科学技術のアネクドート

都市伝説の「青ペン書きなぐり」勉強法が本に
勉強法にはさまざまなものがあります。英文を丸暗記したり、音声教材をくりかえし聴いたりといったものも勉強法です。

さまざまな勉強法が編みだされているなかで、かなり特徴的であるものの、それを実践している人は高確率で「効果があった」といっている勉強法があります。

それは、「青ペン書きなぐり勉強法」というもの。

青いペンを用意します。そして、記憶したいことをひたすら青ペンでノートに書きなぐっていきます。

基本はただこれだけです。こうして、記憶をすることで学習効果が上がるというのです。

志望大学現役合格を目指す「早稲田塾」という塾で誕生したもの。先生側が提案したところ、塾に通う塾生たちに広まりました。さらに、塾外の学校などでも、早稲田塾に通わない友人たちにその効果が伝わっていき、「青ペンで勉強すると成績が上がる」というのが都市伝説のようにまでなっています。

この「青ペン書きなぐり勉強法」の創始者である早稲田塾が、このたび『頭がよくなる青ペン書きなぐり勉強法』という本をKADOKAWA中経出版から出しました。


『頭がよくなる青ペン書きなぐり勉強法』

実際に、大学ノートに青ペンで記憶したいことが書きなぐられている写真もあります。

本によると、効果を信じて青ペン書きなぐり勉強法をおこなうことで成績が上がり、それが自信になってさらに青ペン書きなぐりをつづけて、ここまでやったのだから自分の成績は上がるに決まっている、とさらに自信をつけていくといった、好循環を自分のなかで生みだすことが重要のようです。

青ペンとノートさえあれば始めることができるというのは、入口としてはだれもができるハードルの低いものといえるでしょう。

多くの人のなかで、「勉強」と聞いて思いだすのは、受験勉強をふくむ学生生活時代の勉強かもしれません。しかし、資格・試験のための勉強、英語力を高めるための勉強、自社の製品知識を身につけるための勉強といったように、大人も勉強をする機会は多くあります。

そうした勉強の効果を高めたい大人も読者対象に含まれている本になっています。

参考資料
相川秀希『頭がよくなる青ペン書きなぐり勉強法』
http://www.amazon.co.jp/dp/4046011246/
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情報集中地域では得られない情報も

NASA

情報は人の多いところに集中しがちです。情報を発する人が多いのだからあたりまえともいえます。

情報一極集中の最たる例とされるのが東京です。たとえば、出版物の9割は東京で生産されているといわれます。

そうしたなかで、東京のような情報の中心地にいる人たちにはあまり触れられず、それ以外の地方にいる人たちにはよく触れられている情報というのもあります。

よく知られる例は、「たかじんのそこまで言って委員会」という放送番組です。これは、故やしきたかじんさんが司会をしていた、時事問題を扱う討論的番組。

東京などの首都圏では、この番組は放送されません。しかし、首都圏や東北などをのぞく全国のほとんどでは、この放送が流れています。これは、司会者の故やしきたかじんさんなど出演者が、東京の放送局から放送すると、各方面からの圧力で言いたいことも言えなくなるとして、首都圏での放送を拒んだからといわれています。

こうした、理由ではなくとも、東京のような情報の中心地以外の地方にいる人たちによく触れられる情報もあります。

通信社の報道情報もその典型的な例です。日本では、共同通信と時事通信というふたつの通信社があり、これらは、全国の新聞社や放送局などに日々、情報を配信しています。

共同通信や時事通信が配信する情報を、東京を拠点とする読売新聞や朝日新聞が一切、受けていないわけではありません。しかしながら、こうした大手新聞社は、全国あるいは世界各地に自社の記者を擁しているため、通信社が配信する情報より、自社記者が書く情報を優先して紙面にとりあげようとします。

いっぽう、特定の地方を販売対象とする地方紙を発行する新聞社は、その地方内に記者を充実させるものの、それ以外の場所は手薄となります。しかし、新聞である以上、全国や世界の報道情報も読者に伝えなければなりません。

そのため、自社では用意できないような情報を、通信社が配信する記事で補うわけです。

その結果、おなじできごとを扱う記事でも、首都圏などの地域では大手新聞社が独自に載せる記事となるいっぽう、地方では通信社が配信する記事ということになります。

日本では通信社は共同通信と時事通信しかありません。そのため、地方紙に載る記事には共通性が見られます。たとえば、長野県の信濃毎日新聞と、福島県の福島民報には、おなじ内容の書評記事を読むことができます。かつ、東京ではその記事を読むことはほぼできません。

東京などの情報の集中する地域にいれば、なんでも情報を得ることができるかというと、かならずしもそうではないわけです。

参考資料
ニコニコ大百科(仮)「たかじんのそこまで言って委員会」
http://dic.nicovideo.jp/a/たかじんのそこまで言って委員会
共同通信社「加盟者および加盟者発行新聞」
http://www.kyodonews.jp/company/members.html
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グーグル「DQN」、テレビゲームで上達


米国のグーグルが、(2015年)2月26日(木)、「deep Q-network」という人工知能を開発したことを英国の科学雑誌『ネイチャー』に発表しました。

この人工知能は、テレビゲーム「アタリ」の49のゲームに挑んだといいます。すると、ゲームの種類により度合は異なるものの、人工知能みずからでゲームのコツを学習していきました。43のゲームでこれまでの機械学習手法による上達をうわまわり、29のゲームでは職業試験者と同等か、超える上達ぶりになったといいます。

