科学技術のアネクドート

読ませる新書、53年かけて「通巻2000番」達成


講談社の新書「ブルーバックス」が、2017年1月18日(水)に発売された『日本列島100万年史 大地に刻まれた壮大な物語』で「通巻2000番」を迎えました。

「ブルーバックス」は、自然科学の分野にかかわる新書を集めた講談社のブランドのひとつです。1963(昭和38)年に創刊しました。

1963年当時のブルーバックスの書名を見ると、『胃袋 現代人の不安のシンボル』(飯島登著)、『科学の手帖 現代人の科学コンサルタント』(崎川範行著)、『新住居入門 人間を生かすための設計』(清水一著)、『世界一に挑む日本の工業技術 アメリカ・ソ連・EECから何を学ぶか』(牧野昇)などが並んでいます。

「現代」というものを多少なりとも意識していたのでしょう。世のなかでは、この年、関西電力の黒部川第四発電所が完成したり、名神高速道路の一部が日本発の高速道路として開通したりしました。東京五輪の前年、日本の国そのものが前進していました。

そうしたなかで、記念すべき第1番は菊地誠が著した『人工頭脳時代 頭脳労働の革命が始まっている』。人工知能には、これまで4度ほどの「ブーム」があるといわれています。1963年は、第1次ブームの終わりごろに位置します。2017年のいま発売しても違和感のない書名といえましょう。

2016年までの53年で、およそ2000点。1年につき、40冊弱の新書がブルーバックスとして出つづけてきたことになります。2016年や2017年では、1か月に4点が発売されているので、刊行頻度は高まっていることになります。

2000年ごろからさまざまな出版社が新書のブランドつぎつぎと立ちあげ、「乱立」あるいは「乱発」といってもよい状態がつづきました。いっぽうで、統計があるわけではありませんが、1冊分での情報量はすくなくなってきていると考えられます。つまり、かんたんに読めてしまう新書が多くなったわけです。

ブルーバックスも、おそらく読みやすさを意識したり、科学といえないくらいの際ものの分野に挑んだり、工夫を重ねていることにちがいありません。しかし、自然科学のかなり専門的といえる話題や情報を、1冊の新書でじっくりと伝えるという姿勢は保たれています。テレビの世界の「Eテレ」の存在とにていると感じる人も多いかもしれません。

ブルーバックスのホームページでは、2017年の新春のあいさつで「1963年の発刊から54年にわたってシリーズを続けてこられたのは、ひとえに読者のみなさまのご支援のおかげです」と、感謝の気持ちを伝えています。

昔とかわらない「じっくり読ませる新書」が、ブルーバックスからはこれからも出つづけていきそうです。

講談社BOOK倶楽部「ブルーバックス」のサイトはこちらです。
http://bluebacks.kodansha.co.jp

(2017年)2月2日(木)には、東京・南池袋のジュンク堂書店で、2000番目の著者となった山崎晴雄氏を迎えてトークイベントも開かれるとのこと。こちらに詳細が書かれてあります。
https://honto.jp/store/news/detail_041000020675.html?shgcd=HB300
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「もう夜かよ」という焦りに対して「まだ夜のうちだ」という安らぎ

写真作者:Sun Taro

時計という道具があっても、人は日が昇れば「朝だ」と感じるし、日が暮れれば「夜だ」と感じるものです。太陽の光から朝や夜を感じる習性は、遺伝子に組みこまれているのでしょう。

たとえば、おなじ「午後5時」でも、季節によって感じかたは大きくちがってきます。夏至のあたりの日では、まだ明るいので「夜だ」と思う人はまずいません。しかし、冬至のあたりの日では、すでにとっぷり日が暮れているため、多くの人は「夜だ」と感じるのではないでしょうか。

多くの人が「夜」を「一日の終わりのほう」と認識しています。そのため、日の短い冬場、午後5時ごろになれば「もう日が沈んでしまうのか」とか「もう夜か」とか、ある種の焦りに近い感覚を抱くかもしれません。本当は一日が終わる24時までにたっぷり時間はあるわけですが。

いっぽう、生活習慣が特殊な人は、夕方に日が暮れるとき「夜だ」と思うかどうかとはべつに、もうひとつの時間帯でおなじような感覚を抱くといいます。

ある、夜型生活者は、つぎのように話しています。

「明けがたは、夕暮れどきとは逆の感覚を抱くものですよ。夏場、午前4時ごろに明るくなってくると、『もう朝だ』と焦るわけです。逆に、冬場であれば、明るくなるのは午前6時30ごろだから、『まだ夜のうちだ』ということですこし安らぎます」

この人は、夜更かしをして「朝を迎えてもまだ起きている」ということに、罪悪感のようなものを感じているのかもしれません。

しかし、この場合も、明るくなりはじめていようが、まだ暗いままであろうが、おなじ午前4時は午前4時です。「まだ夜のうちだ」という感覚でいると、より夜型が進んでしまうおそれもありそうです。
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まわりの住民との共生模索、プロレス団体でも


写真作者:Toru Miwa

住宅街のなかに工場があると、工場ではたらく工場長や社員たちは、まわりの住民になにかと気を使うようです。早朝や夜は、なるべく騒音が出ないようにしたり、また、工場の敷地をお花見のために開放したり。たとえ工場が家々よりもさきに建っていたとしても、「あなたたちがあとから住みはじめたんでしょうに」などと言うことはむずかしいようです。

まわりに住む人たちとの共存関係を考えなければならないのは工場長だけではありません。たとえば、プロレス団体もおなじような状況にある場合があるようです。

街なかで、「ぐぇー」「おりゃー」「たぁー」などと叫び声があがり、建てもののなかから「ドターン」と響く音もしてくる……。その街をはじめて歩いた人は「わ! なにか事件でも起きているんじゃないか!」と恐ろしくなるかもしれません。

しかし、叫び声の主はプロレスラーであり、響く音はマットのうえで受け身をとる音。

そう、道場が街なかの倉庫のようなところにある団体があるわけです。

格闘技の稽古で、叫び声などをできるかぎり発さずにおこなうのは至難の技でしょう。気合を入れて技を磨いたり型を確かめたりするとなれば、自然と叫び声は出てしまうもの。また、リングのマットも興行のときとおなじような材質しないと、稽古をする意味がなくなってしまいます。

まわりの住民には大きな音を出してしまうことになるけれど、できるだけ共生関係を築きたい。そこで、近くの商店街からの「街を盛りあげたい」といった相談に、商店街でプロレスを興行するというかたちで応える団体もあります。

リングでは荒くれ者であっても、リングを下りれば心優しい大男といったレスラーは多くいることでしょう。まわりの住民にとって「頼れる大男たち」という存在になれれば、信頼関係も芽ばえるかもしれません。地元に密着したファンづくりのための好機にもなるのではないでしょうか。

参考資料
はまれぽ.com「ついに最後?と噂される六角橋の商店街プロレス」
http://hamarepo.com/story.php?page_no=0&story_id=1936&from=

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「体のキレ」の高めかたはほぼ未解明


運動監督は、自分の「体のキレ」についてことばにすることがよくあります。

プロ野球の読売巨人軍の小林誠司捕手は、2017年1月におこなった自主鍛錬について「肩の仕上がりは、体のキレはいい」と述べたといいます。

また、スキーのジャンプ競技の伊東大貴選手は、(2017年)2月4日に札幌市で開かれるUHB杯を前に、「陸上トレーニングを中心に体のキレを戻したい」と語ったといいます。

運動選手だけでなく、選手を見まもる関係者も、「体のキレ」を口にします。日本サッカー協会会長の田嶋幸三さんも、2016年11月の親善試合で日本代表が対オマーンに4対0で勝ったあと、大迫勇也選手について「体のキレがあった」と述べています。

すくなくとも運動選手や監督たちのあいだでは、「体のキレ」は共通語になっているようです。運動にかかわる人たちの多くは共通的に、「体のキレ」についてのイデアをもっているのかもしれません。

国語辞典にも、体のキレについてのことは載っています。「キレ」の数番目に「(スポーツなどで)動きや回転の鋭さ」とあります。これからすると、体を機敏に動かしたり回したりできることが、「体のキレ」がある状態といえそうです。

選手の体の動きを見ている監督・コーチや観客は、選手のその日の機敏さなどを見て、「今日はあいつは体のキレがありそうだな」などと感じることができます。

しかし、まわりの人の見た目とはちがって、「今日は体のキレがまったくなくて、厳しかったですね」などと答える選手もいます。客観的な見た目と、自分自身の実感は異なるようです。

「今日は体のキレがまったくなく……」といった選手の話を聞くと、おなじ人によっても「体のキレ」がよい日とよくない日があるようです。すくなくとも感覚的なものとして。

運動競技に携わる一部の人は、体のキレは「体幹」を鍛えることで備わると考えているようです。「体幹」とは人の胴などの主要な部分を言います。とはいえ、体幹を鍛えることが、体のキレをよくすることにつながるという関係性は、研究などで解明されているわけでもないようです。

運動をする人の多くが、体のキレがあるかどうかを感じる。けれども、その日に体のキレがあるかどうかは、本人がその日、実際に体を動かしてみてからわかることが多い。事前の準備では、体を動かす最低限のことはできるけれど、体のキレをすごくよくすることはむずかしい。

体のキレの正体は謎に包まれたままといえそうです。

参考資料
スポーツ報知 2017年1月28日付「阿部&小林、2次自主トレ打ち上げ」
http://www.hochi.co.jp/giants/20170128-OHT1T50050.html
スポーツ報知 2017年1月25日付「伊東大貴、帰国調整!2・4UHB杯で復帰へ」
http://www.hochi.co.jp/sports/winter/20170124-OHT1T50187.html
報知新聞 2016年11月11日付「日本協会の田嶋会長、2得点のストライカーに『大迫はキレがあった』」
http://www.hochi.co.jp/soccer/japan/20161111-OHT1T50249.html
大山孝光「バドミントンにおける体幹強化と競技力向上に関する一考察 コアパフォーマンス・トレーニングの導入について」
http://www.yamagata-koutairen.jp/katudo/i-pdf/H23/H23hahhyo-badminton.pdf
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「タコで“多幸”に! 進む完全養殖プロジェクト」


