2015.05.31 Sunday
「賛成」が数えられなくても「起立多数」
国会では、議長が議員に対して議案に賛成か反対かの意志表明をもとめて、議案の可否を決定する「採決」の場面が見られます。国会の採決でとられる方法はさまざまです。
議長が「ご異議ございませんか」と議員たちに問い、議員たちが「異議なし」と口頭で答えることにって議長が可決を宣言する方法は「異議なし採決」とよばれています。これは、国会運営における“うちあわせ”の役割を果たす議員運営委員会で、あらかじめ全会派が議案に賛成し、かつ、ほかの採決方法の提案がなかったときにとられるものといいます。
ほかの採決方法では、衆議院と参議院のあいだで異なるものもあります。
衆議院では「起立採決」という方法がとられます。議長が賛成の議員の起立を求め、起立している議員が多いか、着席している議員が多いかを眺め、起立の議員が多いときは「起立多数、よって本案は可決されました」と可決を、着席の議員が多いときは「起立少数、よって本案は否決されました」と否決を、宣言するといったものです。
しかし、国会では、賛成または反対の意思を表明できる議員全体のうち、何人が起立したか厳密に数えられているわけではありません。この採決についても、議院運営員会で各会派ごとの賛成・反対があらかじめ調べられます。その結果から「起立多数」になるかどうか議長はあらかじめわかっているということになり、厳密には起立議員の数は数えられないようです。
いっぽう、参議院では「起立採決」でなく、「押しボタン式投票」という採決方法がとられます。議席に賛成と反対の意志を示すための押しボタンがとりつけられていて、そのボタンを押すことで、賛成票と反対票をほぼ瞬時に数えることができるというしくみです。1998年1月招集の国会から始まりました。
そして、両議院で行われているもうひとつの採決方法に「記名投票」があります。議員の名前が記された白色と青色の木札を議員が渡されます。賛成の場合は白い木札を、反対の場合は青色の木札を演壇に持っていき投票します。
記名投票や押しボタン式投票などでは、明確な賛成票と反対票の数がわかりますが、起立採決や異議なし採決では、本当に「起立多数」なのか、あるいは「異議なし」なのか、それを保証する手段はありません。
実際、会派のなかには「この法案だけには反対する」といった議員もいるわけで、その反対の意思表明は、公式記録上には残らないということになります。いかに政党や会派としての賛成・反対の意思表明が議員個人より優先されているかがうかがえます。
参考資料
参議院「参議院のあらまし 押しボタン式投票」
http://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/keyword/osibotan.html
河野太郎オフィシャルウェブサイト「第20号『異議があります!』」
https://www.taro.org/ml/hardcopy/20/page03.html
ウィキペディア「表決」
http://ja.wikipedia.org/wiki/表決