科学技術のアネクドート

江戸時代に”現代的アイドル”の元祖

熱狂的なファンをもつ人のことを「アイドル」といいます。昭和時代には、アイドルというとファンにとっては「手が届きそうで届かない存在」でした。しかし、平成になって時代が進むにつれ、アイドルは、小さな劇場でコンサートを開いたり、握手会をひんぱんにやったりして、「手が届く存在」になっていきました。

そんな、現代におけるアイドルの「元祖」が江戸時代にいたという話があります。知っている人は知っているでしょうが。

その娘のよび名は「笠森お仙」。1751(宝暦元)年に生まれ、1827(文政10)年に亡くなったとされています。江戸の谷中にあった笠森寺の境内で営む茶屋「鍵屋」の娘でした。笠森寺は、いまの天王寺のあるあたりにありました。

はじめてお仙が店に姿を見せたのは、1763(宝暦13)年ごろ。齢にして12歳。その後ほどなくしてお仙は看板娘となりました。お仙の見たさに笠森寺に参詣する人が激増したそうです。「鍵屋に行けば、お仙に会える」ということで、江戸の男子たちにとって「手が届く存在」だったのでしょう。


鈴木春信画「お仙茶屋」

評判を聞いた絵師たちが、こんどはお仙をモデルにした浮世絵を描きはじめました。とくに鈴木春信(1725?-1770)は、お仙の絵を30種ほど描いたとされます。こうした浮世絵も、とてもよく売れたといいます。これは現代にしてみれば、さながら「ブロマイド」がよく売れたようなものでしょう。

しかし、そんなお仙は19歳のとき、笠森稲荷の地主だった幕臣の倉地甚左衛門と結婚をしてしまい、それ以降は、店に姿をあらわすことはありませんでした。店にいるのは、年老いた経営者の父親のみ。事情を知らずに来た客は「すげえ美人の茶屋娘がなんとまあ薬罐頭の親父に代わってしまったよ」と嘆いたとか。「人気絶頂のアイドルは突如として引退」したのです。

笠森お仙が江戸時代に人気を博したという話は、「アイドルに対する人びとの接しかたや燃えあがりぶりは、いまもむかしも本質的におなじ」という文脈でよく語られます。

参考資料
西村俊範「笠森お仙と隠元薬罐」
ci.nii.ac.jp/naid/110009843119
デジタル大辞泉「笠森お仙」
https://kotobank.jp/word/笠森お仙-461785
ウィキペディア「笠森お仙」
https://ja.wikipedia.org/wiki/笠森お仙

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「ごみ戦争」象徴の地に、“二代目”の建設が進む
半世紀前の1966(昭和41)年、東京都杉並区の高井戸東が清掃工場の建設場所に決まりました。当時、東京23区の清掃事業を管理していた都が、複数の区に清掃工場を建設すると計画したうちのひとつです。清掃工場建設の背景には、昭和30年ごろからの高度経済成長により、ごみの量が増えつづけていたことがあります。

しかし、高井戸東に清掃工場を建設する計画に対して、杉並区の住民のなかには激しく反対する人もいました。建設予定地には、見張り台が建てられ、都の職員が建設予定地に近づけないような状況になりました。杉並区の住民は、収用手つづきのとり消しを勝ちとろうと訴訟を起こしました。

清掃工場の建設は進みません。いっぽう、大量のごみは遠くはなれた東京湾の埋立処分場まで運ばれていました。その場所は、江東区の新夢の島、いまの若洲海浜公園です。

1971(昭和46)年には、東京特別区で生じるごみの7割を、新夢の島のある江東区が受けいれていたといいます。新夢の島にごみを運ぶ清掃車は、1日5000台を超えたとも。清掃車は江東区内で交通渋滞を招き、また生活道路を汚していきました。江東区の住民は、悪臭が漂い、ハエが飛ぶなかでの生活を余儀なくされていきました。

江東区の住民からすれば、杉並区の住民たちの反対運動は、「自分たち江東区民の惨状も鑑みず、彼らはエゴで清掃工場を反対している」とうつったことでしょう。

ついに、江東区議会は1971年9月、ゴミ持込反対決議にふみきりました。杉並区からのごみが運びこまれるのを阻止しはじめました。「杉並のゴミは持ち帰れ!」という看板が立つなかで、江東区議会の関係者は、杉並区からのごみが積まれている車両を止めて、ごみの受けいれを拒絶したのです。

ごみ反対決議という事態などを受け、当時の東京都知事だった美濃部亮吉(1904-1984)は、「迫り来るごみの危機は、都民の生活をおびやかすものである」と、「ごみ戦争」を宣言しました。

杉並区の住民たちが起こしていた訴訟は、美濃部のごみ戦争宣言から3年後の1974年、清掃工場から排出される煤塵を法の規制値の7割以下にする、より厳しい協定値を設けるなどして和解しました。

江東区と杉並区の対立、そして美濃部のごみ戦争宣言は、その後の東京のごみ処理のありかたに一石を投じたとされます。杉並清掃工場は、建設場所が決まってから12年後の1978年に着工となり、1982年に完成となりました。

一般的に、清掃工場の一般的は30年ほどとされています。杉並清掃工場も完成から30年にあたる2012年の1月に、建てかえ工事のために運転が停まりました。その途中の2000年には、東京23区の清掃事業は都から各区へと移管されています。

高井戸東では、2代目となる清掃工場の建設工事が進んでいます。2017年に完成する予定です。



参考資料
東京二十三区清掃一部事務組合「東京で増え続けた大量のごみと人々との戦い」
http://www.union.tokyo23-seisou.lg.jp/shiro/nakattara/03.html
環境省「平成18年度版環境白書」
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/junkan/h18/html/jh0601000100.html
Finance GreenWatch「東京ごみ戦争の杉並清掃工場 建て替えへ運転停止(東京新聞)」
http://financegreenwatch.org/jp/?p=7468
ウィキペディア「東京ゴミ戦争」
https://ja.wikipedia.org/wiki/東京ゴミ戦争
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どんなごみがどのくらいかを調査


「ごみを出す」といっても、さまざまなごみの種類があります。人びとが出すごみには、どのようなものがどのくらいあるのでしょうか。

ごみ処理をおこなう自治体や組合などは、「ごみ性状調査」という調査を定期的におこなっています。ごみの「性状」つまり「中味」を調べるというもの。調べることでデータを得ることができます。そのデータを、清掃工場などのごみ処理施設の適切な運営のための基礎資料とするわけです。

多くの自治体や組合では、清掃工場ごとに年に一度以上、ごみの性状調査をおこなっています。清掃車がごみを落とす「ごみバンカ」とよばれるところに置かれたごみを無作為にとりだし、ごみバンカのうえにのほうにあるホッパーステージとよばれるところで清掃工場の職員たちが手作業で、種類ごとにごみを分けていきます。

東京23区のごみ処理を管理している東京二十三区清掃一部事業組合は、23区内で稼働している20か所の清掃工場に搬入されたごみの性状を公表しています。

2015年度では、もっとも多かったのが「紙類」で44.21%。ついで「生ごみ等」で21.06%。ついで「プラスチック類」で18.20%。あとは、「木草類」「繊維」「その他」とつづきました。

やはり文明社会の現れなのでしょうか。食べたあとのごみよりも、読み書きされたあとのごみのほうが多いという結果です。

ごみ性状調査では、こうした「物理組成」とよばれるごみの種類の分けかたのほか、水分、可燃分、灰分の「3成分」の内訳や、発熱量、また重金属含有量なども調べられています。

参考資料
東京二十三区清掃一部事業組合「ごみ性状調査結果」
http://www.union.tokyo23-seisou.lg.jp/gijutsu/kankyo/toke/seijyou.html
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立ちあげて、立ちさげて、時間と金を費やす


多くのものごとでは、「いったん止めてからふたたび動かす」ということに、高いコストがかかるものです。

清掃工場には、焼却炉の「立ちさげ」と「立ちあげ」という作業があります。

「立ちあげ」とは、焼却炉に火を入れて、炉でごみを燃やしはじめること。いっぽう「立ちさげ」はあまり聞かないことばですが、炉で燃やしていたところ火をとめ、炉の温度を下げて停止させることをいいます。

動いている焼却炉を考えると、排ガスや排水の決められた値を超えてしまう状態が続くなど深刻な問題が起きたときには、まず焼却炉を立ちさげることがされます。

立ちさげても、すぐに炉の温度が下がるわけではありません。まず、ごみをバーナーによって燃やしきってから、バーナーの炎を切って、そこから自然に温度がさがるのを1日から2日かけて待ちます。

そして、炉のなかの点検をして、異常の原因を突きとめ、場合によっては大規模な補修するなどします。

もちろん、この間の作業量はまったくなくなってしまいます。焼却炉が動いているときに処理できていたごみを処理できなくなるのですから。

そして、立ちあげるときには、まずはやはりバーナーの炎で炉内を暖めていきます。しかし、はじめからごみを燃料として使うことができません。800度より低い温度でごみを燃やすと、ダイオキシンが発生するため、法律でごみの焼却は800度以上にすることが決まっているのです。

そのため、まずは燃料を使ってバーナーで炉を暖めて800度以上まで温度を高める必要があります。ここでも燃料を使うためにお金がかかります。

焼却炉が十分に温まったあと、ようやくごみを入れていき、通常の焼却炉の運転へと戻ります。

立ちさげと立ちあげは、ふだんにはない時間とお金を要するため、定期点検のときのほかはできれば避けたいことと、清掃関係者のあいだでは言われているようです。

参考資料
環境省 1997年1月28日公布「ごみ処理に係るダイオキシン類の削減対策について」
http://www.env.go.jp/hourei/11/000136.html
東京二十三区清掃一部事務組合 光が丘清掃工場「環境報告書 2007年度実績」
https://www.kankyo.metro.tokyo.jp/resource/attachement/hikarigaoka_er2008.pdf
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「イヤホンジャックがなくなる」の噂も


アップルコンピュータのスマートフォン「iPhone」の新型となる「7」が、(2016年)9月には発売されるのでないかと噂されています。いまの世代でもっとも新しい「6s」と「6s Plus」は2015年9月に発売されたので、噂どおりであればおよそ1年ぶりの新世代発表となるわけです。

新しいiPhoneにはどんな特徴や機能がつくのだろうといったことも噂のたねです。そして、もっぱらつぎのような噂がわきたっています。

「iPhoneからイヤホンジャックがなくなる」

イヤホンジャックとは、耳に差しこんで一人だけ聞こえるようにするイヤホンまたはヘッドホンという機器のさしこみ口のこと。ここにイヤホンをさしこむと、iPhoneのスピーカーからの音はなくなり、イヤホンまたはヘッドホンの反対側の口から音が出ることになります。

これまでのiPhoneには、側面のライトニングケーブルとよばれる充電などに使うケーブルのさしこみ口のすぐい横にイヤホンジャックがありました。そして、すくなくない人が、このイヤホンジャックにイヤホンをさしこんで使っていました。

とくに日本では、電車に乗っている客たちを見れば、いかにイヤホンを使っている人が多いかがよくわかります。イヤホンをさしてなにを聞いているのかまではわかりませんが、インターネットラジオ、ユーチューブなどの映像、ポッドキャストなどの音声、ゲームソフトなどが考えられます。

よく使われているイヤホンのジャックがなくなるとされるのはどうしてか。一説に、薄型化をめざしたとき、イヤホンジャックの口径である3.5ミリメートルが支障になるというものです。しかし、これも噂ながら、時期iPhoneはそこまで薄くならないのではないかともいわれています。

