科学技術のアネクドート

「お席のほうは大丈夫ですか」「たぶん、大丈夫だと思います」


コーヒーのチェーン店では、買った品を店で飲まずにもって帰る客と、店のなかで飲んでいく客とがいます。

店で飲んでいく客に対する店の対応はさまざまです。たとえば、「コーヒーなどの商品を買ってくれたら、あとは飲む場所は貸すから、席は自分で探してね」という姿勢をとる店があります。こうした店では、店員はとくに客の席確保につとめることはありません。また、使った食器は客が戻すというかたちもよく見られます。

また、たとえば、「お待ちのお客さまは何名さまですか。こちらで飲んでいかれますか。では席をおとりしておきますね」という姿勢をとる店もあります。こちらなら、コーヒーなどを買ったものの席が埋まっていて店内を右往左往、といったことを避けることができます。

さて、このふたつの姿勢の中庸的な立場をとる店もなかにはあります。レジスターのところで、こんなやりとりが聞こえてきます。

店員「こんにちは。おもち帰りですか」
客側「いえ、こちらで……」
店員「お席のほうは大丈夫ですか」
客側「……」

「お席のほうは大丈夫ですか」とは、「(店内が混雑しているようだが、あなたの座る)お席の(確保)ほうは大丈夫ですか」といった意味のようです。

店側からこのように“確認”をされたことに対して、客側は「……」と憮然としてしまったようです。

その店を初めて使う、気性の激しい客は、店員の「お席のほうは大丈夫ですか」という確認に対して、「は、いま来たんだから、席が大丈夫かなんて知るか!」などとのたまうかもしれません。

そこまで気性の激しくない人も、大丈夫かどうかを確認されて、大丈夫かどうかわからなければ「わかりません」というのが正直なところでしょう。正直に応えるとつぎのようになります。

店員「お席のほうは大丈夫ですか」
客側「いえ、正直言って、わかりません」

あるいは、ものごとに対してあまり自信をもてないような性格の客は、こう応えるかもしれません。

店員「お席のほうは大丈夫ですか」
客側「ちょっと自信がありません」

客が自分の正直な心内をそのまま店員に伝えると、その場の雰囲気がやや乱れてしまうおそれがあります。もちろん、店員は「混んでいますので、さきにお席を確保なされることをおすすめします」などとさらにたたみかけてくるのでしょうが。

店員「お席のほうは大丈夫ですか」
客側「たぶん、大丈夫だと思います」

このぐらいの応えかたが、店員とのあいだの雰囲気を悪くせず、ささっと注文から支払いへと進もうとするときは無難そうです。さらにその前に「あ、」を、その後に「ありがとう」を加えると、雰囲気はよりよくなりそうです。

店員「お席のほうは大丈夫ですか」
客側「あ、たぶん、大丈夫だと思います。ありがとう」

店員の確認行為に対して客がそこまで気をつかうのをどうかと思う人もいるかもしれません。しかし、基本は人と人との対話なのであります。
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細胞質内のタンパク質が敗血症・リステリア症を抑える


感染症のひとつにリステリア症があります。リステリアとよばれる細菌が引きおこすもので、発熱や筋肉痛、胃腸炎などの症状があるほか、化膿したところから細菌がくりかえし血管に入っては循環し、重篤な全身症状を起こす敗血症などの病気につながることもあります。

これらのリステリア症や敗血症めぐっては、細胞のなかのあるタンパク質が発症を抑制するのに重要であるということがわかってきています。そのタンパク質は、High-mobility group box1(HMGB1)とよばれるものです。

ふだん、HMGB1は、細胞のなかの核にありますが、核の外の細胞質とよばれる部分や、さらに細胞の外側にまで放出されることがわかってきました。そして、核の外に放出されたHGMB1は、免疫系のしくみのなかで受容体に認識されて、免疫作用などを引きおこすサイトカインという物質の誘導を促すことがわかってきました。

では、このHMGB1をからだのなかで欠損させるとどうなるのでしょう。特定の臓器だけなどでHMGB1を欠損させることのできるマウスを使った実験では、このマウスが、 リポ多糖誘導性という性質で引きおこされた敗血症やリステリア症などを抑制しづらくなることがわかったといいます。結果、HMGB1を欠損させたマウスは、対照群のマウスよりも生存率が低くなることがわかったといいます。

この研究成果は基礎的なものであり、動物を実験対象としたものですので、これですぐに敗血症やリステリア症を抑える治療法が開発されるということにはなりませんが、リステリア症や敗血症などをふくむ炎症性の病気のしくみの解明につながっていくものと考えられます。

なお、HMGB1は、「高移動度グループタンパク質」とよばれる種類のタンパク質のひとつです。物質を装置を使って分類するための電気泳動法という方法で、移動性が高いことからこうよばれています。

参考資料
横浜市衛生研究所「リステリア症について」
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/listeria1.html
東京大学生産技術研究所 2013年12月4日発表「細胞質内タンパク質HMGB1が敗血症・感染症の抑制に重要であることを発見」
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_251204_j.html
シノテスト「HMGB1(High Mobility Group Box 1)とは」
http://www.hmgb1.net/products/
尾崎承一「High mobility group 1(HMG1)蛋白質とその自己抗体の臨床的意義」
http://igakukai.marianna-u.ac.jp/idaishi/www/296/07ozaki.pdf
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「川島酒造」の酒蔵秘伝大吟醸酒粕カレー――カレーまみれのアネクドート(72)


レトルトカレーは、お土産品としてとても“有能”な商品といえます。カレーそのものが万人の好きな食べものであるほか、レトルト食品であるため保存がきき、また費用もさほど高くつかないといった利点があります。そのため、いまや47都道府県で「ご当地レトルトカレー」の見られないところはありません。

滋賀県の琵琶湖の西岸に位置する高島市には、「酒蔵秘伝大吟醸酒粕カレー」というご当地レトルトカレーがあります。高島市新旭町旭にある川島酒造という酒蔵が売っているレトルトカレーです。

レトルトカレーの箱の裏側には、つぎのような説明が書かれています。

「近江の湖西路は、比良連峰を遥かにのぞむ風光明媚な土地柄。清酒松の花はこの恵まれた自然の中で創業以来150年余りたえず飲む人の健康を考え、本物の味を求めて酒造り一筋に歩んでいる蔵元です。又地域文化の守り手でありたいと願っております。そのような蔵元が丹精込めて作った『酒造秘伝 大吟醸 酒粕カレー』をぜひご賞味ください」

ほとんどが、酒粕カレーの説明でなく、この酒蔵についての自己紹介になっていますが……。orz。

川島酒造の創業は1865(慶応元)年。白米を50%以下まで精米してつくる大吟醸「松の花」を売りにしています。琵琶湖に注ぎこむ清らかな水と、地元の「山田錦」や「玉栄」などの米でつくります。

酒粕は、酒の製造工程のなかで、発酵後のもろみを漉して絞りとった残りかすのこと。この酒粕を大胆にもカレールゥのなかに混ぜこんだのが、「酒粕カレー」です。

「酒粕カレー」の実際の風味はどうでしょう。まず、スプーンでカレーを口に入れるよりすぐ前の段階で、酒粕の香りが鼻へと届きます。そして、口の中にカレーを入れても若干の酒粕の味を感じられます。

しかし、基本はカレーですので、その後は、玉ねぎやチキンエキス、ビーフエキスなどの入った通常のカレールゥの風味が届いてきます。さながら酒粕の風味は、”隠れているかいないかというくらいの隠し味”といったところ。

酒粕を入れることが、カレーの味の質を高めることにつながるかどうかは議論の分かれるところかもしれません。たとえば、いつも食べるすべてのカレーを酒粕入りにしたら、人はカレーをもっと食べるようになるか、食べなくなるか。後者かもしれません。

しかし、そのことと、ご当地カレーとして特徴があることとはべつの話です。おみやげとして、買った人が人に渡して「酒粕が入っているんだ」と話題になり、もらった人がつくって「酒粕が入っているな」と感じることができれば、ご当地カレーとしての存在感は十分にあるものといえましょう。

「酒蔵秘伝大吟醸酒粕カレー」は、川島酒造店頭のほか、ぐるなび食市場などで買うことができます。ぐるなび食市場のページはこちらです。
http://shop.gnavi.co.jp/matsu87/f-001/
川島酒造のホームページはこちらです(「酒粕カレー」の話は見当たりませんが)。
http://www.matsu87.jp
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自意識過剰が自分の行動を邪魔する


自分が人からどう見られているかを気にしすぎるさまを「自意識過剰」といいます。「過剰」ということばがつくくらいですから、自意識過剰の人は、自分が「人から見られている」と思うほどは、実際は人から見られていないのです。ただし、自意識過剰ぶりが強すぎるあまり、かえって人から見られてしまうことはあるかもしれませんが。

とくに都市生活を営む人のなかには、自意識過剰ぶりがその人の行動を制限してしまうということがあるようです。「ごくたまにしか合わない人に、自分のことを覚えられる」ことを忌避しようとする人がいるのです。

ある人が、百貨店のセレクトショップに客として行き、初めて会う店員にいろいろ相談しながら一着のスーツを買ったそうです。店員のていねいな対応ぶりに、機嫌よく店をあとにしたそうです。

初対面のときはこれでよいのです。しかし、この客にとっての自意識が、その後、自身の行動にじゃまをするのでした。

この客と店員は“顔見知り“の関係になりました。すくなくともおなじ店でふたたび会えば、店員は「あ、またいらしてくださったんですね。先日はありがとうございました。今日はなにをお探しで」などと声をかけてくることでしょう。

ところが、この客は、その店員に自分の顔を覚えられていて、「また会えたことをよろこぶ」ようなかたちで声をかけられることが嫌でたまらないというのです。

そのため、この客は、自分から積極的にふたたびその店で買いものをすることはしないし、それどころか店の構えている百貨店のフロアにさえ近づこうとしないといいます。店の前を通って店員に自分を気づかれることを避けるために。

もし店員が、客のその心境を知れば、「俺のことをそんなに避けようとするだなんて」と、さぞショックを受けることでしょう。

しかし、決して店員は接客時、その客に嫌な思いをさせたわけではありません。

友人や家族のような親しい間柄でもない人に、顔を知られて声をかけられるくらいなら、自分は人びととのあいだで匿名性を保っていたいと感じる人は、すくなからずいるようです。人口1000人くらいの小さな町では、このような自分の匿名性を保つ生活というのは、まずもってできないことです。

「気にかけられたくない」などという、まさに自意識過剰な意識が、この人の行動を邪魔しているのです。
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アパレル産業ねらいなら被服学科やファッションデザイン学科――ファッション業界への進路(2)
素材産業には国立大学の旧繊維学部系あり――ファッション業界への進路(1)



きのう(2015年)11月25日(水)の記事では、ファッション業界の“上流”にあるする素材産業に就職するための大学の進学先として、「繊維学」の名のついていた学部・学科を紹介しました。

ファッション業界のさらに“下流”にある、アパレル産業や流通業などに就職しようとするとき、視野に入ってくるのが「家政学」「被服学」「ファッションデザイン学」などの名のつく学部・学科です。

家政学とは、家庭生活に必要な家事などについての技術や理論を研究する学問のこと。そして、たいていこの家政学のひとつの分野に位置づけられるのが被服学です。被服学とは、着るものを中心に扱う学問分野のこと。たいてい、この分野を学べる大学では、「家政学部被服学科」のような学部・学科が置かれています。

たとえば、東京・目白台にある日本女子大学には、家政学部被服学科があります。大学がホームページで示している「被服学科履修モデル」には、つぎのような科目名、つまり授業名があります。

