画像作者:Vishay Intertechnology
「物理学」というと、自然科学の数ある分野のなかでも「純粋性が高い」という印象を抱かれがちかもしれません。純粋性が高いとは、応用とかかわらず、理論や形式のみで扱う度が強いということです。
理論物理学者の朝永振一郎(1906-1979)は、物理学の特徴について、複雑な自然現象のなかから極度に単純化された状況をつくり、普遍的な法則性を抽出してきた述べたといいます。
いっぽうで、人びとの生活のすべては物理法則がかかわっているわけですから、物理学には、人びとの役に立つような応用の分野と結びつきが強い側面も
あるわけです。基礎的な学問分野であるからこそ、応用にも使えるということです。
そのため、日本をふくむ世界では「応用物理学」とよばれる学問が築かれ、多くの研究者がこの分野の下で、あるいはこの分野とのかかわりをもちながら研究をしています。
応用物理学とは、ほかのさまざまな分野への応用を目的とした物理学であるといえます。物理学のなかで応用することを意図している分野ともいえます。
応用を明らかに意図している学問分野には、工学もあります。そして工学の一分野として物理工学とよばれるものあります。たとえば、物理工学科をもっている横浜国立大学は「文字通り物理学と工学とを結びつける学問分野」と説明しています。物理工学は「物理についての工学」と解釈できますから、基本は工学であると考えることができます。
この解釈のしかたでいうと、応用物理学は「(工業などへの)応用についての物理学」となりますから、基本は物理学であると考えることができます。
応用物理学には、具体的にどのような分野があるのか。応用物理学および関連学術分野の研究の促進ならびに成果の普及に関する事業をおこなっている応用物理学会には、分科会として、フォトニクス、放射線、応用電子物性、薄膜・表面物理、結晶工学、超伝導、有機分子・バイオエレクトロニクス、プラズマエレクトロニクス、シリコンテクノロジー、先進パワー半導体、次世代リソグラフィ、そして応用物理教育の分科会があります。
百科事典には、「技術的問題で現れる物理現象を研究する物理学の分野」(ブリタニカ国際大百科事典)という説明もあります。物理学の研究成果が、それぞれの分野での問題の解決策を導き、技術を発展させてきたわけです。
参考資料
国府田隆夫「多様化時代の物性科学 理学と工学の区分を超えて」
http://www.jps.or.jp/books/50thkinen/50th_09/003.html
横浜国立大学物理情報工学専攻「物理工学コースとは」
http://www.phys.ynu.ac.jp/course/course_01.html
ブリタニカ国際大百科事典「応用物理学」
https://kotobank.jp/word/応用物理学-38917
応用物理学会「定款」
https://www.jsap.or.jp/profile/article.html
応用物理学会「分科会」
https://www.jsap.or.jp/profile/division.html