科学技術のアネクドート

試験直前に覚えた「トゥール・ポワティエ」を問題紙に書いたら試験官から「いかんぞ」


中学生、高校生、大学生などの就学生たちは「試験」を受けます。中学生や高校生は中間テストや期末テスト、さらに入学試験に臨みます。大学生も大学院試験などに臨みます。

だれもが、試験に臨むわけですが、なかには不正をはたらいたとして、受験する権利をその場で奪われる人もいます。

では、つぎの場合は不正となるでしょうか。

ある“中学生経験者”は、中学校での期末試験で、社会科の試験をほぼ“一夜づけ”で臨もうとしていました。

社会科の試験では、地名などの固有名詞を問われる問題が出されるものです。たとえば、「732年、フランク王国とウマイヤ朝のあいだで起きた戦いをなんというか」といった問題が出されました。答は「トゥール・ポワティエ間の戦い」です。

一夜づけで臨んだこの中学生は、試験当日までべつのことを考えていたのでしょう。この戦いについての知識を得ていませんでした。

しかし、この中学生はねばりました。社会科の試験直前まで教科書を読み、「トゥール・ポワティエ間の戦い」が試験で出るかもしれないと感じたのでした。そこで、この中学生は、試験官の先生から「では、準備するように」と言われてからも、「トゥール・ポワティエ」「トゥール・ポワティエ間」「トゥール・ポワティエ」と、口で呟きつづけ、この固有名詞を忘れないようにしました。

「では教科書や参考書をしまって」と試験官から言われ、試験用紙が配られ、いざ試験開始。すると、この中学生はまっさきに、試験用紙に鉛筆で「トゥール・ポワティエ」と書いたそうです。この戦いの場所のよび名が、うろ覚えにならないために。

ところが、この中学生は、試験官の先生から「おい、お前。なにやってるんだ。いかんぞ」と、たしなめられたそうです。試験を受ける権利を奪われることはなかったそうですが。

この中学生は、試験直前まで教科書を見て、問題に出そうな「トゥール・ポワティエ」という地名を覚えようとしていたわけです。そして、その地名を忘れないため、試験開始後すぐ問題用紙に「トゥール・ポワティエ」と書いたわけです。

この“中学生経験者”は、「これのどこが『いかんぞ』なのでしょうか」と憤ります。「『直前に得た知識を、問題用紙に記してはいけない』といった規則が、その試験で課せられていないかぎり、この方法は不正とはいえないでしょう。『おい、お前。なにやってるんだ。いかんぞ』といってきた先生が、試験を受ける権利を奪わなかったことも、それを表しています」。

試験を受ける側の就学者は、めったに「試験を受けているとき、この行為は不正となる」といった規則を示されることなく、試験を受けます。なにをしてもよいか、悪いかは、常識の範囲とされているのでしょう。しかし、人により不正かどうかの判断が分かれる行為もあるもの。先生が「これは不正だ」と判断したら、不正となってしまうことはよくあることです。
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「物体が浮くか」を決めるのは浮力でなく密度


水のなかに入っているすべての物体は、浮力を受けます。浮力とは、その物体が水から受ける真上方向の力のことをさします。

どうして、浮力が生じるのか。これは、「水中の深いところにかかる水圧より、浅いところにかかるのほうが小さいから」です。水のなかにある物体は、すべての方向から水圧を受けています。けれどもその水圧の大きさはおなじでなく、水面から深くなればなるほど大きくなっていきます。深海まで行く潜水艦のつくりを頑丈にするのは、大きな水圧に耐えなければならないためです。

たとえ小さな物体であっても、水面から浅いほうと深いほうでは、深いほうが水圧が強いはず。深いほうで、より強い水圧がかかるため、物体はどちらかというと下のほうでより大きな水圧を受けることになります。これを真上方向のみ切りとったのが浮力というわけです。

水のなかにあるすべての物体は浮力を受けます。しかし、浮力を受けたからといって、かならずしもその物体が水に浮かぶとはかぎりません。

浮力の大きさは、その物体がどんな重さであっても、体積がおなじであれば、変わりません。ですので「浮力」とはいいながらも、その物体を浮力が決めているわけではないのです。

物体が水に浮くかどうかは、物体の密度が決めます。単純に、水の密度である「1立方センチメートルあたり1グラム」よりも密度が高ければ、その物体は沈みます。ぎゃくに水の密度より密度が低ければ、その物体は浮きます。

参考資料
ブリタニカ国際大百科事典「浮力」
https://kotobank.jp/word/浮力-127043
百科事典マイペディア「浮力」
https://kotobank.jp/word/浮力-127043
5-Daysこども文化科学館 2016年5月28日付「水に浮くモノ、沈むモノ」
http://www.pyonta.city.hiroshima.jp/blog/pages/number/334.html
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「印度カレー」のインデアンカレー――カレーまみれのアネクドート(125)



カレーライスは、人の、とくに日本人の自由な発想と無限の創造性により、進化を遂げてきました。そもそも日本の「カレーライス」自体が、日本人の発想や創造性によりいまや定番食となったものです。「創造的なカレーの原点もまた創造されたカレー」といえます。

福岡・博多駅中央街にも、創造的なカレーを出す店があります。博多デイトス地下
1階に構える「印度カレー」です。

この店が「オリジナルメニュー」として出しているのが「インデアンカレー」。このよび名を聞くと、大阪発の甘くて辛いカレーをだす店を思いうかべる人もいるかもしれません。けれども、博多のインデアンカレーは印度カレーのインデアンカレー。こちらの店の創業は1971年だそうです。

博多のインデアンカレーは、ドライカレーライス、カレーソース、そしてハンバーグというみっつの大きな要素からなりたっています。

ライスは白いものではなくドライカレーライス。ところどころある青豆と干しぶどうの味がかなり際だっています。ドライカレーライスそのものの味は、ふつうにドライカレーを食べるときのよりはややカレー粉を抑えてあり控えめ。さらにカレーソースがかかることを計算してのことでしょう。

そのカレーソースは、小麦粉を使った昔ながらのソースといったところ。辛さもさほどありません。激辛がもてはやされる時代にも、しっかり腰を据えています。

そして、ドライカレーライスの頂で、カレーソースをかけられて乗せられているのがハンバーグです。この「カレーライスの頂にハンバーグ」という構図は、おなじ福岡市内にある「バークレー」のハンバーグカレーをも連想させます。手ごねなのでしょう、形は機械でつくるよりもいびつで、ひき肉も噛んで柔らかいところとやや固いところが散らばっています。ハンバーグ店で出されるものよりも、さすがに小ぶりではあります。

ドライカレー、ソース、ハンバーグ。このどれをとっても単品として食べればもの足りないことでしょう。しかし、どれもが単品として出されるように料理されたとしても、自己主張の強いみっつの者がぶつかりあったカレーライスになってしまいそう。

それぞれの主張がほどほどであればこそ、長く食べつづけられる博多のインデアンカレーはなりたっているのではないでしょうか。

印度カレーのサイトはこちらです。
http://www.indocurry.info
食べログ情報はこちらです。
https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400101/40005820/

参考資料
福岡飲食店日記 2015年5月9日付「1971年創業!『印度カレー』」
http://fi-nikki.seesaa.net/article/418657353.html

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6ステップで「知識構成」を進める

写真作者:James Petts

2018年3月22日付のこのブログ記事「『本家 → 専門家たち → 本家』の手順で集団学習」は、米国の心理学者エリオット・アロンソ(1932-)が編みだした「ジグソー法」とよばれる集団での学習法についてとりあげたものでした。ごく大まかにいうと、「本家」の3人ないし4人が、それぞれ「専門家」として出ていって知識を得、それらの知識を「本家」にもちよって伝えあう、といったものです。みんなでジグソーパズルを解いて全体像を浮かびあがらせるような作業であることから「ジグソー法」と名づけられたといいます。

日本では、べつの「ジグソー法」が開発されています。その名も「知識構成鋳型ジグソー法」。東京大学の大学発教育支援コンソーシアム(CoREF:Consortium for Renovating Education of the Future)が開発したものです。

同コンソーシアムによると、アロンソのジグソー法と知識構成型ジグソー法では、ねらいが異なるとのこと。アロンソのジグソー法については「人種の融合など児童生徒の関わり合いの促進」にねらいがあったのに対し、知識構成型ジグソー法については「関わり合いを通して一人一人が学びを深めること」にねらいがあるといいます。

アロンソのジグソー法では、おおまかに「本家 → 専門家たち → 本家」の3段階の手順で進められると説明されます。いっぽう、知識構築型ジグソー法には、「0」から「5」まで5つの「ステップ」があると説明されています。それはつぎのようなもの。

「ステップ0 問いを設定」。先生が、その単元での「問い」を設定する。その「問い」は、3つか4つの知識をくみあわせれば解けるようなものにする。この「問い」を解くための資料を、知識ごとに準備しておく。

「ステップ1 自分のわかっていることを意識化」。子たちは、先生から「問い」を受けとる。はじめは1人で、その時点で思いつく答えを書いておく。

「ステップ2 専門家になる」。子たちは、おなじ資料を読みあうグループをつくり、その資料に書かれた意味や内容を話しあい、理解を深める。

「ステップ3 ジグソー活動で交換・統合する」。子たちは、自分とはちがう資料を読んだ子が1人ずついる新たなグループに入る。その新たなグループで、1人ずつが専門家として得た内容を説明していく。ほかの子からほかの知識についての説明を聞き、自分の知識とのかかわりなどを考える。そして、この新たなグループの子たちは知識をくみあわせ、「問い」に対する答えをつくる。

「ステップ4 クロストークで発表し、表現をみつける」。子たちは、出した答えを、根拠もふくめみんなに発表する。おたがいの答えと根拠を検討する。

「ステップ5 1人に戻る」。子たちは、1人で「問い」に対する答えをあらためて記す。

どうでしょうか。やはり、大きな節となるのが、「ステップ3 ジグソー活動で交換・統合する」ではないでしょうか。3つか4つある知識のうち、「その1つの知識」をもっているのは「その子」だけなので、その子はほかの子たちにその知識が伝わるよう説明しなければなりません。自分がどれくらいその知識を理解できているかなどを省みることになります。