「衣服科学概説」「生活文化論概説」「衣服のための化学」「繊維材料学」「アパレル生産実習」「染色加工学」「色彩学」「消費生活論」「アパレルCAD演習」

将来の就職を見すえた具体的な科目名が並びます。また、理系的な要素の科目が多くあります。

また「主な進路」として掲げているのが、イッセイミヤケ、ジュンアシダなどのファッションデザインブランドの会社や、伊勢丹、オカダヤ、ユニクロなどのファッション品を扱う小売の会社など。

また、大学名に「家政」のつく東京家政大学には、家政学部装飾美術学科があります。同学科は「服飾を科学と文化の両面からとらえ『服飾文化』『服飾造形』『服飾生活科学』の全分野に対する基礎学力を備えた学生を世に出していくことを主眼」としているといいます。

同学科の履修モデルには、「日本服飾文化史」「西洋服飾文化史」「現代ファッション史」「服飾造形基礎」「アパレルCAD」「立体断裁」「ニット」「帽子」「染色加工学」などの科目名が並んでいます。

また、おもに学校名に「芸術」と名のつく大学などには、「ファッションデザイン学科」が設置されているところがあります。

たとえば、神戸芸術工科大学には、芸術工学部ファッションデザイン学科があります。大学ホームページのカリキュラム紹介には、「服飾美学」「民族衣装論」「ファッションコーディネイト」「ニットデザイン」「アパレルソーイング」「ファッション空間演出」などの科目名が並びます。服飾学科にくらべて、やはり芸術の方面からファッションについて学ぶという色あいは強そうです。

まとめると、ファッション業界のうち、すでに具体的に「素材産業に就職したい」と見すえている人は繊維学関連の分野へ、また「アパレル産業や流通産業に就職したい」と見すえている人は被服学科やファッションデザイン学科へ進むのは、就職に直結するひとつの手となるでしょう。

いっぽうで、大学進学時にそこまでまだ決まっておらず、なんとなく「ファッション業界に行けたら」と考えているぐらいの人はどうするか。国公立大学や総合大学志望の人は繊維学関連の分野が置かれている工学部や、知名度の高い女子大学の家政学部などは選択肢となりそうです。そうでなく、「手に職が身につけばいい」という考えの人は、自分の興味ある大学の服飾学科やファッションデザイン学科を志望するのも手かもしれません。

また、「ファッションも興味あるけれど、ほかの分野への就職もありかも」と考えている人は、繊維学関連の分野が置かれている工学部を目指すのは手です。大学に入って授業を受けてみて、学科を定めることができるからです。

ここで示した以外にも、志や技のある人は、べつの進路からファッション業界で活躍しています。了。

参考資料
日本女子大学「被服学科」
https://www.jwu.ac.jp/unv/faculty_department/human_sciences_and_design/clothing/
日本女子大学「家政学部被服学科 履修モデル」
https://www.jwu.ac.jp/content/files/unv/info_disclosure/5_carriculum/model_unv/2015/05.pdf
東京家政大学「(装飾美術学科)学びの流れ」
http://www.tokyo-kasei.ac.jp/Portals/0/data/college/kasei/kamoku/fukubi.pdf
神戸工芸工科大学「ファッションデザイン」
http://www.kobe-du.ac.jp/about/curriculum/fashion_design/
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素材産業には国立大学の旧繊維学部系あり――ファッション業界への進路(1)


ファッション業界への就職を視野に入れて大学に進学しようとする人は、どのような学部・学科への入学を考えればよいのでしょう。

ファッションの業界はごくごくおおまかに、上流工程から下流工程にかけて、素材産業、アパレル産業、流通産業でなりたっています。素材産業は、繊維、生地、紡績などに携わる産業であり、アパレル産業は、衣服、縫製、製造小売(SPA:Specialty store retailer of Private label Apparel)などに携わる産業です。また、流通産業はおもに百貨店、専門店、量販店などの小売に携わる産業といえます。

学部・学科を考えるとき、大きな分かれめになりそうなのは、素材産業を視野に入れているか、アパレル産業より下流を視野に入れているかです。

上流の素材産業とのかかわりでは、日本の大学ではかつて「繊維学部」という学部があり、いまもその系譜を継いでいる大学があります。

とくに国立大学で繊維学部からの流れを継いでいる学部・学科がいくつかあります。背景には、戦前に日本が養蚕などによる繊維工業を国力としていたことがあります。

信州大学には「繊維学部」があり、いまもこの学部名を通している日本で唯一の大学となっています。繊維学部の学科は、先進繊維・感性工学科、機械・ロボット学科、化学・材料学科、応用生物科学科に分かれます。

また、京都工芸繊維大学も国立大学で、学部は工芸学部のみですが、そのなかの生命物質科学域という学域には、先端的な繊維材料について学べる高分子機能工学課程があります。

なお、おなじく国立大学の東京農工大学の学部の一つである工学部の前身は、東京繊維専門学校でした。源流をたどると、1874年に設置された内務省勧業寮内藤新宿出張所蚕業試験掛という組織までたどれます。1949年に、東京農工大学繊維学部となり、さらに1962年に繊維学部が工学部になりました。ただし、いまはさほど繊維学を前面にうちだしている学科はありません。

この信州大学、京都工芸繊維大学、東京農工大学は、「三繊維大学」ともよばれています。

なお、信州大学と京都工芸繊維大学、それに大学院に繊維先端工学専攻という専攻のある福井大学の3大学は、文部科学省の「大学間連携共同教育推進事業」という事業で、次世代繊維・ファイバー工学分野の人材育成を目指した「繊維・ファイバー工学コース」という大学連合のコースを実施しています。期間は2013年度から2016年度までですが、事業終了後もなんらかのかたちで大学間の連携体制はつづいていくかもしれません。

いっぽう、アパレル産業より下流を視野に入れるとき、大学の学部・学科としては「家政学」「服飾学」「ファッションデザイン学」などのよび名のつくところが大いにかかわってきます。つづく。

参考資料
ファッション業界即解ナビ「図解・ファッション・ビジネスのしくみ」
http://www.fashionbiznavi.org/fbAll/fbSystem/
ウィキペディア「繊維学部」
http://www.ammanu.edu.jo/wiki1/ja/articles/繊/維/学/繊維学部.html
信州大学繊維学部「学部概要」
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/guidance/
京都工芸繊維大学「高分子機能工学課程」
http://www.kit.ac.jp/edu_index/school-science-and-technology-color/macromolecular-science-and-engineering/
東京農工大学「東京農工大学工学部の沿革」
http://www.tuat.ac.jp/~history/tuat_archives-100-000-000/tuat_archives-100-000-000-012/d1102a.pdf
文部科学省 大学間連携ポータル「繊維系大学連合による次世代繊維・ファイバー工学分野の人材育成」
http://daigakukan-renkei.jp/b006/
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自治体に「リサイクルセンター」、閉館や認知不足も


街には、「リサイクルセンター」とよばれる施設があります。とくに、東京やそのまわりの県などの人口の多いところに多いようです。「リサイクル」とは、資源を節約や環境汚染の防止のために、要らなくなったものなどを再生して使うことをいいます。では実際、リサイクルセンターはどのようなことをしているのでしょう。

民間企業や非営利団体などにも「リサイクルセンター」の名がついている組織がありますが、ここでは市などの地方自治体が設けているリサイクルセンターを見てみます。

たとえば、東京の練馬区には、関町、春日町、豊玉という三つのリサイクルセンターがあります。区立リサイクルセンターのホームページには「事業内容」の紹介があり、つぎのようなことがらが書かれてあります。

「環境・リサイクルについての普及・啓発」
「粗大ごみからの家具を販売」
「環境・リサイクル情報の展示・提供」
「資源回収」
「施設の貸し出し」
「環境への配慮した取り組み」

直接的にリサイクルにかかわるのは、「資源回収」や「粗大ごみからの家具を販売」でしょうか。資源回収については、古布、配食油、なべ・やかん、乾電池、充電池、紙パック、小型家電などを扱っているようです。また、家具の販売については、「区内の粗大ごみの中から、再使用可能な家具等を補修し、廉価で販売しています。また、食器などの小物類のお引取り・販売もしています」とあります。

直接リサイクルにかかわるような事業だけでなく、リサイクルの啓発にかかわる事業もしている点は、「リサイクル場」でなく「リサイクルセンター」とよぶのに合っています。ただし、練馬区とちがって、啓発にかかわる事業を紹介していない自治体のリサイクルセンターもあります。

「産廃・リサイクル・環境用語辞典」には「リサイクルセンター」の項目があり、つぎのように説明しています。

「分別回収したゴミも、資源としてリサイクル産業が受入れにくい状態である場合に、それを再度選別分離したり、加工する作業場。それに住民のリサイクル意識を向上させるための研修施設、自主的作業場、展示場などを備えたものもあり、それはリサイクルプラザと呼ばれている」

自治体のなかにはリサイクルセンターを閉鎖するところもあります。千葉県の市川市は、2015年3月まで「市川リサイクルプラザ」を運営してきましたが、3月に閉館したことを市のホームページは伝えています。

市民にとってはリサイクルの受皿がなくなってしまうわけですが、そのことに対して市は、「家庭で不用となり大型ごみとして出された家具やベビー用品を一部リユースさせていただきます」と掲げるほかに、「また、いらなくなった家具やベビー用品、電化製品、着物などはリユースショップを活用して、ごみにならないようにしましょう」としています。

なお「リユース」とは、要らなくなったものを再利用すること。リサイクルセンターの、粗大ごみからの家具の販売などの活動も、厳密にはリサイクルでなくリユースといえます。

自治体のリサイクルセンターについては、あまり市民の認知度が高いとはいえないようです。例としてとりあげた練馬区では、2015年8月に開かれた「練馬子ども議会」で、「議員」の中学生たちから、「リサイクルセンターの認知度を高める」といった政策提言が出されました。

参考資料
練馬区立リサイクルセンター「施設案内」
https://www.nerima-rc.jp/shisetsu/index.html
練馬区 2015年8月3日発表「中学生が区政に関する政策を提言!『練馬子ども議会』を開催」
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/koho/hodo/h27/2708/270803-2.files/270803-2.pdf
市川市 2015年4月8日発表「市川市リサイクルプラザは平成27年3月をもって閉館いたしました」
http://www.city.ichikawa.lg.jp/env04/1111000034.html
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これもあれもポリマーアロイ


分子量が多い分子を高分子といいます。化学樹脂や化学繊維などの高分子に、衝撃に強い、油に強い、熱に強い、加工性が高いなどの特徴をもたせようとするとき、ただ1種類の高分子を使うのでなく、複数種類の高分子を混ぜあわせることがあります。この方法を「アロイ化」とよび、そうしてできる高分子を「ポリマーアロイ」とよびます。

たとえば、変性ポリフェニレンエーテルというポリマーアロイのプラスチック材があります。これは、ポリフェニレンエーテル(PPE:Poly Phenylene Ether)というプラスチック材を主成分にして、ポリスチレンという高分子化合物をアロイ化したもの。変性ポリフェニレンエーテルにすると、成形しようとするときの流動性が高くなり、成形がしやすくなります。

この変性ポリフェニレンエーテルを使った製品には、パーソナルコンピュータやファクシミリ、テレビ、カメラ、エアコンディショナー、時計など主流な家電製品が多くあります。

アロイ化には、いっぽうの高分子化合物を分散させるなどして状態を均一にさせることによる物理的な方法と、高分子化合物どうしから電子を提供させあうなどして結合させることによる化学的方法とがあります。

