コーヒーのチェーン店では、買った品を店で飲まずにもって帰る客と、店のなかで飲んでいく客とがいます。
店で飲んでいく客に対する店の対応はさまざまです。たとえば、「コーヒーなどの商品を買ってくれたら、あとは飲む場所は貸すから、席は自分で探してね」という姿勢をとる店があります。こうした店では、店員はとくに客の席確保につとめることはありません。また、使った食器は客が戻すというかたちもよく見られます。
また、たとえば、「お待ちのお客さまは何名さまですか。こちらで飲んでいかれますか。では席をおとりしておきますね」という姿勢をとる店もあります。こちらなら、コーヒーなどを買ったものの席が埋まっていて店内を右往左往、といったことを避けることができます。
さて、このふたつの姿勢の中庸的な立場をとる店もなかにはあります。レジスターのところで、こんなやりとりが聞こえてきます。
店員「こんにちは。おもち帰りですか」
客側「いえ、こちらで……」
店員「お席のほうは大丈夫ですか」
客側「……」
「お席のほうは大丈夫ですか」とは、「(店内が混雑しているようだが、あなたの座る)お席の(確保)ほうは大丈夫ですか」といった意味のようです。
店側からこのように“確認”をされたことに対して、客側は「……」と憮然としてしまったようです。
その店を初めて使う、気性の激しい客は、店員の「お席のほうは大丈夫ですか」という確認に対して、「は、いま来たんだから、席が大丈夫かなんて知るか!」などとのたまうかもしれません。
そこまで気性の激しくない人も、大丈夫かどうかを確認されて、大丈夫かどうかわからなければ「わかりません」というのが正直なところでしょう。正直に応えるとつぎのようになります。
店員「お席のほうは大丈夫ですか」
客側「いえ、正直言って、わかりません」
あるいは、ものごとに対してあまり自信をもてないような性格の客は、こう応えるかもしれません。
店員「お席のほうは大丈夫ですか」
客側「ちょっと自信がありません」
客が自分の正直な心内をそのまま店員に伝えると、その場の雰囲気がやや乱れてしまうおそれがあります。もちろん、店員は「混んでいますので、さきにお席を確保なされることをおすすめします」などとさらにたたみかけてくるのでしょうが。
店員「お席のほうは大丈夫ですか」
客側「たぶん、大丈夫だと思います」
このぐらいの応えかたが、店員とのあいだの雰囲気を悪くせず、ささっと注文から支払いへと進もうとするときは無難そうです。さらにその前に「あ、」を、その後に「ありがとう」を加えると、雰囲気はよりよくなりそうです。
店員「お席のほうは大丈夫ですか」
客側「あ、たぶん、大丈夫だと思います。ありがとう」
店員の確認行為に対して客がそこまで気をつかうのをどうかと思う人もいるかもしれません。しかし、基本は人と人との対話なのであります。