知識構成型ジグソー法は、小学校や中学校でさまざまな授業でとり入れられているといいます。この方法の効果を感じている先生もいるのでは。また、知識構成型ジグソー法にかぎったことではありませんが、「型」のある授業法は、先生からすれば教えやすく、子どもからすれば身につけやすいものでもあるのでしょう。

参考資料
東京大学大学発教育支援コンソーシアム「知識構成型ジグソー法」
https://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5515
| - | 08:31 | comments(0) | trackbacks(0)
「HITOSAJI」のポークカレー――カレーまみれのアネクドート(124)
これまでの「カレーまみれのアネクドート」はこちら。



個人が経営するカレー店は、たいてい街のなかの一戸だてか、中小の大きさの商業施設の一室にあるもの。するとたいていの人は、「カレー屋をめざして、そこに行く」ことになります。

しかし、なかには大型複合施設に店を構える個人経営のカレー店もあります。綿密な市場調査の末にそうなった店も、たまたま空きがそこだけで構えることにしたという店もあるでしょうが。

東京・大崎の「大崎ゲートシティ」にある、コーヒーとカレーの店「HITOSAJI」も、そんな大型施設の個人経営店といったたたずまいです。

JR大崎駅のほうから、西棟2階を抜けて、中華料理店に脇目もあたえず、東棟の回廊をずっと歩いていきます。いちばん奥にある飲食店が「HITOSAJI」。東棟の吹ぬけのつくりを利用して、屋内なのに店の外にも座席が置かれています。ただ、きりもりする店の人がすくないため、店の内に座席があるようなら、そちらに座るほうが親切かもしれません。

「定番メニュー」とされる料理のひとつが「ポークカレー(辛口)」。この店には、おなじく定番メニューの「牛すじ煮込みカレー」のほか、「ロース/チキンカツカレー」や数量限定のカレー、またトッピングもとり揃えられていますが、「ポークカレー(辛口)」に使われるカレーソースこそが、汎用的なソースなのだそう。

出てきたポークカレーは、チェーン店やファミリーレストランなどのカレーにくらべて量多め。ライスは250グラムが「ふつう」です。そのライスには、ほんのわずか茶色く染まっています。コーヒーとカレーの店なので、ひょっとするとひょっとするかもしれません……。

カレーソースのほうは「辛口」とはあるものの、さほど辛くはありません。「牛すじ煮込みカレーよりは辛口」といった意味あいが強いことでしょう。

ソースのなかに見える具材は豚肉のみですが、その大きさと量ともにしっかりとしています。ソースとの相性もよし。

「HITOSAJI」をめざして大崎ゲートシティを訪れる人もいるでしょうが、大崎ゲートシティに入って「HITOSAJI」を見つける人もいるでしょう。前者はもちろん、後者も「きちんとつくったカレー」に満足する人は多いのではないでしょうか。

「HITOSAJI」の食べログ情報はこちらです。
https://tabelog.com/tokyo/A1316/A131604/13222005/
| - | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0)
「年収全国3位」北海道の村、産業の原点に石川県の村びと
総務省が毎年発表している、全国の市町村の課税状況から、その自治体の住民1人あたりの1年間の所得がわかってしまうとのことです。その計算をしたマス媒体が、「市町村別年収ランキング」といった記事をいくつか出しています。

2019年2月の時点での1位はというと、東京都港区で1115万1998円だったとのこと。1人あたりに均して1000万円を超えるというのですから大したものです。つづく2位は東京都千代田区で944万7612円。

3位はというと……。北海道の猿払村が入っています。東京都の渋谷区や中央区を抑えての堂々の3位入りです。


猿払村
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東京の区にくらべたら知名度も高くない猿払村に、どんな高所得の要因があるのでしょうか。

猿払村は北海道の稚内市の南東にある村。ほかに、豊富町、幌延町、浜頓別町にも隣接しています。2019年11月時点での人口は2765人で世帯数は1282とのこと。

村のサイトの「むらの地勢」には、つぎのような説明が見られます。

「東部は約33kmの海岸線を通じて豊富な水産資源を誇るオホーツク海を臨み……」

豊富な水産資源。これこそが、猿払村の人たちの所得を高めているおもな要因ではないでしょうか。では、どんな水産資源があるのか。おなじく村のサイトの「特産品」のページには、水産資源にかかわるものとして「ほたてソフト貝柱」「ほたて貝柱(冷凍)」「ホタテカレー(レトルト各種)」「帆立のり」「天然ほたて」「みみくん(ほたて珍味)」などとあります。ほかには「毛がに」「鮭」があるくらい。

村が33キロメートルにわたり面するオホーツク海で獲れるホタテこそが、高所得の要因であることにちがいなさそうです。村のサイトによると、天然ホタテの水揚げ量は「日本一を誇るまでに安定成長」を重ねたとのこと。

さらに村の広報誌『広報さるふつ』2019年11月号には、石川県の内灘村(いまの内灘町)の漁民たちが、猿払村のホタテ産業の隆盛に大きく貢献したといったことが書かれています。

「内灘村(現内灘町)漁民の姿は、明治期前半から大正初期にかけて、数百隻にも及んだとされています。(略)浜が活気を帯びる一方で、当然その情報を得て、猿払沖でのホタテ漁を試みる人も増えましたが、漁法や貝柱生産などの技術に優れた内灘漁民とは格段の差があり、また家族ぐるみで故郷を離れて働く石川漁民の根性は圧倒的だったとされています」

いまの「年収ランキング全国第3位」も、もとをたどれば猿払村から遠く離れた石川県の村びとたちの「技」と「根性」があったようです。

参考資料
WEPICKS!「市区町村別の平均年収ランキング 総務省平成29年度(2019年2月現在)」
https://wepicks.net/changejobs-it-averageincome/
猿払村サイト
http://www.vill.sarufutsu.hokkaido.jp
猿払村『広報さるふつ』2019年11月号「温故知新 其の五 猿払漁業の始まり」
http://www.vill.sarufutsu.hokkaido.jp/book/files/20191127389989/99.pdf
| - | 16:52 | comments(0) | trackbacks(0)
高地での練習で赤血球を増やす

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写真作者:Kousuke Sekidou

陸上競技の長距離走などのように、じゅうぶんな呼吸をしながら運動をする有酸素運動系の選手のなかには、標高の高いところで練習を積む人もいます。「高地トレーニング」とよばれます。

標高の高い場所での酸素は薄い。そうした場所で呼吸をともなう運動をすると、酸素の薄さにからだが慣れていきます。そうしたからだをつくって標高の低い場所での試合に臨むと、よい成績を出せやすくなるというわけです。

では、からだはどのように低酸素の状態に慣れていくしくみをもっているのか。ヒトをふくむ動物たちがもっている、この「低酸素応答」とよばれるしくみを解明した3人の研究者に対し、2019年のノーベル生理学・医学賞が贈られています。

受賞者のひとり、米国の医学者グレッグ・セメンザ氏は、赤血球をつくることを促すホルモンであるエリスロポエチンの遺伝子の転写量を制御する要素を、デオキシリボ核酸(DNA:DeoxyriboNucleic Acid)のなかから見つけだしました。転写量とは、遺伝子が相対するリボ核酸(RNA:RiboNucleic Acid)に写しとられる量のことを指し、転写量が多いほど、その遺伝子は「スイッチオン」になりやすくなります。

さらにセメンザ氏は、このエリスロポエチン遺伝子の転写量を制御する要素に結びつくタンパク質「低酸素応答誘導因子」を発見してもいます。

また、ほかの受賞者である米国の医学者ウィリアム・ケーリン氏と、英国の腎臓医ピーター・ラトクリフ卿は、この低酸素応答誘導因子が、酸素があるかないかに応じて、低酸素応答が生じないか生じるかを分けるしくみを解きあかしました。

ふつうの酸素の濃さでは、低酸素応答誘導因子は完成されずに分解されてしまいます。そのため、エリスロポエチン遺伝子の転写量を制御する要素と結合せず、エリスロポエチン遺伝子を「スイッチオン」させることができません。

対して、酸素が薄いと、低酸素応答誘導因子は分解されず、エリスロポエチン遺伝子の転写量を制御する要素と結合して、エリスロポエチン遺伝子を「スイッチオン」させます。

こうしたしくみがわかったことにより、赤血球をつくるための薬の開発も進んでいます。いっぽうで、エリスロポエチンは運動競技のドーピングの対象物にもなっており、2009年には自転車競技の選手たちからエリスロポエチンが検出されました。

高地トレーニングで有酸素運動の能力を鍛えることは許されても、物質を摂取してそれをかなえることは禁じられているわけです。

参考資料
日経サイエンス 2019年12月号「詳報:ノーベル賞 生理学・ 医学賞:低酸素環境に応答するメカニズムの解明」
http://www.nikkei-science.com/201912_014.html
日本科学未来館 2019年10月7日付「速報 2019年のノーベル生理学・医学賞は細胞の低酸素応答で米英の3博士」
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/201910072019-4.html
浜島書店生物図表Web 2019年10月17日付「2019年ノーベル生理学・医学賞『低酸素応答』」
https://www.hamajima.co.jp/bio/2019/10/17/2019年ノーベル生理学・医学賞「低酸素応答」/
ウィキペディア「エリスロポエチン」
https://ja.wikipedia.org/wiki/エリスロポエチン

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保守・運転してきた車両に「惜別」の想い
日本人は、生きていないものにも感情を入れる性質をもちがちとされます。探偵ナイトスクープでの、16年乗っていた愛車に別れを告げる「ヴィヴィオくんの最期」という回にもらい泣きした人も多いことでしょう。

千葉県習志野市にあるJR京葉線の新習志野駅には、「日本からジャカルタへ 海を渡る回送列車」というポスターが掲げられています。JR武蔵野線の車両「205系」が、インドネシア通勤鉄道に譲渡されたことを伝えるものです。



ポスターには、「205系が京葉線で走っている頃から約30年、メンテナンスを担当していて、とても愛着のある車両です」とあります。

そして、「205系から学んだ経験への感謝と、惜別の気持ち」を込めて「回送列車」として走らせることを検討していたようですが、「今後も大切に使われて活躍し続けることへの想い」などから、回送列車の行き先表示に「ジャカルタ」を掲げたとのこと。「車両が花道を飾れる」との考えがあったようです。