もうひとつ、防水面を強化しようとするとき、イヤホンジャックの穴は、水分の侵入口になるなどして、かなり課題の多い部分であるため、この際とってしまうという理由も噂されています。

イヤホンジャックがなくなったら、イヤホンやヘッドホンを使えなくなってしまうのか。その点、ヘッドホンがまったく使えなくなるという心配はしなくてもよさそうです。たとえば、ライトニングケーブルのさしこみ口をイヤホンジャックのかわりに使うことのできるヘッドホンが発売されるといった可能性はあります。また、ライトニングケーブルと3.5ミリメートルイヤホンジャックを変換するコネクタが登場するのではないか、はたまた無線技術を使ってiPhoneとイヤホンを直接つなげずに使う仕様になるのではないか、といった噂もあります。

すべては噂の世界。しかし、人びとの使いかたを優先的に考えるのでなく、人びとへの使わせかたを優先的に考える設計の考えかたがiPhoneに反映されるというのは、噂ではなく本当のことではないかと考えられています。

参考資料
かみあぷ 2016年8月2日付「iPhone 7付属の新型『EarPods』が動画でリーク!コネクタ部以外は今までと変わらない模様」
http://www.appps.jp/236768/
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
迷走する台風10号に対して擬人観

「台風10号」(ライオンロック)の2016年8月26日(金)正午現在の進路と進路予想
出典:気象庁ホームページ

人は、神話の時代から、自然のものに対して人の姿や性質を見いだすことをしてきました。こうしたことを「擬人観」といいます。たとえば、星座には、ポルックスとカストルのふたご座、ペルセポネの乙女座などの、ギリシャ神話に登場する人物(神)がよく出てきます。

日本でも、森羅万象のものには魂が宿るとするアニミズムの世界観が根づよくあります。月を「お月さん」とよんだり、落雷を「かみなりさま」とよんだりするのも関係しているでしょう。

インターネットでコメントを自由に書けるようになったことで、擬人観をことばで表す傾向は強くなっているのかもしれません。2016年8月、しきりに擬人的な表現がされているのが「台風10号」(ライオンロック)です。

8月19日(金)に伊豆諸島のはるか東で発生した台風10号は、通常の台風とは逆に、南東のほうへと進み、大東島地方に近づきました。そしてきょう26日(金)になり、進む方向を東に変えて、Uターンしはじめました。今後、本州のほうに近づいてくると予想されています。

この台風10号については、つぎのようなネット上のコメントが見られます。

「沖縄キャンプから帰ってくるんか」
「仲間はずれにされて戻ってきた怒りのライオンロック」

また、この台風の立場になって“心情”を代弁するようなコメントも見られます。

「台風10号『あぁ、忘れ物、忘れ物〜っ』」
「10号『お前らのために力をために行って来た!コロッケ買いに行く用意しとけ』」

気象学的には、日本の南の海上で真夏に発生する「モンスーン渦」とよばれる低気圧が台風の進路に影響しているのではないかとする専門家の見方などが報じられています。台風10号は、モンスーン渦の北のへりに沿って移動してきたとのこと。

しかし、多くの人は、擬人観で台風のことを見るのでしょう。とりわけ、通常とは進みかたが大きく異なる特徴的な台風に対しては、人間の行動にたとえずにはいられない人もいるようです。

台風10号は、これから東のほうに進み、さらにその後、北西のほうに進路をかえて、30日(火)から31日(水)ごろに本州にもっとも近づくことが予想されています。警戒が必要です。

参考資料
気象庁「台風情報」
http://www.jma.go.jp/jp/typh/16105.html
琉球新報 2016年8月21日付「モンスーン渦が進路に影響 例年より東側に」
http://mainichi.jp/articles/20160821/rky/00m/040/005000c
| - | 15:06 | comments(0) | trackbacks(0)
「iPS細胞の何々」問題が記者を悩ます

写真作者:Jun Seita

京都大学の高橋和利さんと山中伸弥さんが執筆した「マウス胎児および成体線維芽細胞培養から特定因子による多能性幹細胞の誘導」(Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors)という論文が、米国の科学雑誌『セル』の2006年8月25日号に掲載されてから、10年となりました(電子版での発表は2006年8月10日)。

この論文で使われた「iPS細胞」ということばは、いまや社会であたりまえのように使われる科学用語のひとつとなっています。

しかし、10年が経っても、iPS細胞をめぐってなかなか定まらないこともあります。

この『セル』の論文では、山中さんらの研究チームが「iPS細胞」と名づけた多能性幹細胞をマウスからつくることができました、ということが書かれてあるわけですが、それをひとことで表そうとすると、どうなるでしょうか。

より具体的には、「iPS細胞の“何々”から10年」と表現しようとするとき、「何々」にはどんなことばを当てればよいか、という問題です。とくに、iPS細胞についての記事をつくる記者たちはかなり悩むようです。

「iPS細胞の作製から10年」でもよさそうではあります。iPS細胞をつくったのですから。しかし「作製」だけだと「初めてつくった」という意味あいがあまりでません。「自動車の作製から約250年」という表現にやや違和感があるのとおなじです。

すると……。

「iPS細胞の誕生から10年」が浮かんできます。しかし、「誕生」だと、iPS細胞が自然に生じるような意味あいが強まります。研究者の手によってiPS細胞がつくられたという語感を出すことができません。

そこで……。

「iPS細胞の樹立から10年」ではどうでしょう。「樹立」とはしっかりつくり立てること。実際「iPS細胞の樹立」は使われることもありますが、「樹立」はさほど頻出することばでないことや、細胞という生々しいものに対して使うことが一般の読者に通じるか不安なことなどから、ためらいをもつ記者はいるようです。

視点を変えて……。

「iPS細胞の発表から10年」とする手もあります。または「iPS細胞の論文発表から10年」とも。「iPS細胞をつくったと発表した」のですから、これでもよいわけですが、「つくった」の意味あいはやはり薄くなります。

となると……。

「iPS細胞の開発から10年」になるでしょうか。実際、この表現はよく使われています。しかし、国語辞典では「開発」に「役立つようにすること」や「実用化すること」の意味をもたせています。たとえば「ロケット開発」といえば、ロケットという新たなものを考えだして、実用化することとなります。『セル』に論文が発表された2006年8月の時点では、iPS細胞をつくっただけであり、実用化まではしていません。

最後に……。

「iPS細胞から10年」のように、なにも入れない場合もあるようです。ぼんやりとしますが、意味は伝わるので、これでよしとする人もいるのでしょう。

グーグルでの検索では、次のようになりました。

「iPS細胞の発表から10年」:1940件
「iPS細胞の開発から10年」:785件
「iPS細胞の誕生から10年」:6件
「iPS細胞から10年」:4件
「iPS細胞の論文発表から10年」:3件
「iPS細胞の作製から10年」:2件
「iPS細胞の樹立から10年」:1件

今後も「iPS細胞の“何々”」問題はつづきます。なにを伝えるかを考えて、場面ごとにもっともふさわしいことばを選ぶというのが、現実的な解決策といえそうです。
| - | 00:52 | comments(0) | trackbacks(0)
新聞での書きかたを外の人びとに示す


企業がもっている仕事の進めかたを、その企業の外側の人びとに提供あるいは還元することがあります。きちんとしたかたちで提供するとなれば、たいていはお金で買ってもらうことになりますが。

通信社の共同通信社が出している『新聞用字用語集 記者ハンドブック』もその一例といえます。

これは、共同通信社の記者たちが、自分で原稿を書いたり、ほかの人の原稿を編集したりするときの「書きかたの基準」が書かれたもの。1956年に出版されました。そして2016年3月に13版がでました。改訂が12回おこなわれたことになります。

本の中心となるのは、書名にもある「用事用語集」。つまり、文字やことばの使いかたが示されている一覧です。

たとえば、「いま」ということばに対しては、「いま・今 今時分、今しも、今どき、今なお、今に・いまに、今にして、今風、今もって、今や・いまや、今様、今を時めく 〔注〕「いま一度、いま一歩、いまひとつ」などは平仮名書き。」と記されています。一般的に「いま」をひらがなで書く人も、漢字で書く人も両方いますが、共同通信の記者たちは、上記のように用いているわけです。

新聞に載る記事をつくる記者に向けてつくられた本なので当然ですが、「新聞」を意識した項目もあります。冒頭のほうにあるのは「新聞記事の大原則」。「新聞記事は、日常一般に使われる標準的な分かりやすい口語体を使い……」といったことが書かれてあります。

四つある「大原則」のなかには、通信社や新聞社に寄稿する立場のもの書きなどにもかかわるものもあります。

「社外執筆者の署名原稿については、本社の原則によることを要請するが、筆者が強く希望する場合は例外的表記を認める」

よっつのうちのひとつにこれが掲げられているということは、社外執筆者の書きかたをかなり尊重していることがうかがえます。

さらに、つぎのページの「記事の書き方」という項目には「記事では、結論を先に盛り込むなど、重要な要素から順に書いていく『逆三角形』の文体とするのが大前提となる」といったことも書かれています。

ときに「マニュアル」というものは、使う人にマニュアル以外のことをさせなくさせるとして批判の的になります。ただし、それはその現場での臨機応変な接客などをする場合でのこと。記者が書くときに使うこうした「ハンドブック」に、その批判が当てはまるかというと、そうはなりますまい。記事が載る新聞などの媒体においては、表現が統一されていればいるほど、読者にとって読みやすいものになるからです。

通信社が「ハンドブック」を出すことの利点は、社会的には多くの媒体でことばづかいの統一がはかられうること、社内的には本として出版して利益を得られることといえましょう。

参考資料
共同通信社『第13版 新聞用字用語集 記者ハンドブック』
https://www.amazon.co.jp/dp/4764106876/
| - | 10:32 | comments(0) | trackbacks(0)
「科学ジャーナリスト賞2017」推薦作品を募集中


日本科学技術ジャーナリスト会議は「科学ジャーナリスト賞2017」の推薦作品を募集しています。

科学ジャーナリスト賞は、科学技術に関する報道、出版、映像などで優れた成果をあげた人を表彰するもの。前回の「2016」では『生命の星の条件を探る』(文藝春秋)を著した東京大学理学系研究科准教授の阿部豊さんに大賞が贈られました。

受賞者は原則として個人(グループの場合は代表者)で、新聞、テレビ、ラジオ、出版といったマスメディアでの活動だけでなく、ウェブサイトや博物館での展示などまで幅広くとらえ、また、優れた啓蒙書を著した科学者や科学技術コミュニケーターなども対象としています。

また、「日本科学技術ジャーナリスト会議が設けた賞であることから、社会的なインパクトがあることを重視して選考されます」とのこと。

推薦のあった作品は、日本科学技術ジャーナリスト会議の会員複数名によって査読などの審査がなされて評点がおこなわれ、一次選考会の参考にされます。そして、一次選考を通過した作品10点ほどが、二次選考会へと進みます。二次選考会では、科学ジャーナリスト賞の外部選考委員と内部選考委員が選考し、最終的に大賞や賞が贈られる作品が決まります。

「科学ジャーナリスト賞2017」の対象となる作品は2016年1月から2076年1月末までのもの。推薦のしめきりは2017年1月31日となっています。

過去には、青山学院大学教授の福岡伸一さんや作家で医学博士の海堂尊さんなども受賞しています。

応募のしかたなど、詳しくは科学技術ジャーナリスト会議の「科学ジャーナリスト賞」ホームページをご覧ください。こちらです。
http://jastj.jp/jastj_prize
| - | 20:29 | comments(0) | trackbacks(0)
海の資源を活かすとりくみ多く――ご当地エネルギーとりくみ事情(九州・沖縄編)