ウェブニュース「JBpress」できょう(2017年)1月27日(金)「タコで“多幸”に! 進む完全養殖プロジェクト 切っても切れない日本人とタコの仲(後篇)」という記事が配信されました。

日本人は世界のなかで無類の「タコ好き」。刺し身、寿司のたね、タコ焼きの具材など、さまざまな食べものの材料に使われています。

しかし、国内のタコ漁獲量はすくなくとも2007年以降、減りつづけています。2011年3月の東日本巨大地震と津波の影響で福島県などのタコの産地が被害を受けました。中国でもタコの需要が増えています。これまでどおり日本人がタコを気軽に食べつづけられるかは微妙な状況になってきています。

そうしたなかで、タコの「完全養殖」を果たそうと、企業や大学の研究者がチームを組み、プロジェクトを進めています。「築地銀だこ」でおなじみのホットランドや公立宮城大学など、2つ企業と3つの大学による産学連携です。

記事では、研究リーダーをつとめる宮城大学食産業学部教授の西川正純さんが、完全養殖を実現するための課題や、解決のための方法などを語っています。

冒頭の写真のように、タコは孵化してまもないときから、小さなタコのかたちをしています。そして、海のなかをゆらゆらと浮遊します。その後、生まれてから3、4週間が経つと、今度は海底に落ちついて、生活を始めます。

この海底に落ちつく「着底」の期間のタコを人工的に育てるのが至難の業なのだそう。餌を食べてくれないと育ちません。プロジェクトでは、幼いタコが食べてくれる餌の栄養素を探るなどしているとのこと。

記事では、その手法などを西川さんが紹介するとともに、完全養殖に成功し、事業化が実現したときにもたらされる利点なども伝えています。

JBpressの記事「タコで“多幸”に! 進む完全養殖プロジェクト 切っても切れない日本人とタコの仲(後篇)」はこちらです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49008
前篇の「干す、焼く、煮る、日本人はこんなにもタコが好き」では、日本人とタコの“良好関係”の歴史を追っています。こちらです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48954

記事の取材と執筆をしました。
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たんぱく質どうしの相互作用を知って薬の開発に活かす

生きものの体の大部分はたんぱく質でつくられています。体の設計図ともいえるデオキシリボ核酸(DNA:DeoxyriboNucleic Acid)の必要な部分がリボ核酸(RNA:ribonucleic acid)に転写され、そのリボ核酸をなりたたせる塩基の配列をもとに、さまざまなたんぱく質がつくられます。

たんぱく質は、酵素として体のなかで化学反応が起きるきっかけをつくったり、体そのものの材料になったり、抗体のしくみをつくったり、さまざまな種類がさまざまな役割をもちます。

ただし、1種類のたんぱく質が単独でなにかの役割を果たすということはむしろすくなく、もっぱらほかの種類のたんぱく質とかかわって、なんらかの役割を果たすものです。およそ2万5000種類のたんぱく質が、30万とおり以上の相互作用をもたらすともいわれています。

では、どのたんぱく質とどのたんぱく質がかかわりあって、どのような役割を果たすのか。また、たんぱく質とたんぱく質がかかわりあうと、どのような立体構造をとるのか。さらに、たんぱく質のどの部分が、ほかのたんぱく質とのかかわりあいに大切なのか。こうした、たんぱく質どうしの相互作用を調べようとする研究が進んでいます。

たんぱく質どうしの相互作用を詳しく知ることができれば、どのように生きものが生命活動をしているのかが詳しくわかってきます。

また、たんぱく質どうしの相互作用の秩序が乱れている場合は、その相互作用を遮断してしまえば秩序の乱れを食いとめることができます。

こうしたことから、たんぱく質どうしの相互作用に注目して、それを新しい薬の開発につなげようとする研究や開発が、大学や企業などにより進められています。たんぱく質の一種である酵素と結びついて酵素のはたらきを抑えることで、その先につながる病気を抑える薬を酵素阻害剤といいますが、これとおなじように、たんぱく質どうしの相互作用を抑える「タンパク質間相互作用阻害剤」の開発に向けた研究が進んでいます。

細胞に現れているたんぱく質のすべてを「プロテオーム」といいます。細胞に現れているたんぱく質のすべての情報を洗いざらいにして、薬の開発にかかわるようなたんぱく質の機能を探そうとする「プロテオミクス」という研究手法も確立されています。

さらに、たんぱく質どうしの相互作用をすべて洗いざらいにして、そのなかから、薬の開発に大切と考えられる相互作用を絞りこむ「インタラクトミクス」という手法もあります。

たんぱく質やたんぱく質の相互作用の網羅的な情報を用意するには、コンピュータの技術が必要。そのため、こうした「オミクス解析」は、情報技術に支えられている面もあります。


たんぱく質どうしの相互作用を可視化した例
画像作者:Keiono

参考資料
NHK高校講座生物基礎「DNAとタンパク質合成」
https://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/seibutsukiso/archive/resume013.html
ウィキペディア「タンパク質間相互作用」
https://ja.wikipedia.org/wiki/タンパク質間相互作用
京都大学化学研究所「中分子たんぱく質間相互作用阻害剤の細胞内合成に成功」
http://www.kuicr.kyoto-u.ac.jp/sites/topics/topics_151209/
実験医学online「インタラクトーム」
https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/2797.html

| - | 17:56 | comments(0) | trackbacks(0)
小さいトマトだから実験しやすい


生きものには、人に「モデル」と位置づけられているものがあります。「モデル生物」ともいいます。雑誌の表紙を飾るような見栄えのよいものではありません。研究や実験でなにかと便利なため、こぞって研究者が実験で扱っているような生きもののことです。

植物で有名なのは、シロイヌナズナでしょう。次の代の種ができるまでが短いため実験結果をすぐ得られることや、ゲノムの大きさが小さいため、研究者にとって便利な植物です。

シロイヌナズナほど知られていないものの、よく使われているモデル植物があります。より具体的にトマトを対象とする研究では、「マイクロトム」とよばれる品種が使われることが多いのです。

トマトというと、多くの人は八百屋などで売られている、拳ぐらいの大きさのものを想像するでしょう。しかし、マイクロトムの実は6グラムほどしかなく、実の大きさという点ではプチトマトに近いといえます。

小さいのは実だけではありません。草丈も15センチメートルほどと小さく、また葉も小さめです。つまり、マイクロトムは、場所をとらないので扱いやすいという利点がまずあります。

また、種をまいてから次の世代の種を得られるまでは3か月ほど。八百屋などに売っている食べるためのトマトは数か月ほどかかるといいますから、短めです。シロイヌナズナとおなじく、実験結果を早く得ることができます。

さらに、太陽光のような強い光でなくても育つため、閉鎖環境など特殊な条件でも扱いやすいといった利点もあるようです。

マイクロトムは、米国の植物学者ジェイ・W・スコットと、ブレント・K・ハーボーが開発し、1989年に発表した品種です。はじめの目的は、家庭菜園向けのトマトというものでした。

しかし、ラファエル・マイスナーという研究者らが1997年に、マイクロトムが研究のモデル植物に適していることを紹介し、あらためて研究用の植物として注目されるようになりました。

そして2010年ごろまでにマイクロ・トムのゲノムが解析され、遺伝子の研究もさらにしやすくなりました。

トマトはナス科。マイクロトムはトマトのほか、さまざまな野菜の研究にも応用することができ、やはり「なにかと便利」といえそうです。ただし、食べたときの味としては、八百屋のトマトなどよりは劣るとされています。

参考資料
kazusa Wiki「マイクロトム基礎知識」
http://wiki.annotation.jp/JSOL
ナショナル・バイオリソース・プロジェクト「一般的な質問」
http://brc.gene.tsukuba.ac.jp/tomato/Q&A.htm
北海道大学理学部生物科学科「マイクロ・トム」
https://www.sci.hokudai.ac.jp/bio/bio/マイクロ・トム(トマト)/
3時限目 理科: トマトの研究「小さなトマト:マイクロトム」
http://blogs.yahoo.co.jp/pg2_tomato/701243.html
| - | 22:42 | comments(0) | trackbacks(0)
(2017年)2月12日(日)は「ミライリケジョ♡ モノづくりカフェ 2017」



催しものの案内です。

(2017年)2月12日(日)、東京・護国寺の講談社で、女子中高生と保護者・同伴者を対象とした「ミライリケジョ♡ モノづくりカフェ 2017」が開かれます。主催は講談社。共催は荏原製作所。

「ミライリケジョ」は、理系に興味のある女子高生の参加者たちが、理系分野で活躍する女性のお話を聴いたり、ワークショップに臨んだり、理系女子の先輩と対話をしたりできるイベントです。昨2016年も2月に開催され、盛りあがったようです。

今回の「2017」でも、早稲田大学人間科学学術院助教の玉城絵美さんがゲストとして登場します。玉城さんの専門は、ヒューマンコンピュータインタラクション。人がコンピュータと情報共有するうえでの“接点”にあたるインタフェイスの提案や評価などをしています。

東京大学の博士課程に在学中は、コンピュータで人の手を自由に動かせる「ポゼストハンド」という装置を開発し、米国の雑誌『タイム』で「世界の発明50」に選ばれました。「未来のノーベル賞候補」とのよび声もあります。