長いこと保守をし、多くの通勤・通学また行楽の人びとを乗せて走らせていた車両に対して「惜別の気持ち」がわくのも、日本人であれば「そのとおりだ」と感じるのではないでしょうか。

2018年3月、「むさしのドリームジャカルタ行き」とよばれる車両が新習志野駅を出発し、高崎線や上越線を経て船づみされ、インドネシアのジャカルタへと旅立っていきました。これまでも、埼京線、横浜線、南武線で走っていた205系車両がインドネシア向けに譲渡されていました。そこに「仲間入り」したことになります。

譲渡される武蔵野線205系は、8両の36編成で合計288両。大規模であるため、2020年まで「惜別」の譲渡はつづくようです。


新習志野駅に掲げられた「ジャカルタ行き回送列車 撮影の記録」

参考資料
JR新習志野駅ポスター「日本からジャカルタへ 海を渡る回送列車」
http://img-cdn.jg.jugem.jp/b82/15839/20191124_3158121.jpg
東洋経済オンライン 2018年3月7日付「JR東日本が『中古車両』を海外に譲渡する狙い」
https://toyokeizai.net/articles/-/211051
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
「サイボーグ」1960年の論文「サイボーグと宇宙」から

写真作者:Trending Topics 2019

「ロボット」は、かつてあったチェコソロバキアという国の作家カレル・チャペック作の戯曲『R・U・R』で用いられた造語であるのは知られる話です。「強制労働」を意味するチェコ語「ロボタ」などからチャペックが創ったとされます。

では、「サイボーグ」の由来はどうでしょう。生きものに、とくに意識しないでも
機能が調節・制御される装置を移植した体のことを「サイボーグ」といいますが、このことばはどこからやってきたのか。

1960年、オーストリア出身の発明者マンフレッド・クラインズ(1925-)と、米国の科学者ネイサン・クライン(1916-1983)が、その名も「サイボーグと宇宙」という論文を発表しました。これが、「サイボーグ」ということばの初出とされます。

この論文は、人が宇宙で活動するときは、地球の環境を宇宙にもっていくよりも、その人のからだを宇宙環境に合わせるようにしたほうが合理的であり、人にとって無意識に自己調整されるような制御をもたらす人工器官がその可能性としてある、といったことを述べたもの。

そして「サイボーグ」という用語については、無意識的に恒常性を保つしくみとしての外的に拡張された組織的な複合機能に対し、このことばを提案するとしています。つまり、人の内側にあり無意識でもはたらきつづける臓器や器官のようなしくみを、人の外側からもってくるという考えを「サイボーグ」ということばに込めたわけです。

「サイボーグ」(cyborg)ということばそのものは、クラインズが「サイバネティック・オーガニズム」(CYBernetic ORGanism)という2文字をくっつけて創ったものとされます。ただし、この論文「サイボーグと宇宙」のなかには、「サイバネティック・オーガニズム」の略語であるという記述は見られません。

いま、国語辞典や百科事典では「サイボーグ」に対し、「宇宙空間や海底などの特殊な環境に順応できるように、人工臓器でからだの一部を改造した人間。改造人間」(デジタル大辞泉)や「人間と機械が一体となり、意識することなしに機械が自律的調節系として働く、人間‐機械統合体のこと」(日本大百科事典)といった意味があたえられています。

参考資料
言語由来辞典「ロボット」
http://gogen-allguide.com/ro/robot.html
Manfred E. Clynes and Nathan S. Kline “Cyborg and space”
http://web.mit.edu/digitalapollo/Documents/Chapter1/cyborgs.pdf
東京創元社 Webミステリー 2016年6月6日付「載エッセイ 高島雄哉『想像力のパルタージュ 新しいSFの言葉をさがして』第15回」
http://www.webmysteries.jp/archives/12244555.html
デジタル大辞泉「サイボーグ」
https://kotobank.jp/word/サイボーグ-68244
日本大百科全書「サイボーグ」
https://kotobank.jp/word/サイボーグ-68244
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レジでの「手もちぶさた」から感染するおそれも


風邪やインフルエンザが流行る時期になってきました。いかがお過ごしでしょうか。

秋や冬になり空気が乾いてくると、病気のもととなるウイルスたちも水分を減らして身軽になり、ふわふわと漂うようになります。人の体のほうも寒くなると抵抗力が弱ま理ます。これらの理由で、風邪やインフルエンザが流行るとされます。

ウイルスが感染する経路には、くしゃみやせきによって飛びちったウイルスが、ほかの人の口や鼻に入り感染する「飛沫感染」のほか、ウイルスがついたものに触れた手で口や鼻に触れることで口や鼻に入り感染する「接触感染」があります。

統計やデータのとりようがないものの、人の「手もちぶさたによるしぐさ」、つまり、なにもすることがなくて間がもたずについしてしまう動きが、接触感染を増やすおそれはあるのではないでしょうか。

たとえば、店のレジスターでは、店員と客のあいだでお金や領収書のやりとりがおこなわれます。このとき、「客が、店員のレジスター打ちを待つ」「店員が、レジスタカーから領収書が出てくるのを待つ」とか、ほんの数秒の「なにもすることのない間」が生じることがあります。スマートフォンを取りだしていじるよりも短いぐらいの間が。

するとどうでしょう。かなりの人が、指で鼻をいじっているではありませんか。鼻のあたまを人さし指と親指でつまんだり、鼻の穴あたりを人さし指の側面でこすったり。さすがに、鼻くそをほじる人はいないでしょうが……。

鼻のまわりは、当然ながらウイルスがつきやすい場所です。手もちぶさたということで、その「感染地帯」を指でさわるわけです。そして直後にその指でお札を持って店員に渡したり、レシートを持って客に渡したりします。渡す側の人がウイルスをもっていたとしたら、かなりの確率で相手にもウイルスが行くことになるのではないでしょうか。

つまり、接触感染のきっかけは、店のレジスターでの「手もちぶさた」な状況にあるという説です。そうしたことでの接触感染がありうるのを見こして、マスクをつけている店員も多いのかもしれません。

人は、相手と至近距離で向かいあっているとき、なにもしないで過ごすことにはなかなか耐えられないもののようです。

参考資料
エステー 身近な疑問「冬になると、風邪やインフルエンザが流行するのはなぜですか?」
https://products.st-c.co.jp/plus/question/answer/14.html
Kracie「かぜをひかない! そのためにかぜのメカニズムを知ろう」
http://www.kracie.co.jp/ph/k-kampo/hikihajime_no_hikihajime/kaze.html
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エンタテイメントを工学の研究対象に

写真作者:The IET

娯楽も人の営みであり、おもしろいものから詰まらないものまであるのですから、「どうしたら娯楽の質を上げられるか」といったことが研究対象になってもよいはずです。娯楽にコンピュータを使うことも多いため、いかにコンピュータを駆使させるかといったことも課題となるはずです。

娯楽作品を創造するための工学の研究分野があります。その名は「エンタテインメント・コンピューティング」。すでに1998年には情報処理学会という学会において、「エンタテインメントコンピューティング研究グループ」という集団が活動を始めていたといいます。

いまも、情報処理学会では「エンタテインメントコンピューティング研究会」が組織されていて、研究発表会なども定期的におこなわわれているもよう。

では研究者たちは、具体的にどういった課題にとりくんでいるのでしょうか。ここでは、研究発表会とエンタテインメントコンピューティングシンポジウムにおける学生による研究発表から優秀なものを表彰する「学生優秀賞」に選ばれた研究のうち主だったものを見てみます。

「人間による二次元キャラクタの動作模倣のための学習支援システムの設計と実装」。人間が2次元のキャラクターを演じるうえで動作模倣をするための学習支援システムを提案するもの。キャラクターが1回転半してから右手でポーズを決める動作では有効であることを示しました。

「動的なフォント融合による文字デザイン支援手法」。すでに使われている書体(フォント)を使用者の目的に合うように「ブレンド」し、新たな書体を動的に生成する方法を提案しています。

「魅力的な自撮り写真生成のための『盛り』における性差の基礎検討」。魅力的な自撮り写真を自動生成するしくみの開発をめざし、色味を操作した自撮りの魅力評価が、撮られる人と見る人の性別によって影響されるかを明らかにしたもの。被写体が男性であれば青く、女性であれば赤く色味を変化させる傾向があることや、見る人が男性であるときは色味の変化は小さく、女性であるときは色味の変化を大きくした自撮りが魅力的と判断されやすい、といったことがわかりました。

娯楽やエンタテインメントとよばれるものの対象はとても広いため、おこなわれる研究も多岐にわたるようです。時代を築くような研究成果も、イグノーベル賞が贈られるような研究成果もありそうです。

参考資料
星野准一ら「エンタテインメントコンピューティングの現状と展望」
田中大賀ら「人間による二次元キャラクタの動作模倣のための学習支援システムの設計と実装」
斉藤絢基・中村聡史「動的なフォント融合による文字デザイン支援手法」
森本傑・橋田朋子「魅力的な自撮り写真生成のための『盛り』における性差の基礎検討」
エンタテインメントコンピューティング研究会「学生優秀賞」
http://entcomp.org/sig/?page_id=680
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からだと車いすを一体化させる

写真作者:Hayato.D

世の中にある「操作する道具」の多くは、人のからだとの接点があります。たとえば、操作して走らせる自動車では、ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルが、人のからだとの接点となります。また、操作して情報を得たり伝えたりするスマートフォンでは、画面が人のからだとの接点となります。

人のからだとの接点があるということは、それらの道具は、操作する人からしてみれば「自分のからだの延長線上にあるもの」と捉えることができます。

手や足など、自分のからだのどこかを動かすとき、もし自分の意のままに動いてくれなかったら、相当なストレスを感じることでしょう。操作する道具も「自分のからだの延長線上にあるもの」とすれば、それらの道具に対しても「意のままに動く」ことを求めてしかるべきということになります。

車いすバスケットボールや車いすテニスなど、車いすを使った運動競技では「人車一体」という表現があるといいます。自分のからだを動かすような感覚で、乗っている車いすを動かすといった意味です。もとい、「車いすに乗っている」といった感覚さえ抱かないほどに、車いすが自分のからだの一部と化しているといった意味といえます。