各都道府県でのエネルギーについてのとりくみを紹介してきました。最終回は、九州・沖縄編です。

福岡県では、豊前市内の九州電力豊前火力発電所で、蓄電システムの実証研究がおこなわれています。九州電力がおこなうもので、ナトリウム・硫黄電池の入ったコンテナ252台を並べ、世界最大級の30万キロワット時を供給します。

佐賀県では、唐津市沖の海上で、浮体式潮流・風力ハイブリッド発電の実証事業が2012年度から2015年度にかけておこなわれました。三井海洋開発が事業としておこなったもので、潮流発電と風力発電を組み合わせた発電方法です。

長崎県では、五島市の前山漁港の沖で浮体式洋上風力発電の実用化がなされました。2016年4月、戸田建設の小会社の五島フローティングウィンドパワーと五島市が発表したもので、出力規模は2メガワットです。浮体式洋上風力発電の実用化は国内初とされています。

熊本県では、天草市内に藻類からバイオ燃料をつくるための研究施設が置かれています。デンソーが2016年7月に開所したもので、培養技術を2018年には確立する予定とのこと。

大分県では、佐伯市でスマートコミュニティの社会実験がおこなわれています。「大分県エネルギー産業企業会 電力自由化ワーキンググループ」の活動事業で、電力需要のシミュレーションと、HEMS(Home Energy Management System)を使ったサービスの実証実験を目的としています。

宮崎県では、えびの市で地熱資源の調査が進んでいます。アストマックス・トレーディングが石油天然ガス・金属鉱物資源機構の「地熱資源開発調査事業費助成交付事業」に採択されたもの。2016年7月から2017年2月までに坑井掘削、物理探査、温泉モニタリング調査などをします。

鹿児島県では、薩摩川内市に属する上甑島で、電気自動車を蓄電池に利用して電力を賄うとりくみがおこなわれています。日産自動車と住友商事が共同出資するフォーアールエナジーが2016年3月から実施している事業で、太陽光発電などの再生可能エネルギーを蓄電して、島内の系統とつないでいます。

沖縄県では、久米島町で海洋温度差発電の実証研究が進められています。沖縄県海洋深層水研究所が2013年4月から稼働させているもので、表層水と深層海水を使って発電し、実際の系統に連携させています。

九州は四方を海に囲まれていることもあり、海の資源を活かしたとりくみが多く見られました。これらのとりくみは、5年後、10年後、どのように実を結んでいるでしょうか。

参考資料
朝日新聞 2016年3月4日付「蓄電システム、実験開始 世界最大級、九電・豊前発電所内」
佐賀県「三井海洋開発株式会社」
http://www.pref.saga.lg.jp/kiji00331570/3_31570_12_modec.pdf
戸田建設 2016年4月15日発表「国内初の浮体式洋上風力発電設備を実用化」
http://www.toda.co.jp/news/2016/20160415.html
新電力おおいた「スマートコミュニティ社会実験in佐伯市」
http://www.pps-oita.com/scsis_info.html
スマートジャパン 2016年7月29日付「宮崎県えびの市で地熱発電の調査が開始、調査井を掘削へ」
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1607/29/news043.html
朝日新聞 2016年5月16日付「小さく始め、普及ねらう 再生エネ、EV電池に蓄電」
IHIプラント建設、ゼネシス、横河ソリューションサービス 2015年3月「平成36年度海洋深層水の利用高度化に向けた発電利用実証事業 業務報告書」
http://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/seisaku/kiban/oceanrenewableenergy/documents/h26houkokusyo1.pdf
| - | 20:57 | comments(0) | trackbacks(0)
ため池や、みかんの搾りかすをエネルギーづくりに活かす


各都道府県のエネルギーについてのとりくみを紹介しています。今回は、中国・四国編です。

岡山県では、美咲町にある岡山県農林水産総合センタ􏰀ー畜産研究所に、畜産バイオマス利活用実証展示施設が置かれています。同センターと岡山大学環境生命科学研究科が共同研究しているもので、家畜の糞尿や生ごみなどのバイオマス資源を活用してメタン発酵によるバイオガスの発生や、そのガスを利用した燃料電池の開発などにとりくんでいます。

鳥取県では、鳥取市内の鳥取ガスで水素エネルギーの実用化に向けた実証実験がおこなわれます。2016年1月に県が鳥取ガス、ホンダ、積水ハウスと「水素エネルギー実証(環境教育)拠点整備プロジェクト」の協定を結んだもの。水素ステーションなどを設けたり、スマートハウスを整備したりします。

広島県では、大崎上島町に石炭ガス化複合発電の実証施設がつくられ、試験が行われています。大崎クールジェンが2012年よりとりくんでいる「石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業」で、石炭をガス化してガスタービンで発電し、さらに熱から水蒸気をつくって水蒸気タービンでも発電。さらに過程で登場する水素を使って燃料電池による発電もくみあわせることをねらっています。

島根県では、西ノ島町でハイブリッド蓄電池システムの実証事業がおこなわれています。2014年から中国電力がとりくんでいるもので、ナトリウム・硫黄電池と、リチウムイオン電池という異なる種類の蓄電池をくみあわせ蓄電システムを設置します。隠岐諸島全体で8000キロワットの再生可能エネルギーの受けいれをめざしています。

山口県では、山陽小野田市に竹バイオマス発電所がつくられる予定です。藤崎電気(阿南市)が2017年1月に操業を始める予定で、竹を燃やすことで電気を生み出します。一般家庭4680世帯分の年間電力量に相当する電力を発電する予定です。

香川県では、高松市内のため池に日本最大級の水上太陽光発電が設置されました。ウエストエネルギーソリューション(広島市)がため池25万平方メートルの一部を借りて、水面に太陽光発電パネルおよそ1万枚を浮かべます。

徳島県では、石井町の施設でイカダモを育てて、藻類バイオマス燃料をつくるための研究がおこなわれています。四国大学短期大学部教授の西尾幸郎さんらが研究しているもの。水温40度から氷が張るほどの低温まで、温度変化に強いのがイカダモの特徴ということです。

愛媛県では、松山市の工場でみかんの搾りかすを原料とするバイオエタノールの実証プラントが稼働しています。「ポンジュース」でおなじみのえひめ飲料が2010年10月に、松山工場内で始めたものでつくったエタノールは、ジュースづくりのための燃料などに使われます。

高知県では、梼原町が自然エネルギーを活かす町づくりを進めています。風力発電、太陽光、木質バイオマスなどを導入しており、2050年にエネルギー自給率100パーセントをめざしているとのことです。

ため池やみかんの搾りかすの活用といった、ご当地ならではのとりくみも見られます。話題性があるためニュースなどでとりあげられやすいということもあるのでしょう。次回は、最終回、九州・沖縄編です。

参考資料
岡山県農林水産総合センタ􏰀ー畜産研究所・岡山大学大学院「畜産バイオマスからの新エネルギー・資源回収技術の開発」
http://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/457740_3161511_misc.pdf
鳥取県、鳥取ガス、積水ハウス、本田技研工業 2016年1月25日発表「『水素エネルギー実証(環境教育)拠点整備プロジェクト』協定を締結」
http://www.honda.co.jp/news/2016/c160125b.html 
中国電力 2015年9月30日発表「隠岐諸島におけるハイブリッド蓄電池システム実証事業の開始について」
http://www.energia.co.jp/press/15/p150930-1.html
藤崎電気「バンブーバイオマス発電所」
http://www.fujisakikk.co.jp/bamboo
ウエストホールディングス 2015年11月18日発表「日本最大の水上メガソーラーを香川県高松市のため池に建設します」
http://www.west-gr.co.jp/news/detail.php?id=480
朝日新聞 2015年8月31日付「燃料源、藻のすごい力 太陽光と水使い、効率よく油成分生産 産学、各地で培養試験」
朝日新聞 2016年8月13日付「自然エネルギーを活用し町づくり 伊方3号機再稼働、矢野・梼原町長に聞く/高知県」
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特徴的ながら小粒な印象も――ご当地エネルギーとりくみ事情(近畿編)



全国都道府県でのエネルギーのとりくみを紹介しています。今回は近畿地方編です。

滋賀県では、湖南市に新電力会社「こなんウルトラパワー」が2016年4月に設立されました。まずは3000キロワットを、市内の太陽光発電施設から調達するということです。

京都府では、日本海に面した地域での液化天然ガスのインフラストラクチャーの整備を府がめざしています。「北近畿エネルギーセキュリティ・インフラ整備研究会」が、舞鶴港を液化天然ガスの基地として整備する計画を検討中です。また、舞鶴市と兵庫県三田市にガスパイプラインを敷くことも検討しています。

大阪府では、府の事業として海水面における太陽光発電の実証実験をおこなっています。忠岡町と大阪市住之江区に、いかだのような足場に太陽電池を乗せ、発電量や塩害の影響などを調べるもの。府の事業です。

奈良県では、葛城市の「ラボラトリー・シティ構想」が注目を集めます。市とリコーが協定してとりくむもので、2015年10月から小水力の実証実験を開始。また、市内施設の照明や空調を自動制御するシステムの実証実験などもおこなわれています。

和歌山県では、和歌山市内で、下水道バイオマスからの電力をつくるシステムの実証研究がおこなわれています。2013年度の国土交通省下水道革新的技術実証事業のひとつで、和歌山市、日本下水道事業団、京都大学などが共同でとりくむもの。汚泥の脱水、エネルギーの回収、電気エネルギーへの変換といった技術の実証にとりくんでいます。

兵庫県では、神戸市の神戸空港島で、液化水素の運搬・貯蔵施設が建設される予定。川崎重工業、岩谷産業、電源開発が、新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素サプライチェーン構築実証事業」の助成により実証実験をおこないます。

大都市圏があるものの、近畿地方での各とりくみは、やや小粒な印象もあります。

参考資料
朝日新聞 2016年6月1日付「湖南市の新電力設立 滋賀県」
京都府「北近畿におけるエネルギー政策を国に提案」
http://www.pref.kyoto.jp/koho/dayori/201602/toku_01.html
大阪市「エネルギー関連の施策事業集(2016年度アクションプログラム)2」
http://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000352/352036/2.pdf
奈良県葛城市・リコージャパン 2015年9月15日「葛城市とリコージャパン、地方創生に向けた連携協力に関する協定を締結」
https://www.ricoh.co.jp/sales/news/2015/pdf/20150915_1.pdf
国土交通省下水道革新的技術実証事業「下水道のバイオマスからの電力創造システムに関する技術実証研究」
http://www.nilim.go.jp/lab/ecg/bdash/pamphlet/h25_takuma.pdf
スマートジャパン 2016年2月3日付「水素サプライチェーンを2020年に神戸へ、発電用に大量の水素を輸送・貯蔵」
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1602/03/news049.html

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雪もエネルギー資源として利用――ご当地エネルギーとりくみ事情(甲信越・北陸・中部編)


各都道府県のエネルギーについてのとりくみを紹介しています。第3回は、甲信越、北陸、中部の県を一気に紹介します。

山梨県では、甲府市にある米倉山太陽光発電所に、超電導技術を使った円盤蓄電システムが2015年9月に完成しました。県や鉄道総合研究所の事業で、太陽光発電の電気エネルギーを、超電導磁気軸受けで浮かせたフライホイールの回転する運動エネルギーに変換して貯蔵します。