また、2010年に米国のディズニー研究所をインターンしたり、2012年に設立したH2Lという会社のチーフリサーチャーを務めたりと経験が豊富です。

また、もう一人、モデルで2016年に大学を卒業したばかりの立花恵理さんもゲストに迎えます。

ワークショップでは、ペンで線をなぞるようにして電子回路を描ける「AgIC」という製品を使って、カードに電子回路をつくり、電球を光らせるそうです。2日後のバレンタイン・デーを意識して、光るカードづくりに励むもよし。

参加者にはQUOカード1000円分ももらえるとのこと。講談社の担当は「友達と奮ってご参加ください♪」とよびかけています。

「ミライリケジョ♡ モノづくりカフェ 2017」は、2月12日(日)14時から17時30分まで。会場は講談社内。参加費は無料ですが、応募登録が必要です。応募期間は、1月29日(日)の23時59分まで。詳しくは、講談社Rikejoの「ミライリケジョ」特設サイトをご覧ください。

| - | 23:57 | comments(0) | trackbacks(0)
「上等カレー神田小川町店」のカレーライス――カレーまみれのアネクドート(91)



カレー世界のムーブメントがあるとすれば、「ちょっと贅沢なカレーを出すチェーン店が現れている」といったことになるでしょうか。「贅沢」といっても銀色のソースポットにカレー入れて出すといったことではありません。カレーの中身に力が入れられているといったことです。

「上等カレー」はそうした店のひとつ。得正という会社が運営しています。得正は、大阪市に本社のある会社ですが、近年、東京や愛知など、関西圏以外にも「上等カレー」を出しています。

写真は、東京にある神田小川町店の「カレーライス」。らっきょうは別売です。

券売機の献立には、トンカツやエビフライやエビなどを乗せるものもありますが、「カレーライス」はライスとルゥのみ。ライスが断崖絶壁のように盛られ、そのうえにルゥが8割ほどの面積でかけられています。

乗せものがないカレーライスは味が勝負。このカレーのルゥの味は「甘さ」から入ってから「辛さ」に変わり、つぎにルゥを口に入れるときにはまた「甘さ」に戻るといったもの。味の伝わりかたという点では、おなじく関西圏を中心に出店している「インデアンカレー」を思いおこさせます。

正得は、ホームページでも「初め甘いが後追う辛さ」「ただただ辛いだけのカレーではなく、また変に甘ったるいカレーでもない、『辛さ』と『甘さ』という、一見相反する味を見事に調和させることによって、初めて奥の深い、余韻の残るカレールーが仕上がったのです」と誇らしげに自社のカレーを紹介しています。

ちなみに、神田小川町店は、2015年におこなわれた「第5回 神田カレーグランプリ」の決定戦で、投票総数2万3165票のうち、3093票を獲得してグランプリとなりました。予選通過20店のうちの1位です。

「カレーライス」で680円。しかし、甘辛いカレーを食べてみる価値あり。店名の「上等」に偽りなし。

「上等カレー」のホームページはこちらです。
http://www.tokumasa.net/original11.html

参考資料
神田カレー街活性化委員会 2015年11月4日発表「第5回 神田カレーグランプリ2015 グランプリは『上等カレー神田小川町店』に決定」
http://kanda-curry.com/wp/wp-content/uploads/2013/05/KCG15press_3_151104.pdf

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客との関係を“育んで”、ファンになってもらう

写真作者:Virginia State Parks

売りこみをがんばらなくても、客のほうから買いにきてくれるようになれば、商売は安定するものでしょう。

客が「あ、これ買います」と商品を求めてくる。さらに客が「新しいのが出たんですね、もちろん買います」と、新商品を出すたびにそれを求めてくる。こうして、客にファンになってもらえれば、商品を出すたびにその商品が確実に売れる、といったことになります。

まず、商品に「買いたい」と思わせる魅力がなければそうしたことにはならないでしょう。しかし、たんに商品に魅力があるだけでも、そうしたことなるとはかぎりません。

そこで、市場戦略の分野では、客に商品を買いつづけてもらうために、「ナーチャリング」という考えかたを意識することがあるといいます。

「ナーチャリング」とは、英語で「はぐくむ」や「養育する」といったいみの“nurture”に“-ing”をつけたもの。市場戦略の分野では、「見込み顧客を、有望な見込み顧客へと育成するマーケティング手法」(日経BPコンサルティング)といった意味になります。

見込み客とは、将来、商品を買うかもしれない客のこと。見込み客には、その商品のことを知りはじめてから、買うことを決めるに至るまで、さまざまな段階があるはずです。

売る側は、それぞれの段階に応じた適切な時期に、客のほしい情報を提供することで、客を「よし、買うことにした」という段階まで導くことができます。

売る側は、ある程度、客に商品を買ってもらうまでの段階や過程を考えておくことが大切そうです。また、その客がいまどの段階にいるのかを把握することも大切になりそうです。

参考資料
日経BPコンサルティングFB支店「気になるマーケ用語【ナーチャリング】【リードジェネレーション】」
https://ja-jp.facebook.com/notes/日経bpコンサルティングfb支店/気になるマーケ用語ナーチャリングリードジェネレーション/423048767771357/
カリオスマーケティング「リードナーチャリングのやさしい解説」
https://www.kairosmarketing.net/marketing-automation/leadnurturing/
| - | 15:15 | comments(0) | trackbacks(0)
「なりやすさ」まえの助詞、日本語にも欠陥

写真作者:nimame

日本語では、どうしても表現しづらいという欠陥がいくつかあるものです。前にこのブログでも「『大きいです』『かわいそう』日本語にも欠陥」という記事で、「大きいです」違和感問題、「かわいい・かわいそう」別の意味問題、「がんばって」代替表現なし問題などに触れました。

もうひとつ、「なりやすさ」助詞問題という、日本語の欠陥があります。「なりやすさ」ということばの前につける助詞が、なかなかしっくりこないという問題です。

「なりやすさ」は、「なる」と「やすい」の2語からなる「なりやすい」という形容詞句を名詞にしたものです。

この「なりやすさ」ということばは、度合の概念とかかわりやすいものです。なにかがなにかに「なりやすい」か「なりにくいか」についてを論じる対象になるからです。

たとえば、化学では、金属などの物質に電圧をかけると、電子を得たり失ったりして、イオンという粒子になります。そして、たとえば、金属のなかにも、イオンになりやすい物質もあれば、イオンになりにくい物質もあります。たとえば、ナトリウムはイオンになりやすく、金はイオンになりにくい、といった具合に。

さて、では、金属がイオンになりやすいかどうかを、「なりやすさ」ということばで表現しようとするとどうなるでしょう。

「イオンになりやすさ」。まずは、「に」という助詞をつけてみました。「イオンになる」と言うからです。しかし、あとにつづく「やすさ」の存在が大きいため、「に」では違和感を覚える人も多いかもしれません。

「イオンのなりやすさ」。これにも問題があります。ほんとうはこの表現のまえに「金属の」がつくはずだからです。実際「金属の」をつけると「金属のイオンのなりやすさ」となり、「の」が重なって意味がとりづらくなります。

「イオンへのなりやすさ」。これはぱっと見、悪くはなさそうです。しかし、通常「金属がイオンへなる」とは言いません。「金属がイオンへ変わる」であれば言いますから「イオンへの変わりやすさ」なら違和感はありません。

「イオンにのなりやすさ」。「への」がだめならば「にの」はどうかというわけですが、やはり違和感があります。日本語には、「へ」と「の」というふたつの助詞を重ねた「への」はよく使われます。しかし、どうしてか「に」と「の」をかさねた「にの」は使われません。

というわけで、「なりやすさ」助詞問題は、なかなか解決を見ません。教科書や参考書などの見出しに使うようなときは苦労しそうです。
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“見る”から“使う“へ……「最新! 地図づくりの舞台裏」は『Rikejo』マガジンで


理系進学をめざす女の子たちを応援する講談社の会員誌『Rikejo』マガジンの第43号が、(2017年)1月中旬に発行されました。

『Rikejo』マガジンは紙媒体ですが、講談社のデジタル版サービス「codigi」でも、つぎのごく簡単な手つづきをすれば、おなじ誌面をウェブで読むことができます。その手つづきとは、メールアドレスやパスワードを入れる新規読者登録をしたうえで、「r343 aae5 g9ca」という12文字のコードを入れるというもの。

第43号の「リケジョサイエンス」という科学的な話題をとりあげる特集では、「最新! 地図づくりの舞台裏」というテーマで記事が並んでいます。

地図は暮らしのなかで大切な道具。自分の行く場所や待ちあわの場所を調べるほか、ハイキングをする、災害の危険がある場所を把握しておくなど、さまざまな目的で地図が使われます。そうしたさまざまな地図をつくる舞台裏では、たくさんの最新技術が使われています。特集ではその舞台裏の数々を紹介しています。

もはや地図は平面のものだけではなくなりました。場所の高さも視覚的な情報として表現した「立体的な地図」が実際に使われています。

特集の記事のひとつとして大きく紹介しているのは、NTTデータが提供している「AW3D」という全世界デジタル3次元地図。宇宙航空研究開発機構の人工衛星「だいち」が貯めた地球表面のデータなどを使って、きわめて写実的な3次元の世界地図を提供しています。

3次元に見ることのできる地図はこれまでもありました。しかし、地球の陸地のあらゆる場所を、5メートルの解像度という細かさで見られるのは「AW3D」が世界初といいます。

3次元の地図を眺めているだけでも楽しそうですが、NTTデータのねらいは「地図を見る」だけでなく「地図を使う」こと。水の流れ、風の流れ、火砕流、電波の動きなどは、実際に、起伏がある陸上を移動します。その動きかたを地図モデルで実験するうえでも、地図が3次元になっていることでより実際に近い結果を得ることができるわけです。