「アロイ」(Alloy)とはそもそも、一つの金属元素に、べつの金属元素か非金属元素を溶かしてあわせてつくる「合金」のことを意味します。このことばが化学樹脂や化学繊維などの化合物に対して使われて「アロイ化」とよばれています。合金をつくるときには「アロイ化」とはまずいわず、「合金化」などといいます。

参考資料
ブリタニカ国際大百科事典「ポリマーアロイ」
https://kotobank.jp/word/ポリマーアロイ-161487
KDA「ポリマーアロイ」
http://www.kda1969.com/words_pla/words_pla_6h_35.htm
KDA「m-PPE(変性ポリフェニレンエーテル)樹脂」
http://www.kda1969.com/pla_material/pla_mate_mppe.htm
ダイヤモンドホイール・ダイヤモンド砥石・CBN工具・CBN砥石と研削研磨の情報サイト「アロイ化とは」
http://www.toishi.info/sozai/plastic/alloy.html
NEDO実用化ドキュメント「高速・強衝撃で柔らかくなるプラスチック」
http://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201201toray/index.html
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(2015年)11月26日(木)は「チェルノブイリ原発事故30年を前に 人体への長期影響を語る」


催しもののお知らせです。

(2015年)11月26日(木)、東京・丸の内の関西学院大学東京丸の内キャンパスで、ウクライナ放射線医学研究センター副所長のアナトリー・チュマクさんが「チェルノブイリ原発事故30年を前に 人体への長期影響を語る」という演題で講演します。主催は、日本科学技術ジャーナリスト会議。

チュマクさんは、医学博士で、専攻分野は免疫学。1986年に起きたチェルノブイリ原発事故を受けて、事故処理作業員の健康管理や医療支援のため、ウクライナ保健省代表として原発30キロ圏で働いてきました。2012年から、ウクライナ放射線医学研究センターの副所長に就任しています。

2011年4月に、ウクライナの緊急事態省が出した『ウクライナ政府報告書』では、チュマクさんは健康影響の章を監修しました。また、2011年8月に、ウクライナ科学アカデミーが出した『チェルノブイリ事故の健康影響 四半世紀の結果』の事務責任者もつとめました。

この2冊の報告書は、事故の影響として、甲状腺ガンや白血病だけでなく、非ガン系の疾病、神経精神医学的影響・心臓循環器系疾患・気管支肺系疾患などを指摘しています。年間0.5〜5ミリシーベルトの放射性物質汚染地域で生まれた子どもにも健康への影響が見られることなども報告しています。

いっぽうで、国際原子力機関や国連科学委員会などは、疫学的視点から、これらをリスク評価として認めていません。

日本科学技術ジャーナリスト会議は、「原発事故における人体への長期健康影響については『リスク管理』『予防原則』の視点からも極めて重要」「チェルノブイリの最近の情報も含めてお話を伺い、質疑応答を致します」としています。

日本科学技術ジャーナリスト会議の会員向けの会ですが、会員以外の人も参加費1,000円で参加することができます。事前に申しこみが必要です。詳しくは日本科学技術ジャーナリスト会議の案内をご覧ください。こちらです。
http://jastj.jp/#20151122
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「本当は血圧の上昇を抑える味噌」


日本ビジネスプレスのウェブニュース「JBpress」で、きのう(2015年)11月20日(金)「本当は血圧の上昇を抑える味噌 味噌は体に良いのか悪いのか?(後篇)」という記事が配信されました。取材と執筆をしました。

記事は、題にもあるように「味噌は体によいのかどうか」という疑問に、一定の答えを見つけようとするものです。味噌汁摂取の血圧への影響などを研究している共立女子大学家政学部教授の上原誉志夫さんに答えてもらっています。上原さんは、東京大学医学部出身で、留学先の米国ミネソタ大学では、塩分の感受性が高い「Dahl(ダール)ラット」というラットを使った研究などを進めてきました。

日本人はむかしから、ことわざでは「味噌の医者殺し」や「医者に金を払うよりも、味噌屋に払え」などとあるように、味噌を食べることが医者に医術を受けるよりもからだによい影響をもたらすと考えてきました。また、現代の薬学書にあたる『本朝食鑑』という江戸時代の書物でも、著者で医師の人見必大(1642ごろ-1701)が「一日も無しはあるべからざるなり」などと、味噌がからだによいことを強調しています。

ところが、現代では「味噌の塩分は多い。塩分は高血圧を招く。だから味噌の摂り過ぎはよくない」といった三段論法を多くの人が考えられるようになり、味噌を敬遠する人も多くなっています。1970年代にくらべて、日本人1人あたりの味噌の消費量は半減しているともいいます。

上原さんは都内の病院と共同で、2010年から2014年までの5年間に人間ドック受診者を対象に味噌汁の摂取量と血圧の関係を調べました。平均55歳の男性330人に、食べものの摂取頻度を聞き取り、人間ドックの成績との関連性を見たといいます。

その結果、味噌汁を飲む頻度が1日1杯でも、2杯でも、3杯でも、血圧の値との間に関連は見られなかったといいます。

上原さんは、「1日3杯については被験者の数は多くないので断言まではできませんが、1日に味噌汁1杯、ときに2杯という量では、まずもって問題ありません」と話しています。

では、塩分が相当量ふくまれている味噌が、どうして血圧値に影響を及ぼさないのか。推測される理由は記事にも書かれてありますが、上原さんが2015年10月に上梓した著書『高血圧ならみそ汁を飲みなさい!』(実業之日本社刊)にも書かれています。

昔から日本人が食べてきた味噌という調味料について、上原さんは記事で、「経験的に淘汰されず残るというのは、人々がその食材になんらかのメリットを経験的に感じとっているからです」と話しています。

「本当は血圧の上昇を抑える味噌 味噌は体に良いのか悪いのか?(後篇)」はこちらです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45306
上原さんの新刊『高血圧ならみそ汁を飲みなさい!』はこちらでどうぞ。
http://www.amazon.co.jp/dp/440845561X
また、JBpressの記事前篇では、「毒を消し、医者を殺し、名将をも動かした味噌の力」として、味噌の歴史を追っています。こちらです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45243
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「赤肉や加工肉の摂取に発がんリスク」を読みとく(3)
「赤肉や加工肉の摂取に発がんリスク」を読みとく(1)
「赤肉や加工肉の摂取に発がんリスク」を読みとく(2)


世界保健機関(WHO:World Health Organization)の外部組織である国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)が2015年10月26日(月)に発表した「赤肉と加工肉の摂取の発がん性」という報告を受けるかたちで、日本の国立がん研究センターは10月29日(木)「赤肉・加工肉のがんリスクについて」という情報をウェブサイトで提供しました。国際がん研究機関の今回の発表を解説するとともに、日本人おける赤肉や加工肉の摂取量と大腸がんのリスクの関係について2011年に発表したことを知らせるものです。

同センターは、日本人の赤肉や加工肉の摂取量は、世界のなかでも低い国であることを強調します。今回の国際がん研究機関の評価では、全世界地域の論文の赤肉摂取量の範囲がおおむね1日50グラムから100グラムであったのに対して、2013年の日本の国民・栄養調査では日本人の1日の摂取量は63グラムで、うち赤肉が50グラム、また加工肉が13グラムだったと述べています。

2011年に同センターが発表したのは、「赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて」というお知らせで、これは『アジア・パシフィック・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション』という雑誌の2011年20巻に掲載された内容を一般向けに解説したものです。

この研究は、赤肉や加工肉の摂取量に応じて、低いほうから高いほうに5グループに分け、その後の大腸がんの発生リスクを検討したもの。

結果、女性では赤肉を毎日80グラム以上食べるグループで結腸がんのリスクが高くなりましたが、それ以外のグループの女性では、リスクの高まりは見られなかったといいます。

いっぽう、男性では、肉全体で5グループのうち摂取量のもっとも高いグループでリスクの上昇が見られたものの、「赤肉では特に関連はみられていません」といいます。

また、より重要なのは、日本人の加工肉摂取と大腸がん発生リスクの関係です。同センターはつぎのように述べています。

「加工肉については男女ともに関連はみられていません」

国際がん研究機関では、赤肉と加工肉のうち、加工肉を摂取するほうが、どちらかというと大腸がんリスクが高くなるということを述べていました。しかし、日本の国立がん研究センターは日本人を対象にする調査で「関連が見られない」としているのです。

もっとも、“ものはいいよう”の側面もあるようです。

2011年に国立がん研究センターが発表したときの情報には、加工肉の摂取と大腸がんのリスクについて、つぎのように述べています。

「日本人が一般的に食べるレベルでは、はっきりとしたリスクにはならないけれども、通常よりもはるかに多量に摂取する一部の男性では、結腸がん発生リスクを上げる可能性は否定できません」

この文面を見ると、ハムやソーセージなどの加工肉を食べ過ぎるぐらい食べる男性は注意を要するととることができます。

また、赤肉摂取と大腸がんについては、2011年の時点ではつぎのように述べています。

「赤肉摂取による直接的な大腸がん発生リスク上昇は男性において観察されませんでしたが、牛肉・豚肉は肉摂取量全体の85%程度を占めることから、男性でも赤肉摂取による結腸がんリスク上昇の可能性は否定できないでしょう」

リスクの存在を心配しすぎないでほしいという場合と、リスクの存在をすこしは考えてほしいという場合では、表現のしかたも変わってくるものです。

2015年10月に発表した「お知らせ」では、国立がん研究センターはつぎのような結論的な情報を提供しています。

「大腸がんの発生に関して、日本人の平均的な摂取の範囲であれば赤肉や加工肉がリスクに与える影響は無いか、あっても、小さいと言えます」

了。

参考資料
国立がん研究センター 2015年10月29日発表「赤肉・加工肉のがんリスクについて」
http://www.ncc.go.jp/jp/information/20151029.html
国立がん研究センター「赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて」
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2869.html
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「赤肉や加工肉の摂取に発がんリスク」を読みとく(2)
「赤肉や加工肉の摂取に発がんリスク」を読みとく(1)



世界保健機関(WHO:World Health Organization)の外部組織である国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)が2015年10月26日(月)に発表した「赤肉と加工肉の摂取の発がん性」という報告をめぐって、国際がん研究機関自体が、「赤肉と加工肉の摂取の発がん性についての質問と回答」という文書を発信しています。

ここに書かれている内容を抜粋・翻訳してみます。
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なぜ、国際がん研究機関は、赤肉や加工肉を評価することにしたのですか。

2014年に開かれた国際諮問委員会が赤肉や加工肉を、国際がん研究機関モノグラフ・プログラムによる評価での高い優先順位に推奨しました。この推奨は、複数種のがんのリスクの小さな増加が、赤肉や加工肉の高い摂取量と関係しているかもしれないとする疫学研究にもとづくものです。これらのリスクは小さいですが、世界の多くの人が肉を食べ、また、肉の消費量が収入の少ないまたは中くらいの国々で増えているため、公衆衛生として重要です。すでにいくつかの健康期間が肉の摂取量を減らすことを推奨していますが、これらの推奨はほぼ、ほかの病気のリスクを減らすことが目的とされています。このことを念頭において、赤肉や加工肉を食べることと関連するガンのリスクの信頼おける科学的証拠を提供することが、国際がん研究機関にとって大切と考えました。

調理のしかたによりリスクは変わりますか。

高温での調理は、発がんリスクにつながりうる複合物をつくります。しかし、その役割は十分には明らかにされていません。

赤肉は、人に対する発がんで「グループ2」に位置づけられました。これは正確にはなにを意味しますか。

この場合の赤肉については、この位置づけは、強い機構的な証拠と同様、赤肉を食べることと大腸がんが進むことの明らかな関連を示す疫学研究による、限られた証拠に基づくものです。