長野県では、小水力発電がさかんです。伊那市では、水田の広がる地域で伊那市春富土地改良区が運用する小水力発電書が2015年9月に開設し、2017年4月の発電開始をめざすなどしています。23キロメートルの用水路を利用します。

新潟県では、県沖の日本海の地下にメタンハイドレートが分布していることが確認されました。2015年には、県が「表層型メタンハイドレート研究会」を発足。商業利用への道を探っています。

富山県では、やはり小水力発電がさかんです。県内には30か所の小水力発電があり、県は「再生可能エネルギービジョン」を掲げ、2021年までに45箇所の整備をめざしています。

石川県では、下水汚泥から発生するメタンを発酵させて活用するモデルがつくられようとしています。金沢大学や土木研究所、日本下水道新技術機構や企業などが2013年度、「メタン活用石川モデル」をとりまとめました。下水処理場からの汚泥を脱水して集約し、またし尿などからのバイオマスを集め、メタンを発酵させることでガスのエネルギーを得ます。中能登町で2017年度の実機稼働をめざしています。

福井県では、雪を資源として考えるとりくみも。豪雪地域のある勝山市は、酒造会社、飲食店、市民団体、福井大学などと「市雪氷熱エネルギー利用促進協議会」をつくり、2015年1月から、雪室の実証実験をはじめています。雪冷房や雪中貯蔵の実用化をめざしています。

静岡県では、牧之原市が再生可能エネルギーの本格的導入を進めています。市は2012年から「エネルギータウン構想」をうちあげ、太陽光、風力、バイオガスなどのエネルギーを導入、または導入する予定です。背景には浜岡原子力発電所に対する反発もあるようです。

愛知県では、豊田市に「新エネルギー実証研究エリア」があります。常滑市から移設されたもの。県は、この実証研究エリアでの研究内容を募り、可搬式太陽追尾発電システム、小型バナジウムレドックスフロー電池、稲わら利活用バイオメタン生産などのシステムの実証実験が行われることになったことを2016年3月に発表しました。

岐阜県では、岐阜市内の集合住宅を使って、家庭用燃料電池と太陽光発電を組み合わせた場合の省エネルギー効果の実証実験が2012年よりおこなわれてきました。東邦ガス(愛知県)が手がけたもの。省エネルギーや二酸化炭素排出削減の効果が得られたといいます。

三重県では、NTNが桑名市内にある先端技術研究所に2016年4月「グリーンパワーパーク」が開所しました。同社が開発した垂直軸風車3基、小水力発電装置1基、風力と太陽光のハイブリッド街路灯3基を設置して、装置の実証実験をおこないます。

各県にはやはりご当地の風土を活かした特色的なとりくみがあります。しかし、行政の力の入れようには温度差もあるのかもしれません。

参考資料
産経新聞 2015年9月15日付「メタンハイドレート商業化へ 県の産学官研究会発足 新潟」
http://www.sankei.com/region/news/150915/rgn1509150058-n1.html
石川県「メタン活用いしかわモデルについて」
http://www.pref.ishikawa.lg.jp/mizukankyo/gesui/ishikawamodel.html
ふくい まち・エネおこしネット協議会 2015年8月9日発表「勝山市雪氷熱エネルギー利用促進協議会」
http://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kankyou/matiene/tiiki_d/fil/002.pdf
牧之原市 2012年7月「牧之原市エネルギータウン構想」
http://www.city.makinohara.shizuoka.jp/bg/kurashi/ent/429.html
愛知県 2016年3月24日掲載「新エネルギー実証研究エリアの実証研究実施者を決定しました」
http://www.pref.aichi.jp/soshiki/san-kagi/eria-kettei.html
東邦ガス2014年3月18日「スマートエネルギー集合住宅実証試験の年間実績について」
https://www.pref.gifu.lg.jp/sangyo/shokogyo/seicho-sangyo/11353/nj-house-meeting.data/3_2-3.pdf
NTN 2016年4月12日発表「自然エネルギーの循環型モデル『グリーンパワーパーク』を設立」
http://www.ntn.co.jp/japan/news/press/news201600027.html
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自治体により地産地消型も総合型も――ご当地エネルギーとりくみ事情(関東編)


全国都道府県のエネルギーのとりくみを紹介しています。今回は関東地方。都市人口の多い地域に、エネルギーのとりくみはあるのでしょうか。

栃木県では、県が「スマートビレッジモデル形成事業」を2016年より実施しています。2011年から再生可能エネルギーの地産地消を目指して5年間おこなわれてきた「スマートビレッジモデル研究事業」を受けつぐもの。水力発電で得たエネルギーを使って電気自動車を走らせて花を配送したり、電気自動車の電気を田んぼのまわりの草刈りに使ったりしています。

群馬県では、川場村が東京都世田谷区と「川場村における自然エネルギー活用による発電事業に関する連携・協力協定」を2016年2月に締結しました。第三セクターのウッドビレッジ川場が運営する木材コンビナート施設でバイオマス発電をおこない、電気を世田谷区の公共施設や区民に購入してもらうしくみということです。

茨城県では、つくば国際戦略総合特区「藻類バイオマスエネルギーの実用化」が注目されています。2016年7月に筑波大学が設立した藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センターが主導する事業で、ボトリオコッカスとオーランチオキトリウムという藻類2種を組みあわせて、藻類バイオマス産業の創出をめざします。

埼玉県では、県はさまざまな再生可能エネルギーの導入を拡大していくことをうちあげています。秩父地域の森林などから得た木質を熱分解して生じさせる「バイオオイル」という黒褐色の液体をつくり、その熱エネルギーを産業分野に使うといったモデルを構想するなどしています。

東京都では、2020年の東京五輪・パラ五輪とからめたエネルギー計画があります。晴海の選手村は大会後に住宅と商業施設として整備される予定ですが、そこに水素ステーションが置かれ、水素と空気中の酸素を反応させる方式の燃料電池で発電して電力を供給する「東京2020大会後の選手村におけるまちづくりの整備計画」をうちたてています。事業協力者は、東京ガスが代表の「晴海エネルギーパートナーチーム」となりました。

千葉県では、成田市と香取市が洸陽電機と連携して2016年7月、「成田香取エネルギー」という会社を設立しました。成田市内の清掃工場のごみ火力発電や、香取市内の太陽光発電施設などでつくる電気を、固定価格買取制度より高く買い、学校など公共施設に安く売るということです。自治体どうしが連携して電力会社を設立するのは全国初。

神奈川県では、県が「かながわスマートエネルギー計画」をうちたてています。エネルギー・マネジメント・システムの導入を進めるため、鎌倉市玉縄地域や松田町がビジネスモデルとなることが2015年5月に決まりました。

自治体でのとりくみとしては、エネルギーの地産地消をめざすものから、総合的なものまでさまざまです。

参考資料
「スマートビレッジモデル研究事業からスマートビレッジモデル形成事業へ」『栃木県スマートビレッジ通信』2016年8月号
http://www.pref.tochigi.lg.jp/g02/documents/sumatodai5gou.pdf
東京新聞 2016年2月19日付「木質バイオマス発電事業 川場村、東京・世田谷区と協定」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201602/CK2016021902000186.html
筑波大学藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センター「つくば国際戦略総合特区『藻類バイオマスエネルギーの実用化』
http://www.abes.tsukuba.ac.jp/project
東京都 2016年3月31日発表「東京2020大会後の選手村におけるまちづくりの整備計画について」
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2016/03/70q3v100.htm
建設通信新聞 2016年7月14日付「東京ガスグループに決定/東京五輪選手村エネルギー計画検討事業協力者 東京都」
http://www.kensetsunews.com/?p=69674
成田市・香取市・洸陽電機 2016年7月5日発表「全国初! 2市で取り組む地域電力会社誕生!」
https://www.city.narita.chiba.jp/DAT/000127620.pdf
神奈川県 2015年5月28日発表「平成27年度 地域課題対応型EMSサービス実証事業のビジネスモデルの決定について」
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/770767.pdf
| - | 12:35 | comments(0) | trackbacks(0)
りんご、温泉……地元資源で発電――ご当地エネルギーとりくみ事情(北海道・東北編)


8月は高校野球の甲子園大会やお盆休みの帰省などもあり、なにかと「ご当地」への意識を高めさせる月です。そこで日本全国、北から南まで各地でおこなわれているエネルギーにかかわるとりくみを見ていきます。第1回目は北海道・東北です。

北海道では、北海道電力が「大型蓄電システム実証事業」をおこなっています。経済産業省が新エネルギー導入促進協議会を通じて募集した「大型蓄電システム緊急実証事業」に応募して採択されたもので、住友電気工業との共同事業です。2015年12月には安平町の南安平変電所内に大型蓄電施設が完成し、実証試験を行っています。

つぎに青森県では、津軽バイオマスエナジーという会社が、木質バイオマス発電の施設を平川市に建設し、2015年12月から売電をはじめました。津軽地方の間伐材や、りんごの剪定枝を燃料にバイオマス発電をするというご当地ならではの発電方法です。

おとなりの岩手県もみどりが豊富な県。野田バイオパワーJPという会社が、木質チップを燃料とするバイオマス発電所を野田町に建設し、2016年8月から商業運転をはじめました。同社や新エネルギー開発などの出資する会社です。

いっぽう秋田県では、大林組が「秋田県北部洋上風力発電事業」を計画し、県に協力を要請したと伝えられています。能代市、三種町、男鹿市沖にまたがる国内最大規模の洋上風力発電で、120〜150メートルの大きさの大型風車を91基、建てるという計画です。2023年の運転開始を目指しています。

洋上風力のとりくみが一歩進んでいるのは福島県。丸紅や三菱重工業などの民間企業と東京大学などからなるコンソーシアムが、「福島浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」を2011年から進めています。浮体式の洋上風力で、すでに7メガワットの出力の1基がつくられ、2016年7月にはもう1基が兵庫県の洲本港から運びこまれています。

温泉も日本各地にある資源です。山形県では、山形大学と小野川源泉協同組合、それに神奈川県横浜市のアネスト岩田という企業が共同で、温泉の熱を発電に利用する実証試験を、米沢市の小野川温泉ではじめました。温泉の水を、融雪や農業にも使うことも視野に入れています。

やはり、北海道や東北では、北国の自然を活かした事業やとりくみが注目されています。つづく。

参考資料
北海道電力・住友電気工業 2016年7月発表「南早来変電所 大型蓄電システム実証事業について」
http://www.hepco.co.jp/energy/recyclable_energy/large_accumulator/pdf/demo_poject.pdf
津軽バイオマスエナジー「バイオマス発電スキーム」
http://www.tsugaru-be.jp/business.html
朝日新聞 2016年3月24日付「国内最大級の洋上風力発電 大林組が能代・三種・男鹿沖で計画」
福島洋上風力コンソーシアム「プロジェクト概要」
http://www.fukushima-forward.jp/gaiyou/index.html
朝日新聞 2016年7月3日付「洋上風車、洲本発福島行き」
山形大学 2015年11月17日掲載「本学等の共同研究で小野川温泉街に温泉発電所が開所しました(11/8)」
http://www.yamagata-u.ac.jp/jp/information/info/20151117_02/
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「ふなっしー」の隣のまちの「梨ゆるキャラ」は申しわけなさげ

「ゆるキャラ」の経済効果は、国内で年間1000億円ともいわれます。代表的な「ゆるキャラ」のひとつは、千葉県の船橋市に住んでいるとされる「ふなっしー」でしょうか。よび名からわかるように梨を意識したキャラクターです。千葉県は梨の生産で全国一を誇っています。