記事では、新たな活断層を発見できたミャンマーでの事例や、火山からの時間経過ごとの火砕流の広がりかたが詳細にわかったインドネシアでの事例、また、鉱脈を効率よく探すことができた南米の事例など、「使える地図」の例が豊富に紹介されています。

特集ではほかにも、さまざまな地図のベースとなる「地形図」のつくりかたや、地図づくりに活かされる「測量」のしかたなども紹介しています。

「最新! 地図づくりの舞台裏」は、『Rikejo』マガジン第43号で読むことができます。紙媒体とおなじ内容のデジタル版は「codigi」の会員登録をして、コード番号を入力することで見ることができます。デジタル版を読むための方法について、詳しくは「リケジョ」のウェブサイトの記事をご覧ください。
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漢文資料に“謎の送りがな”散見さる
学校で習うことにはかぎりがあります。仕事や生活のなかでは、学校で習わなかったものごとに出くわすことがいろいろあります。

たとえば、国語のなかには「漢文」という科目があります。漢文を読むときには、その漢字の読みを示すため、その漢字の右下にかたかなが付いています。送りがなといいます。

漢文の教科書では、送りがな、それに読む漢字の順番を示したレ点や一二点などがあるため、どうにか読むことができたという人も多いことでしょう。

しかし、実際の、漢字と送りがなで書かれた漢文の資料に当たっていると、高校までに習った知識では読めない文もあります。

たとえば、大坂の医方家だった寺島良安(生没年未詳)が1712(正徳2)年に編纂した『和漢三才図会』という絵入り百科事典の本文は漢文で書かれています。そして、その漢文の送りがなには、謎のものがしばしば見られます。


『和漢三才図会 中之巻』
資料所蔵:国立国会図書館

画像は、「中之巻」にある「石距(てながだこ)」「望潮魚(いいたこ)」の項目。このうち「望潮魚」を解説した本文には「足亦軟美」という漢文があります。

問題は、送りがなの「ニ」のつぎにある謎のことばです。「ソ」のようにも見えますが、「ソ」は別のかたかなの書体が使われています。「y」でしょうか。そんなことはありますまい。


資料所蔵:国立国会図書館

漢文の送りがなには、じつは1文字で2音を読む「合字」が使われている場合があります。上の「y」のような字は、これ1字で「シテ」と読みます。「足亦(また)軟ニシテ美ナリ」というわけです。

ほかにも、漢文の合字の送りがなには「キ」の左側に縦棒を引いて「トキ」と読んだり、「7」の角を直角にして「コト」と読んだりするものもあります。

実際の漢文資料を読もうとするときには、これら合字についての知識があるかないかは大きなちがい。しかし、学校の教育では、そこまで学ばせることは求めていないようです。

参考資料
寺島良安『和漢三才図会 中之巻』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/898161
Yahoo!知恵袋「漢文の特殊な送り仮名について」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11107694941
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日本の教育でも「STEM」重視へ

写真作者:Scott Robinson

人は、自分が学校で受けてきた教育の内容をもとに、いまやこれからの教育のありかたを考えようとしてしまうものです。みずからが小学生、中学生、高校生だったときに受けた教育こそが、みずからのもっとも慣れしたしんだ教育だという人がほとんどであるため、これは当然のことといえそうです。

しかし、時代ごとに教育のありかたは変わるものです。みずからが子どものころ受けなかったような教育や、聞いたことのなかった教育の考えかたが、社会には新しく出てきているものです。

近ごろ聞かれるようになった、教育のしかたについてのことばに「STEM教育」というものがあります。

国立国会図書館の雑誌記事検索によると、「STEM教育」ということばが雑誌の記事名ではじめて使われたのは2013年。日本科学教育学会が発行した『科学教育研究』という雑誌に「アメリカにおけるSTEM教師教育 : 主要研究誌における提言と、初等学校科学教師教育と児童到達度の関連に関する長期研究の結果」という論題の記事が載りました。この記事名から、米国で唱えられてきた教育のありかたが、日本にやってきたことをうかがわせます。

「STEM」あるいは「STEAM」は、つぎの4個あるいは5個のことばの頭文字をとったもの。

  S:Science、科学
  T:Technology、技術
  E:Engineering、工学
  M:Mathematics、数学

米国では、バラク・オバマ氏が2008年の大統領選挙のとき、公約で「STEM教育の支援」を掲げました。そして2011年には、大統領が施政方針を述べる一般教書演説で、技術革新の担い手を育てるためにSTEM教育を重視し、10年間で新たに10万人のSTEM教育分野の教員を雇用するといった策を掲げました。

これを機に米国でSTEM教育が大きな関心をもたれ、さらに日本にもこの考えかたがもたらされました。

米国では、STEM教育は、科学と数学をもとにした科学技術の分野で活躍する人材を育てるための戦略と考えられています。

日本の文部科学省もSTEM教育に注目しています。2015年9月におこなわれた「初等中等教育分科会」の配布資料では、STEM教育をつぎのように解説しています。

「STEM教育においては、問題解決型の学習やプロジェクト型の学習が重視されており、我が国における探究的な学習の重視と方向性を同じくするものである」

STEM教育では、「問題解決型」や「プロジェクト型」の学習を重視しているとのこと。科学、技術、工学、数学といった分野の教育は、教師から子どもたちに向けての詰めこみ教育でもなりたちうるものです。なにかの解決すべき問題を立てて、それを解決することを導くなかでこれらの分野の教育をしていくわけです。

ただ単に、学校で科学、技術、工学、数学を教えるというだけでは、これまでの学校教育でなされてきたこととさほどちがいはありません。日本では、新しい学習指導要領が小学校では2020年、中学校では2021年、高校では2022年から全面的に始まります。

行政がSTEM教育というひとつのことばを掲げて、それを重視しようとするからには、教師もSTEM教育とよぶにふさわしい教えかたを実行していくことが求められます。

なお、「STEM教育」から派生して、「芸術(Art)」が加わった「STEAM教育」も、ことばや考えとして「STEM」とおなじくらい重視されています。

参考資料
文部科学省「平成21年版科学技術白書」
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa200901/detail/1283274.htm
科学技術振興機構「米国:オバマ大統領一般教書演説2011」
https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2010/FU/US20110301.pdf
堀田のぞみ「科学技術政策と理科教育 初等中等段階からの科学技術人材育成に関する欧米の取組み」
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/document/2011/201003_08.pdf
文部科学省 2015年9月14日「初等中等教育分科会 資料1‐1 教育課程企画特別部会 論点整理」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/1364305.htm
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元素の種類からすると過半数……金属はありふれている



「金属」というと、どのような物質を思いうかべるでしょう。

辞典などの類の説明で共通するのは、まず「金属光沢をもつ」という点です。身近なところでは、100円玉や鉄製の鍵などはつやつやしていますが、そのようなつやをもつという見た目での共通点があります。

また、「熱や電気をよく通す」という点も共通していわれていることです。たとえば、金属でない物質の例としてガラスの熱伝導率は1ワット毎メートル毎ケルビンですが、金属では白金がその70倍、ニッケルが90.9倍、アルミニウムが236倍、金が320倍、銅が398倍、銀が420倍の熱伝導率をもっています。ただし、金属に含まれないダイヤモンドやカーボンナノチューブなどの炭素材料では、これらより熱伝導率の高い物質もあります。

電気伝導率についても、銀、銅、金、アルミニウムなどの金属では高く、とくに銅やアルミニウムなどのわりと安い材料は電線などによく使われています。

また「展性や延性に富む」ことも、どの辞典にも共通して書かれています。展性とは、その材料を打ったり圧して延ばしたりしても壊れずに、薄い板や箔になっていく性質のこと。展性がもっとも富んでいる物質は金とされます。

延性は、物体が強い張力を受けても破壊されず、引き延ばされる性質のことをいいます。金のほか、白金、銀、銅、アルミニウムなどの金属に顕著とされます。

どの辞典にも共通して書かれている金属の性質はこのようなものです。さらに、金属の特徴を示す説明としては、「半導体、セラミックス、高分子とは区別される」(知恵蔵2015)といった説明もあります。

金属の分類のしかたとして、「軽金属と軽金属」を説明している辞典も多くあります。「比重が四ないし五以下のものを軽金属、それより大きなものを重金属という」(スーパー大辞林)といった具合です。

また、日本金属学会は、つぎのような分科会を設けて、金属の研究分野を分けています。これはどちらかというと、それぞれの金属の用途を考えに入れた文科会といえるかもしれません。

「第1分科:エネルギー材料」「第2分科:エコマテリアル」「第3分科:電子・情報材料」「第4分科:生体・福祉材料」「第5分科:社会基盤材料」「第0分科:材料と社会」

元素の周期表で見ると、天然の元素も人工の元素も合わせた118種類のうち、金属元素に属する元素は64種類と半分以上。さらに、金属と金属、または金属と非金属を溶かしあわせてつくる合金も、広い意味で金属と捉えられることが多くあります。

種類の多さという点では、金属はありふれた物質といってもよいかもしれません。

参考資料
知恵蔵2015「金属」
デジタル大辞泉「金属」
ブリタニカ国際大百科事典「金属」
https://kotobank.jp/word/金属-54302
スーパー大辞林「金属」
ウィキペディア「熱伝導率」
https://ja.wikipedia.org/wiki/熱伝導率
日本金属学会「分科会のお知らせ」
http://jim.or.jp/SUBCOM/subcom-index.html
高校講座 化学基礎「元素の周期表」
https://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/kagakukiso/archive/resume010.html

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企業発信の媒体は「オウンド」とよばれる時代に


写真作者:existentist

2014年ごろから「オウンド・メディア」とよばれることばが聞かれるようになってきました。

ニュース記事でも、「オウンドメディア施策に『はてなブックマーク』って使えるの?」(Marke Zine)や、「朝日新聞社がオウンドメディア運用支援を手がけるサムライトを買収」(TechCrunch Japan)など、「オウンドメディア」ということばが見出しになったものがあります。