限られた証拠とは、作用物質に暴露することとがんとの間に明らかな関連性が見られるが、(技術的には偶然、バイアス、混同などとよばれる)見方の説明は除外することができない、という意味です。

加工肉は、「発がん性がある」(グループ1)に位置づけられました。喫煙やアスベストも「グループ1」に位置づけられています。これは、加工肉の摂取が、喫煙やアスベストとおなじぐらい発がん性があるという意味ですか。

いいえ。加工肉は、喫煙やアスベストのようながんの要因とおなじ領域(国際がん研究機関におけるグループ1、人への発がん性がある)に位置づけられていますが、しかし、これらがすべて同等に危険であることを意味しているわけではありません。国際がん研究機関によるこの位置づけは、リスクの水準を測るものというよりも、作用物質ががんの原因であることについての科学的証拠の強さを示しているものです。

肉を食べるのをやめるべきですか。

肉を食べることは、健康の利益をもたらします。多くの国による健康の推奨では、心臓病、糖尿病、またほかの病気による脂肪のリスクを高めるということから、加工肉や赤肉の摂取量を、制限することを助言しています。

どのくらい肉なら食べても安全ですか。

食べられた肉の量にともない、リスクは上昇します。しかし、評価から得られるデータでは、安全な水準が存在するかどうかについての結論はいえません。
_____

赤肉や加工肉の発がん性との関連を示すデータは、限られたものであるとしながらも、けっして「心配はありませんよ」といった論調にはなってしません。

しかし、食事の傾向や発病の傾向は、国や地域によって異なるもの。そこで、日本人は、今回の国際がん研究機関の発表をどう受けとめればよいのでしょうか。日本の国立がん研究センターが、2015年10月29日に「赤肉・加工肉のがんリスクについて」という情報提供をしています。つづく。

参考資料
国際がん研究機関 “Q&A on the carcinogenicity of the consumption of red meat and processed meat”
http://www.who.int/features/qa/cancer-red-meat/en/
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「赤肉や加工肉の摂取に発がんリスク」を読みとく(1)


「赤肉や加工肉には発がんのリスクがある」という話題が(2015年)10月下旬から急にまきおこっています。以来、スーパーマーケットや精肉店などでハムなどの製品を買いひかえている人もいるでしょうか。

この話題がどのようにしてまきおこったのか。そして、日本の研究機関はこの話題に対してどのような情報発信をしているかをまとめます。

新聞などの報道のもとになったのは、国際連合の専門機関である世界保健機関(WHO:World Health Organization)が2015年10月26日(月)に、「赤肉と加工肉の摂取の発がん性」という報告です。医学雑誌『ランセット・オンコロジー』に掲載されました。

同誌のオンライン版の「ニュース」によると、同機関の外部組織である国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)に2015年10月22日、世界10か国から22人の研究者が集まり、赤肉や加工肉を食べることの発がん性を評価したそうです。そして、赤肉や加工肉を食べることが発がんのリスクを高めるという結果を導いたというのです。

赤肉とは、牛、子牛、豚、子羊(ラム)、羊(マトン)、馬、山羊などの未加工肉のことです。また、加工肉とは、塩を加える、保存する、発酵させる、燻製にするなどの処理をした肉のことです。

国際がん研究機関の作業グループは、複数の大陸の多くの国における赤肉と加工肉の摂取とがんとの関係を調査した800以上の疫学研究を検討しました。

その結果、もっとも疫学的データで関わりがあったのは大腸がんだったそうです。特定の期間を過ごした人びとの集団の健康状態を追跡調査する研究をコホート研究といいますが、10のコホート研究で、統計学的に有意な用量-反応関係が見られました。それは、1日あたり赤肉100グラムを摂ると大腸がんのリスクが17%高くなり、また1日あたり加工肉50グラムを摂ると大腸がんのリスクが18%高くなる、というものでした。

ほかにも、コホート研究の解析から、赤肉の摂取とすい臓がんや前立腺がんなどの関係性や、また加工肉の摂取と胃がんの関係性などが見られたといいます。

作業グループは結論として、赤肉を摂ることが国際がん研究機関の定める発がん性リスクの「グループ2A」に、また加工肉を摂ることがおなじく「グループ1」に分類しました。「グループ1」は「発がん性がある」と表現されるリスクです。また「グループ2A」は「発がん性がおそらくある」と表現されるリスクです。

この発表を受けての反響の大きさを国際がん研究機関は考えていたのでしょう。「赤肉と加工肉の摂取の発がん性についての質問と回答」という文書も発表しました。こちらも見てみます。つづく。

参考資料
『ランセット・オンコロジー』2015年10月26日付 “Carcinogenicity of consumption of red and processed meat”
http://www.meatpoultry.com/~/media/Files/MP/IARC-summary.ashx
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法律のことばは「汚物」から「廃棄物」へ、定義も複雑に


要らないとして捨てられたものを「廃棄物」といいます。にたことばに「ごみ」がありますが、こちらは和語であり、口語の響きがあります。「ごみ」のほうが「廃棄物」より一般的なことばに聞こえます。しかし、この二つのことばの関係性は、法律的には「廃棄物のなかのひとつが、ごみ」ということになります。

廃棄物が法律的になにを指すかについては、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」という法律で定められています。

「この法律において『廃棄物』とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう」(第二条の1)

ここにあるように、「廃棄物」は、ゴミや粗大ごみや燃え殻などなどを指すものとしています。では「ごみ」はなにを指すかといえば、それについてはこの法律では述べられていません。

そして大まかには、廃棄物は「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分けることも、この法律で示されています。

産業廃棄物は事業活動にともなって生じた燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくずおよび陶磁器くず、鉱さい、がれき類、ばいじん、紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残さ、動物系固形不要物、動物のふん尿、動物の死体、以上の産業廃棄物を処分するために処理したもので上記の産業廃棄物に該当しないもののほかに、輸入された廃棄物や入国するものが携帯する廃棄物を指します。

そして、一般廃棄物は、大きく「産業廃棄物以外の廃棄物」を指すとされています。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律は1970(昭和45)年に成立しました。背景には、高度経済成長による公害問題の深刻化などがありました。

しかし、それより前にも、要らないものを処理する方法にかかわる法律はあり、対象となるものの定義もありました。廃棄物の処理及び清掃に関する法律の前身が、1954(昭和29)年に成立した「清掃法」という法律です。これは「汚物を衛生的に処理し、生活環境を清潔にすることにより、公衆衛生の向上を図ることを目的とする」とする単純なものでした。そして、清掃法で「汚物」とはなにかが、つぎのように定義されています。

「この法律で『汚物』とは、ごみ、燃えがら、汚でい、ふん尿及び犬、ねこ、ねずみ等の死体をいう」(第三条)

これも、廃棄物の処理及び清掃に関する法律にくらべると、単純なものでした。

さらに、清掃法の前進にあたる法律もあります。1900(明治33)年に制定された「汚物掃除法」という法律です。法律の条文には「汚物」の定義はありませんが、より細かい定めが記されている施行規則には、「汚物」の定義がつぎのようにされています。

「汚物掃除法ニ依リ掃除スヘキ汚物ハ塵芥汚泥汚水及屎尿トス」(第一條)

どうでしょうか。「汚物」と聞いて思いうかべるようなものが、そのまま具体例として載っており、それが定義になっていたといえます。それほど、社会は複雑ではなかったともいえるかもしれません。

時代が進むに連れて、「汚物」あるいは「廃棄物」がなにを指すかは細かくなってきました。社会状況が込みいるのにともなって法律が細かくなるという面と、法律が細かくなるのにともなって社会状況が込みいったように感じるという面と、両方がありそうです。

参考資料
経済産業省「3R政策 廃棄物処理法」
http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/law/03/
ウィキペディア「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
https://ja.wikipedia.org/wiki/廃棄物の処理及び清掃に関する法律
衆議院「法律第七十二号(昭二九・四・二二)」
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/01919540422072.htm
溝入茂「明治前期の廃棄物規制と『汚物掃除法』の成立」
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/5265/3/Honbun-4142.pdf
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「先に発見していた」は起きうるもの


世界の人口は19世紀はじめに約10億人、20世紀はじめに約18億人、21世紀はじめには約60億人にもなりました。

これだけ多くの人がいれば、地球のどこかで、まったくたがいがたがいの存在を知らずに、“独自の発見”と思えることをしている、ということがあります。

たとえば、地球物理学者の松山基範(1884-1958)は、地磁気が反転することを1926年に兵庫県の玄武洞で発見しました。そして1929年に、地磁気反転の可能性を論文として発表しました。

ところが、1909年にフランスの地球物理学者ベルナール・ブリュンヌ(1867-1910)が、いまの地磁気とは逆方向の磁力を帯びている岩石を発見し、『ジャーナル・ド・フィジーク』という科学史に発表しています。

また、おなじく物理学では、米国の通信技師ジョン・デリンジャー(1886-1962)が、のちに世界で広く「デリンジャー現象」とよばれるようになる現象を発見しました。これは、昼の数分から数十分、短波通信ができなくなる現象です。デリンジャーは1935年にこの現象を発表をしました。

ところが、デリンジャーの発表より5年前に、ドイツのドイツの物理学者ハンス・メーゲル(1900-1944)が、1930年に発見していたとされています。世界のインターネットでの英語の情報では、「この現象は、1935年にジョン・デリンジャーに発見(discovered)され、また、1930年にドイツの物理学者ハンス・メーゲルにより記述(described)されていた」などと表現されています。

より古い話では、天文学での海王星の発見があります。1846年に、ドイツの天文学者ヨハン・ゴッドフリート・ガレ(1812-1910)が発見したとされています。ガレの功績は、英国の天文学者ジョン・アダムズ(1819-1892)とフランスの天文学者ユルバン・ル=ベリエ(1811-1877)が理論的に位置を計算したのを受けて、発見したものでした。

しかし、ガレの発見の234年前の1612年に、イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)が、望遠鏡で木星を観測していたとき、たまたま近くにあった海王星を観測し、詳細のスケッチまでしていたというのです。

ただし、ガリレイの場合、この天体を惑星でなく「恒星」として観測していたようです。そのため、海王星を「見ていた」とはいえるものの、現代の人びとが認識しているような惑星としての海王星を「発見した」とまでいえるかどうかは、なんともいえません。

科学の発見は、ときにその発見を発表したときに使われていた言語の使用度、論文が掲載された雑誌の有名度、はたまた発見したと主張する人の性格などによって、埋もれてしまうものです。

現代では、インターネットなどのデジタル技術により、発信した情報のデータが残りやすくはなりました。しかし、それは、より「自分が発見した」と主張する人が多く現れることをも意味します。発見を発表する人、そしてその発表を認める団体ともに、「それがいつなのか」を記録する大切さは高まっています。

参考資料
大河内直彦『地球の履歴書』
ウィキペディア「デリンジャー現象」
https://ja.wikipedia.org/wiki/デリンジャー現象
海部潤一「星空の散歩道 明け方の空に海王星を探そう」
http://www.mitsubishielectric.co.jp/dspace/column/cw42_f.html
スーパー大辞林「海王星」
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エベレストの標高、“歴史”のなかで変化


写真作者:旅者河童

世界の最高峰はネパールと中国チベット自治区の国境にあるエベレストです。標高は8848メートルとされています。

エベレストをふくむ高い山が、ヒマラヤ山脈にはいくつもあります。8586メートルのカンチェンジュンガや8215メートルのナンガ・パルバットなどです。また山脈の長さは2415キロメートルにもなります。

地球史のなかでヒマラヤ山脈がつくられたいきさつには、インド亜大陸の移動がかかわっているといわれます。いまのインドの国とほぼおなじ形をしたインド亜大陸は2億年ほど前、いまのアフリカ大陸やオーストラリア大陸などと接するような位置をとっていました。