その「ふなっしー」の住む船橋市のとなりには、市川市があります。市川市も、市町村別産出額が全国一という、梨の一大生産地です。

「ゆるキャラブーム」といわれて久しい昨今。船橋の「ふなっしー」が全国区になったなかで、当然、となりの市川市も梨の「ゆるキャラ」で対抗してもおかしくありません。

画像検索で[市川市 梨 ゆるキャラ]と入れると、どのような「ゆるキャラ」が出てくるでしょうか。

画像が並ぶなかで、「千葉県市川市の、梨のゆるキャラ」として出てきたのは、このような画像でした。



一般の人が紹介するホームページには、つぎのような説明があります。「千葉県市川市の、梨のゆるキャラ。『味が自慢』と言われても説得力がなく、ただただ悲しい」。

たしかに、このキャラクターの絵は「味が自慢」という惹句とは対照的に、自信がなさそうです。梨の実から出ている手と思わしき体の部位がほぼ真下に垂れさがり、顔もうつむきかげんで、眉毛は下がり、口も「どうしたものか」と言いたげです。「味が自慢」と感じさせません。

これはどういうことなのか。ことの真相を知るには、実際、市川市でこの「ゆるキャラ」を見つけるしかありますまい。

ということで、市川市内をくまなく歩いていると、ついにインターネットで紹介されている「市川梨」の「ゆるキャラ」と思しきキャラクターが描かれている看板を見つけました。



近づいてみると、看板にこんなことが記されていることがわかります。

「市川は梨の産地です 砂ほこり、農作業等でご迷惑をおかけする場合もありますが、ご協力をお願いいたします」



この文言とともに描かれている「ゆるキャラ」ということであれば、まだ理解できなくもないという人はいるのではないでしょうか。おそらく「ご迷惑をおかけする場合もあります」というメッセージに呼応させて、その態度の表現をこの「ゆるキャラ」に託したのでしょう。

しかし、「ご迷惑をおかけする場合もあります」という文言と、それを体現している「ゆるキャラ」の絵のあいだに「味が自慢 市川梨」があり、「ゆるキャラ」と「味が自慢 市川梨」が白地の枠のなかに記されているため、これを見た多くの人は「味が自慢という割には……」と感じることでしょう。

解釈のしかたによっては、この梨の「ゆるキャラ」は、「私なんか自慢と言っていただけるほどの者ではありません」と謙遜しているのだととることもできます。

しかし、おそらくはそういうことでなく、「ご迷惑をおかけする場合もあります」の文言にひっぱられた結果なのでしょう。

参考資料
ついっぷる詳細ページ
http://p.twipple.jp/R0TXO

| - | 23:40 | comments(0) | -
「右から左」歩行者の事故率、「左から右」を上まわる
交通事故では、歩行者が車と接触することによるものが多くあります。たとえば2015年の国内での交通事故死亡者のうち、比率としてもっとも大きい37.3パーセントが歩行中の人でした。つぎに多い自動車乗車中の人の32.1パーセントを5.2ポイント上まわっています。

自動車を運転している人からすれば、横断歩道でもない道路上を突然、歩行者が横断してくるのは、とてもひやりとすることでしょう。

この横断歩道でないところの歩行者の横断による事故には、ある傾向があるといいます。それは、運転手から見て「右から左へ横断する歩行者」の事故のほうが、「左から右へ横断する歩行者」の事故よりも多いというもの。

すこし古い情報ですが、2009年の、自動車が直進しているときの歩行者の横断による死亡事故のうち、昼間では「右から左」が53.2パーセント、「左から右」が46.8パーセントでした。夜間ではより顕著に差があらわれ「右から左」が69.3パーセント、「左から右」が30.7パーセントだったといいます。


2009年の自動車死亡事故における自動車直進時の歩行者の横断方向(「自動車と歩行者の事故 “危ない! 右から歩行者が横断”」交通事故総合分析センター『イルイダ・インフォメーション』2010年5月号より)

これらの差から考えられるのは、運転手にとって左前方にいる人よりも、右前方にいる人のほうが気づきづらいということです。そして、とりわけ夜に「右から左」の比率が高くなる理由については、あることがいわれています。

運転をよくする人であれば気づくことかもしれませんが、車の前照灯の右側のほうの光のあたる範囲は、左側のほうの光のあたる範囲より、わずかながら狭くなっています。

右側の前照灯の光の左半分が20センチメートルの幅で照らすとき、右半分のほうはおよそ半分の10センチメートルの幅しか照らしません。なお、このとき左側の前照灯では、左半分も右半分も20センチメートルの幅を照らします。つまり、右側の右側だけ、すこし光の照らす幅が狭いのです。

だとすれば、当然、右前方に光が届きにくいことになります。前照灯の効果が発揮されやすい夜間では、「右から左へ横断する歩行者」がより見づらいことになるわけです。

前照灯の照らす光が左右対称でないのは、対向車が向かって右側から近づいてくるからでしょう。運転者にとって対向車の光はじゃまになるので、右側の光は控えめにということになっているわけです。

これは推測ですが、たとえ前照灯の右側の右半分の照らす光を狭めて右から左へ横断する歩行者の事故が増えることのリスクよりも、対向車の運転者がまぶしくて起きる事故のリスクのほうが高いため、是正されないのでしょう。

参考資料
「自動車と歩行者の事故 “危ない! 右から歩行者が横断”」交通事故総合分析センター『イルイダ・インフォメーション』2010年5月号
https://www.itarda.or.jp/itardainfomation/info83.pdf
「SJクイズ 問題編」本田技研工業『Safety Japan』2012年4・5月号
http://www.honda.co.jp/safetyinfo/sj/12_07/pdf/sj_12_04_quiz.pdf
| - | 23:19 | comments(0) | trackbacks(0)
「中座」に「席を外す」の意味の要素、見つからず


漢字は、文字それぞれに意味がある「表意文字」です。たとえば「赤」という字は、この字だけで血のような色であること表すことができます。これに対してひらがなは一字一字が特定の意味をもたない表音文字なので「あ」や「か」という字だけでは、なにを意味しているのかわかりません。

漢字はそれぞれに意味をもっているので、人は、その字を見ると「こういう意味だろうな」と字の表さんものを思いうかべることができます。「赤」という字を示されれば、「血とかトマトとかの色だ」と思いうかべられるわけです。

しかし、熟語、2文字以上の漢字からなる語によっては、「どうしてこの意味になるの」といったものもあります。そして、ときに「字面とは逆の意味ではないか」と思われるような熟語に接することもあります。


たとえば「失笑」ということばもあります。「的はずれな発言をして失笑を買った」などと使います。

これは、字面どおりに捉えれば「笑いを失う」といった意味に思われがちです。つまり、的はずれな発言をして、わいわいしていた場が「しーん」となってしまったような語感がありそうなものではあります。

しかし、実際の意味は「おかしさをこらえることができず吹き出すこと」となります。笑いが「失われる」のでなく、笑いが「生じる」のです。

「失」という字には「失う」のほかに「誤る」の意味もあります。たとえば「過失」といえば「ミス」のことを指します。つまり「失笑」は、つい「誤って笑ってしまう」といった意味となります。

しかし、二つの表意文字の意味を捉えても、とても理解しがたい熟語もあるものです。その最たるもののひとつは「中座」でしょうか。「鈴木教授は、出張で出発しなければならなかったため、会議を中座しました」のように使われます。

「中」と「座」という漢字からは、「中ほどで座る」といった意味のように感じられます。つまり、「会議に途中からやってきて、席に着く」のようなイメージがあります。

しかし、「中座」の意味は逆で「途中で座を外すこと」を指します。上の例文をべつの表現にすれば、「鈴木教授は、出張で出発しなければならなかったため、会議の場から離れました」などとなるでしょう。

「中」にも「座」にも、とりわけ「離れる」といった意味の要素はありません。「座」という文字に「席を外す」という意味を付与するのは、普通に考えるとむずかしいものです。語源辞典などを見ても、どうして「中座」が「途中で席を外す」の意味なのかの説明は見られません。

文字の意味するところとは一見、異なる、あるいは逆のように思える熟語は、転じて使われるようになる可能性が高くあります。
| - | 23:51 | comments(0) | trackbacks(0)
「疲れ」に病とちがう愛でる要素


疲れというものは、おもに脳の自律神経というしくみのなかで生じる現象とされます。疲れはからだが発する警報のようなものですので、疲れを感じたら体を休めるべきなのでしょう。

疲れることが「避けるべきこと」だとすれば、疲れをとりのぞくことは「そうすべきこと」となります。このとき、ほんとうは疲れがあるのに、それを感じさせないようにするのは対症療法なもの。これをつづけていると、疲れがけがや病気などに発展してしまうこともあります。

いっぽう、根本治療のようなものに位置づけられるのは、「そもそも疲れにくいからだにする」ということです。疲れることが「避けるべきこと」だとすれば、疲れないようにするというのが本来、目指せるべきものです。

では、疲れというものは「避けるべきこと」なのでしょうか。

とりわけ日本人の国民性には「疲れ」というものを、心の底から避けようとしているほどの忌避感はさほどないのではないでしょうか。

たとえば、「風邪」あるいは「がん」といった病に対しては、ほぼすべての人が、できるだけ避けたいとなるでしょう。

もちろん「疲れ」に対しても、活動に制限がかかりますから避けたいという気もちが現れます。ただ、その反面、疲れることを受けいれる気もちを、すくなくとも日本文化圏の人びとはもっているのではないでしょうか。

「お疲れさま」は、仕事などでの疲れをねぎらうときに使うことばです。このことばが、あいさつとしていまもふつうに使われています。疲れというものに重大で深刻であるという意識を人はあまり抱いてない証拠ではないでしょうか。

また、「心地よい疲れ」ということばもよく聞きます。からだを動かしてはたらいたり、一日じゅう集中してはたらいたり、あるいは運動にうちこんだりしたあとに、感じられるのが「心地よい疲れ」です。疲れることには心地よさをともなうことがある、つまり、疲れにはただたんに避けるだけでない、よい側面もあるということを、より端的にあらわした表現ととれます。

疲れている最中には、「もうきょうは仕事しないでいいや」というある種の達成感や解放感がともないます。そして、疲れがとれてくると、また元気にからだを動かせるようになります。これらのプラスの要素が、疲れることへの不快感や、疲れてからだが思いどおりに動かないことへの不自由感を超えていれば、疲れというものを人は感情として受容しうるのではないでしょうか。
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「コラーゲンの健康効果は“証拠不十分”?」


ウェブニュース「JBpress」できょう(2016年)8月12日(金)「コラーゲンの健康効果は“証拠不十分”? コラーゲン食品の機能性を問う(前篇)」という記事が配信されました。

コラーゲンほど、身近でありながら、体への効果をめぐって賛否の絶えない物質はそうないのではないでしょうか。

身近であるというのは、人のからだのたんぱく質の3割ほどを占めている物質だということです。とくに皮膚、骨、軟骨のまわりには、多くのコラーゲンがあります。

しかし、歳をとるとともに、人の細胞のコラーゲンをつくる能力が落ちていき、皮膚がみずみずしさを失ったり、骨が脆くなったり、関節が痛くなったりしていきます。

不足したコラーゲンを外から体にとり入れる方法として、注射はある程度、効果が認められているようです。いっぽう、コラーゲンを含む食品を食べることについては、「からだにとってなんの意味もない」という話もあれば、「効果はある」とする話もあります。