「メディア」というのは昔からよく使われてきたことばです。「媒体」、とくにインターネット、テレビ、ラジオなどの情報を伝えたえるための「媒体」などを指します。

いっぽう、「オウンド」ということばは耳慣れない、という人は多いのではないでしょうか。

「オウンド」は、英語で書くと“owned”。このことばの普通形である“own”は、「保有する」などの意味をもちます。「保有者」を意味する「オウナー」(owner)は、“own”に「人」の接尾辞“-er”がついたもの。日本語でもよく使われます。

「オウンド・メディア」を直訳すると「保有される媒体」となります。では、だれに「所有される」のかというと、明確な定義はありませんが、おもに「会社」「組織」あるいは「人」ということになりそうです。

企業はさまざまな媒体を保有し、活用することができます。ホームページに新しい製品の情報を発表したり、パンフレットに新サービスの情報を印刷して配布したり。さまざまな媒体を用いて、客に自分たちの情報を伝えることができます。

そうした、企業が客や客になりうる人びとに向けて情報を発信するための媒体のことをオウンド・メディアといいます。

情報を伝えるための媒体は多様化しました。とくに、インターネットという媒体には、ホームページやブログだけでなく、メールマガジン、ツイッター、フェイスブック、LINE、インスタグラムなどの媒体が使われています。

企業が発信する製品やサービスなどの情報を、こうしたインターネット媒体中の媒体にも拡散することができますし、拡散された情報はさらに客などの人びとによって拡散されうるわけです。

また、広告も情報を伝えるための媒体のひとつですが、広告には「お金がかかる」という特性があります。広告料を払って情報を出す広告と、広告料を払わずに情報を出すほかの媒体との連携についてもよく戦略を立てて実行することが大切とされています。

参考資料
マーケジン 2016年10月6日付「オウンドメディア施策に『はてなブックマーク』って使えるの? 記事拡散の効果を考える」
http://markezine.jp/article/detail/25321
TechCrunch 2016年4月14日付「朝日新聞社がオウンドメディア運用支援を手がけるサムライトを買収」
http://jp.techcrunch.com/2016/04/14/asahi-somewrite/
デジタル大辞泉「オウンドメディア」
https://kotobank.jp/word/オウンドメディア-680977
innova「今さら聞けないオウンドメディアの意味とは?」
https://innova-jp.com/owned-media-meaning/
| - | 14:51 | comments(0) | trackbacks(0)
タコが薬師如来像も縁起も担ぐ
タコは、英語圏では「デビル・フィッシュ」ともよばれ、人びとから忌みきらわれることが多いようです。

いっぽう日本では、縁起を担いでくれるとして、愛でたがられている海の生きものとされています。

タコにまつわる「蛸薬師さま」とよばれる寺もあります。「薬師」は東方浄瑠璃世界の教主である薬師如来のこと。

東京・下目黒の成就院は、蛸薬師さまのひとつ。本尊に3匹のタコが支えた蓮華座があります。成就院には、蛸薬師の由来として、つぎのような言い伝えがあります。


東京・下目黒の成就院

天台宗の僧で「慈覚大師」ともよばれた円仁(794-864)が留学先の唐からの帰り嵐に遭いました。そのとき、薬師如来の像を海に投げ入れると、無事に日本に帰ることができたそうです。

そして、その後、円仁が九州・肥後国の松浦のあたりを歩いていると、海からタコに乗った薬師如来の像が現れたといいます。

いっぽう、その昔、目黒では疫病が流行したころがありました。そのとき、この薬師如来の像を胎内仏、つまり仏像の胎内に納める仏とした薬師如来がつくられました。これが、成就院の由来とされます。

もともと薬師如来は、病を治す仏として広く信仰されてきました。成就院にお参りすると、いぼがとれるなど、さまざまな病が治るご利益があるとされています。

絵馬には、「両親がいつまでも健康でいられますように」「息子のいぼが治りますように 両親」といった願いごとも書かれています。



海の近くで住んできた日本人は、むかしからタコを食材のひとつとしてきました。そうした身近な存在だったことが、ほかの多くの国とちがってタコを愛でる文化とつながっているのかもしれません。

参考資料
平川敬治『タコと日本人』
https://www.amazon.co.jp/dp/4863290748
ウィキペディア「蛸薬師」
https://ja.wikipedia.org/wiki/蛸薬師
| - | 16:12 | comments(0) | trackbacks(0)
「店頭受けとり」と「メール受信」に似た利便性


通信販売の商品をコンビニエンスストアで受けとるしくみが増えています。アマゾンの商品はすでにローソン、ファミリーマート、ミニストップで受けとることができます。また「ユニクロ」のインターネット通信販売も2017年内に首都圏で即日配送サービスを始める予定とのこと。

商品を発注した人にとって、「家で受けとるのを待っている」というのはストレスにもなりうるもの。配達日時を指定しまうと、その時間帯ずっと家にいなければなりません。

その点、配達場所が近所のコンビニエンスストアであれば、自分の都合にあわせて店で受けとればよいので、家で待つストレスからは解放されます。

これとにたようなことは、電話での連絡でもいえそうです。

取引先から「こんど詳細を電話で説明させていただきますので、ご都合のよい日時を教えていただけますか。その時間にお電話させていただきます」と言われる人は多いでしょう。

しかし、そう言われた人のなかには、「自分の都合がついたときに、私から電話をかけたいのだけれど」と思う人も、かなりいるのではないでしょうか。自分から「月曜の夕方は空いています」などと答えると、その時間帯を“拘束”されてしまうからです。

おそらく「電話で説明させていただきます」と言ってきた取引先には、「相手のほうからこちらに電話をかけてもらうのは失礼にあたるし、電話代も負担させてしまう」といった、済まない気持ちがあるのでしょう。

しかし、予定がつぎつぎと入ったり変わったりするような人にとっては、「自分のほうで電話する準備が整ったときに電話できる」という広くて自由な選択肢をもっているほうが、よほど楽ということもありそうです。

通信販売の商品をコンビニエンスストアで受けとるという方法を、人どうしの連絡という行為に当てはめてみると「連絡の内容をメールで受ける」ということが近そうです。受け手は、自分の都合のよい日時にメールを受けて、必要により返事をすることができますから。

ただし、連絡を電話でするのとメールでするのでは、得たい効果がちがってくるため、連絡手段においては「電話でするか」「メールでするか」という、またべつの選択が生まれるわけです。

参考資料
zakzak 2017年1月6日付「『ユニクロ』ネット通販、コンビニ受け取り拡大 年内に首都圏即日配送へ」
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20170106/ecn1701061700010-n1.htm
財経新聞 2016年12月16日付「増える『店頭受け取り』需要、東急も導入へ」
http://www.zaikei.co.jp/article/20161216/342761.html
| - | 16:43 | comments(0) | trackbacks(0)
人工衛星の放射計で地球表面の山火事を観測
現実にある物体は、どんなものであっても電磁波を放っています。物体が電磁波を放つことを「放射」といいます。放たれる電磁波には、波長により赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線などがあります。

遠くの星からの光が見えることからもわかるとおり、物体から放射された電磁波は遠くまで届きます。そのため、放射された電磁波のエネルギーを測定することができれば、遠くからでも対象物がどんな状態にあるかを知ることができます。

この原理を使った装置を「放射計」といいます。物体からの放射のエネルギーや、それに照度なども測定します。

放射計を人工衛星に載せれば、地球の表面の、場所ごとのさまざまな状態を知ることもできます。

たとえば、米国航空宇宙局(NASA:National Aeronautics and Space Administration)や、米国海洋大気庁(NOAA:National Oceanic and Atmospheric Administration)が運用している一連の気象衛星に、放射計が載せられており、地球表面のさまざまな観測をしています。

たとえば、2011年に打ちあげられた「スオミ国家極軌道パートナーシップ」という気象衛星には、放射計を用いた「可視-赤外画像放射計システム」(VIIRS:Visible-infrared Imager Radiometer Suite)とよばれる装置が載っています。22チャンネルの放射計で赤外線と可視光線の領域での波長を得ます。


「可視-赤外画像放射計システム」
写真作者:NASA

このシステムから送られてきた画像では、地球表面で山火事が起きているようすがはっきり見えます。物体が放つエネルギーがわかれば、その物体の温度を求めることができます。


赤い部分が山火事の地域
写真作者:NASA/MODIS Rapid Response

山火事のほか焼畑農業などで生物体が燃焼することにより、植生の撹乱が起きます。その影響量評価するような研究に役立てられます。

このほかにも、流氷、海水、氷山の動きや、地形の変化などを観測することもできます。

参考資料
百科事典マイペディアの解説「放射」
https://kotobank.jp/word/放射-132037
ブリタニカ国際大百科事典「放射計」
https://kotobank.jp/word/放射計-132051
世界大百科事典「放射計」
https://kotobank.jp/word/放射計-132051
NASA “Visible Infrared Imaging Radiometer Suite(VIIRS)”
https://jointmission.gsfc.nasa.gov/viirs.html
ウィキペディア「スオミNPP」
https://ja.wikipedia.org/wiki/スオミNPP
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「都民ファースト」一部で実現しがたし
東京都知事の掲げる「都民ファースト」は、さまざまな場面で実現されることが期待されています。

都の交通局が運営する都営地下鉄についても、「都民ファーストでつくる『新しい東京』」という実行計画集で、2020年に向けた「都民ファースト」の計画内容が掲げられています。トイレの様式化改修や、駅の出入り口からホームまで段差なしで移動できる経路の確保などです。