しかし、地球内部のメントルが動いているため、それの動きの乗っかるように、巨大な逆三角形のインド亜大陸も動いていきました。かつて地球に存在したテチス海という海域をゆっくり航行するように巨大な逆三角形は動いていき、そして逆三角形の左の頂点にあたる西の端の部分がユーラシア大陸に引っかかりました。数千万年前ぐらいのことです。

その後、巨大な逆三角形の上辺に当たる部分がユーラシア大陸につぎつぎ衝突していき、ついにユーラシア大陸と一体化したのです。この動きのシミュレーションを、海洋研究開発機構の動画で見ることもできます。

インド亜大陸がユーラシア大陸に衝突すると、その面に沿って大地の隆起が起きます。2枚の厚紙を左右からぶつけると、ぶつかった面に沿って盛りあがるのとおなじことが、距離にして何千キロメートル、歳月にして何千万年もの規模で起きてきたわけです。

マントルはいまもゆっくりと動いているはずですので、インド亜大陸はいまもなおユーラシア大陸をぐいぐいと押しこんでいるはず。実際、インド亜大陸はいまも年に数センチメートルという速さで、ユーラシア大陸にぶつかっているといいます。すると、エベレストなどのヒマラヤ山脈は、さらに押されて盛りあがっているはずです。

では、エベレストの標高はどのように言われてきたのでしょうか。

1852年、インドの測量技師ラダナート・シクダール(1813-1870)が、三角測量という方法を使ってエベレストの高さを測りました。結果はおよそ8,840メートルだったそうです。

その後、1955年にも、インド当局がエベレストの高さを測リマした。すると今度は8,848メートルという結果になりました。いま、多くのメディアなどでは、エベレストの標高は、この8,848メートルとしています。

エベレストの高さを測るとりくみはつづきます。1999年には、米国のブラッドフォード・ウォッシュバーンの遠征隊がエベレストの高さを測ったところ、8,850メートルだったといいます。

ところが2005年に中国のエベレスト測量隊がエベレストの高さを測ったところ、8843.43プラスマイナス0.21メートルだったと発表しました。

もうお気づきのとおり、エベレストが100数十年の間に、にょきにょきと高くなったり、一気に数メートル今度は低くなったりしたというわけではありません。毎回、高さを測るときの方法が異なるため、こうしたブレがでてしまうのです。

しかし、エベレストの高さを測る結果とはまたべつに、研究者たちのあいだでは、「ヒマラヤ山脈は、毎年数センチメートルずつ高くなっている」といわれています。「毎年数センチ」というのは、インド亜大陸がユーラシア大陸にぶつかっている速さとだいたい一致します。

ときにはヒマラヤ山脈近くの場所での大きな地震活動により、山脈の高さが一気に低くなるという可能性もなくはありません。たとえば、2015年4月に起きたネパール大地震では、エベレストの標高が数センチ上下したとする見方がありました。もっともこれは6月、中国の研究者が観測結果として「標高は変わらなかった」と否定しています。

エベレストの登頂に成功した登山家が信じてよさそうなのは、「これまで人びとが登ってきたエベレストよりも、いま自分は高いエベレストに登ることができた」ということです。

参考資料
海洋研究開発機構 2015年2月12日付「スーパーコンピューターでパンゲアの分裂から現在までの大陸移動を再現し、その原動力を解明 ヒマラヤ山脈はマントルのコールドプルームが作った!」
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20150212/
日本計量新報 2009年10月25日付「標高3776メートルの富士山と気象ならびに物理現」
http://www.keiryou-keisoku.co.jp/kiji/shasetu/2009/10/4_2795.htm
時事通信 2015年5月5日付「インド亜大陸の加速原因推定 3倍速で北上、ユーラシア衝突」
http://www.msn.com/ja-jp/news/techandscience/インド亜大陸の加速原因推定=3倍速で北上、ユーラシア衝突―大地震の背景・米大学/ar-BBjc0rN
小林徹「景観の発見 環境情報の収集と応用に関する新しい試み」
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006484154
ウィキペディア「エベレスト」
https://ja.wikipedia.org/wiki/エベレスト
ナショナルジオグラフィック 2015年6月22日付「エベレストが地震で3センチ反転、標高は変わらず」
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/b/061900013/
京大知的好奇心学「地球はエンジン? 活動の原動力を探る」
http://kyodai-kokishin.ac.jp/natural/1.html
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電子カルテの“次”は「電子健康記録」と「個人健康記録」の時代


病院などの医療機関では、2000年代以降、紙のカルテを使う代わりに電子カルテを使うことが増えてきています。厚生労働省が2001年に掲げた「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」という計画で、2006年度までに電子カルテを「全国の400床以上の病院の6割以上に普及、全診療所の6割以上に普及」させるといった目標を掲げたことなどが後押しとなっています。

しかし、システム導入に費用がかさんだり、紙のカルテに慣れてきた医療従事者の抵抗感があったりして、目標は達成されませんでした。2014年度でも病院全体での電子カルテの普及率は25パーセントなどといわれています。

ところが、医療システムの進む世界の国では、電子カルテの“次”のシステムがすでに普及しはじめているといいます。そのシステムとは「電子健康記録」(EHR:Electric Health Record)とよばれるもの。電子カルテは、おもにひとつの医療機関での情報蓄積や情報共有を目的としていましたが、電子健康記録のシステムでは、たとえば地域の医療機関のあいだで患者の診断についての情報共有がなされたり、匿名化したデータで研究をしたりすることにも使われます。

米国では、電子健康記録の普及が進んでいます。背景には2004年に、ジョージ・ブッシュ政権が掲げた「医療ITイニシアティブ」で、「向こう10年以内に、国民のほとんどが電子健康記録をもつとともに、各自が自身の電子健康記録にアクセスする」という目標を掲げたことがあります。実際には2011年の時点で、全米で57パーセントの医療機関で電子健康記録を部分的にでも導入しているというデータもあります。

電子健康記録という概念に加えて、さらに「個人健康記録」(PHR:Presonal Health Record)というシステムの概念もあります。これは、電子健康記録の機能を、市民の一人ひとりが活かせるようにするもので、「日本版PHRを活用した新たな健康サービス研究会」は、個人健康記録を「個人が自らの生活の質の維持や向上を目的として、自らの健康に関する情報を収集・保存・活用する仕組み」としています。

日本の医療行政は、膨れあがる医療費を削減するなどのため、2000年代に「治療から予防へ」という基本方針の転換をしました。個人健康記録は、人びとが自分の健康に関心をもつ機会を増やすものですから、その新しい方針も合ってはいます。

しかし、電子健康記録も個人健康記録も、日本ではまだ概念として知られはじめるようになってまもない段階。普及させるには、医療現場での従事者たちの理解を得るといった、電子カルテの普及に向けてとおなじような課題がありそうです。

参考資料
厚生労働省 2001年12月26日「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザインの策定について」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/0112/s1226-1.html
ZDNet Japan 2015年7月17日「富士通が説く『電子カルテの先にある未来』」
http://japan.zdnet.com/article/35067528/2/
米国全国保健統計センター 2011年11月 “Electronic Health Record Systems and Intent to Apply for Meaningful Use Incentives Among Office-based Physician Practices”
http://www.cdc.gov/nchs/data/databriefs/DB79.pdf
吉原博幸「日本における健康情報サービス(EHR/PHR)の現状と課題 Dolphin Projectの事例を中心に」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000047788.pdf
日本版PHRを活用した新たな健康サービス研究会 2008年3月発表「個人が健康情報を管理・活用する時代に向けて」
http://www.meti.go.jp/policy/service/files/phr_houkoku_gaiyou.pdf
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2015年夏の電力、見通しにくらべてかなり余裕


今年の夏から秋にかけては、暑かったでしょうか、涼しかったでしょうか。

全国の平均気温と平年値をくらべてみると、8月上旬までは平年値を平均3度以上も上まわる猛暑となり、8月中旬ごろからは全国的に急に涼しくなり、平年値を下まわる日々となりました。

猛暑だった8月上旬は、電力需要が1年のなかでもとても大きくなる時期です。その電力需要のもっとも高かった日に、全国の電力企業の「供給予備率」がどのくらいだったかまとめたデータを、(2015年)10月に資源エネルギー庁が発表しています。

供給予備率とは、最大の電力需要に対して、供給力にどのくらいの「予備」つまり余裕があるかを示した数値のことです。最大電力需要のときの供給力から最大電力を引き算し、さらにそれを最大電力で割り算して100を掛け算した数値で示します。単位はパーセントとなります。

資源エネルギー庁の発表によると、全国の電力企業10社のなかで、2015年夏季の供給予備率がもっとも高かった、つまり余裕があったのは沖縄電力で45.1パーセントでした。いっぽう、供給予備率がもっとも低かった、つまり余裕がなかったのは四国電力で8.2パーセント。ほかに10パーセントに満たなかったのは、東京電力の8.3パーセント、中部電力の8.5パーセントでした。

たとえるなら、製品が売りきれになるとまずい店が、日々100個の製品を用意していたところ、もっとも売れた日で92個が売れ、8個が余ったというようなものです。この「あまり8個」をどう見ればよいでしょうか。

政府は、最低でも3パーセントの供給予備率は必要であると説明してきました。この「最低3パーセント」を、いずれの電力会社でも下まわることはありませんでした。もっとも余裕のなかった四国電力でも、8.2パーセントを余らせることができたので、逼迫はしなかったといえそうです。なお、これらの数値は、原子力発電所の稼働なしでのものです。

資源エネルギー庁は、供給予備率の「見通し」を立てており、関西電力と九州電力が3.0パーセントと見積もられなど、余裕のなさそうな見通しでしたが、実際は関西電力が13.6パーセント、九州電力が13.5パーセントとなるなど、東京電力と四国電力をのぞくすべての電力企業で、見通しより余裕のある結果となりました。北海道電力では、見通しが8.7パーセントだったのに対して、実際の供給予備率は24.5パーセントで、15.8パーセントもの開きがありました。

資源エネルギー庁は、この差のおもな要因として、国内総生産や鉱工業生産指数などの伸び率が予想を下回ったといった経済的な影響のほか、照明、空調、テレビなどの電力消費での節電が進んだ影響などをあげています。

巨大な量のデータによって正確な予測をする技術が高まっていますが、こと電力の需給の予測については、「正確な予測ができる」といえる段階までには至っていないようです。

参考資料
Climate 2015年9月8日付「暑かったけど実は平年なみ? 2015年の夏をデータからみてみる」
http://climate.jp/2015/09/summer2015/
資源エネルギー庁 2015年10月26日発表「電力需給検証小委員会報告書について(概要)」
http://www.meti.go.jp/press/2015/10/20151026001/20151026001-2.pdf
マネー辞典「供給予備率」
http://m-words.jp/w/供給予備率.html
河北新報 2015年9月30日付「電力供給予備率 原発の必要性問う契機に」
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20150930_01.html
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「洋服の日」にちなむ「礼服ニハ洋服ヲ採用ス」の文言、見あたらず
きょう11月12日は「洋服の日」です。東京都洋服商工協同組合という組織が1929(昭和4)年に制定しました。また、全日本洋服協同組合連合会という組織も1972(昭和47)年に制定しています。

11月12日が、洋服記念日に制定されたのには、一般的につぎのような説明がされています。下記はウィキペディアの「11月12日」の項目にある情報です。

「1872年(明治5年)旧暦11月12日に『礼服ニハ洋服ヲ採用ス』という太政官布告が出され、それまでの公家風・武家風の和服礼装が廃止されたことに由来」

太政官布告とは、明治初期に国政の最高機関だった太政官が公布した公文書のことです。そして、国立国会図書館の「デジタルコレクション」で、当日の太政官布告をインターネットで見ることができます。そこには、こう書かれてあります。
_____