コラーゲンに詳しい専門家は、どう見ているのか。記事では、国立健康・栄養研究所食品保健機能研究部長の石見佳子さんが見解を答えています。

まず、ひとつ明らかに言えることは、コラーゲンをそのまま食べものとして体に入れても、体への作用は考えにくいということ。「コラーゲンをそのまま食べても基本的には分解されないので、生体内では消化・吸収されにくいものです」と石見さんは話します。

そこで、コラーゲンの健康効果を標榜するような食品企業は、コラーゲンを細かく分解したコラーゲンペプチドという状態にして、これを売っています。コラーゲンペプチドであれば、体内で吸収されてアミノ酸になると考えられるからです。

コラーゲンペプチドをめぐっては、人が摂取したあとヒドロキシプロリンというコラーゲンペプチドに特有のアミノ酸が血液のなかで増えたといった実験結果が上がっています。

これだけであれば、コラーゲンペプチドが人のからだのなかでアミノ酸になったということを示すだけで健康効果があったとまではいいがたいですが、近年はコラーゲンペプチドを口から摂取した人のあいだで、床ずれの治療効果があったとする研究結果なども報じられています。

しかし、石見さんの見解は「現時点ではエビデンスを見るかぎり、人における有効性の根拠はまだまだ足りないと考えたほうがよい」というもの。これが前篇での結論になっています。

では、どのような状況になれば、有効性の根拠が「十分に足りた」といえるようになるのか。来週19日(金)掲載予定の後篇ではこのあたりの話が展開されることでしょう。

「コラーゲンの健康効果は“証拠不十分”? コラーゲン食品の機能性を問う(前篇)」はこちらです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47589

この記事の取材と執筆をしました。
| - | 23:03 | comments(0) | trackbacks(0)
人は「こう」をけっこう使う


国語辞典に載っていないことばを、人は人と話しているときに発しているものです。

主語や修飾語にならず、ほかの文節とは独立して用いられる品詞を「間投詞」または「感動詞」あるいは「感嘆詞」とよびます。典型的な間投詞は、「はい、そうです」と言うときの「はい」とか、「もしもし、山下です」というときの「もしもし」などです。

「はい」や「もしもし」といった間投詞は、かなり本人が意識して発するものかもしれません。しかし、無意識のうちに発している間投詞もあるものです。

「空港の駅に着くと、電車を降りてから、重い荷物を持って、こうエスカレーターに行くわけですよ」

「部屋に入ってみるとね、まんなかにぽつんと大きな箱がこう置いてあるわけですよ」

「テレビをこう観てたらさ、高校時代の友人が出てきたわけ」

このみっつの発話のなかに出てくるのは「こう」です。国語辞典には「こう」の項目はありませんが、おそらく間投詞と考えてよいことばでしょう。

ラジオを聞いたり、取材などを録音した音声を聞いていたりすると、かなりの頻度で人が「こう」を発していることがわかります。

「こう」は、おそらく「こうやって」や「こうやって」と言うときの「こう」と大いに関係があるのでしょう。「こう」を発する人は、自分が経験または想起している景色が頭のなかにあるのでしょう。それを相手と共有したいのだけれども、なかなか表現が出てこない。そんなときに「こう」を発して、ことばとことばのあいだを詰めて、話を進めようとするようです。

「こう」とおなじようなことばに「なんかこう」があります。これについては、『実用日本語表現辞典』につぎのような説明があります。

「名状しがたいものを何とか説明しようとする場合などに用いられる言い回し。『何かこう、しっくりこなんだよねえ』などのように言う」

「こう」よりも「なんかこう」のほうが、「なんか」がついている分、このことばを発する人のなかでも、納得していない気もちのようなものがありそうです。

英語には“You know”というの話ことばがあります。これはあえて日本語に訳すと「それであのー」とか「ほらあの」とかになります。“You know”は直訳すれば「お前、知っているだろう」とでもなるでしょうか。これも日本語の「こう」の語感ににています。

相手に自分の心に抱いている光景などを伝えたいときに「こう」が出るわけですから、その話をしている人は、かなり積極的に伝えたい気もちがあると考えてもよさそうです。

参考資料
実用日本語表現辞典「何かこう」
http://www.weblio.jp/content/何かこう
| - | 23:40 | comments(0) | trackbacks(0)
JR飯田橋駅西口駅舎位置がえ、将来は蛇行ホームなくなることに


東京・飯田橋にあるJR飯田橋駅の西口駅舎が(2016年)8月7日(日)からかわりました。これまでは、早稲田通りのお堀のうえにかかる橋のところに駅舎がありましたが、7日からは目白通りへと向かう道路ぞいになりました。

これまでの早稲田通りに面した改札口を使っていた人は、飯田橋駅で電車を降りると長い上り坂の廊下を進み改札をしていました。JR中央・総武線の線路は、早稲田通りの橋の下をくぐっていましたから、線路を階段でまたがずにすんでいました。しかし、新しい駅舎では、階段をのぼって改札を抜け、階段をおりて道路へと出ていくことに。

駅舎が移ってから初めてホームを降りた人は、プラットホームから遠目に改札口のほうを見て「あれ、なんだか改札への廊下の坂が急になったなぁ」などと感じるかもしれません。ほどなく緩やかな坂は急な階段に変わったことに気づくことになりますが。

JR東日本の案内によると、新しい西口駅舎は「仮駅舎」。大規模な駅の工事をするにあたって必要な移動のようです。

その大規模な工事とは、ホームを西側、つまり市ヶ谷駅方面に200メートルほど移すというもの。その大きな理由は安全対策のためのようです。

いまの飯田橋駅のホームは、神田川から外堀へとつづく大きく曲がった地形の上にあり、ホームも曲がっています。電車はある程度長いものですので、ホームに停まると電車とホームのあいだにすきまができてしまいます。そのためJR中央・総武線が飯田橋駅に停まるとすぐ、駅員が「足元にご注意ください」とマイクでよびかけています。また、ホームの下には注意を促す回転灯や、地面に落ちてしまった人を検知する転落検知マットなどもあります。

この曲がったホームを使うのをやめて、まっすぐなホームを使うため、ホームそのものを200メートル移すということです。

廃止された早稲田通りぞいの駅舎は、すでに看板が撤去され、シャッターが降ろされています。しかし、うってつけの待ちあわせ場所だったこともあり、閉じられた駅舎の前で待ちあわせをする人も何人かいます。


閉鎖された旧西口駅舎

いつごろ新たなプラットホームの飯田橋駅に生まれかわるかは、まだ発表されていないもよう。

ホームが大きく曲がっている駅はめずらしく、JR飯田橋駅の電車とホームのすきまは、当地の“名物”のようなものにもなっています。このホームが消えていくのは惜しいと考える人もいるかもしれませんが、転落事故などを防ぐ安全目的のための工事であれば、これもしかたありますまい。

参考資料
東日本旅客鉄道 2014年7月2日「JR中央線飯田橋駅ホームにおける抜本的な安全対策の着手について」
https://www.jreast.co.jp/press/2014/20140702.pdf​
日刊建設工業新聞 2016年8月5日付「JR東日本 飯田橋駅改良(東京都千代田区)8月下旬から前田建設JVで既存解体」
http://www.decn.co.jp/?p=74441
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二酸化炭素を化学や物理のしくみで吸いとる


二酸化炭素は、木や石炭などの材料である炭素を燃やすことなどで生じます。人が活動するときにはものを燃やして熱エネルギーなどを得ますから、二酸化炭素が多く出ることになります。

すでに30年ちかくにわたりいわれていることですが、もし、二酸化炭素が温室効果によって地球温暖化をもたらす原因であり、かつ地球温暖化が人間をふくむ生きものに悪影響を及ぼすとすれば、大気中の二酸化炭素の量をできるだけ増やさないようにしなければなりません。

そこでいま、二酸化炭素を出さないようにする方策とともに、生じてしまう二酸化炭素を大気に放たないで集めて貯める技術が考えられています。「二酸化炭素回収・貯留」とよばれる技術です。英語では、“Cabon dioxide Capture and Storage”の一部の頭文字をとってCCSなどといいます。

目に見えない二酸化炭素をどのようにして集めるのか。その方法はおもに、化学的なしくみを使ったものと、物理的なしくみを使ったものにわけることができます。

化学的なしくみを使ったもので、もっとも実用化に近いのが、二酸化炭素の気体を吸いとる液を使う方法です。化学的なしくみを使う方法のなかで、いまのところこれがもっとも主流であるため「化学吸収法」とよばれます。

二酸化炭素を吸いとるための液体には、アンモニア(NH3)の水素原子をべつの分子に置きかえた「アミン」という化合物を使うなどします。この液体に二酸化炭素の気体を触れさせると、二酸化炭素が吸いとられます。そして、これを加熱すると、純度の高い二酸化炭素になるということです。

なお、アミンなどを液体でなく固体とくみあわせて、固体で二酸化炭素を吸いとる技術も考えられています。

化学的なしくみを使った方法で、もうひとつ考えられているのが、「酸素燃焼法」というもの。二酸化炭素を濃くふくむ気体を循環させながら、酸素を使って燃やす温度を下げつつ燃やします。すると、気体のなかの二酸化炭素の濃度は95パーセントまで上がるということです。

いっぽう、物理的なしくみを使った方法でも、二酸化炭素を吸いとるための材料を使います。高圧の状態で、アルコールの一種であるメタノールや、ポリエチレングリコールという化合物からなる液体で、二酸化炭素を物理的に吸いとります。吸いとるための液体の表面の分子と、漂う二酸化炭素の分子のあいだには、分子間力という引きあう力がはたらきますので、これで二酸化炭素を吸いとるわけです。

試算では、化学的な方法より、物理的な方法のほうがしくみがかんたんで、費用も安く見積もられています。たとえばアミンなどを使った化学吸収法では、二酸化炭素1トンを集めるのに4000円かかるに対して、物理吸収法では半額の2000円で済むといいます。

このほか、すこし先の2030年ごろに実現することをめどとしている技術に、膜分離法があります。これは、二酸化炭素を通すまたは通さないような膜をつくり、これにより二酸化炭素を集めるというもの。しくみそのものは単純なのでしょう、試算では二酸化炭素1トンを吸収するのに1500円で済むとされています。

二酸化炭素が大気中に放たれるべきでない気体であるとして、それをもとから生じさせないようにするのでなく、生じさせても大気には放たないという考えは、人類の営みからすれば「出ちゃっても集めればいいもんね」ということなので、節約的というより対処策的な方法であるといえましょう。

参考資料
資源エネルギー庁 2015年6月「CO2回収、利用に関する今後の技術開発の課題と方向性」
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/jisedai_karyoku/pdf/002_01_00.pdf
日本鉄鋼業 COURSE50「CO2を分離・回収する技術」
http://www.jisf.or.jp/course50/tecnology02/
みずほ情報総研、産業技術総合研究所、千代田化工建設「平成25年度シャトルシップによるCCSを活用した二国間クレジット制度実現可能性調査委託業務報告書」
https://www.env.go.jp/earth/ccs/attach/mat01.pdf
| - | 22:48 | comments(0) | trackbacks(0)
一人ひとりに「ぇす」「ぇす」

写真作者:Michael Coghlan

日々おなじことをくりかえすような仕事をもっている人はいます。しかし、日々やっていることがおなじに感じられても、じつはきのうときょう、そして、きょうとあしたですこしずつ異なっていることもあるものです。

ある営業マンが、ある日の夕方、とある情報通信の大企業を訪れました。懇意にしているその企業の社員が、地方支店から本社へと異動となり、あいさつのために初めて本社に訪れることになったのです。