人のほうが、車いすの動きかたに慣れていくといった側面はあるでしょう。しかし、人が動かなければ車いすは動きません。この関係性からすれば、「人の操作性や操作感に、車いすのほうが近づいていくべき」と考えるほうが、むしろふさわしい。そう考えて「人車一体」をめざすほうが、車いすの操作性は高まり、進歩していくことでしょう。

自分のからだと操作する道具が一体化する。そうした考えの先に、「からだから取りはずさなくてもよい道具」さらには「意識的にはたらかさなくても、人体と一体化して動作してくれる機械と生体との結合体」の存在があるのでしょう。

参考資料
朝日新聞 チャレンジド「第3回『人車一体』の境地へ」
http://www.asahi.com/special/challenged/tennis/kamiji/03.html?=fromFooter
ブリタニカ国際大百科事典「サイボーグ」
https://kotobank.jp/word/サイボーグ-68244
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「またべつの災難に遭うかもしれない」

写真作者:Minoru Nitta

自分の身に災難がふりかかってきたとき、どのようなことを思いいだくでしょうか。つぎのふたつでは、どちらでしょうか。

「こんな災難もうごめんだ。早く元に戻りたい」

「こんな災難に遭ったということは、またべつの災難に遭うかもしれない」

たいていの人は、その時点で起きている災難に向きあうことで精一杯となり、「こんな災難もうごめんだ。早く元に戻りたい」といった思いを抱くのではないでしょうか。災難が起きている最中に「また新たな災難に遭うかもしれない」とは考えづらいものです。

しかし、そもそも「災難が起きている」という状況は、災難が起きていない平時の状況にくらべて、「べつの災難」を引きおこしやすいといえるのではないでしょうか。災難が起きている状況のほうが平時よりも「異常」であり、その「異常」が「新たな異常」を生みだすことも多いからです。

「複合災害」とよばれる災害があります。いくつもの災害がほぼ同時に生じることをさします。典型的な例としては、大地震が生じた直後に津波が海岸に押しよせ、両方で被害が出るといったものがあります。大地震という滅多に経験しない現象を体験した直後に、津波というこれまた滅多に経験しない現象がたてつづけに自分の身にふりかかってきます。さらに、津波により石油などの燃料に火がつき、火災が生じることもあります。複合災害がさらに深刻化した例といえます。

地震については、揺れにより堤防が破壊し、そこから川が決壊するといったことでの複合災害もあります。これらからすると、「大地震はほかの災害をももたらす」と考えておいたほうが、備えにつながるでしょう。

台風についても、暴風、洪水、高潮などからなる複合災害をもたらす危険性をもっています。実際、2019年の台風19号では、風水害で考えられるほとんどの災害を引きおこしました。

人の心理はなかなか改めづらいものではあります。しかし、自分になにか災難がふりかかったとき、「またべつの災難に遭う」おそれが高まっていることをを心にとめておくだけでも、実際に「べつの災難」が起きたときの備えにすこしはつながるのではないでしょうか。

参考資料
Bousai Tech 2018年5月22日付「複合災害とは? その災害事例と防災対策について」
https://bousai-tech.com/saigai/complex-disaster/
板垣修ら「自然災害対策に当たって複合災害はどのように考慮されるべきか」
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/2015report/ar2015hp025.pdf
| - | 10:15 | comments(0) | trackbacks(0)
投機や賭けに投資する「率」を定めれば、それ以上の損は生じない


写真作者:Lionel Roubeyrie

未来の価格が変わることを予想して、価格差から生じる利益を目あてにおこなう売りかいを「投機」といいます。競馬や競艇などの勝負ごとで「これが勝つ」などとお金を出しあい、当たった人がそのお金を受けとることを「賭け」といいます。

こうした「投機」や「賭け」は、一度の機会に儲けることができるものの、なかなか儲けられず損を重ねつづけることもあります。「今回うまくいかなかったから、次回に倍額の元金を出して、一気にとりかえそう」などと考えて実践したものの、実際は損額が膨らむことも多々あることでしょう。

統計学的に、その投機や賭けをすることで損をすると算出されている場合は、その投機や賭けをしないほうが、損額をふくらませずに済むことでしょう。

しかし、人はつい賭けごとに負けると、「元金をとりかえさなければ」と、あらたな賭けごとに手を出してしまうもの。しかし、その賭けごとが全体的に「損する」ようにできていれば、それに賭けることで利を得る人はさほどいません。

それでも投機や賭けをしたい人が、損を出さないようにするにはどうすればよいのでしょうか。

ひとつの考えかたとして、「額でなく率をもって投機や賭けをする」といったことがあります。

たとえば、年収が1000万円の人がいるとします。その人が株や先物取引に100万円を原資に投機しようとしています。しかし、うまくいかず100万円以上の損失に。投資する額を定めずに「損したから、とりもどそう」と考えると、さらに投資額が増えていき、際限なくなるおそれも。

いっぽう、「所得の10%を上限に投機の原資にしょう」などとあらかじめ定めておけば、1年前年の年収1000万円から100万円を原資となります。この原資のかぎりで、たとえばさらに100万円、儲かれば、その100万円も損することのない投機額として使うことができます。

つまり、「自分は、所得金のうち、この率を投機や賭けに使う」という定めをみずから課していれば、理論上それ以上の損額は出ないわけです。

この考えかたは、企業が採算を度がえしして「とにかく店舗をいまの2倍にしよう」と闇雲に走るよりも、「利益のうちこの率を、わが社の成長のために使おう」と計画的に拡大していくといった戦略とも通じる点があります。

| - | 15:07 | comments(0) | trackbacks(0)
「あ・ら・もーど」のカレーパン――カレーまみれのアネクドート(123)
これまでの「カレーまみれのアネクドート」はこちら。



カレーパンは、カレーを入れたパン生地を油で揚げた、日本で発祥したパンです。東京・森下の「カトレア」というパン屋を営む中田豊治が1927(昭和2)年、実用新案の登録をしたことをもって「誕生」したという説が有力です。

パンの種類としてカレーパンが「あたりまえ」となったいまでは、各パン店で「ご当地」だからこその特色をもたせたカレーパンを売りだすようになっています。

東京・秋川のパン店「あ・ら・もーど」では、「秋川牛カレーパン」とよぶカレーパンを店の看板商品に掲げています。店の前にはためく「秋川牛カレーパン」という旗に誘われて店に入る人もいるのでは……。

「あきる野・檜原タウン情報」というサイトによると、秋川牛とは、仔牛を岩手県の水稲地区より買いつけし、あきる野市の竹内牧場で育てた東京都産の高級和牛とのこと。和牛には、強いブランド力があります。

「あ・ら・もーど」は、この秋川牛をとり扱う、あきる野市内の村松商店から仕入れた牛肉を使い、カレーパンをつくっているとのこと。店のサイトには「野菜とフルーツを炒めるときにも、炒めた野菜とフルーツを煮るときにも秋川牛を使うなど、秋川牛を随所で使っています」とあり、肉の具材以外でも、この秋川牛を使っていることがわかります。

実際のカレーパンでは、価格設定もほかの店のカレーパンとあまり変わらず、牛肉が使われているかどうかはわかりづらいものの、こんがりと揚げられた衣を破ると、具材も豊富なカレーが詰まっていることがわかります。歯ざわりの中で若干の牛肉の存在を感じる人もいるのではないでしょうか。

カレーパンが日本における「外からやってきた定番料理」のひとつとなったいま、パン店では、いかにほかの店とのちがいを生みだすかが課題なのでしょう。「その場所ならではのご当地カレーパン」は、その答のひとつといえます。

「あ・ら・もーど」のカレーパン紹介ページはこちらです。
http://alamode-pan.com/curry.html
同店の食べログ情報はこちら。
https://tabelog.com/tokyo/A1330/A133001/13121599/

参考資料
あ・ら・もーど「自慢のカレーパン」
http://alamode-pan.com/curry.html
あきる野・檜原タウン情報「村松精肉店」
http://akiruno.town-info.com/units/36232/matushin/
日本テレビ「秋川牛」
http://www.ntv.co.jp/burari/090801/info05.html
西の風 2019年2月7日付「秋川牛カレーパンの店 『あ・ら・もーど』が20周年」
https://nishi-no-kaze.home.blog/2019/02/07/秋川牛カレーパンの店-「あ・ら・もーど」が20周/
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
反対側の電車が出発するのを待って出発することも

写真作者:MiNe

1時間に15本も20本も電車が走る線では、ダイヤグラムが乱れることがよくあります。前方の駅で人身事故がなどがあり、運転を見あわせることはもとより、「あとを走る電車が遅れているため」とのことで、乗っている電車が駅でしばし停まることも。

なかには、車掌が車内放送でつぎのようなことを伝え、電車がしばし停まることもあります。

「反対側の電車が出発するのを待ってから、この電車は出発します」

本数のすくない単線の鉄道で、上りと下りの列車が行きちがいをするようなときは、片方の電車が、もう片方の電車がくるのを待たなければなりません。しかし、この車内放送が流れたのは複線となっている東京の地下鉄。しかも「電車がくるのを待ってから」でなく「出発するのを待ってから」と車掌は言っています。

なぜ、反対側の電車が出発するのを待ってから、電車を出発させなければならないのでしょうか。

ホームのつくりによっては、乗客の乗りおりが済んだことを、車掌だけで把握するのがむずかしい駅もあります。そのため、車掌からは見えづらいホーム前方に駅員などの係を置くことに。この駅員が「ホーム前方でも乗りおりは済んだので、安全よし」といった旨のことを車掌に伝えることで、電車を出発させるわけです。

しかし、時間帯によっては、そうした係が1人しかホームにいないこともあるもよう。

すると、片方の電車に対してその1人の係が対応しているときは、もう片方の電車を出発させることができません。まず、ホームに早く入線してきた電車について「安全よし」となり出発してから、今度は遅れて入線してきた向かい側の電車の安全確認をとるわけです。上りと下りでは「ホーム前方」は反対の位置にあるので、移動する時間もかかることでしょう。

