写真作者:NASA
科学や技術の分野で、若い世代の人たちを育てようとするとき、なにかの主題で応募をかけて、作品のできばえなどを競わせる「コンテスト」の手法をとることがあります。
たとえば、「衛星設計コンテスト」という催しものがあります。日本機械学会、日本航空宇宙学会、電子情報通信学会、 地球電磁気・地球惑星圏学会、日本天文学会、宇宙航空研究開発機構、宇宙科学振興会、日本宇宙フォーラムという8つの機関が、実行委員会、審査委員会、企画委員会を組織して共催しています。実行委員会はこのコンテストを「高校生から大学院生までの学生を対象にした、コンテスト形式の教育プログラムです」と位置づけています。
2016年度は第24回。50作品の応募があり、一次審査を通過した16作品の設計者たちは11月12日(土)、東京・芝公園の機会振興会館ホールで「最終審査会」に臨んだそうです。
さまざまな賞が用意されているなかで、もっとも栄えある「設計大賞」を受賞したのは、東京工業大学の学生たちが手がけた「重力波天体探査衛星『ひばり』」。2015年に重力波が検出されたことを受け、強い重力波を発するような重力波天体の位置決めを、電磁波による観測でおこない、さらに光学観測をするという計画です。
ほかにも大学生の応募作品では、たとえば神戸大学の学生が設計した「宇宙線雲観測衛星」が、電子情報通信学会賞と審査委員長特別賞をダブル受賞しています。この衛星は、関係性があるといわれていながら未解明な点もある宇宙線と雲量の関係性に迫ろうとするもの。小型人工衛星で宇宙観測を行い、雲などを観測する人工衛星とデータを照合させるという計画です。
高校生たちも受賞をしています。山口県立山口高校の高校生たちは、「宇宙における野菜と昆虫の生産」という、食料生産システムの提案で、「日本宇宙フォーラム賞」を受賞しています。宇宙で、植物の生産や調理によって出てくる野菜くずを昆虫にあたえて育てて、これを食材にするという計画です。
計画が書かれてある衛星設計解析書やアイデア概要説明書の内容はどれも本格的。過去には、1993年の第1回で「電子情報通信学会賞」を受賞した千葉工業大学のクジラを生態を観測するための人工衛星が、実際2002年に打ちあげられたという実績もあるそうです。
人工衛星には、小型でも実用されているものも多くあります。人工衛星を設計して、それをコンテストに応募するという経験は、のちのちの学びなどにも活かされることでしょう。
「衛星設計コンテスト」のサイトはこちらです。
http://www.satcon.jp
また、2016年度の最終審査会の詳細な結果はこちらです。
http://www.satcon.jp/history/list24.html