つくった道具をさまざまな人びとに使ってもらい、つくった側も、使う側も、それぞれ利を得るといった事例があります。
文部科学省の「先端研究基盤教養促進事業」では、「アトミックスケール電磁場解析プラットフォーム」というプログラムが組まれています。
このプラットフォームは、日立製作所が代表機関を担うほか、ファインセラミックスセンターナノ構造研究所、九州大学超顕微解析研究センター、東北大学多元物質科学研究所が実施機関となっているもの。それぞれの組織がもっている計測装置を使いたい人・団体は、申しこみをして有償で使うことができるようになっています。
「原子分解能超高圧ホログラフィー電子顕微鏡をはじめとするアトミックスケール電磁場計測装置を、 国内外の材料・デバイス等の研究および量子物理分野の課題解決に広く活用できるように共用化し、イノベーションの創出を目指すもの」(プラットフォームのサイトより)。
「原子分解能超高圧ホログラフィー電子顕微鏡」は、原子の姿を捉えるほどの分解能をもつ電子顕微鏡と、微細な3次元電磁場分布を可視化する電子線ホログラフィーという道具を兼ねそなえた装置。日立製作所が開発しました。
この装置のほか、同プラットフォームでは、ナノ構造研究所、九州大学、東北大学がそれぞれもっている「300キロボルトホログラフィー透過型電子顕微鏡」も共用することができます。
2017年度の実施課題には、北海道大学の「彗星起源宇宙塵の残留磁化のホログラフィーTEM観察」といった天文学関連の分野から、産業技術総合研究所の「GaN半導体内部のドーパント濃度分布の計測」といった応用物理学関連の分野まで、幅広い成果が掲げられています。
つくられた装置は、使われてこそ価値が高まるもの。つくった人たちが使うだけでなく、使うことで成果をあげられる人たちも使うことで、その価値は高まります。
参考資料
アトミックスケール電磁場解析プラットフォーム
https://www9.hitachi.co.jp/atomicscale_pf/
内閣府総合科学技術・イノベーション会議 最先端研究開発支援プログラム研究課題「原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡の 開発とその応用」説明資料
http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/suisinkaigi/7kai/sankou1-1.pdf