都営地下鉄の路線のひとつ、都営新宿線では、2019年度までに全21駅でのバリアフリー化させることや、またホームドアを整備することが書かれています。


都営新宿線
写真作者:Kentaro Ohno

ただし、こと都営新宿線にかぎっては、あらゆることを「都民ファースト」で考える、というのはむずかしいかもしれません。実現しがたいひとつの事象があるからです。

都営新宿線は、新宿駅と本八幡駅と結ぶ路線。終点の本八幡駅のみ、東京都内でなく、千葉県市川市内にあります。

一般的に、電車の乗客の多くは、目のまえの座席が空いていれば、そこに座ろうとするもの。朝の通勤時間帯であればなおさらです。本八幡駅の利用客も多分にもれません。朝、新宿方面に向かう電車がやってくると、つぎつぎと空席を埋めていきます。そして、発車するときには満席に。

こうして、本八幡駅を利用する乗客を座らせた新宿線は、つぎの篠崎駅に到着します。

この駅からは東京都内です。

篠崎駅を利用する乗客は、朝、電車が来てもほぼ座れません。ほとんどが市川市民と思しき本八幡駅利用客に座られてしまっているからです。

こうして平日の毎朝、「ほとんどの都民は座れず、都民でない人たちのほとんどが座っている」都営地下鉄が走っています。

さすがに都知事も「都民ファーストなんだから市川市民は座席に座るな」とは言えますまい。そんなことばかり言ってたら、トランプみたいになっちゃいます。

参考資料
東京都 2016年12月公表「FIRST TOKYO 都民ファーストでつくる『新しい東京』」
http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/actionplan_for_2020/honbun/honbun_zentai.pdf
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にたものどうしだけれど別々に進化


1884年刊ハーパー・リー著 “Sea Monsters Unmasked(未知なる海の怪物達)”に掲載されたイカ

NHKスペシャル 「世界初撮影!深海の超巨大イカ」を見たことはあるでしょうか。巨大なイカの一種「ダイオウイカ」を追跡した番組です。約4年前の2013年1月13日(日)の放送でした。

この番組で放映された画像を掲げたサイトがあり、ダイオウイカを映した画像が掲げられています。

多くの人にとって、その画像を見て、飛びこんでくるのは「眼」ではないでしょうか。白眼のなかに黒眼があり、人間の眼ととてもよくにています。

ダイオウイカだけではありません。ほかの種類のイカの眼も、白眼と黒眼からなる人間の眼とよくにています。多くの動物では、眼は黒眼あるいは白眼の1色が基本。白眼と黒眼のあるイカの眼は、人の眼に似ているからこその親近感と、それが人の眼でないからこその不気味さの両方を人にあたえます。

見た目もそうですが、イカの眼と人の眼は構造的にもかなり似ています。動物の眼には、レンズのはたらきをもつ「単眼」と、1個ずつの眼が多く集まった「複眼」があります。人の眼は「単眼」ですが、イカの眼も単眼。ともに水晶体が入っていて、またカメラのような機能も備わっています。

しかし、進化の系統樹のなかでは、ヒトとイカは遠く離れたところにあります。また、ヒトの眼とイカの眼の、個体での発生のしかたも大きく異なります。

これらのことから、ヒトの眼とイカの眼は、たまたま似た構造をもつ器官となったと考えられています。

イカが高度に発達した眼をもっていることは、専門家や研究者たちにも驚きの目で見られています。

参考資料
NHK「NHKスペシャル『世界初撮影!深海の超巨大イカ』」
https://www.nhk.or.jp/nature/feature/deepsea/archives02/
全国いか加工業協同組合「イカ学Q&A50」
http://www.zen-ika.com/ikaQA50/
ウィキペディア「単眼と複眼」
https://ja.wikipedia.org/wiki/複眼と単眼
リチャード・ドーキンス『進化とは何か』
https://www.amazon.co.jp/dp/4150504822/

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“ポスト真実”がいわれる時代に、「科学技術のアネクドート」11周年

写真作者:Martin Snopek

「科学技術のアネクドート」は、きょう(2017年)1月10日(火)の回で、11週年を迎えました。

このブログの記事をふくめ、記事には「伝えたいこと」があります。あるいは、あるはずです。たとえ「伝えたいこと」が書き手にないようなときも「伝えたいこと」を設けて、文章を積みかさねていきます。そうすれば、すくなくとも読者にとって読みやすい記事にはなります。このブログでそれがどれだけ完遂されているかは、読者のみなさんの判断によりますが……。

「伝えたいこと」をどうやって伝えるか。このことが最近、世界的な問題になってきているようです。

『オックスフォード英語辞典』は、2016年を象徴することばとして、“post-truth”を選びました。日本語では「ポスト真実」ともよばれています。同辞典は、このことばの意味を「世論形成において、客観的事実が、感情や個人的信念に訴えるものより影響力をもたない状況」としています。

「データはこう示しています」という根拠を積みかさねたかたちでの主張よりも、「みなさん、こうではありませんか」と声をはりあげるかたちの主張のほうが、相手の心を動かしやすいのかもしれないと認識されだしているようです。

「ポスト真実」がことばとして話題になったのは、英国の欧州連合離脱や、米国大統領選挙で、客観的事実はさておき感情に訴えるような言論が出まわったからでしょう。たとえ、主張が張ったりでも相手に伝われば、相手の投票行動に影響を及ぼしうるし、現にそのような現象が起きただろうとする指摘があります。

とはいえ、むかしから、世の中には客観的事実が信念に訴えるものより影響をもたない状況はいくつもありました。

身近なところでは、親しい人が「これってこう言われているけれど、私はそう思わないんだよね」と言えば、聞き手は、そのことばに根拠がなくても「そういうものなのかもな」と思ってしまうものです。

むしろ、すべての言うことが客観的事実に裏うちされていなければならないとすれば、人と人との意思疎通は減ってしまうことでしょう。「客観的事実が、感情や個人的信念に訴えるものより影響力をもたない状況」はいつでも、そこいらいじゅうで起きてきたものです。

それでも「ポスト真実」が話題の的になっているのは、「これってこう言われているけれど、私はそう思わないんだよね」といった主張や言動が、世界の状況を変えてしまうほどの影響をもつのだと意識されるようになったからでしょう。あらためて“post-truth”の意味を見ると「世論形成において」とあることに気づかされます。

「ポスト真実」ということばが広まること自体、「客観的事実を伴わなくても声高に伝えたいことを叫べば伝わるものだ」といった考えを当然のものにさせてしまう可能性をもっています。「そういうことばが存在する」ということが、そのことばの指す風潮をつくりうるからです。

では、書き手は「いまはポスト真実の時代だ」ということにかまけて、客観的事実を伝えるための材料として軽視してもよいのでしょうか。

根拠を示さずに記事をつくり、それが受け手に読まれる世界は、双方にとって楽なものかもしれません。しかし、ことばを使って伝えたいことを伝えてきた人間という動物にとって、健全な世界とはいえますまい。「理由はとにかく、俺の言うとおりに従えばいいんだよ!」と言われても、「受けいれがたい」と感じるのは、人間がもつ本能のひとつではないでしょうか。

客観的事実をはじめとする根拠をもって「伝えたいこと」を記事で伝えること。これがブログで「伝えたいこと」を書く、書き手としてのささやかな抵抗です。

いつも記事をお読みいただきありがとうございます。12年目の「科学技術のアネクドート」もよろしくお願いします。

参考資料
English Oxford Living Dictionaries “Word of the Year 2016 is...”
https://en.oxforddictionaries.com/word-of-the-year/word-of-the-year-2016
朝日新聞 2016年11月17日付「今年の単語に『ポスト・トゥルース』 英辞典が選定」
http://www.asahi.com/articles/ASJCJ6F2CJCJUHBI03S.html
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関ヶ原町が「東西文化の境界線が関ヶ原にあるか」を判断

関ヶ原の古戦場
写真作者:Takeshi KOUNO

日本列島はどちらかというと南北よりも東西に長いためでしょう、よく「東西での文化のちがい」といったことが話されます。

一般的に、文化の地域性は、風土などの自然的条件によるものや、歴史や文化などの人文的条件によるものが相まって決まるとされています。

「東西文化」というからには、日本のどこかには「ここからは東の文化、ここからは西の文化」と分けられる境界線があるはず。そして、この議論でよくいわれるのは、「天下分け目」ともよばれる岐阜県・関ヶ原が境界線上にある、という話です。

これに目をつけたのか、関ヶ原町では、2016年3月に「東西文化の調査報告書」という報告書を出し、ヒアリング、アンケート、文献調査などから「関ヶ原付近に境界線があるかどうか」を、◯、△、✕で示しています。

いまも根強く東西での地域性が残っているのが食文化でしょう。報告書では、つぎの項目について「関ヶ原付近が境界線と考えられる ◯」としています。

「昆布出汁は西、鰹出汁は東」
「青ネギは西日本で、白ネギは東日本で好まれる」
「カレーには牛肉が西で、豚肉が東」
「丸餅は西日本で、角餅が東日本で広まる」
「いなり寿司については、三角型が西で、俵型が東」
「ところてんがデザートになるのは関西、おかずになるのは関東」

地元の特徴を示したいという意図もあるでしょうが、関ヶ原町では、これらの項目を「◯」つまり「関ヶ原付近が境界線と考えられる」としています。

なかには「✕」の項目もあります。つぎのようなものです。

「俵型が関西、三角型が関東」。これは関ヶ原町でのアンケートでは、圧倒的に「三角型」と答えた割合が高かったようです。

「『ぜんざい』と関西では言い、『お汁粉』と関東では言う」。これは、出雲の「神在餅」から訛って京では「ぜんざい」になったという説を挙げており、関ヶ原町とは関係ないということのようです。