○第三百三十九號(十一月十二日)(布)
今般勅奏判官員及非役有位大禮服並上下一般通常ノ禮服別册服章圖式ノ通被相定従前ノ衣冠ヲ以テ祭服ト為シ直垂狩衣上下等ハ總テ廢止 仰出候事
但新製ノ禮服所持無ノ内ハ禮服着用ノ節當分是迄ノ通直垂上下相用不苦候事
一 武官禮服ハ従前ノ通タルヘキ事
_____


明治5年11月12日の太政官布告第三百三十九號

要点は、「勅奏判官員」や「非役有位」の者の礼服は「大礼服」や「通常の礼服」を身につけること、直垂(ひたたれ)や狩衣(かりぎぬ)といった和装の上下はすべて廃止すること、ただし、新しい礼服をもっていない人は当分このままでよいこと、武官の礼服については従前のとおりであることです。

この太政官布告をつぶさに見たところで、「礼服ニハ洋服ヲ採用ス」という文言自体は見あたりません。布告はこのあと、「別册」として「大禮服制表並圖」「大禮服制汎則」などとつづきますが、このあとも「洋服ヲ採用ス」の文言は見られません。

「"礼服ニハ洋服ヲ採用ス"」とグーグルで検索すると、この文言が約1,790件、見つかるとのこと。だれが、1872年11月12日の太政官布告に「洋服ヲ採用ス」という文言があると言いはじめたのかまでは不明ですが、相当な伝播力です。

この日付の太政官布告には、図版があり具体的に、役人たちがどんな服装を着るべしとしたかがわかります。


高等官のひとつ「勅任官」の上衣の表面と裏面


おなじく短胴服、袴など

「大礼服」は、宮中の重大な儀式のときに使われた儀礼用の制服です。大礼服は、当時の西欧の宮廷で最上級正装だった宮廷制服に倣ったものとされます。西洋の服を礼服として着ることになったのですから、「洋服ヲ採用ス」は記述は見られないものの、事実とはいえます。

「洋服」ということばそのものは、明治時代にすでにあったようですが、このことばが生まれたのは「明治維新後」という話もあれば、江戸時代末期の蘭方医だった柴田方庵(1800-1856)が日記で使ったのが最初だった、つまり「明治維新以前」という話もあります。

いま、日本の街を歩いている人のほとんどは、「和服」を着ているか「洋服」を着ているかというと、洋服のほう。ここまで洋服が浸透すれば、「洋服」ということばは廃れても不思議ではありませんが、響きのよさもあってかいまでも、あたりまえのように「洋服を買った」などと言われています。

参考資料
ウィキペディア「11月12日」
https://ja.wikipedia.org/wiki/11月12日
飯倉晴武『日本人の数え方がわかる小事典』
『法令全書 明治5年』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/787952/175
デジタル版日本人名大辞典+Plus「柴田方庵」
https://kotobank.jp/word/柴田方庵-1080544
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2015年の新語・流行語候補、科学・技術関連は不作気味


自由国民社はきのう11月10日(火)、「2015ユーキャン新語・流行語大賞」の候補語を発表しました。

このブログでは2007年の「新語・流行語大賞」の発表以来、毎年のように、50ほどの候補語から、科学や技術にかかわるものをとりあげてきました。

2014年は、年間大賞にもトップテンにも入らなかったものの、「STAP細胞はあります」などの複数の新語・流行語が話題になり、かなり強い印象を社会にあたえました。

ことし2015年はどうかというと、候補語からすると科学・技術にかかわる語はやや不作気味のようですが、いくつかあがっています。

「スーパームーン」

軌道上の月が地球に平均より近づくときがあり、その状態にある月のことを指します。小さく見えるときの月より、最大で14パーセント大きく、また3割ほど明るく見えるようです。2015年は、9月28日(月)にスーパームーンが見られました。

ただし、スーパームーンそのものは、年1回ほどの頻度で見られるものであり、数年前から、このことばは知られるようになっていました。このブログでも2011年3月19日に「最接近と満月が重なって『スーパーフルムーン』」という記事で大きく見える月を紹介しています。

「北陸新幹線」

上信越地方や北陸地方を経て運行される新幹線です。2015年3月14日に、長野駅から金沢駅までの区間が開業し、話題になりました。

技術的には、「W7系」とよばれる車両が導入されました。この車両では、「ワンモーションライン」とよばれる流線形の先頭形状により騒音をおさえます。また特別車両の12号車には、動揺防止制御装置が搭載されています。

新たな車両も導入され、「2015年に北陸新幹線が開業」という印象があります。ただし、厳密には、2015年3月までに開業していた高崎駅-長野駅間の新幹線も北陸新幹線です。北陸の地域をまだ走っていなかったため、便宜的に「長野新幹線」とよばれていました。

「ドローン」

日本語では「無人航空機」や「小型無人飛行機」などとよばれています。スマートフォンなどを使って遠隔操作をして飛ばします。人が乗らない飛行機の実用は、第二次世界大戦のとき1944年に米国軍がB-17爆撃機を無人機に改造して飛ばしたことあたりに端を発するとされます。炸薬を積んで敵機に体当たりするのが目的でした。

「ドローン」を英語で書くと、“Drone”。これはもともと「蜜集めの仕事をしない雄バチ」といった意味のことばです。無人飛行機が「ドローン」とよばれるようになったのは、戦後の英国においてとされます。「クイーン・ビー」(Queen Bee)という無線操縦機が転じて、「ドローン」になったといいます。よび名では、女王バチが、仕事をしない雄バチに変わり、それが定着したことになります。

ドローンも、まったく新たに現れたものではありません。しかし、本格的に普及しはじめようとしているいま、2015年の新語・流行語の候補になるのは時宜にかなっているといえそうです。トップ10ぐらいには入るのかもしれません。

「2015ユーキャン新語・流行語大賞」の高保護は、こちらで見ることができます。
http://singo.jiyu.co.jp

ちなみに「はい、こちらポンポコ商事です!」は候補になりませんでした。

参考資料
ウィキペディア「スーパームーン」
https://ja.wikipedia.org/wiki/スーパームーン
JR西日本「W7系車両について」
http://hokuriku-w7.com/about/exterior.html
ウィキペディア「無人飛行機」
https://ja.wikipedia.org/wiki/無人航空機
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いま見ている宇宙は、つねにかつての宇宙

オリオン座。左上の赤い星がベテルギウス
写真作者:Mouser

人は、とかく気にかけているものごとについて、「いま」どうなっているかに注目するものです。だれかに託した仕事の進み具合が「いま」どうなっているのか気になって、つい「あの件、いかがですか」と再び連絡することもあります。

宇宙についてはどうでしょうか。たとえば、地球とはべつのある天体が、「いま」どうなっているのか注目することに意味はあるのでしょうか。

日常生活で注目していることにもいえることですが、宇宙のある天体のようすを知るには、ある天体から地球に伝わってくるなんらかの情報を、地球にいる観測者がとらえなければなりません。

天体を観測するときは、天体が発する光や電波などの電磁波を地球の観測者がとらえることが、その天体を知るためにほぼ唯一できることとなります。

では、その天体が発する電磁波を正確に観測すれば、その天体が「いま」どうなっているかを調べることができるかというと、そうはなりません。

光や電波などの電磁波には、進む速さがあります。そのためある場所で放たれた光が、観測者のところに届くまでには時間がかかります。

たとえば、太陽が地平線の先から姿を見せはじめたとき、地球にいる人が見ているその光はおよそ8分19秒前に太陽から放たれた光ということになります。おなじく、地球上で人が見ている月の光も、およそ1.3秒前に月の表面で反射した光(太陽の光)を見ていることになります。

このような話でしばしば話題になるのが、ベテルギウスです。鼓のようなかたちをしたオリオン座の左上に輝く赤い星で、明るさは0.4等から1.3等まで変わります。

地球からの観測で、ベテルギウスは「死が近づいている。一生の99.9パーセントは終わっている」と考えられています。

しかし、ベテルギウスは地球からおよそ642光年の距離にあるので、いま見ているベテルギウスの姿は、およそ642年前の姿ということになります。

ベテルギウスが死を迎えると大爆発しますが、いつその大爆発が起きるのかは厳密にはわかりません。

そのため、いま地球の観測者たちは死ぬ直前のベテルギウスの姿を見ているわけですが、すでにベテルギウスの「現場」では、大爆発が起きているのかもしれません。

「いま」を知りたければ「現場」に行くというのは、知りたい人がとる行動の鉄則といえます。しかし、ベテルギウスの「現場」まで行くことは困難であるため、観測者は受身的に642年前の姿をとらえているわけです。

正確にいえば、地球上の観測対象物についても、観測者との距離があるかぎりは、過去の姿をとらえていることになります。しかし、地球上ではあまりに距離が短いため、光が届くまでの時間差は無視してもまず問題なく、「いま」を観測しているとだれもが考えているわけです。

参考資料
Yahoo!知恵袋「ベテルギウスは、今現代ない可能性もあるのですか?」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1172626046
NHK くらし☆解説「爆発間近?! ベテルギウス」
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/186887.html
福江純ホームページ「電磁波スペクトル」
http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~fukue/lecture/astronomy/radiation1.pdf
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欧米の人びと「おにぎり」に驚く


日本人は、弁当の主食などとして、おにぎりをごく普通に食べています。しかし、欧米などで暮らす外国人にとって、おにぎりという食べものはいささか珍妙なフードとして見られる向きがあるようで、日本人のそれとは異なるおにぎり観をもつ人もいるようです。

異文化コミュニケーションのおもしろさなどを話題とする「ブランチスタイル」というウェブサイトでは、米国在住の日本人が、現地の米国人から、おにぎりをめぐってこんなことを言われたことがあると伝えています。

「大学時代、おにぎりを大学構内で食べている日本人の女の子を見たアメリカ人の友人が、『なんで米だけ食べるの?しかも手で?』と不思議がって私に尋ねました」

英語では、おにぎりのことを“Rice Ball”といいます。“Rice Ball”を日本語に訳せば「コメの球」といったあたりでしょうか。「握り」や「結び」に丁寧語の接頭辞をつけて「おにぎり」や「おむすび」と表現する日本語とはちがって、英語からは、この食べものに対する愛のようなものはあまり感じられません。

しかし、おにぎりを作ったり食べたりする習慣のない人たちからすれば当然の部分もあるでしょう。初めて見る人にとって、おにぎりはたしかに「コメの球」です。コメ粒そのものが炭水化物の塊のようなものですが、さらにそれを丸めて球にし、手で食べるというのは、客観的になれば奇異といえるかもしれません。

おにぎりという食べものを初めて知る外国人の反応をまとめたウェブサイトがインターネット上にあります。そこではこんな反応が記されています。

「ないわー、それに米自体好きじゃない」(ルクセンブルク)

「一度も食べたことはない、それにライスよりもポテトのほうが好き」(デンマーク)

「米は淡白で味が何もしないような感じ じゃがいもはマッシュポテト、ベークドポテト、フライドポテト、ポテトチップス、ハッシュドポテトなどに出来る 相手にさえならないよ」(ドイツ人)

おなじ炭水化物を多くふくむ食べものとして、じゃがいも料理とくらべる欧米人は多いようです。じゃがいも料理は慣れしたしんでいる分、食べものとして認められるけれど、おにぎりは慣れ親しんでいないため、このような反応になるのかもしれません。