そのため、車掌の「反対側の電車が出発するのを待ってから、この電車は出発します」との車内放送が流れることになるわけです。

反対側の電車が出発するのを待つ時間はせいぜい1分ぐらいなので、運転見あわせほどの影響が出ることではありません。目くじらを立てず「定時運行よりも安全確保を優先する姿勢を感じなぁ」といったぐらいに受けとめるほうがよいかもしれません。
| - | 12:11 | comments(0) | trackbacks(0)
21世紀は「感知」の時代でもある

写真作者:Leon Ziegler

「21世紀は何々の時代」とよくいわれます。「何々」にはたいてい「生命科学」や「バイオ」といった生物学関連のことばがよく入るようですが、工学関連では「21世紀は感知の時代」ともいえるのではないでしょうか。つまり「感知機」ともよばれる「センサ」を駆使した時代ということです。

センサとは、大きくいえば、知ろうとする対象の情報を、扱うことのできる信号に変換する素子のことをいいます。より具体的には、物理学で扱われるような量を計測しようとするとき、その測定に適した信号に変換するための器具のことをさします。

このように、わりかし広い意味で「センサ」ということばが使われているため、センサの手段や目的にはいくつもの種類があります。いくつか拾ってみると。

光電センサ。赤外線などの見えないものもふくむ「光」を発光部から発し、対象物に当たって反射する光や、対象物に遮られた分だけ減る光の量などを受光部で検出して、信号に変換するものです。対象物に触れることがないため、対象物を傷つけることがありません。

ミリ波レーダーセンサ。光電センサとおなじような原理のセンサですが、「ミリ波」とよばれる波長が1ミリメートルから10ミリメートル、周波数にして30ギガヘルツから300ギガヘルツの電磁波を使います。この周波数帯の電磁波は、直線に進む性質をもっています。

レーザセンサ。単波長で位相のそろった光である「レーザー」を使ったセンサです。レーザは、対象物のどこに光を当てているかが見えるため、焦点の調整がしやすいといった利点があります。

超音波センサ。光をふくむ電磁波を使うのではなく、もうひとつの波である「超音波」を使います。発信した超音波が、対象物に当たって跳ねかえり、ふたたび発信した場所まで戻ってくるときの時間を測ることで、対象物までの距離を求めることができます。光電センサなどとちがって、対象物の材質や色の影響を受けず、検出距離も長くとれるといった利点がある反面、精度があまり高くなかったり、反応は音だけあって遅かったりといった短所もあります。

画像判別センサ。カメラで撮影した画像の情報から、対象物があるかないかや、色や形はどういったものかなどの特徴を得るためのセンサです。1枚の画像からさまざまな情報を得られます。

ほかにも、全地球無線測位システム(GPS:Global Positioning System)を用いたセンサや、加速度を測るための加速度センサ、また、角速度の時間変化率である角加速度を測るためのジャイロセンサなどもあります。

それぞれの特徴をくみあわせることで、世の中のさまざまな「状況」や「変化」を感知することができます。データをもとに傾向を把握したり、モノとモノをインターネットでつなげて利用したりといったことができるのは、これらのセンサがあるからともいえます。

参考資料
ブリタニカ国際大百科事典「センサ」
https://kotobank.jp/word/センサ-169104
センサとは.com「9つのセンサを原理と特徴から解説」
https://www.keyence.co.jp/ss/products/sensor/sensorbasics/
ZMP「ミリ波レーダー」
https://www.zmp.co.jp/knowledge/ad_top/dev/sensor
マクニカ 2018年7月6日付「ミリ波センサとは 5分でわかる概要」
https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/texas_instruments/128213/
MONO WIRELESS「IoTとは?」
https://mono-wireless.com/jp/tech/Internet_of_Things.html
| - | 15:27 | comments(0) | trackbacks(0)
「雲」とともに「端」も使う

写真作者:FifthLegend

一昔まえ、2000年代なかばごろには「クラウドコンピューティング万能論」のようなものがありました。

自分のコンピュータでなく、インターネット上にあるサーバによりデータ処理する方法が「クラウドコンピューティング」です。負荷のかかるようなデータの処理や管理を、データセンターなどの施設に置かれたコンピュータに担わせれば、大容量で高性能なコンピュータを手元にもっておく必要はなくなり、データの安全性も高くなるといった話です。

実際に、クラウドコンピューティングが使われるようになり、クラウドにあるデータを伝送して、ソフトウェアを使ったり動画を見たりすることもあたりまえとなりました。

しかし、ここにきて「クラウドコンピューティングは万能ではなく、それなりに課題がある」といわれるようになってきています。そこには、情報通信技術の進歩の速さに、クラウドコンピューティングが対応しきれなくなったという側面もあるでしょう。

課題のひとつとしてあげられるのは、クラウドのサーバから各端末にデータが伝送されるとき、途中に負荷のかかりすぎる経路が生じてしまうということです。また、クラウドのサーバにあるデータを利用しようとすると、1秒未満から数秒ぐらいの時間差が生じてしまい、即時的にデータを使うことができない、といった課題もあげられています。

さらに、組織の内部にとどめておきたい秘匿性の高いデータは、そのままクラウドのサーバに送信することができないといった課題や、クラウドサービスが何らかの障害で使えなくなったときに復旧まで時間がかかるといったことも指摘されているようです。

クラウドコンピューティングが使われはじめたころは、こうした課題はあまりいわれず、「データはクラウドに預けるほうが安全」「データセンターは頑強」などといわれていたはずなのですが……。

近ごろは、クラウドコンピューティングでいわれるようになったこれらの課題を軽減し、クラウドの役割を補完することを謳った「エッジコンピューティング」という技術もさかんに開発されるようになっています。

「エッジ」とは「端」のこと。エッジコンピューティングは、端末の近くにサーバを分散配置して使う技術のこと。クラウドコンピューティングをひきつづき使いながらも、迅速で即時的なデータ処理が必要なときは、端末機器に近い場所でデータ処理をおこなうといった考えかたにもとづくものです。

世のなかに「モノのインターネット」が増えていくなかで、より端末に近いところでのデータ処理の大切さを、あらためて人びとが感じるようになったともいえそうです。

参考資料
ビジネス+IT 2019年1月25日付「エッジコンピューティングとは何か? IoTの関連事例や課題、市場動向まとめ」
https://www.sbbit.jp/article/cont1/35432
NTTデータ「IoT時代に注目される『エッジコンピューティング』」
https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2018/1122/
キーエンス 製造現場で役立つIoT用語辞典「エッジコンピューティング」
https://www.keyence.co.jp/ss/general/iot-glossary/edge-computing.jsp
| - | 15:07 | comments(0) | trackbacks(0)
四股を踏むときはつま先を開いて


力士たちは「四股」を踏みます。下半身の筋力をつけるために。気を整えるために。

しかし、四股を踏めるのは力士だけではありません。ふつうの人も、四股を踏みつづければ、腰、膝、足首などが強くなることでしょう。しかし、闇雲に四股を踏むよりも、正しい所作を身につけて踏むほうが、効果は得られ、充実するというもの。要点をまとめてみると……。

四股を踏む前段の動きとしてあるのが「腰割り」です。肩幅よりすこし距離をとって両足を開きます。そして、つま先は平行でなく120度ぐらいまで開きます。さらに、つま先の向きに両方の膝の向きも合わせます。この状態で膝を「開く」と、股関節が開き、腰が降りてくるといいます。腰割り完了。

この腰割りの姿勢から、軸足に体の重心を移していきます。このとき軸足は伸ばしたまま。上げた足をなるべく高くまで上げようとめざしがちですが、むしろそれを犠牲にしてでも、軸足を伸ばすことのほうに力を入れるべきとされます。

さらに、軸足だけでなく、上体から腰にかけてもまっすぐにしておかなければならないとされます。「棒」になったような感覚をもったほうがよいのかもしれません。

そして、上げた足をそのまま落とします。このとき手を膝に添えます。百科事典には、下ろす足には「力を入れて爪先から地を踏む」とあります。しかし、足首の力を抜いて、そのまま着地させるという指導法も。力を抜いて足を落とすほうが、一般の人にとってはかんたんです。

この動作を、今度は軸足をかえておこないます。人には「利き足」もあるといいますから、片方で均衡よく四股を踏めても、もう片方ではうまくいかないことも。しかし、何度も何度も踏んでこそ、四股。くりかえしていくうちに、すこしずつどちらの足をあげるときも、踏みかたは安定してくることでしょう。

参考資料
朝日新聞 Reライフ.net 2018年9月10日付「47歳まで現役だった力士に学べ シコ踏みで股関節を動かそう」
https://www.asahi.com/relife/event/record/11763204
ブリタニカ国際大百科事典「四股」
https://kotobank.jp/word/四股-176942
| - | 20:08 | comments(0) | trackbacks(0)
多くの日本食にふくまれる成分が「炎症」を抑える

写真作者:nekotank写真作者:

日本人が好んで摂っている食品には、「ポリアミン」という物質がたくさんふくまれているものが多いといいます。

ポリアミンとは、窒素原子(N)1個と水素原子(H)2個からなるアミノ基を二つ以上、あるいは三つ以上もつ炭化水素のこと。ヒトのからだには、20種類以上のポリアミンがふくまれるとされますが、主だったものとしては、2個のアミノ基をふくむプトレシン、3個ふくむスペルミジン、4個ふくむスペルミンなどがあります。

これらポリアミンは、生きものの長寿に関係しているといわれます。実験では、マウスにポリアミンの濃度の高い餌をあたえつづけたところ、マウスの寿命が長くなったとのこと。さらに、ポリアミンをあたえつづけられたマウスは、高齢でも活発で、毛なみよし。体重は多めだったとのことです。

ポリアミンのなにが、マウスに長寿命化ないし健康長寿命化をもたらすのか。研究で明らかになったことは、ポリアミンには炎症を抑えるはたらきがあるということ。細胞が慢性的に炎症すると、病気や老化につながると指摘されています。

ポリアミンは、細胞のなかの遺伝子をふくむデオキシリボ核酸などにはたらきかけて、炎症するしくみを抑えるといいます。歳をとると、遺伝子に「異常メチル化」とよばれる変化が起き、これが慢性的な炎症とも関係して、がんや生活習慣病が起きやすくさせます。こうした病気が生じるのは、歳をとるにつれてからだでポリアミンがつくられにくくなっていくためともされています。