「鰻のさばき方は『腹開き』になるのは関西、『背開き』になるのが関東」。うなぎ職人の技術が江戸のほうでは低かったという、関ヶ原とはべつの理由があがっています。

ほかにも、言語や文化についても、東西文化のちがいの理由や、その境界線が関ヶ原付近にあるのかどうかの検証が加えられています。

関ヶ原町は、「東西文化の境界地域としての特徴にスポットを当て、文化観光の魅力を再発見」することなどを調査の目的としています。

これだけ具体的に「天下分け目」が示されると、本当に“見えない境界”が関ヶ原にあるのかを現地で確かめたくなる人もいるかもしれません。

参考資料
関ヶ原町 2016年3月発表「東西文化の調査報告(抜粋)」
http://www.town.sekigahara.gifu.jp/secure/5419/touzaibunnka.pdf
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目的を達成するため手段を諦める


サッカーJリーグ一部の横浜F・マリノスに所属していた中村俊輔選手が、ジュビロ磐田に移籍することが、(2017年)1月8日(日)に決まりました。両クラブから発表がありました。

中村選手は8日(日)、報道陣から取材を受けました。その一問一答が、日刊スポーツなどのスポーツ新聞に載っています。

日本国内では1997年から2002年、また2010年から2016年まで、一貫して横浜に所属してきました。取材では「マリノスのユニホーム、ましてや(背番号)『10』だし、引退以外、脱ぎたくないでしょ」と答えており、横浜を去ることには相当な葛藤があったようです。

しかし、その気もちを上まわったのが、横浜から出るべきだという思いだったようです。

「サッカーへの情熱だったり、純粋にボールを追いかけたりしたい。信頼とか、そういうものを感じながらサッカーをしたい」

人の「これからはこうしたい」という発言は、裏を返せば「これまではそれができなかった」と言っているようなものです。このことばの裏側には、横浜にいたままでは、純粋にボールを追いかけることがむずかしく、また信頼を感じながらサッカーをすることがむずかしくなっていたと受けとめられます。

2014年7月、横浜の親会社の日産自動車は、英国のシティフットボールクラブとパートナーシップを提携しました。それ以降、選手やチームの置かれる環境が大きく変わったともいわれています。

中村選手が移籍を決めたもうひとつの要因として、年齢のこともあったようです。いま38歳。「もう現役は長くないと思う」と話します。それとともに取材ではこうも言っています。

「(これまでにも)いろんな挫折や壁があった。そういうのって、もがいて乗り越えようとする。今回も、いろんな格闘もあってもがいたけど。そんなに長いこと、サッカーできないので。そうしたときに、もっとこう、真摯にサッカーと向き合ったときに、この壁の種類は、もう超えようとしなくていいんじゃないかと」

壁を超えずに、「ちがう道」に進むことが、サッカーの情熱をぶつけられる「いいゴール」につながると判断したようです。

この決断は、元プロ陸上選手の為末大さんが、著書『諦める力』で主張している、「目的を達成するための手段は諦めてよい」という話と通じるものがあります。

これまで所属していた横浜は、中村選手の意志を受け入れたことについて、「多大なるご心配と不安をおかけすることとなりますが、中村選手のこれまでの弊クラブへの多大なる貢献に深く敬意を表すると共に、これからのサッカー人生が実り多きものとなることを願ってやみません」と述べています。

いっぽう中村選手に門を受けいれる磐田は「完全移籍加入することが決定しましたので、お知らせ致します」などと短く伝え、「自身の新たな挑戦として、ジュビロ磐田でプレーさせて頂くことを決断致しました」といった中村選手の声を発表しています。

参考資料
日刊スポーツ 2017年1月8日付「中村俊輔『もう現役長くない。だからこそ』一問一答」
http://www.nikkansports.com/soccer/news/1762692.html
横浜F・マリノス 2017年1月8日発表「中村俊輔選手の移籍に関して」
http://sp.f-marinos.com/news/detail/2017-01-08/150000/121642
ジュビロ磐田 2017年1月8日発表「中村俊輔選手が完全移籍加入」
http://www.jubilo-iwata.co.jp/newslist/detail/?nw_seq=5240
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
火星からの「地球と月」、距離は錯覚、大きさはほぼ実際
地球からは、火星、金星、木星、土星などの太陽系の惑星を見ることができます。とくに金星は、「明けの明星」や「宵の明星」といわれ、ひときわ大きく輝いています。

地球からこうした惑星の姿が見えるとすれば、こうした惑星から地球の姿が見えるはず。けれども、地球にいる人たちが惑星から見た地球の姿を見ることは、富士山に登っている人たちが富士山の景色を見ることができないのとにて、むずかしいことです。

しかし、いまは地球から打ちあげられた惑星探査機が、惑星に着陸している時代。そして、惑星からのめずらしい地球の姿を送ってきてくれる時代です。

米国航空宇宙局(NASA:National Aeronautics and Space Administration)は(2017年)1月6日(金)、火星のあたりから見える地球と月の画像を公開しました。


画像作者:米国航空宇宙局
月の明暗を明るいほうに調整して地球の明暗に合わせている

同局が2005年8月に打ちあげた火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が、火星の周回軌道から2017年11月20日に撮影した地球と月の画像を送ってきました。同機に搭載された「HiRISE」(High Resolution Imaging Science Experiment)という高解像度カメラが得た画像です。

どうでしょうか。画像を見たかなりの人は「あれ、地球と月ってこんなに近かったっけ」あるいは「月って意外に大きいんだな」と感じるかもしれません。

距離の違和感については、月が地球より手前にある位置どりの画像であるためそう見えるというのがその理由のようです。実際、地球と月の距離は、38万4400キロメートル離れており、この距離は地球の直径1万2742キロメートルのおよそ30個分にあたります。

では、大きさについてはどうでしょう。月の直径は3474キロメートル。地球の直径のおよそ4分の1です。月のほうが地球より手前にありますから、すこしは実際より月が大きめに見えているでしょう。

しかし、そもそも月と地球の距離が38万4400キロメートルであるのに対して、地球と火星の距離は惑星の位置どりによりちがいますが、およそ3億キロメートルで750倍もあるため、手間に月があることで遠近感が損なわれる影響はあまりなさそうです。実際、画像では、地球と月の直径はおよそ4対1ぐらいになっています。

さながら、地球の周回軌道をまわる国際宇宙ステーションから、火星とフォボスやダイモスなどの衛星を撮影したようなものといえそうです。

参考資料
米国航空宇宙局 2017年1月6日発表 “Earth and Its Moon, as Seen From Mars”
http://mars.jpl.nasa.gov/multimedia/images/2017/earth-and-its-moon-as-seen-from-mars
朝日新聞 2017年1月7日付「地球と月、火星からだとこう見える NASA探査機撮影」
http://www.asahi.com/articles/ASK172H3TK17UHBI004.html
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
新聞連載『サザエさん』昭和を強く感じさせ


朝日新聞出版が2016年末、『週刊朝日臨時増刊号 サザエさん2017』を発行しました。ところによっては、コンビニエンスストアや書店でまだ売られています。

1946年から1974年まで、夕刊フクニチ、新夕刊、朝日新聞で連載された長谷川町子(1920-1992)作の4コマ漫画「サザエさん」からの300作品。長谷川が「群を抜いておもしろいもの」を選んで集めた『よりぬきサザエさん』全13巻のなかからさらに選ばれた作品です。

4コマ漫画をいくつか紹介してみると……。
_____

1
サザエ「たまにはそとでお食事しない?」
マスオ「いいねえ」
2
カツオ・ワカメ「ボクたちも!!」
サザエ「もちろん」
3
カツオ、ワカメ、タラオが、うれしそうに“よそ行き”の洋服に着がえる。
4
サザエ「ここよ」
サザエとマスオが家の庭にテーブルを置いて料理を用意。
カツオ、ワカメ、タラオ、フネがぽか〜ん。

サザエとマスオの経済観念はぴったりなようです。「勘ちがい」は『サザエさん』によく使われる基本的な道具といえそうです。
_____

1
波平が、街のクリーニング屋に道を尋ねている。それを見ているカツオ、ワカメ、タラオ。
2
波平、さらに店のおばあさんに道を尋ねる。おばあさん、あっちと指をさす。
3
波平「おどろいたなァ」
4
波平「たしかきょねんはここでシオヒガリをしたんだ!」
波平たちが立っているのは団地の敷地のなか。熊手を持つカツオたち、手持ち無沙汰。

砂浜が、1年経ったら団地の敷地に。つぎつぎと団地が造成されていった昭和時代の状況を描いています。
_____

1
運動会の朝、ブルマ姿のワカメが空を心配そうに見ている。
2
ワカメ「ふらないかなァ……」
すでに弁当の用意も。
マスオ「だいじょうぶだよ! ふらないふらない!!」
背広姿で出勤するところ。
3
マスオ「いってきま〜す」
ワカメ、笑顔で手を振ってマスオの出勤を見届ける。
4
マスオ「きのどくで」
ズボンから隠していた傘を出す。

妹想いのマスオ。人の好さが感じられます。しかし「きのどくで」という言葉には、マスオの得も言われぬ冷ややかさも感じられます。
_____

1
作品名は「酷電(こくでん)」
ぎゅうぎゅう詰めの国電(国鉄の近距離電車線)に立って乗っているカツオとサザエ。
2
カツオ、満員の乗客の右往左往に降参のようす。
3
カツオ「ファーやっとすわれた!!」
いすに腰かけて安堵のようす。
4
サザエ「なにしてんの もうホームよ」
駅の椅子に腰かけていたことを知り、赤面するカツオ。

カツオとサザエが乗っていたのは山手線あたりでしょうか。しかも、4コマ目の駅の時計の針は午後2時25分を指しています。朝夕の通勤ラッシュ時間でなくても“酷電"だったことがうかがえます。
_____

