2016.03.31 Thursday
記者が撮影する枚数はすくなめ
写真作者:Susanne Nilsson
雑誌やウェブの記事づくりでは、その話題について詳しい人や、その話題の当事者に取材をします。取材では、編集者、撮影者、ときにデザイン担当者も同行することがありますが、どんな取材でも欠かせないと考えられているのが、記者です。「聞いた人が書く」または「書く人が聞く」という不文律があるのでしょう。
記者がひとりだけで取材に臨むことも多くあります。このとき、記者は取材対象者に話を聞くほか、写真を撮るという役割も担います。一般的に、出版社の経営が厳しくなったため、カメラマンが取材に同行することは減ったといわれます。これを、記者が「自分で撮影もしなければならないのかよ」と後向きに思うか、「撮影もうまくこなして編集者に頼られよう」と前向きに思うかは、その人によりけりです。
実際に記者が撮影もする場合、撮影枚数はプロのカメラマンのときとくらべて多いでしょうか。すくないでしょうか。
おそらく、すくないのではないでしょうか。
もちろんプロのカメラマンは、記者が話を聞いている最中も、取材対象者を撮影しまから、その分をふくめれば撮影枚数が多くなるのは当然です。
しかし、記者が話を聞いている時間を除いたとしても、記者による撮影枚数はプロのカメラマンのときとくらべて、すくないのではないでしょうか。
よい写真を撮るためには、多くの枚数を撮ることが大切といわれます。取材対象者を1枚しか撮っておかなければ、たとえうまく撮れなくてもその1枚の写真を選ぶしかありません。でも、10枚撮っておけば、たとえ1枚目がうまく撮れていなくても、ほかの9枚から写真を選べばよいのです。
「プロは“下手な鉄砲、数打てば当たる”のようなことはしない。シャッター1枚に精力を注ぐんだ」という考えかたもあるでしょう。しかし、ほとんどの記者はプロのカメラマンではありません。プロでない人が撮影するのなら、多く枚数を撮っておくに超したことはありません。
それにもかかわらず、記者は、プロのカメラマンにくらべて、多く撮影しようとしません。その理由は、いろいろ考えられます。
「自分は記者なのであって、撮影者ではない。撮影はおまけのようなものだ」と考えている記者は多いでしょう。ほとんどの媒体では、記者が撮影も担うからといって、記者の報酬が増えるわけでもありませんし。
「自分は撮影者ではない。だから取材対象者を何枚も撮るのは場ちがいだ」と、無意識にでも考える記者もいるかもしれません。取材対象者と記者の双方が「記者による撮影とは、かんたんに終わるもの」と思いこんでいれば、当然、撮影枚数は多くはなりません。
「1枚または2、3枚、多くて4、5枚、撮るのが撮影というもの」とはじめから考えている記者もいるかもしれません。多くの枚数を撮れば、それだけうまく撮れている確率は高まるという考えが、もともとないのです。
もし、「自分はプロでないのに、取材対象者を何枚も撮影しては申しわけない」と思うのであれば、取材対象者に「私はプロのカメラマンではないので、申しわけありませんが、何枚も撮らせてもらいます」と断っておけばよいことです。
プロのカメラマンでも、そうでない記者でも、縦の構図、横の構図、右からの角度、左からの角度は、すべて撮っておくというのが撮影の基本とされています。