1階の入口の受付のわきには、警備服を着た守衛が立っています。大企業の受付にはよくある光景です。

営業マンは、この守衛がなにやらくりかえし口からことばを発していることに気づきました。耳を立てて聞いてみると……。

「ぇす」「ぇす」「ぇす」「ぇす」「ぇす」「ぇす」「ぇす」「ぇす」「ぇす」「ぇす」「ぇす」「ぇす」「ぇす」「ぇす」

定時となり会社をいっせいに出ていく従業員たち一人ひとりに「ぇす」と声をかけています。初めてこの大企業を訪れた営業マンは、「どうやら『ぇす』は帰っていく従業員たちに対するあいさつのようだ」ということまでわかりました。「けれども、『ぇす』はなにを意味するのだろう……」。

そうこうしているうちに、懇意にしている社員が受付まで迎えに降りてきました。「このたびは本社へのご栄転おめでとうございます」「いやぁ、栄転だなんてとんでもないですよ」。

エレベータに乗っているとき、営業マンは親しさから思いきって聞いてみました。「あのぉ。ところで1階の守衛のおかた、『ぇす』『ぇす』っておっしゃってましたが、あれはなんと……」。

すると、社員のほうは「ああ、あれね」と答えました。すでにこの社員も「ぇす」を職場での話題にしていたようです。「ぼくも最初はなんだかわからなかったんです」。

「あの守衛さんは、会社を出て帰っていく人すべてに『お疲れさまです』を言っているんです」

「『お疲れさまです』ですか」

「昔からこの本社で勤めている者は、最初のころあの守衛さんが『お疲れさまです』と言っていたのを知っていました。ところが、日々、多くの従業員にあいさつをしているうちに、だんだん『お疲れさまです』が短縮していって、いまでは『ぇす』になっているそうなんです」

「はあ……」

社員が本社勤続の社員から聞いた話、当初の「お疲れさまです」が「お疲れさーっす」となり、その後「お疲れっす」「おつぁっつ」「おぁっす」となっていき、いまは「ぇす」まで短くなったとのことです。

「ただね、この『お疲れさまです』の短縮化の話を、本社でずっと勤めていたほかの社員に聞いても、『ああ、そういえば短縮されたかもね』ぐらいの反応しかなくってね。たぶん、日々ちょっとずつ短くなっていったから、あいさつを聞いている本社の社員たちは、あまり気づかないんだと思います」

若い人の俗語には「ありがとうございます」の短縮形で「あざっす」というあいさつがあります。また、体育会系の人びとのあいだでは「こんにちは」が短縮化し、さらにどうしてだか「です」がついてそれも短縮化した「ちっす」というあいさつもあります。

「ぇす」もこうした変化の類なのでしょう。「一人ひとりにあいさつをする」という使命と、「お疲れさまです」では時間がかかってしまうという制約のなかで、「ぇす」にまで変化を遂げたのでした。
| - | 23:31 | comments(0) | trackbacks(0)
相手の名前を忘れてしまう
名刺交換は初対面のとき一度だけというのが社会人の常識のようです。たまに、営業職の人が自分や会社の名前を覚えてもらうため何度も名刺を渡すことはありますが、たいてい名刺交換は一度きりです。

当然ながら、二度目に会う人とは名刺交換しません。相手の名前は知っていて当然という前提が生まれます。

しかし、ここで問題が起きます。相手の名前を思いだせないという問題です。

これから会う人の名前を忘れているようなことがあるものかとなりますが、つぎのようなことがあると、これから会う相手の名前を思いだせない問題が起こりえます。

前回の初対面で、訪問先の部屋に入ると、なんと、8人の人が待ちかまえていました。

「はじめまして、所長の鈴木です」「私は副所長の佐藤と申します」「おなじく副所長の高橋です」「開発担当の田中です」「企画担当の伊藤です」「営業担当の渡辺です」「営業技術担当の山本です」「広報の中村です」

ひととおり名刺交換をしました。しかし、相手が8人ともなると、顔と名前を瞬時に一致させてすべて覚えるようなことは、まずもってできません。

下手をすると、その初対面の場で早くもだれがだれだかわからなくなってしまいます。名刺交換する順番と席順がかならずしも一致するわけではないからです。とはいえ、会ったばかりですので、顔と名前が一致しなくても、その場は許される雰囲気がなくもありません。名前でよばなくても済むこともあります。

より問題が深刻になるのは、数日後などに再会するときです。

ふたたび8人全員が待ちうけていることはないとしても、鈴木さん、高橋さん、田中さん、伊藤さん、渡辺さん、山本さん、中村さんのうち何人かがその場にいるとします。

初対面のとき、相手が「山本浩二といいます。プロ野球選手といっしょです。顔も似てるでしょ」などと印象に残ることを言ってくれていれば、「あ、山本浩二だ」などと思いだせるかもしれません。また、相手が気をつかって「高橋です。今日もよろしくお願いします」などと再会のはじめに名乗ってくれれば顔と名前が一致します。

しかし、そうしたありがたい例は、現実社会においてはむしろすくないもの。

「うーん、この人、名前なんだったかなー」と心のなかで思いながら、「それにしても今日は暑くなりましたねぇ」などと、名前を思いだせない相手と話をはじめることになります。

たまに、名前がわからない人と同席をした人が、内輪どうしの会話で「渡辺くん、エアコンつけて」などと、ぼそっと口にすることがあります。このように情報が自然発生するのも助かるものです。

しかし、「渡辺くん」という情報を入手するまでずっと名前がわからず「渡辺さん」と言えなかったのに、「渡辺くん」情報が入ったあとから急に、「これは渡辺さんにお聞きしたいのですが……」などと名前入りで話をしだすと、相手側から「こいつ、たぶん名前を忘れていやがったな」と感づかれることでしょう。

ここは心理的な駆けひきになります。最後まで「渡辺さん」と名前はよばずにその場を貫くという手もあります。

しかし、名前を覚えている相手に対しては「山本さん」「佐藤さん」などと名前でよんでいるなかで、「渡辺さん」だけ名前でよんでいなかったとしたら、名前でよばないこと自体が不自然となります。その場合、「渡辺くん」と聞いたあとはさりげなく「渡辺さん」とよびはじめて中和していくのがよさそうです。

二度目に会う人の名前がわからなくなってしまう問題には、どのような対策があるでしょうか。

まず、初対面のとき交換した名刺を、二度目に会うときに持っていくことは、完全ではないものの有効な打てる手段になります。前回、名刺交換したのは、鈴木さん、高橋さん、田中さん、伊藤さん、渡辺さん、山本さん、中村さん。人の名前には、小林さん、加藤さん、吉田さん、山田さんとほかにもたくさんあるなかで、名刺をもっていけば8人の名前だけに限定することができるからです。

もうひとつは、初対面のとき相手にわからないように、相手の名前と、顔や体の特徴的なところとを一致させるような記録を残しておくことも対策になります。たとえば、「誰々さんはメガネをかけていて髪は七三わけ」「誰々さんは鷲っ鼻」ということでそのような顔を描いて、名前かイニシャルを添えておくといったものです。



自分のことを名前でよばれることを人はうれしがるもの。自分の名前という固有のものに対して相手が認知していることが、自分のことを認められたい気もちを満たすことになるからでしょう。
| - | 23:52 | comments(0) | trackbacks(0)
「トランクス」は“Boxer”で、「ボクサー」は“Trunks”

ある人がこんなことを言いました。「そういえば、ボクシングの選手は試合のとき、ボクサー・パンツを履かないで、トランクスを履いているね」。

ボクサー・パンツとは、辞書では「スパッツを短くしたような形状のブリーフ。ボクサー・ブリーフ。ボクサー・ショーツ」とあります。「ボクサー・パンツ」で画像検索すると、つぎのような画像が並びます。


「ボクサー・パンツ」の画像検索結果

いっぽう、トランクスのほうは、辞書では「水泳・ボクシングなどで用いる、男子用のパンツ」とあります。ボクシングで使われるパンツとが「トランクス」というわけです。「トランクス」で画像検索すると、アニメ『ドラゴンボール』のトランクスという登場人物ばかり出てくるので、「トランクス・パンツ」で画像検索すると、つぎのような画像が並びます。


「トランクス・パンツ」の画像検索結果

これらの画像から、「ボクサー・パンツはぴちぴち」「トランクスはゆるゆる」ということがわかります。

ところが、英語圏では、ボクサー・パンツとトランクスのかたちは、日本でのものとは逆になるというのです。「ボクサー・パンツ」は和製英語のようなので、試しに“Boxer shorts”で画像検索すると、つぎような画像が並びます。


“Boxer Shorts”の画像検索結果

ゆるゆるのかたちのパンツであることから、日本でいうところの「トランクス」といってよさそうです。

では、英語圏でのトランクスはどうかというと、“Trunks pants”で画像検索するとつぎのような画像が並びます。


“Trunks Pants”の画像検索結果

どれもこれもぴちぴちのパンツであることから、日本でいうところの「ボクサー・パンツ」といってよさそうです。

ここまでをまとめると、日本語の「ボクサー・パンツ」は英語の“Trunks Pants"であり、日本語の「トランクス」は英語の“Boxer Shorts”。ボクシング選手は試合のとき、日本語でいう「トランクス」、英語でいう“Boxer Shorts”を履く、ということになります。

当然ながら、ボクサー・パンツやトランクスは英語圏から日本にやってきたわけであり、英語圏でのふたつのことばの使われかたがもともとのものだったといえます。

英語の“Trunks Pants”の“Trunk”とは、英語辞典によると、もともと「枝を切りとられた幹」という意味でした。枝を切りとられた幹のようなかたちの履きものが2本足分で、ぴちぴちの下着、つまり“Trunks”というのは、直感的に受けいれやすいものです。

いっぽう、英語の“Boxer Shorts”の“Boxer“は、ウィキペディアによると、「脚の動き(フットワーク)がとても重要となるボクシング選手に着用されるショーツにちなんで、1944年に全周囲柔軟なショーツとして使われるようになった」とあります。

では、どうして日本語では逆転現象が起きたのか。これには、布地がひざ上あたりまであるようなかたちのパンツ、つまりいま英語でいう“Boxer Shorts”が日本で普及したとき使われたことばが「トランクス」で、のちにいま英語でいう“Trunks Pants”が日本に普及したとき、それまで使われていた「トランクス」とはよびかたを区別するため「ボクサー・パンツ」が使われるようになったという説がいわれていますが、真実は定かではありません。

なお、ボクサー・パンツとトランクスのことばの問題を考えれば考えるほど、どっちがどっちなのかと頭が混乱してきます。

参考資料
スーパー大辞林
ウィズダム英和辞典
Wikipedia“Boxer shorts”
https://en.wikipedia.org/wiki/Boxer_shorts
ウィキペディア「トランクス」
https://ja.wikipedia.org/wiki/トランクス

| - | 19:01 | comments(0) | trackbacks(0)
「コーヒーハウス蘭」のカツカレー――カレーまみれのアネクドート(81)


ターミナル駅の周辺にはスターバックスやドトールコーヒーなどのカフェがあります。いっぽう、乗降客がそれなりにいる地方都市の駅前には個人経営の喫茶店があります。

店を開いてから長いこと経っている個人経営の喫茶店には、長くつづくそれなりの理由があるのでしょう。

兵庫県高砂市の山陽電鉄荒井駅の駅前にあるのは「コーヒーハウス蘭」。駅を出ると、中華料理屋、居酒屋、居酒屋、カラオケハウスが道沿いにあります。カラオケハウスのとなりに「コーヒーハウス蘭」はあります。