しかし、おにぎりに対する欧米人の反応は、奇異という印象をともなうものだけではないようです。インターネット上にある、日本のおにぎりに対する海外の人びとの反応には、つぎのようなものもあります。

「自分も日本に行った時はおにぎりにハマって食いまくってたよ」

「日本に行ったらおにぎりは絶対に食べるべきだ。コンビニやスーパーで売ってたりするんだけど沢山種類があって選ぶのも楽しいよ」

「日本のお母さんは子供へのお弁当におにぎり作ったりするんだよね、それは本当に素敵だと思うわ」

積極的におにぎりを食べることを欲しているまでは行かないまでも、日本人の食文化をある程度は尊重をしているものの言いようといえそうです。

おにぎりの原点は、平安時代、玄米の強飯を握りしめて鶏の卵のような形にした「屯食」とよばれる食べものが、宮中の宴会で下仕えの人たちにあたえられたこととされています。のりが巻かれていまのような形になったのは江戸時代中期ともいわれます。

食文化のなかで浸透している食べものは、親の世代から子の世代へと伝えられて、あたりまえの存在と化す。いっぽう、初めて触れる人びとには、あたりまえの存在とはなっていない。このちがいが、日本人と欧米人のおにぎり観のちがいにあらわれているのでしょう。もちろん、その背景にはコメという食材の食生活に位置づけ
のちがいもあるでしょうけれど。

参考資料
ブランチスタイル「アメリカ人のおにぎりへの反応」
http://brunchstyle.com/?p=985
海外の万国反応記「日本『おにぎりって他の国では食べられてるものなの?』海外の反応」
http://www.all-nationz.com/archives/1029296416.html
海外反応 I LOVE JAPAN「日本の『おにぎり』は最高の食べ物! 海外の反応。」
http://blog.livedoor.jp/zzcj/archives/51841600.html
日本おにぎり協会「おにぎりの歴史」
http://www.onigi-re.com/knowledge/history/
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肩甲骨で前に進む

写真作者:Mike Carbonaro

水泳のクロールでは、前に進む力の7割が腕で水をかくことで生まれるといわれます。腕をつかわず“ばた足”で前に進むのはたいへんですが、足を使わず腕で水をかけば“ばた足”より楽に前に進むことができます。

腕で水をかくとき使われる重要な体の部分が肩甲骨。背中の上のほうに左右一対ある逆三角形の板状の骨です。右手で背中の右側を、あるいは左手で背中の左側をさわろうとするとき凸型に出っぱってくるのが肩甲骨です。

肩甲骨の動きは、肩を上げるような動きをするときの「挙上」、逆に肩を下げるような動きをするときの「下制」、肩から腕にかけてを外側から回すような動きをするときの「上方回旋」、逆に左右の肩甲骨どうしが近づくような動きをするときの「下方回旋」という、四つに大きく分けることができます。

クロールでは、肩甲骨を挙上させることで、腕がぐいと前のほうに伸びます。挙上させると水をかくとき腕をより大きく動かすことができるため、肩甲骨は下制でなく挙上させることがまず大切になります。

そして、腕を回して水に入れるときには、肩甲骨を上方回旋して水をとらえます。つづけて手のひらでとらえた水をうしろにかくことで前に進むわけですが、このときには下方回旋を意識するとよいとされます。

ほかの骨や筋肉もそうですが、人により肩甲骨の可動域は異なります。可動域が広くなるほど、肩甲骨がよりよく動くことになります。そのため、肩甲骨の動かしかたに留意することのほかに、肩甲骨まわりの筋肉を伸ばす体操をしておくことも大切になります。

参考資料
Nobuyiki Kusano「水泳での肩甲骨の使い方」
https://www.youtube.com/watch?v=seLOYiE6vk8
矢谷淳YouTubeチャンネル「きれいなフォームへ!水泳初心者のクロールを変える肩甲骨ストレッチ」
https://www.youtube.com/watch?v=058zJ7tZiT8
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「お気づかいありがとうございます」は相手次第


相手に感謝の気もちを伝えるための表現はいろいろあります。基本的なものは「ありがとうございます」「どうも」「感謝申しあげます」あたりでしょうか。

「お気づかいありがとうございます」と言う人もいます。

この感謝の表現は、自分が相手からなにか気づかいをされてありがたいと感じたとき、相手に謝意を伝えるための表現といえます。

「ワイン、いかがですか」
「ああ、これはお気づかいありがとうございます」

相手の行為で命びろいをしたとか、絶体絶命の危機を免れたとか、そんな大それた恩恵を受けるわけではありません。しかし、自分のために思いめぐらせてくれたことに謝意を示すわけです。

しかし、「お気づかいありがとうございます」については、相手とのその後の関係性や雰囲気を考えたとき、相手に言うべきかどうか、なかなかむずかしいものがある、という考えもあるようです。

初対面、あるいは会って二、三度で、かつ仕事上の関係をもちはじめた人といったような、社交辞令が意思疎通で大切になるような相手に対して、「お気づかいありがとうござます」と言うことは、相手との信頼関係を高めるうえで有効といえます。

しかし、これからより親密な関係を築いていきたいと思っているような相手に向かって、「お気づかいありがとうございます」と言うと、「相手が自分に気づかってくれているということを自分は認識している」ということが相手に伝わってしまいます。「お気づかいありがとうございます」には、「あなたの気づかいに気づいていますからね」という意味が言外にふくまれているのです。

これからより親密な関係を築いていきたいと思っている相手に「お気づかいありがとうございます」と言うことが、親密な関係性構築に寄与するのかしないのかが問われます。

二人が、気づかいをしないでも意思疎通できる間柄を理想的状態と考えているとすれば、二人はまだその段階に至っていないということを認めてしまうことになるわけです。これには、より親密な関係性を築く速度を遅くするおそれがあります。

では、気づかいをしてくれた相手に、「あなたの気づかいに気づいていますからね」という限外の意味が伝わらないように、感謝のことばを伝えるにはどうすればよいのでしょうか。

「気づかい」について意識させてしまうのは、「お気づかい」ということばが出てくる場面においてです。ですので、「お気づかいありがとうございます」でなく「ありがとうございます」と言うことがひとつの得策となりそうです。
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美術品の価値が時とともに減るかは希少さや取得価格で決まる

写真作者:Keisuke Mutoh

買ったものの価値は、時が経つにつれて減っていくものです。たとえば、買ったばかりの建てものは、壁も床もきれいですが、だんだんと汚れて見た目が悪くなり、資産価値が減っていきます。

では、絵などの美術品の場合はどうでしょう。

美術品も、美術商などから買えるものではあります。そして、あまり目立ちませんが、時が経てばその品に使われている材料はすこしずつ劣化していきます。

しかし、法律からすると、美術品を、時とともに価値が減っていくものとするかどうかの判断には、場合わけが必要となります。

建てもののように、時の経過により価値が減少する資産を「減価償却資産」といいます。いっぽう、時の経過があっても価値は減少しないとする資産を「非減価償却資産」といいます。

「減価償却」というのはむずかしそうなことばですが、資産をいっぺんに費用として会計的に処理するのでなく、資産の価値がじょじょに減っていくものとして考えて何年かに分けた費用として会計的に処理することをいいます。

国税庁は、つぎのような美術品を、「非減価償却資産」と定めてきました。

「古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの」

つまり、いまの状態がすでに古くて貴重なものは、時とともに価値が減るものではないというわけです。

では、上にあるようなもの以外の美術品は、減価償却資産になるのでしょうか、非減価償却資産になるのでしょうか。

国税庁は、上記以外の美術品のうち、つぎのようなものも「非減価償却資産」と定めています。

「取得価額が1点100万円以上であるもの(時の経過によりその価値が減少することが明らかなものを除く)」

つまり、買ったときの値段が100万円以上であり、経年劣化しないような美術品は、非減価償却資産としているわけです。なお、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」の例としては、ロビーやホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾・展示用であるものなどがあげられています。

2014年末までは、上の「取得価格」について、「1点20万円以上」の美術品が「非減価償却資産」と定められてきました。2015年からは「1点100万円以上」が「非減価償却資産」となりました。

いいかえると、2015年以降は「99万9999円以下」の美術品は「減価償却資産」ということになっています。

現実的には、値段が99万9999円以下か100万円以上かで、その美術品の価値がだんだん下がっていくか、下がらないかがすぱっと分かれるようなことはありえません。

しかし、税金を納めるときの納めかたのルールとして必要があるため、この線引がなされているのです。

参考資料
国税庁「減価償却資産(第19号関係)」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/01/04.htm
経営ハッカー 2015年6月4日付「美術品等に係る減価償却資産の判定の改正点を解説 平成27年度改正」
http://keiei.freee.co.jp/2015/06/04/bijyutsu_genkasyoukyaku/
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会場の一角で“ある人びと”の異様な行動


科学分野の催しものなどでは、会場の一角である人びとたちの異様ともいえる行動が見られることがあります。

催しものの登壇者がパワーポイントなどのソフトを使って発表内容を投影します。そして投影内容が切りかわるたびに、舞台すぐ下の最前列あたりの一角で、カメラを持った人びとが投影幕を撮影しまくります。

この異様な光景をつくりだす人びとは、記者とよばれる人たち。彼ら・彼女らは、記者席という特別席に座りながら、記録をとっているのです。

登壇者の投影内容には「ご清聴ありがとうございました」とか「その結果は……」とかいった、意味のないものもふくまれます。しかし、切りかわった投影内容は、とにかくカメラに撮っておくのが楽なのでしょう。こうした投影内容に対しても、記者たちは一斉にカメラを向けます。そして撮っておくのです。

撮影の許可が下りていても、こうした行いを嫌がる登壇者はいるのでしょう。投影内容を、記者の撮影が追いつかないくらいに素ばやく切りかえる人もいます。また、投影幕の下側に大きな余白をとっておいて、ここに新たな字句が加えられると見せかけておきながらなにもなく、つぎの投影に切りかえる人もいます。

一般的に、こうした催しものでは記者の入場は無料です。いっぽう、一般の入場者は場合によっては数万円といった高額な入場料を払うこともあります。しかも、投影内容の撮影や、講演の録音は禁止とされている場合もすくなくありません。

入場は無料。最前列に席が用意されている。投影内容の撮影も可能。ここまでになると記者たちは特権をもっているのも同然です。

どうして主催者は、記者たちをそこまで特別待遇するのでしょうか。

一般に、新聞、雑誌、放送などで話題としてとりあげられるときの価値は、おなじ値段を投じて広告を出すときの価値よりはるかに高いといわれます。読者や視聴者は、広告としての情報は見まいと避けるのに対し、記事としての情報は見ようと求めるからです。開く催しものが記事になることに、それほどの価値を置いているのかもしれません。

また、催しものによっては、入場料金というのは、あってないようなものといえるのかもしれません。催しものに資金面の後援者などがついていれば、入場料での収入を計算に入れなくても赤字にならないということもありえます。となれば、記者にお金を払わせるといったことはしないでしょう。

もっとも、記者という属性の人びとの習性からすると、「記者の方々の入場も有料です」などと通知されたら、大半の人はその催しものには出むきますまい。
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道具にも練習台にも医療機器にも……医療にロボット


ロボットやロボット技術が、医療の分野にも進出してきているといいます。ただし、手術室で人間の執刀医の横に人型ロボットが付いて「センセイ、メスヲドウゾ」などと助手のようにはたらくといった、紋切型のロボットのありかたとはちがうようです。