幸いにして、上記のマウスの実験からもわかるように、食事として得ることで、ポリアミンを体に摂りいれることもできます。大豆などの豆類、穀物の胚芽、きのこ、野菜、小魚や貝などにポリアミンは多くふくまれているとのこと。これらは日本人が昔からよく食べてきたもの。これらの食事を摂ることと、日本人が長寿であることとの関係性も見いだせそうです。

参考資料
栄養・生化学辞典「ポリアミン」
https://kotobank.jp/word/ポリアミン-772785
日本大百科全書「ポリアミン」
https://kotobank.jp/word/ポリアミン-772785
早田邦康「健康長寿食の科学(何を食べるべきか?)」
https://www.jichi.ac.jp/extension/file/summary_h27_08.pdf
日経メディカル 2017年9月5日付「ポリアミンが心臓の老化を予防」
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/cvdprem/blog/furukawa/201709/552562.html
| - | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0)
「失くしやすいものに予備を」という人と「予備は持たない」という人と


「失くしやすいもの」があります。たとえば、小さな付箋。たとえば、ヘッドホンのイヤーピース。はたまた、iPhoneのヘッドホン・ジャック・アダプタ。こういったものは小さいゆえ、一度どこにあるのかわからなくなると、見つけられなくなることもあります。

付箋が見つからないときは、付箋を貼るかわりに鉛筆やペンでちょっと印をつけておくといったことで、急場をしのぐことができます。ヘッドホンのイヤーピースがどこかで取れてしまい見つからないときは、かなり絶望的ですが、どうしてもヘッドホンで音を聴きたいときは、イヤーピースなしで聴くという人もいるでしょう。しかし、iphoneのヘッドホン・ジャック・アダプタがどこかへ行ってしまったとなると、かえの方法が効かないため、iPhoneで音声を聴くことはできません。

いずれの場合も、すぐ近くで買うことができれば、不便を解消できるわけですが、買うまでに手間暇がかかったり、近くに店がないこともあります。

こうした「失くしやすいもの」を自身で失くすおそれがあることを見こして、「複数もっておく」という対策をとる人もいます。ある人は「イヤーピースなんて、しょっちゅう落とすので、いつも持ちあるく財布のなかに予備を入れています」と言います。

一方で、そうした「予備」をあえて持たないという人もいるようです。ある人は「予備があるとなると、『失くしても予備があるからいいや』という気もちから、どんどんものを失くしていくような気がして。『これ1個しかないんだ』と思いながら使うほうが、失くしづらいんじゃないか、と」と言います。

どちらの言い分ももっともに聞こえます。

予備を持つ人は、ものを失くしたとき、いかにその影響をなくさせるか、とったことに重きを置いているといえます。その分、あらかじめ予備のものを買っておく必要があるわけで、出費するという点を犠牲にしているわけですが。

いっぽう、予備を持たない人は、いかにものに対する出費を抑えるか、といったことに重きを置いているといえましょう。その分、実際にものを失くしたときは、予備がないため、新たにそれを買って手に入れるまでは使えない、という点を犠牲にしていることになります。

予備を持つのと持たないのとどっちのほうがよいのかは、それぞれのめざすことが異なるため、「人や目的により異なる」としかいいようがないことです。
| - | 22:15 | comments(0) | trackbacks(0)
黒地に白い点ふたつ、いやみっつ


地の色が黒いなかで、ひときわ白い点が目だちます。この魚は「ミツボシクロスズメダイ」。スズメダイ科で、日本近海では千葉県よりみなみの太平洋や、琉球列島あたりの東シナ海などにいます。

スズメダイ科での有名どころとして、イソギンチャクと共生することで知られるカクレクマノミなどのクマノミの仲間がいます。じつは、ミツボシクロスズメダイも、カクレクマノミほどではないものの、イソギンチャクのそばで泳ぐなどしているそう。「べったり」というよりは「つかずはなれず」ぐらいの関係でしょうか。

白い点がみっつあるため「ミツボシクロスズメダイ」のよび名がつきました。右側の上のほうにひとつ。左側の上のほうにもうひとつ……。おや、写真の魚はこれだけではないですか。すると「フタツボシ」となるはずですが……。

じつは、幼い段階では、この二つに加えて、顔の上あたりに、側面とおなじくらいの大きさの白い点があります。成長とともに顔の上の白い点だけは小さくなり、そして消えていくのです。

魚の種によっては「なぜそのような模様があるのか」が説明されるものもあります。たとえば、チョウチョウウオという魚の側面には「眼状紋」とよばれる大きな目玉模様がありますが、これは敵の魚に「こっちが眼ですよ」と見せて、ほんとうの眼を狙われないようにするためとされます。

では、ミツボシクロスズメダイについてはどんなものでしょう。人間からすると、「その白い点は、べつになくてもよいのでは」とつい考えてしまいそうです。

魚の模様をめぐっては「意味があるだろう」という考えかたとはべつに、「そういう模様になってしまう」という考えかたもあるようです。英国の数学者アラン・チューリング(1912-1954)は、魚の模様は、2色以上の色素細胞の分布のしかたやその変化のしかたによって、どの魚にも共通して必然的に定まってくるということを理論で示しました。このチューリングの理論は1995年、日本の生命科学者の近藤滋(1959-)によって実証されています。

ミツボシクロスズメダイにしてみれば「なんで白い点があって、顔のところだけ消えていくかって……。そんなの知ったこっちゃないよ。というか、俺の体にも白い点、ついているんか」といったところではないでしょうか。

参考資料
WEB魚図鑑「ミツボシクロスズメダイ」
https://zukan.com/fish/internal913
WEB魚図鑑「スズメダイ科」
https://zukan.com/fish/internal5092
ウィキペディア「スズメダイ科」
https://ja.wikipedia.org/wiki/スズメダイ科
水槽レンタル神奈川 マリブ 2017年8月24日「頭イイ 海水魚の”目玉模様柄”の意味!」
https://maribu-aqua.com/eye-spot
知識の宝庫! 目がテン! ライブラリー 2015年5月3日「生き物(模様)の科学」
http://www.ntv.co.jp/megaten/archive/library/date/15/05/0503.html
| - | 18:49 | comments(0) | trackbacks(0)
「実物」から、科学への興味を抱きやすい

写真作者:uemura

子どものときに好きになったことが、大人になったときの生業になったり、一生をかけた仕事になったりするといったことはよくあるものです。自然科学の分野の高名な研究者たちのうち、「子どものころから生きものが好きだった」とか「ラジオ少年だった」という人がなんと多いことか。

となると、子どものときに、なにかの分野に興味をもつ「きっかけ」が、とても大切になります。もちろん、子どもは「きっかけ」の候補をあたえられても、そもそも興味がなければ、そっぽを向くでしょう。しかし、「きっかけ」の候補をあたえられればあたえられるほど、選択肢がおおくなるわけですから、「人生をとおしての興味」に出あう可能性は高くなります。

では、どんなことがきっかけで、子どもはその分野に興味を抱くのか。

子どもとのお出かけ情報を提供するアクトインディが、2018年9月、12歳以下の子どもをもつ保護者に対して、「興味のある科学の分野に関するアンケート」を実施しました。

そのなかで、子どもが「科学分野に興味をもったきっかけ」を、複数回答可で聞いています。

もっとも率の高かった回答が、「動物園や水族館、博物館や植物園などで実物を見て」で48パーセントでした。ついで「公園、海、山などの外遊びを通して」の45パーセント、さらに「テレビ番組を見て」の40パーセントとつづきます。

その後は、がくっと落ちて「図鑑や本、科学のムック本を読んで」の28パーセント、「科学館やプラネタリウムなどに行って」の20パーセント、「学校の授業で」の13パーセント、「観察会などのイベントや展示会などに行って」の8パーセント、「工場見学や体験施設などに行って」の8パーセント、「アプリを使って」の5パーセントとづづきました。

上位2つに通じていることは「実物に五感で触れる」という体験があるということです。おなじような体験をする「科学館やプラネタリウムに行って」や「観察会などのイベントや展示会などに行って」が低いのは、動物園に行ったり外遊びをしたりするよりも、体験をする機会がすくないからではないでしょうか。逆のことは、「テレビ番組を見て」にもいえそうです。実物に触れるわけではないもの、単純に子どもたちがテレビを見る機会が多いから、高いポイントとなったのでしょう。

選択肢に、「ユーチューブなどのインターネット動画を見て」や「まんがを読んで」といったものが入っていれば、またちがった結果になったかもしれません。しかし、それらの選択肢があったとしても「実物に触れる」という体験の影響力は、やはり大きいのではないでしょうか。自分自身に一気に入ってくる刺激や情報の量が、圧倒的に大きいからです。

参考資料
PR TIMES 2018年9月25日付「2018年ノーベル賞発表直前 子どもの科学への関心調査 科学分野に興味をもったきっかけ、1位は『実物を見て』」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000050.000026954.html
| - | 18:29 | comments(0) | trackbacks(0)
「新語・流行語2019」大きな風も、小さな風も



「ユーキャン新語・流行語大賞2019」の候補語が、(2019年)11月6日(水)発表されました。「1年の間に発生したさまざまな『ことば』のなかで、軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶ」というもの。候補語を、自由国民社と大賞事務局が選びました。

2019年の候補語から、科学・技術にかかわるものを挙げてみます。

「命を守る行動を」。10月12日(土)、台風19号による大雨の特別警報を発表したことについて、気象庁の予報課長が記者会見で「ただちに命を守るために最善を尽くす必要のある警戒レベル5に相当する状況だ」「すこしでも命が助かる可能性の高い行動を取ることが重要だ」とよびかけました。実際、翌13日(日)にかけて、台風は関東甲信越や東北の各地に甚大な被害をもたらしました。ただし、「命に守る行動を」は、2013年8月に,大雨と津波の「特別警報」を創設したときから、呼びかけ表現として設定されており、同年同月の秋田を中心とした大雨を受けての記者会見でも、気象庁の担当官が使っています。