店の入口の看板には「SINCE1972」の文字が。じつに44年も店がつづいていることになります。

平日昼間の店のなかは、午後の仕事に向けて準備をしていると思わしき人の姿が見られます。荒井駅の近くにあるのは三菱重工業の高砂工場。商用などで工場を訪れる人のなかには「まだ約束の時間までちょっとある」といってこの喫茶店に入る人も多いことでしょう。中華料理屋や居酒屋では長居はなかなかできません。

定番のメニューがあることも、こうした喫茶店が長くつづく理由なのでしょう。奇をてらわず、あって当然のメニューが店の前の看板に掲げられている。これが初訪客に「ここでいいか」と思わせ、再訪客に「またここにするか」と思わせる、いわば安心感をあたえるのかもしれません。

喫茶店の定番メニューといえばカレーライスは欠かせません。他聞にもれず「コーヒーハウス蘭」にもカレーのメニューがあります。ランチのメニューで鶏唐揚げ定食や焼きそばなどとともに掲げられているのはカツカレーです。

カツは薄めながらからっと揚げてあり、6等分に切られています。肉は固くなく、スプーンで切ることもできるくらい。カレールゥは甘すぎずも辛すぎずもありません。福神漬も添えられています。

ひとことで言うと、特徴的なカツカレーではまったくありません。

どこにでもあるような駅前の、どこにでもあるような喫茶店の、どこにでもあるようなカツカレーを「コーヒーハウス蘭」では食べることができます。

おそらくこの店の歴史のなかで、カツカレーが評判になり客足が増えるといったことはなかったことでしょう。それでも、メニューのなかにカレーがあたりまえのようにある。このことは、44年間も店がつづいていることに寄与していることにちがいなさそうです。
| - | 23:05 | comments(0) | trackbacks(0)
ガスでエネルギー、蒸気でもエネルギー
きのう(2016年8月3日)のブログの記事「ガソリンエンジンとガスタービン、基本のしくみはおなじ」では、ガスタービンについての話をしました。ガスタービンとは、圧縮した空気を燃料で燃焼させて、生じた高温で高圧のガスで羽根を回して動力を得る装置のことです。

火力発電のしくみのなかでもガスタービンは使われます。火力発電のうち、液化天然ガスや石油などを燃料とする方式では、高温で高圧のガスを生じさせてガスタービンの羽根を回して動力を得ます。

ただし、火力発電の方式は、ガスタービンを使うものだけではありません。蒸気タービンというべつの種類のタービンを使う発電のしかたもあります。燃料を使って水を沸騰させることができるので、その沸騰した蒸気の膨張する力をつかって蒸気タービンの羽根を回して動力を得るわけです。この発電方法は「汽力発電」などともよばれます。

液化天然ガスなどの燃料を使う火力発電では、ガスタービンを使って発電することができるし、蒸気タービンを使って発電することもできるわけです。そうだとすれば、おなじ燃料で、ガスタービンも蒸気タービンも使って発電すれば、エネルギーの効率がよくなります。こうした考えから、「ガスタービン複合発電」(CTCC:Gas Turbine Combined Cycle)とよばれる発電技術が開発され、火力発電所で使われています。

まず、燃料で燃焼して生じたガスを使ってガスタービンの羽根を回します。その動力を、発電機によって電気エネルギーに換えます。これがひとつめの発電です。

さらに、その過程で生じる熱を使って水を沸騰させて蒸気を生じさせ、この蒸気を使って蒸気タービンの羽根を回します。その動力を、発電機によって電気エネルギーに換えます。これがふたつめの発電です。

ガスタービンを使って発電をするときにどうせ熱が生じるのだから、それも発電に使ってしまおうという考えかたが、ガスタービン複合発電にはあります。


ガスタービン複合発電もおこなわれている中国電力水島火力発電所
写真作者:Phronimoi

なお、ガスタービンについては、燃料を使って燃焼させて生じるガスの温度が高いほど、得られる動力も高くなります。そのためガスの扱える温度をいかに高くするかが、ガスタービンの技術の大きな課題といえます。

日本企業としてガスタービンを製造する三菱重工業は、2011年2月から1600度のガスを扱うことのできるガスタービンの運転を実証施設ではじめました。実証とは、やってみてできることを確かめることをいいます。この温度になると、タービンの羽根を熱に耐えさせることが大きな技術面での課題となるようです。

その後も、ガスタービンの扱える温度を高めるための技術開発は進み、いまは「1700度級」とよばれるガスタービンの開発が進められています。

ちなみに、火力発電の燃料のなかでも石炭を燃料にしてガスを生じさせてガスタービンの羽根を回し、さらにその過程で生じた熱で蒸気タービンの羽根を回す方法は「石炭ガス化複合発電」(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)とよばれています。このブログでは2016年7月20日の記事で紹介しました。

参考資料
電気事業連合会「汽力発電」
http://www.fepc.or.jp/enterprise/hatsuden/fire/kiryoku/index.html
三菱重工「ガスタービン複合発電(GTCC)とは」
http://www.mhi.co.jp/discover/earth/learn/gtcc_igcc.html
新エネルギー・産業技術総合開発機構 実用化ドキュメント「世界最高水準の
高効率・大型ガスタービンで、地球環境やエネルギー問題に貢献」
http://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201205mitsubishi_j/index.html
小熊英隆ら「高効率ガスタービン実現のための先進材料・製造技術開発」『三菱重工技法』2015年第4号
https://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/524/524005.pdf
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ガソリンエンジンとガスタービン、基本のしくみはおなじ

しくみはほぼおなじながら、使われかたなどによってよびかたが異なる装置があります。「エンジン」と「ガスタービン」はその例のひとつといえます。どちらも、ものを燃やすことで生じた高温で高圧のガスを直接的に使うことで動く「内燃機関」です。

「エンジン」と聞いて、多くの人が想像するものは車でしょうか。車はエンジンによって動きます。たとえば、ガソリンを燃料にする車には、ガソリンエンジンとよばれるエンジンが搭載されていて、これが車が走るための心臓部となります。


エンジン
写真作者:eiji ienaga

ガソリンエンジンでは、ガソリンと空気を混合させた気体をシリンダという円筒状の空間に入れて圧縮し、それを点火して爆発させたときの力でピストンを動かして動力を生じさせます。

また、燃料にガソリンでなく重油や軽油などを使うエンジンは、ディーゼルエンジンとよばれます。ディーゼル車とよばれる車には、ディーゼルエンジンが搭載されています。シリンダ内の圧縮された空気を爆発させるのに点火装置は使わず、重油や軽油を噴射させることで爆発させます。

いっぽう、ガスタービンは、ていねいに「ガスタービンエンジン」などとよばれるように、エンジンのひとつといえます。ガスタービンで動力を生じさせるしくみは、空気をとり入れて圧縮し、それを燃料で燃焼させるというもの。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのしくみと、基本的にはおなじです。

しかし、生じる動力の表現形が、ガソリンエンジンなどとガスタービンでは大きく異なります。ガソリンエンジンではクランクシャフトとよばれる部品が往復運動するのに対して、ガスタービンでは動翼とよばれる羽根状の部品が回転運動します。

たとえると、ガソリンエンジンでは「汽車汽車しゅっぽしゅっぽ」と歌いながら手を動かすときのような方向に動力が生じるのに対して、ガスタービンでは「きらきら光る、夜空の星よ」と歌いながら手を動かすときのような方向に動力が生じます(歌うときはくるっと回した手を逆に回して戻しますが、ガスタービンでは一方向に回りっぱなし)。

ガスタービンは乗りもののなかでは、航空機や船などに使われています。航空機のエンジンを「ジェットエンジン」などといいますが、これはガスタービンとおなじものと考えてよいでしょう。


ガスタービン

もうひとつ、ガスタービンが使われているおもな設備として火力発電所があります。液化天然ガスや石油などを燃料にして動翼を回し、そこで生じた動力の運動エネルギーを電気エネルギーに換えているわけです。

ガソリンエンジンよりもガスタービンのほうが、おなじ大きさでは得られる動力が大きくなります。つまり、ある大きさの動力を得たいときには、ガソリンエンジンなどよりもガスタービンのほうが小さいもので得られることになります。しかし、ガスタービンのほうが動翼を何枚も使うなどしくみは複雑で費用が高くなることもあり、車にはガソリンエンジン、飛行機にはガスタービンのように、使いわけがされています。

参考資料
東京大学工学研究科航空宇宙工学専攻 渡辺・姫野研究室「ガスタービンとは何か」
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/jetlab/gtsj/
川崎重工業「ガスタービンとは」
https://www.khi.co.jp/gasturbine/product/industry/gasturbine.html
電気事業連合会「ガスタービン発電」
http://www.fepc.or.jp/enterprise/hatsuden/fire/gas_turbine/

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「ぜろ」の“侵入”を受けつづけ……


数を1から9まで順に発音すると、たいていの人は「いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう」と言います。

しかし、「4」の読みかたには、「し」のほかに「よん」があります。また「7」には「しち」のほかに「なな」があります。「4階」を「よんかい」、「7キロ」を「ななきろ」と発音するように、なにかの単位とともに「4」や「7」を発音するときには、「し」よりも「よん」、「しち」よりも「なな」を使うことが多くなっています。

「し」や「しち」をふくむ「いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう」という発音のしかたは、中国からきた漢語としてのものだといいます。いっぽう、「よん」や「なな」は、「ひ、ふ、み、よ、い、む、な、や、こ」と読んでいく大和言葉としての読みかただといいます。

「階」という単位をつけて数を数えるとき、「いっかい、にかい、さんがい、よんかい、ごかい、ろっかい、ななかい、はちかい、きゅうかい」と発音します。つまり、基本的には漢語としての発音のしかたで数えていくなかで、「よん」と「なな」だけ大和言葉としての読みかたに代わっていることになります。

こうした、もともと使われていることばに、べつのことばが入りこんで、とって代わることを「侵入」というそうです。

数を数えるときに起きている「侵入」は、漢語と大和言葉のあいだだけのものではありません。たとえば、「パック」という単位をつけて数を数えるとき、「わんパック」「ふたパック」「さんパック」「よんパック」などと言います。「わん」は英語の“one”ですので、英語のことばの「侵入」が起きているわけです。

日本人が使う数の読みかたので、もっとも「侵入」が進んでいるのは「0」でしょう。「0」という数を口に出すと、「れい」または「ぜろ」、ときに「まる」などと発音されます。「0」の概念は18世紀後半には日本にも入ってきており、そのときは漢語である「零」つまり「れい」が使われていたはずです。しかし、明治時代、新たに英語が外来語として入ってくると「ゼロ」という発音のしかたが日本でもなされるようになったようです。

「ぜろ、いち、に……」と発音するのは、「いち、つー、さん……」と発音するのとおなじことになります。しかし、「れい」より「ぜろ」のほうが、ほかのことばにまちがえられるリスクもすくなく、数を数えるときには便利なのでしょう。これからも、「れい」が「ぜろ」の「侵入」を受けつづけていくのではないでしょうか。

参考資料
NHKラジオ深夜便 2016年7月17日放送「気になる日本語」
YAHOO! 知恵袋「0という数字が(あるいは概念が)日本で使われるようになったのはいつからなのでしょうか?」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1016899760
NHK放送文化研究所 最近気になる放送用語「レイ? ゼロ?」
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/term/103.html
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