戦後まもなくから、高度経済成長期を経て、戦後初のマイナス成長期に至るまでの24年間。サザエの小洒落たファッション、それに家や街の景色などは昭和時代を強く感じさせます。新聞の連載は通算6477回を数えました。

参考資料
ウィキペディア「1974年」
https://ja.wikipedia.org/wiki/1974年
| - | 18:33 | comments(0) | trackbacks(0)
パワー装置づくりの基本は「皿のうえに結晶を生やす」
半導体とよばれる物質は、世の中のいろいろなところで使われています。電気を通す金属と電気を通さない絶縁体の中間のような性質があるため、半導体は電流を切りかえる開閉器としての役割を果たします。

半導体を開閉器として活かした製品に「パワー装置」とよばれるものがあります。「パワー」には「電力」の意味があるので、パワー装置は「電力を扱う機械」といえます。たとえば、直流の電力を交流の電力に換える「インバータ」や、交流を直流に換える「コンバータ」などはパワー装置です。


微細なインバータ
写真作者:stantontcady

どのように、インバータなどのパワー装置はつくられるのでしょう。

大まかにいうと、まず、ケイ素(シリコン)などの結晶でできた基板とよばれる平面皿の上に、薄膜状の結晶を生やしてから、電気回路として不要な部分を削りとります。それを、均等に切ってチップあるいは半導体チップとよばれるものにします。これが開閉器として使われるわけですが、使っているときに不要な熱が生じてしまうため放熱板などのべつの部品と組みあわせたり、あるいは半導体を並列に置いたりするため、それらの部品を組みたてます。こうしてできあがるのがパワー装置です。

もうすこし、詳しく、パワー装置のつくりかたを追っていきます。

まず、基板となる平面皿をつくるうえでは、どんな材料を使ってもよいわけではありません。電気抵抗を制御しやすかったり、表面に薄膜が生えやすかったりする材料が選ばれます。ケイ素はその代表例です。

基盤となるケイ素などの材料を熱で溶かして、その結晶を成長させるなどして、円柱状のインゴットとよばれる塊にします。インゴットにする方法には、ほかに粉末状の材料を昇華させる昇華法などもあります。

そして、肉の塊を薄く切って1枚ずつのハムにするように、インゴットを薄く切って1枚ずつの平面皿の状態にします。この1枚1枚が基板となります。加えて、この工程では、1枚ずつの皿の表面をよく磨きます。表面を磨くのは、皿のうえに、役割の異なるべつの結晶を生やすためです。

では、役割の異なるべつの結晶をどのように生やすか。その代表的な方法が「エピタキシャル成長法」とよばれるもの。これは、基板に該当する単結晶のうえに、金属などのべつの材料を加熱蒸発させることで単結晶の薄膜が生じる「エピタキシー」という現象の原理を利用した結晶薄膜成長法です。

こうして、エピタキシャル成長法などによって皿のうえに結晶を生やすわけですが、この段階のものは、まだ半導体チップとはいえません。これを縦横均等に切ることで正方形または長方形のチップとなります。皿に結晶を生やしてから切ってチップにするのは、皿をチップにしてから結晶を生やすよりも製造効率が高いからです。

そして、前述のとおり、チップを、ほかのチップあるいは部品と組みあわせて、インバータなどのパワー装置に仕上げるわけです。

近年では、基盤の材料にケイ素を使うかわりに、炭素原子とケイ素原子が結びついた炭化ケイ素を半導体の材料に使った効率の高いパワー装置が空調設備や電車などに使われはじめるなどしています。

参考資料
ナノテクミュージアム「半導体とは? 電流を増幅するトランジスタ」
http://www.tel.co.jp/museum/exhibition/principle/chp01_3.html
日立ソリューションズ IT用語辞典「エピタキシャル成長」
http://it-words.jp/w/E382A8E38394E382BFE382ADE382B7E383A3E383ABE68890E995B7.html
SUMCO「シリコンに関するQ&A」
http://www.sumcosi.com/products/faq.html
| - | 23:10 | comments(0) | trackbacks(0)
2017年、カレーにまみれつつ、立体視も書評も


きょうのこの記事は、このブログを新たにお読みいただく方に、このブログでどんな記事を掲載しているかを整理して紹介するものです。

ちなみにブログの名前にある「アネクドート」は、ロシア語で「逸話」や「一口話」などの意味をもつことば。ただし、本場のアネクドートほど風刺が効いているわけではありません。

「カレーまみれのアネクドート」。科学技術のことはお構いなしに、全国各地のカレーの味を伝えています。2016年は15回を重ねて、90回となりました。2016年の年初、「1か月に2回ほどの頻度で『カレーまみれ』を重ねれば2016年内の『100回達成』も不可能ではありません」などと意気込んでいましたが、達成はなりませんでした。

「立体視への挑戦」。人は、自分がその場で目にした立体の光景を、いかに平面で再現しようとしてきたのか。これを主題に、古代から現代へという流れで、その歴史を一歩ずつ紐といています。古代ギリシャのエウクレイデス(紀元前450-紀元前380)の時代まで来ています。

「法則古今東西」。自然科学、社会科学、そのほかの分野をふくめ、「法則」とよばれているものをひとつずつとりあげていきます。こちらは頻度は低めながら、本などで紹介されている、膝を打つような法則を伝えいます。

「sci-tech世界地図」。世界各地の“科学技術ゆかりの地”をバーチャルに訪れ、その場所で起きたできごとを紹介しています。こちらも頻度は低め。

「書評」。科学技術にかかわる分野は広いため本も多岐にわたります。

これらの不定期的な連載のほか、単発記事も書いていきます。2017年もよろしくお願いします。
| - | 21:38 | comments(0) | trackbacks(0)
しぶんぎ座のほうから流れ星

2012年1月の「しぶんぎ座流星」
写真作者:Donovan Shortey

宇宙の個体が地球の大気に突入してくると高温となり、夜には光を放つのが見えます。これは流星あるいは流れ星とよばれる現象です。

きょう(2017年)1月3日(火)、流星群のひとつである「しぶんぎ座流星群」が「極大」になると予想されています。

「極大」とは、流星の活動がもっとも活発になることをいいます。ただし、観察場所が曇っていないかどうかや、月の光がないかといった環境的な条件は考えないでのことです。ちなみに、3日の月齢は4.8なので、三日月をすこし過ぎたころ。さほど、月光の影響はなさそうです。

「しぶんぎ座」は、星座のひとつ。1795年、フランスの天文学者ジェローム・ラランド(1732-1807)が星座としました。ラランドが「四分儀」とよばれる扇のかたちをした天体観測器を使って天体観測をしたことから「しぶんぎ座」のよび名がつきました。ただし、1922年に、国際天文学連合により星座からは外されています。

しぶんぎ座流星群は、しぶんぎ座の星から届くわけではありません。しかし、流星群があたかもしぶんぎ座のある方向から放射してくるように見えるため、こうよばれています。実際の方位は、北東よりすこしだけ東、また高度は北斗七星と地面の真んなかよりすこしだけ高い位置あたりになります。

国立天文台の説明によると、しぶんぎ座流星群は「活動が活発な期間が数時間と短い上に、流星の出現数が年によって変化することで知られています」とのこと。暗い場所では、1時間あたり最大35個程度、見られるという予想もしています。

流星は基本的に毎年おなじ時期に見られるもの。しぶんぎ座流星群は、おおまかに1月初旬が観察に適した時期とされています。7月から8月にかけての「ペルセウス座流星群」や、12月の「ふたござ流星群」と並ぶ「三大流星座群」とも。

正月三が日でまだ都会の夜は暗め。日付を過ぎてからも午前3時ごろまでは、極大の位置が高くなっていくこともあり、観察に適しているようです。観察する際は暖かくしてお出かけください。

参考資料
国立天文台「しぶんぎ座流星群(2017年1月)」
http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2017/01-topics02.html
ウィキペディア「しぶんぎ座」
https://ja.wikipedia.org/wiki/しぶんぎ座
月の朔望のページ
http://koyomi8.com/moonage.htm
| - | 23:26 | comments(0) | trackbacks(0)
2017年は「開発のための持続可能な観光の国際年」



国際連合は、1957年の「国際地球観測年」を最初に、毎年、総会で「国際年」を決めて、一年を通して各国がその主題にとりくむための活動をしています。2年前の2015年は「光および光技術の国際年」と「国際土壌年」。昨年の2016年は「国際マメ年」でした。

2017年は、「開発のための持続可能な観光の国際年」だといいます。2015年12月22日の総会で採択されました。

「国際土壌年」や「国際マメ年」にくらべると、すこしむずかしそうな国際年です。

まず、「持続可能」というのは、一般的に、将来の資源や利益を損なわない範囲でものごとを進めようとする考えのことをさします。総会で採択された決議では、十分に計画または管理された観光は、「経済」「社会」「環境」という三つの側面に著しい貢献をすることができるとしています。

そして、総会では、開発のための持続可能な観光の国際年を定めることを、「いたるところの人びとのなかのよりよい理解を促進すること」「多様な文明の豊かな遺産に対する認識の高まりを導くこと」「異なる文化の固有の価値についてより優れた評価をもたらすこと」といった点で、重要であるとしています。

これらの内容からすると、それぞれの国や地域が観光についてきちんと計画や管理をすることで、人びとにそこで観光することのよさなどを意識づけることができ、それにより経済や社会や環境をよりよくすることができる、といったことになるでしょうか。

日本が資源としているもののひとつが観光です。2020年には東京五輪が開かれることもあり、観光に対する意識は高まりつつあります。

人びとを迎えておもてなしをする側面と、自分たちが訪れて楽しむ側面と、両方で人びとが観光に貢献できることはありそうです。

参考資料
国際連合2016年2月9日配布「2015年12月22日に総会により採択された決議」
http://www.unic.or.jp/files/a_res_70_193.pdf

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