義の考え、また物質やお金を大切にする考えなどを「過ぎた西欧の考えだ」として除き、「伝統的な日本の心に戻ろう」と扇動した国家の動きをいいます。
宣言は「図書館の自由」についてのものではありますが、「ただし書き」も多く見られます。たとえば、資料提供の自由については、「人権またはプライバシーを侵害するもの」や「わいせつ出版物であるとの判決が確定したもの」などは制限されることがあるとしています。「知る自由」のいっぽうである、「プライバシーの侵害」や「有害と認められた表現」などといかに折りあいをつけるかはこれからも課題でありつづけるでしょう。
それに、最近では新型コロナウイルス感染症「COVID-19」(COronaVirus Disease 2019)の拡大を防ぐためとして、閲覧はもちろん貸出をふくむ一切の業務を休んでいる図書館も多くあります。宣言にある「国民の自由な利用に供されるべき」という図書館のありかたとは、ほど遠い状況となっています。
全国の図書館はこれからも、憲法のもとでの「自由」と、そのいっぽうでの課題とを抱えつつ、人びとへのサービスをつづけていくことになります。
参考資料
日本図書館協会「図書館記念日について」
http://www.jla.or.jp/library/kinenbi/tabid/227/Default.aspx
e-Gov「図書館法」
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000118
日本図書館協会「図書館の自由に関する宣言」
https://www.jla.or.jp/portals/0/html/ziyuu.htm
ブリタニカ国際大百科事典「思想善導」
https://kotobank.jp/word/思想善導-73659