観た人からは、少年と少女の主人公の設定のしかたや、物語の展開のしかたなどに称賛の声があがっているようです。それとともに、東京・新宿区の大都会や、岐阜県飛騨地方の架空の町である「糸守町」の湖や山や森を描いた“映像美”を評価する声も多くあります。
「この作品の人気の秘密を考えるのに、やはり映像の美しさを外すことはできない。新海作品の最大の特色は、背景描写の圧倒的な美しさだ」(早稲田大学講師の柿谷浩一さん)
「新海誠監督はデビュー作『ほしのこえ』をほとんど一人で作り上げ、ネットの一部のクラスタの間で話題になった人物。デジタル作画技術の発達などで、多くの作業を一人でこなせるようになった。そんな時代を象徴するかのような人物だ」(堀江貴文さん)
「最新のデジタル技術を駆使して生み出す精緻な風景描写はどこか懐かしく、繊細なセリフは心にしみ入る。『デジタル時代の映像文学』とも称されるゆえんだ」(日本経済新聞夕刊2016年8月31日付)
では、『君の名は。』で使われているデジタル技術とは、具体的にはどのようなものでしょうか。
ワークスコーポレーションの雑誌『CG WORLD』2016年10月号は、「新海誠流・画づくりの舞台裏」という副題の特集で、『君の名は。』での作画法などを詳しく伝えています。
『CG WORLD』2016年10月号の表紙
絵コンテづくりで使われているアプリケーションは、ダイキン・コムテックの「ストーリーボード・プロ」というデジタル絵コンテ作成ソフトウェア。動きのある描写をレイヤー毎に個別に重ねたり、キャンバスを時間経過とともに回転させながら描画したりすることができます。
また、少女の主人公が通う学校の教室や、田舎の神社の境内などでは、俯瞰的な角度からの描写が印象的です。その裏側には、さまざまな角度から対象の空間を3次元的に表現することのできる、3DCG(3 Dimention Computer Graphics)や3Dレイアウトと総称される技術が駆使されているようです。教室や境内などの具体的な空間をモデルのために手描きするだけでなく、コンピュータグラフィックスで3次元的に描画するなどして、写実性を高めます。
具体的には、3DCGの担当者は、オートデスクの「3ds max」というソフトウェアを使っていたようです。また完成を予想して透視図を描くレンダリングという作業では、おなじくオートデスクの「Backburner」というソフトウェアをを使ったとのこと。
こうしたさまざまなデジタル技術を駆使することで、「実写を超えた」とも評される風景や背景を実現させているようです。
参考資料
オリコン・スタイル 2016年10月28日付「『君の名は。』興収200億円突破が確実視 『千と千尋』に次ぐ邦画歴代2位が射程圏内に」
http://www.oricon.co.jp/special/49471/
読売オンライン 2016年9月23日付「映画『君の名は。』映像美がもたらす『没入感』とは?」
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160921-OYT8T50150.html
HORIE MON.com 2016年9月28日付「ホリエモンが分析する、映画『君の名は。』大ヒットの要因とは!?」
http://weblog.horiemon.com/100blog/41241/
日経カレッジカフェ 2016年9月23日付「アニメ『君の名は。』監督・新海誠 繊細な映像文学」
http://college.nikkei.co.jp/article/80935016.html
「新海誠監督が贈る最高傑作 映画『君の名は。』」『CG WORLD』2016年10月号
http://cgworld.jp/magazine/cgw218.html
ダイキン・コムテック「デジタル絵コンテ作成ツール Storyboard Pro」
http://www.comtec.daikin.co.jp/DC/prd/toonboom/storyboardpro.html
オートデスク「3DS MAX」
http://www.autodesk.co.jp/products/3ds-max/overview