「計画運休」。こちらも台風にかかわるもの。台風の影響で公共交通機関の運行に支障をきたすことが予想される場合、あらかじめ運休することを決め、利用者に知らせておくことを指します。じつは2018年の向後ほでもありました。2019年の台風19号では、鉄道各社が計画運休を発表し、10月12日(土)13日(日)は、多くの路線で長い時間にわたり運休となりました。ただし、関東圏の鉄道が軒なみ全線運休や一部運休となるなかで、東京メトロ銀座線はほぼ通常のダイヤグラムどおりに運行していたもよう。台風通過後は線路設備点検などのため、運転見あわせもあったようですが、東京メトロの意地と誇りといえそうです。

「おむすびころりんクレーター」。探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの表面につくったくぼみの愛称です。「はやぶさ2」は2019年4月に、リュウグウ表面に「人工クレーター」をつくりました。そのクレーターの愛称を「おむすびころりんクレーター」とすることを、宇宙航空研究開発機構が8月26日に発表しました。リュウグウ表面の地名は、世界各地の子ども向けの物語にちなんだ名前にすることが決まっています。「おむすびころりん」は、おむすびを穴に落としたおじいさんが、自分も穴に落ちると、ねずみにおむすびのお礼に大小のつづらをさしだされ、小さいつづらをおじいさんが持って帰ると、たくさんの宝が出てきた、というおとぎ話です。

「キャッシュレス/ポイント還元」。現金を使わず、電子マネーなどを使い支払いをすることが「キャッシュレス」。また、キャッシュレス決済をしたときに、支払った金額の一部がその店やチェーン店のみで使える点数のかたちで返ってくることが「ポイント還元」です。10月に消費税率が8%から10%になったことを受け、大々的にこのしくみが始まりました。いまは、現金を使う時代から、キャッシュレスの時代へと移っている最中にあります。キャッシュレスが可能になったのも、情報技術の発達によるものです。

「ハンディファン(携帯扇風機)」。手に持って使う扇風機です。梅雨寒から一転、猛暑となった8月ごろから、急に巷で使われるようになりました。右手にスマートフォン、左手に携帯扇風機、といった人も。この装置に使われている技術は基本的なものばかりでしょうから、流行らせた人たちのしかけ方がうまかったのでしょう。扇子の流行は起きないのでしょうか。

2018年の「新語・流行語大賞」候補語でも、「計画運休」「災害級の暑さ」「ブラックアウト」と、自然災害にかかわる語が3つありました。毎年のように、災害関連の語が候補になっていくのかもしれません。

例年同様、これらの語が「新語」または「流行語」といえるのかという感覚は、多くの人の心にあるのではないでしょうか。

上の5候補語をふくむ30語から、選考委員会が上位10傑と年間大賞語を決めます。発表は12月2日(月)の予定とのことです。

参考資料
気象庁「ただちに命を守る行動をとってください」
https://www.city.asakuchi.lg.jp/kurashi/bosai/map/documents/sassi_p2.pdf
テレ朝news 2013年8月9日「気象庁『直ちに命守る行動を』最大の警戒呼びかけ」
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000010334.html
ウィキペディア「おむすびころりん」
https://ja.wikipedia.org/wiki/おむすびころりん
NAVERまとめ 2019年10月13日「普通に動いてる!?台風で銀座線最強伝説 首都圏で唯一平常運転」
https://matome.naver.jp/odai/2157087635001702901
とれいんふぉ 首都圏公式エリア 非公式運行情報など 2019年10月12日「東京メトロ銀座線 上下線 運転見合わせ」
https://twitter.com/Trainfo_/status/1183112849939283968/photo/1
AstroArts 2019年8月26日付「『はやぶさ2』人工クレーターの愛称は『おむすびころりん』」
https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10804_hayabusa2

| - | 23:56 | comments(0) | trackbacks(0)
事象提示で子どもたちに興味を抱かせる

参考資料:ajari

小学生や中学生の理科では、その単元で学ぶべき内容について、子どもたちに興味を抱かせることが大切になります。興味をもたず「ふーん。それで」という気もちで過ごさせるよりも、興味をもって「あれ。なぜなんだ」という気もちで過ごさせるほうが、学ぶ内容が頭に入ってくるからです。

子どもたちに、その単元に興味をもって理科の授業にのぞませるため、先生たちは「事象提示」を工夫するといいます。

事象提示とは、その単元でのはじめに、子どもたちにとって身近な事象や現象を示し、そこから子どもたちに疑問を抱かせることとされます。「あれ。なぜなんだ」と興味をもって、その単元に接するためのきっかけを、身近な事象を材料にしてあたえるわけです。

事象提示をするときは、子どもたちのもっている知識や経験と、先生が示す事象のあいだに「ずれ」があるとよいといわれます。先生が事象を示したところで、子どもたちが「そんなの知ってるよ」となれば、「あれ。なぜなんだ」といった疑問はわいてきません。子どもたちの「こうなるはず」という期待を裏ぎるような事象を提示することが大切になるわけです。

たとえば、ある学校では、小学4年の理科の授業で、段ボールでつくった長い筒をふたつ用意し、それを子どもの腕に通してから、その子に「ご飯を用意したから食事をしてください」と言い、ほかの子どもには「ご飯を食べようとするようすを見ていてください」と言います。

いざ、この子が茶碗のなかのご飯を食べようとすると、食べることができません。肘の関節が段ボールの筒でなかば固定されて、肘を曲げられないからです。試している子も、見ている子どもたちも「あれ。なぜだ。食べられないぞ」といった興味や疑問を、笑いとともに得ることでしょう。

ふだんはあたりまえにご飯を食べられているのに、段ボールの筒を腕に通すと食べられなくなる。ここに「ずれ」が生じるわけです。そして、そこからヒトの体のつくりや、その巧みさなどを学んでいきます。

理科教育における事象提示のしかたは、人びとに、なにかのものごとについて興味を抱かせないときにも参考になりそうです。

参考資料
弘前大学教育学部附属小学校「目指す児童の姿 自然の事物・現象についての問題に対して、自分の考えをもちながら他者と関わる中で科学的に解決できる」
http://siva.cc.hirosaki-u.ac.jp/fusyo/pdf/rika.pdf
四日市市教育委員会 2016年3月「小学校理科における問題解決能力を育成する学習指導法の研究」
http://www.yokkaichi.ed.jp/e-center/nc3/htdocs/?action=common_download_main&upload_id=3102
橋戸孝行ら「児童の実感を伴った理解を高める事象提示の工夫」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsser/25/1/25_No_1_100112/_pdf/-char/ja
| - | 21:55 | comments(0) | trackbacks(0)
“rain cats and dogs”も“cool as a cucumber”も英語圏ニュースでは使われている



高校生時代に受験勉強で英熟語を勉強した経験のある人は多いことでしょう。『試験に出る英熟語』といった参考書もありました。そして、「ほんとうにこんな英熟語を英語圏の人は使っているのだろうか」といった疑念をはさむことなく、ひたすら暗記したという経験のもち主も多いのではないでしょうか。

では、慣用句とも説明されるつぎのような英熟語は、実際に使われているのでしょうか。英語圏でその慣用句が使われているかどうかは、グーグルの検索ですぐにわかります。なかでもニュース検索で表示されるということは、その熟語は社会で通じていると考えてよいのではないでしょうか。

“rain cats and dogs”。これで「土砂降りの雨が降る」といった意味になると習います。“It rains cats and dogs.”という文で使われるため、これを過去形にした“It rained cats and dogs”でニュース検索をかけると、約518件が該当しました。

最近のニュースでは、(2019年)10月24日付のGlobal NEWSというカナダの報道サイトでの「フレデリクトンSPCAの屋根修理、何万ドルもかかると見積もられる」という記事で、つぎのように出てきます。

“Animal lovers are being asked to help fund a new roof for the Fredericton SPCA. That’s because it rained cats and dogs on the already problematic flat roof.”

フレデリクトンSPCAは動物愛護団体。動物好きには、この団体への屋根修理に対する資金提供が求められているとのこと。なぜなら、「すでに危険のある平屋根に土砂降りあった(it rained cats and dogs.)から」。

動物を守るための屋根の修理の話題で、“rain cats and dogs”を使うところに趣向があります。

“when pigs fly”。これで「ありえない」といった意味になります。「豚が空を飛ぶとき」を想像するに、たしかにありえません。

この“when pigs fly”をニュース検索すると、“rain cats and dogs”よりはるかに多い、約5,520件が該当しました。ただし、“when pigs fly”は、ピザの商品名として使われていたり、記事に登場する人物の発言などで使われているものがほとんどです。報道記事の本文で、しかも地の文で使われることはめったにないもよう。

“cool as a cucumber”。これで「とても冷静」といった意味になります。直訳だと「キュウリのように冷えている」。キュウリを冷たいものと捉える英語圏の人たちの感覚を、日本人はあまりもちあわせていません。

この“cool as a cucumber”もニュース検索すると、なんと約1万200件も該当しました。よく使われていることがうかがえます。たとえば、(2019年)11月2日付のオタワシチズンというカナダの日刊紙における「ダックス・カナックス戦は2対1(延長)ヒュージ選手の不出場が大きく」という記事では、つぎのようにこの慣用句が出てきます。

“But, cool as a cucumber, Markstrom snagged the flying disc with his glove.”