医療の世界におけるロボットやロボット技術の進出のしかたには、いくつかの種類がありそうです。

まず、手術や執刀の道具の発展型として、ロボット技術が使われるというものです。

すでに医療の現場で使われていて、代表的な例となっているロボット技術が「ダヴィンチ」です。患者の治療するところに向けて四本ほどのアームが伸びていて、その先には鉗子があります。医師は、患部の映像を見ながら、コントローラとよばれるべつの装置を手で動かします。すると、その動きに連動してアームが動きます。手技では不可能だった角度から鉗子を入れることができたり、患者のからだへの侵襲を最小限に抑えることができたりします。

また、直接の手術や執刀でなく、その練習にロボットが使われるという事例も増えています。

たとえば、早稲田大学の高西淳夫研究室は、ロボット技術を用いた「気管挿管手技訓練システム」という装置を開発し、実用化しています。交通事故などにあった患者の気道を確保する応急処置の“練習台”をロボットが引きうけるというもの。皮膚の質感や、口の空き具合などが人間のからだとほぼおなじになっていて、さらに練習者が上手に応急処置をできたかどうかを得点で表すこともできます。こうした練習を生身の人間相手にするのはむずかしいため、ロボットに練習台役を担わせるという発想があります。

また、医療機器としてロボットやロボット技術が用いられようとしています。医療機器とは、人もしくは動物の治療、診断、予防などに使われることや、体や構造の機能に影響をおよぼすことが目的とされる機械器具のことをいいます。

サイボーグ型ロボット「HAL」を製造するサイバーダインは2015年3月、筋ジストロフィーや筋萎縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic Lateral Sclerosis)などの難治性の病気に対する「新医療機器」として、下肢タイプの「HAL医療用」の薬事承認申請を行ったと発表しました。患者がこの下肢タイプのロボットを使うことについて、新潟病院が有効性や安全性があるかの試験(治験)をしました。その結果、有効性や安全性が確認できたということになり、サイバーダインが「医療機器として認めてください」と、担当機関の医薬品医療機器総合機構に申請したのです。なお、新医療機器とは、既承認医療機器とは明らかに異なる場合の申請区分をいいます。

ロボットやロボット技術の医療でのおもな使われかたをあげてみました。いずれも最終的な目的は「患者を救う」ということで一致しています。しかし、ひとえに「医療のためのロボット」といっても、その使われかたはさまざま。これからも発想次第で新たな医療での使われかたが出てくるかもしれません。

東京医科大学病院「手術支援ロボット『ダヴィンチ』徹底解剖」
http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/davinci/charm/index.html
日産財団『私たちの未来はロボット共にある!』
サイバーダイン 2015年3月25日付「HAL®医療用(下肢タイプ)が国内で新医療機器 としての薬事承認申請を行いました」
http://www.cyberdyne.jp/company/PressReleases_detail.html?id=2704
医療機器製造.com「医療機器の定義」
http://医療機器製造.com/definition.html
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『桃太郎』以外で使われる「どんぶらこ」もなくはない


写真作者:Nao Iizuka

擬態語のなかには、ある物語作品のなかなどかぎられた場面でなければめったにお目にかからないものがあります。

「どんぶらこ」。これは、大きくてやや重みのあるものが水に浮きしずみしながら流れるさまを表した擬態語の副詞です。そして、多くの人は、この擬態語が使われている場面として『桃太郎』の冒頭を思いうかべるでしょう。

「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。 おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに行きました。 おばあさんが川でせんたくをしていると、どんぶらこ、どんぶらこと、大きな桃が流れてきました」

ほとんどの人が「どんぶらこ」といえば『桃太郎』の冒頭を思いうかべます。それととともに、ほとんどの人が「どんぶらこ」が『桃太郎』の話以外で使われているのを見聞きしたことがないかもしれません。

しかし、インターネットで「"どんぶらこ"-"桃"」と入れて検索すると、『桃太郎』の話以外で「どんぶらこ」が使われている実例を見ることができます。

「どんぶらこと、ワカメが流れてきます」(料理旅館 石

「波は空間のいたるところにあり、ちょうど、そのうえを粒子がどんぶらこ、どんぶらこと翻弄されながら進んでいくようなイメージです」(竹内薫『よくわかる最新量子論』

「太平洋プレートの移動により南の島がどんぶらこと日本に向かって北上していました」(大木祐子『住んでいい町、ダメな町 自然災害大国・日本で暮らす』

「どんぶらこ」を使うほとんどの人は、『桃太郎』の冒頭の記述のことを意識することなしに、この擬態語を使うことはできないものでしょう。

ちなみに、「どんぶらこ」とおなじ意味をもつ擬態語に「どんぶりこ」があります。「どんぶりこ」といえば、童謡「どんぐりころころ」(作詞・青木存義、作曲・梁田貞)で、主人公の「どんぐり」が「お池」にはまって大変になるときの“池ぽちゃ音”でも使われています。

「どんぐりころころ ドンブリコ」

「どんぶりこ」には二つの意味があって、「どんぐりころころ」での「どんぶりこ」は、大きくて重みのあるものが水中に落ちるときの音を表したもの。『桃太郎』も「どんぐりころころ」も、にたような擬態語が出てきますが、厳密な意味が異なるからか、あまりこの二つの作品がいっしょに語られるようなことはありません。

参考資料
スーパー大辞林
ウィキペディア「どんぐりころころ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/どんぐりころころ

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「ディープ」な宇宙開発紹介ラジオ番組が「おかわりスペシャル」で復活


昔にくらべて、独立行政法人が“自己アピール”に力を入れる度が高まっているといいます。独立行政法人の運営の一部には税金が使われていますが、市民の「自分たちの収めた税金がなにに使われているのか」といった意識の高まりを受けてといった背景もありそうです。

独立行政法人のうち、おもに研究開発をする法人は、2014年4月から「独立行政法人通則法の一部を改正する法律」という法律によって「国立研究開発法人」とよばれるようになりました。これにより「研究開発成果の最大化」が打ちだされましたが、当然、研究成果を広く市民に知らせる広報活動も、より一層、力を入れていくことになるのでしょう。

国立研究開発法人のひとつである宇宙航空研究開発機構(JAXA:Japan Aerospace eXploration Agency)も、報道発表、広報誌、一般公開などさまざまなかたちで、研究開発を“自己アピール”しています。

自己アピールの媒体のひとつにラジオ番組もあります。たとえば、毎週金曜27時、つまり土曜未明3時から30分間、ラジオ日本で「ディープな宇宙をつまみぐい」という番組が2015年3月から9月まで毎週、放送されていました。番組は全27回で終わりましたが、ポッドキャストでほぼ内容を聞くことができます。

番組の司会進行をつとめるのも機構の研究員。司会の研究員が、その回のテーマの研究開発をする研究員に話を聞くかたちをとっています。番組名の一部にもなっている「ディープ」が強調されていて、番組では専門用語も「遠慮なく」出されます。ただし、番組サイトに専門語の解説をするという補足もしています。

たとえば、ポッドキャストで9月19日(土)では、同機構の台に研究ユニット研究員の畠中龍太さんが司会、そして第一宇宙技術部門GOSAT-2プロジェクトチーム開発員の藤平耕一さんがゲスト。藤平さんの手がけている温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT-2」をはじめとする人工衛星の開発の流れを、「ミッションを課せられたスペックで達成するためには、どのような機能や性能を持っていればいいか検討します。衛星のかたちを描いていくのが設計となります」などと、藤平さんが解説していきます。

研究推進担当者の話によると、ポッドキャストの聴取数は想像していた以上とのこと。研究開発の用語などが、そのまま番組に出てくる「遠慮なさ」が、逆に宇宙開発に深く興味をもつ一般の人などに受けているのかもしれません。

あす(2015年)11月3日(火)午前1時(つまり2日(月)深夜25時)からは、1時間の復活番組「ディープな宇宙をつまみぐい おかわりスペシャル」がラジオで放送される予定です。10月25日(日)に、茨城県つくば市内の催しもの会場でおこなわれた公開収録を伝えるもの。1時間番組を前後半に分けて、「宇宙機用耐熱材料技術」と「宇宙用バッテリー技術」の2テーマで、研究開発を伝える内容のようです。

「宇宙機用耐熱材料技術」のテーマのほうでは、同機構の研究者のほか、この技術開発にかかわる物質・材料研究機構の構造機能融合材料グループの研究者も出演します。また、「宇宙用バッテリー技術」のテーマでは、産業技術総合研究所の電池技術研究部門付の研究者も出演します。

機構の研究開発部門は、番組を紹介する同部門のサイトに「ご紹介した内容は、宇宙開発のほんの一部に過ぎませんが、日ごろスポットライトを浴びることがない地道な研究を粘り強く続ける研究者の姿を感じていただけたかと思います」と、思いを寄せています。

ラジオ日本「ディープな宇宙をつまみぐい」の番組サイトはこちらです。
http://www.jorf.co.jp/PROGRAM/deep.php
「ディープな宇宙をつまみぐい おかわりスペシャル」の案内はこちらです。
http://yokohama.jorf.co.jp/deep/2015/09/post-8cda.html
宇宙航空研究開発機構研究開発部門による番組紹介ページはこちらです。
http://www.ard.jaxa.jp/publication/radio/radio-index.html
| - | 14:27 | comments(0) | trackbacks(0)
「カフェ アリエッティ」の彩り野菜とチキンカツのグリーンカレー――カレーまみれのアネクドート(71)


京都・茶屋町の国立博物館から東へ緩やかに登る七条通を進んでいくと、東山七条にたどりつきます。京都駅からのバスは、ここで折れて東大路へ。左へ折れると祇園方面へ、右へ折れると東福寺方面へ向かいます。

東大路は京都の東端の道路と思われがち。でも、さらにこの東山七条から東へと進んでいく坂道があります。京都女子大学、さらには豊臣秀吉の墓である豊国廟へと向かう道です。

この坂道の途中には、通学路だからでしょうか、街のはずれにしてはいくつもの飲食店が並んでいます。その並びに構えているひとつの店が「カフェ  アリエッティ」。若い夫婦できりもりしている地元のカフェです。

「カフェ アリエッティ」にはふわふわのパンケーキなどのスイーツを目当てに来る客が多いようです。しかし、ここで出されるカレーにやみつきになる一部の人もいるといいます。

献立表にあるカレーは、ランチメニューの「彩り野菜とチキンカツのグリーンカレー」と「ドライカレーと野菜のワンプレートランチ」。どちらも毎日12食限定。

一般的に、スイーツの品揃えが多いカフェでのカレーの位置づけとは通常「いちおうありますよ」程度のもの。しかし、この店では、店の献立としては脇役であってよいはずのカレーにも手抜かりがありません。

「彩り野菜とチキンカツのグリーンカレー」は、ルゥの緑色とも白ともいえるような色からすると、見た目はまったく辛さを想像させません。

しかし、その実はというと「この色のルゥで、これほどの辛さが出せるのか」と膝をたたくほどの辛さがあります。ココナッツミルクの甘さから入りつつ、すぐに旨みの多い辛さがやってきます。

献立表にも「辛いです! でもおいしいよ」と手書きで加えられた一言が。その一言を書いたと思われる若い女将さんに聞くと、「これでも、すこしマイルドにしたんですよ!」とのこと。

カレーの名にある「彩り」を加えているのが具の数々。揚げものとして、チキンカツ、れんこん、なすがあります。さらにパプリカとブロッコリーも添えられて、これらがライスやルゥの色と対照的です。

パンケーキ、フレンチトースト、スコーン、サンドイッチと、出す食べものに妥協を許さない店。カレーもその例外ではありません。

「カフェ アリエッティ」の食べログ情報はこちらです。
http://tabelog.com/kyoto/A2601/A260304/26023351/dtlmenu/photo/
| - | 12:36 | comments(0) | trackbacks(0)
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