訳すと、「だが、冷静にも(cool as a cucumber)、マーストロム選手は飛ぶパックを彼のグローブに収めた」といったところでしょうか。ゴールキーパーの冷静さを、地の文で表現しています。

ということで、日本人にはあまりぴんとこない語感のある英熟語も、英語圏ではふつうに使われていることがうかがえます。生きもののよび名が使われる英熟語では、やはりその生きものと関連づけて使おうとする向きはあるようです。たとえば、猫が駅長に就任といったニュースに「猫の手も借りることになりました」と伝えるように。

参考資料
Global News 2019年10月24日付 “Roof repairs at Fredericton SPCA’s roof repairs estimated to cost tens of thousands of dollars”
https://globalnews.ca/video/6078861/roof-repairs-at-fredericton-spcas-roof-repairs-estimated-to-cost-tens-of-thousands-of-dollars
Ottawa Citizens 2019年11月2日付 “Ducks 2, Canucks 1 (OT): Hughes' absence is notable”
https://ottawacitizen.com/sports/hockey/nhl/vancouver-canucks/canucks-2-ducks-1-ot-hughes-absence-is-notable/wcm/8ba2018c-6ce9-46b9-b6c5-d0b1b5ff9935

| - | 21:10 | comments(0) | trackbacks(0)
かつて天守がなくても模擬天守はあり

城の中心に建てられた、もっとも高い櫓を「天守」といいます。戦国時代、日ごろ住んでいる家の上の望楼だったものが発展し、軍事的な役目や、権威的な役目をもつようになったとされます。

日本のさまざまな地にある城の天守は、城が造られたときのものかというと、たいていのものがそうではありません。現存する天守は、青森県の弘前城や長野県の松本城など、12城のみとなっています。

この12城でない城の天守は、すべて城が造られたときよりあとの時代になって建てられたということになります。

はじめに建てられたときの天守の図面などが残っていて、それを忠実に再現したような天守は「復元天守」といわれます。また、天守はあったものの、すこし設計を変えて建てた天守は「復興天守」などとよばれます。

いっぽうで、天守がなかった城や、天守があったことが伝わっていない城というものもあります。そういった城に、現代の人が天守を建ててしまうこともあります。これは「模擬天守」とよばれるもの。模擬天守を建てるおもな理由は、観光や地域活性のためといいます。


館山城の模擬天守
写真作者:Saigen Jiro

千葉県館山市にある館山城も模擬天守のひとつ。これまでのところ、城跡から天守の土台にあたる部分が見つかっておらず、天守はなかったのではないかとされます。

館山城は、1578(天正6)年、いまの南房総市にあった岡本城に居た里見義頼(1543-1587)が家臣に造らせた城とされます。本来、里見氏の城は久留里城だったのですが、豊臣秀吉(1536-1598)によって久留里城のある上総の領地が没収されてしまっていました。秀吉が北条氏を滅ぼした小田原の戦いに、里見氏が参戦するのが遅れたからという理由です。そこで、里見氏は、岡本城を「仮の本城」としていたものの、義頼の息子の里見義康の代になると、館山城を新たな居城にしました。

館山城そのものは、犬山城を模して造られたといいます。そのためでしょう、模擬天守も犬山城とにています。

参考資料
百科事典マイぺディア「天守」
https://kotobank.jp/word/天守-578167
世界大百科事典第2版「天守」
https://kotobank.jp/word/天守-578167
城びと「第17回 構造『模擬天守』と『復元天守』『復興天守』はどう違う?」
https://shirobito.jp/article/342
ウィキペディア「現存天守」
https://ja.wikipedia.org/wiki/現存天守
余湖くんのホームページ「館山城模擬天守(千葉県館山市)」
http://yogokun.my.coocan.jp/tateyama.htm
日本の城がわかる事典「館山城」
https://kotobank.jp/word/館山城-180102

| - | 08:47 | comments(0) | trackbacks(0)
試着と履いてからで丈の感じがちがうことも

写真作者:Fay Celestial

服を買うときの「むずかしさ」のひとつに、「パンツの裾までの丈をどのくらいの長さにするか」があります。

試着をすると、たいていのパンツでは裾上げをする必要があります。そこで「このくらいか」「いや、このくらいだ」と裾を折り、その場でしゃがんだり、靴を履いてみたりしながら、調整していきます。

しかし、いざ買ってから履いてみると、思いのほか裾を上げすぎて、座ると靴下のくるぶし部分より上までが見えてしまったり、逆に思いのほか裾を上げておらず、歩いているとき裾がだぶついたり……。

一度、気になりだすと、そのパンツを履くたびに「やっぱり、ちょっと短かくしすぎたな」と感じ、「いっそのこと、もうすこし長い丈でおなじパンツを買っちゃおうか」とまで考える人もいるかもしれません。

試着しているときの感覚と、実際にパンツを履きはじめてからの感覚には、相当なちがいがあるのでしょう。せまい試着室から出て、靴をはき、しばらく店内を歩いてすごすくらいのことをしたほうがよいのかもしれません。店員には訝しがられそうですが……。

また、感覚とはべつに、パンツの細さ・太さによって、見あう丈の長さがあるといいます。細いパンツでは裾を上げて丈を短くするとすっきりとし、逆に丈を長くすると足元がだぶついた感じになります。いっぽう、太いパンツでは短くしてしまうと、裾がすかすかし、見ための安定感も失われます。

もっとも安全なのは、裾上げをするとき、あまり上げすぎず、丈をすこし長めにとっておく、ということでしょう。履いてみて、「お、でもぴったりだ」と感じればそれでよし。「ちょっと丈が長いな」と感じたときも、さらに裾上げすることはできるからです。はじめの裾上げのとき、上げすぎてしまうと、履いてから「あれ、上げすぎた」と感じても、丈を長くすることはできません。

参考資料
リライバーズ 2019年5月20日付「裾上げのやり方をズボンの種類別に解説!丈を決めるポイントも伝授!」
https://yourmystar.jp/c0_133/c1_55/articles/hemming/
| - | 08:06 | comments(0) | trackbacks(0)
運動は「酸化ストレス」も「抗酸化作用」ももたらす


写真作者:Drey Roque

人をふくむ生きものは、つねになんらかの刺激にさらされています。その刺激に対して、生きものの体は、なんらかの歪みを生じ、そして、なんらかの反応をします。これらは「ストレス」とよばれます。

ストレスをもたらすなんらかの刺激には、たとえば寒さ、暑さ、疲れ、不安などがあります。

ある種の酸素も、ストレスをもたらす元となります。酸素はふつう、ふたつの酸素原子どうしが、2つの手を結びあって酸素分子「O2」となっています。しかし、結びあう手が1つのみになることもあります。また、ふつうは対をなして酸素原子のまわりにあるはずの電子が、対にならずに単体の電子としてふらふらすることも。このように、ふつうではない状態をとった酸素は「活性酸素」となります。活性酸素はふつうの酸素よりも、不安定で反応性が高いため、細胞を傷つけます。

体の細胞には、そうした活性酸素に対応するしくみがあります。しかし、活性酸素の反応がそれに対抗する細胞の作用を上まわると、やはり細胞は害を受けます。これが「酸化ストレス」です。酸化ストレスが増えると、がんなどの病気につながります。

活性酸素は酸素からつくられるわけですから、体が酸素をとりこまなければ、酸化ストレスは生じません。しかし、人をふくめ多くの生きものは呼吸するために酸素を必要としているため、酸化ストレスが生じるのは避けられません。

では、安静にしているときよりも酸素を必要とする運動をすると、人の体はどうなるか。当然ながら、活性酸素が生じやすくなり、酸化ストレスも受けやすくなります。

つまり、運動をすることは、自分の体が酸化ストレスを受けやすくしている行為といえるわけです。とりわけ、酸素をたくさん必要とするような強い運動は、酸化ストレスを増大させます。

では、運動をしなければ、酸化ストレスの増大を抑えられるため、病気になりづらくなるのでしょうか。

そうとはいえません。運動をすることは、活性酸素を生じさせるいっぽうで、その活性酸素のはたらきを抑える抗酸化作用ももたらすのです。

結局のところ、運動をすることで、病気や死亡に近づくのでしょうか。それとも健康に近づくのでしょうか。

米国では、ハーバード大学の卒業生を対象に、運動と死亡率の関係を調べた研究があります。これによると、体をよく動かすほうが死亡危険率が小さくなったそうです。ただし、もっとも運動をした群の人たちの死亡危険率はむしろ高まったとのこと。

適度な運動が、抗酸化作用をもたらし、脂肪危険率を小さくする、といえそうです。

参考資料
脳科学辞典「酸化ストレス」
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/酸化ストレス
百科事典マイペディア「活性酸素」
https://kotobank.jp/word/活性酸素-164302
栄養・生化学辞典「活性酸素」
https://kotobank.jp/word/活性酸素-164302
栄養・生化学辞典「ヒドロキシルラジカル」
https://kotobank.jp/word/ヒドロキシルラジカル-771433
大石修司「運動と酸化ストレス 活性酸素と抗酸化防御のバランスの重要性」
https://iryogakkai.jp/2015-69-07/317-24.pdf

| - | 11:45 | comments(0) | trackbacks(0)
後楽園にも……1980年代、100以上の「巨大迷路」

写真作者:Christian Schulzendorff

1980年代、「巨大迷路」の流行がありました。迷路というと、紙に描いたものを鉛筆や指でなぞって出発点から終着点までたどりつく、といった遊びもあります。いっぽう巨大迷路は、人が迷路のなかに入っていき、進路を選びながら終着点にたどりつく遊戯施設です。

袋小路に入って行きどまると、また進路の分岐点まで戻らなければなりません。ただし、ずっと右手あるいは左手のどちらかを壁づたいにして迷路を歩いていれば、いつかはかならず終着点にたどりつくという技もあります。

運営面では、土地と、衝たてとなる柱や張り幕さえあれば、迷路はできあがるため、費用はさほどかかりません。そのため、新たな大型施設を開発するまで空き地などを巨大迷路にして、稼ぎを得るといった企業もありました。

神奈川県上麻生の新百合ヶ丘駅の西側には、「あ?めいず」という巨大迷路がありました。いまでは新百合ヶ丘駅のまわりは、大型商業施設や住宅などが建ちならんでいるものの、当時は開発が進まずに空き地もあり、そこに巨大迷路が仮設されたのでした。

郊外だけでなく、都心にも巨大迷路はありました。かつて、東京・後楽にあった後楽園球場が閉鎖され、東京ドームがつくられたころ、後楽園球場の跡地あたり、いまの東京ドームシティアトラクションズの敷地にも巨大迷路がつくられていました。さすがに都会の一等地ですので、実際はそれほど大きくなったかもしれません。

1980年代には全国に巨大迷路は100か所以上あったようです。空き地につくられた巨大迷路は、そこに建てものがつくられることになると閉園に。つぎつぎと姿を消していきました。

しかし、いまも全国には20か所以上の巨大迷路があり、多くは木製でしっかりしたつくりとなっています。さらには立体化して、より複雑になっているようです。

参考資料
新百合ヶ丘タイムズ 2018年10月28日付「麻生小学校の場所は、以前巨大迷路『あ?めいず』があった!という思い出」
https://shinyuriknow.com/living/2546/
いこレポ「全国のおすすめ巨大&立体迷路24選! 日本最大級&変わり種も!」
https://report.iko-yo.net/articles/12971
| - | 13:46 | comments(0) | trackbacks(0)
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