たとえば、画面上の球を跳ねかえして、ブロックを崩していく「ブロック崩し」というゲームでは、400回ほどゲームをしていると取りこぼしがほぼなしに。600回を超えると端のブロックに球を集中的に当ててブロックに穴を開け、ブロックの裏側に球を送ってブロックを崩すといった攻略法を編みだしたといいます。

この人工知能に使われているのは、深層強化学習アルゴリズムというもの。論文によると、教科学習の理論は、動物行動における心理的そして神経的な観点に深く根ざしたもので、「規範的根拠」(Normative Account)をあたえるといいます。

なお、報道では「グーグルが開発した」とあり、この人工知能の話がはじめて世に出たような印象をあたえますが、この学習理論については、ディープ・マインドという企業がすくなくとも2014年には開発をしていました。グーグルがこの会社を2014年に買収したのでした。

「deep Q-network」には頭文字をとった「DQN」という略称がついています。「DQN」といえば、日本では「ドキュン」というよび方でインターネット俗語にもなっています。俗語のほうの「DQN」の意味は、「一般の感覚から著しくズレている者、もしくはそれらで形成された集団のこと」といったもの。テレビ朝日の放送番組「目撃! ドキュン」からのもので、この番組の再現映像に、常識はずれの人がよく出てきたことが語源とされています。

ディープ・マインドが、日本には「DQN」というネット俗語があるというこうとを知っていたのかどうかはわかりません。しかし、人工知能の優秀さを宣伝しようとする場合、「DQN」という名前は、日本では不利益をもたらすかもしれません。

参考資料
Volodymyr Mnihら 2015年2月26日発表「Human-level control through deep reinforcement learning」『ネイチャー』
http://www.nature.com/nature/journal/v518/n7540/full/nature14236.html
日本経済新聞 2015年2月26日付「グーグル、自ら学ぶ人工知能開発 ゲーム繰り返し遊んで攻略」
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO83685140W5A220C1EA2000/
ITmediaニュース2015年2月26日付「Googleの人工知能『DQN』、アタリゲームで人間よりハイスコア叩き出す」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1502/26/news109.html
藤田康博 2014年1月23日「Playing Atari with Deep Reinforcement Learning」
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.slideshare.net/mooopan/ss-30336609
ニコニコ大百科(仮)単語記事「DQN」
http://dic.nicovideo.jp/a/dqn
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(2015年)3月14日(土)は「カイコが起こす蚕業革命!」


催しもののお知らせです。

東京・青海の日本科学未来館で、(2015年)3月14日(土)、サイエンティスト・トーク「カイコが起こす蚕業革命! 遺伝子組換えカイコがつむぐ未来」という催しものが開かれます。

カイコは、チョウ目カイコガ科の蛾のことで、ふつう、幼虫のことをいいます。カイコの幼虫は白くて長細いイモムシで、桑の葉をむさぼるように食べつづけて成長します。そして、蛹になるときに繭をつくります。人はこの繭を原料にして、絹糸を作ってきました。

日本の産業の歴史のなかで、カイコは欠かせないものでした。明治から昭和にかけて、日本の輸出産業を支えてきたのが絹であり、絹の作り手がカイコだからです。

その後、日本の輸出産業の主役は電子部品や自動車などに代わっていき、絹の輸出は廃れていきます。

しかし、いままたカイコは注目を集めているようです。カイコの作りだす絹が、絹織物だけでなく、人工血管、化粧品素材、さらに電子部品などに応用されることが期待されているためです。

こうしたさまざまな分野への応用を実現している背景には、遺伝子組み換え技術の応用もあるようです。2000年に、カイコに対する遺伝子組み換え技術が確立され、暗いところで光る「蛍光シルク」などの開発も進んでいます。

この催しものでは、カイコの遺伝子組み換え技術を開発してきた農業生物資源研究所で遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット主任研究員をつとめる冨田秀一郎さんが登場します。「遺伝子組換えカイコの可能性と、実用化に向けた動向について、冨田氏よりお話を伺います」(案内ホームページ)とのことです。

カイコを使った産業の可能性を通して、遺伝子組み換え技術の有用性なども見えてくるかもしれません。

日本科学未来館のサイエンティスト・トーク「カイコが起こす蚕業革命! 遺伝子組換えカイコがつむぐ未来」は、3月14日(土)14:30から15:30まで。参加費は入館料のみとのことです。詳しくは日本科学未来館のホームページをご覧ください。こちらです。
http://www.miraikan.jst.go.jp/event/1502191417936.html
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「具体的には」「いまは思い出せない」を避ける

写真作者:Sharon Mollerus

もの書きが記事をつくるため、専門家や事情に詳しい人に話を聞くことを取材といいます。取材では、取材対象者だからこそ言えるような話を聞きだすことが大切になります。だれもが言える話でなく、だれもが言えない話のほうに、希少価値があるからです。

取材対象者だからこそ言えるような話の例として、具体的な体験談や逸話があります。たとえば、取材で「数値データを使ってものごとを説明することが大切だと思っています」という話を聞けたとします。ただし、一般論としても「数値データを示すことは大切」ということはいわれていること。

そこで「どうして、数値データを使ってものごとを説明することが大切だと思うようになったのか」について、その人が経験したことや実感したことを具体的に聞くことができれば、その人だから言えるような話にすることができるわけです。

しかし、実際の取材の場では、「どうしてそう思うようになったのか、具体的な経験などはありますか」という質問は、なかなかいえないことかもしれません。取材対象者は「具体的には」と問われたところで、瞬時に答えることができないおそれがあるからです。

「具体的にといわれても、いまはあまり思いだせないな」

このような返事があると、もの書きと取材対象者の対話が滞ってしまいます。ここで話の勢いがなくなってしまうため、取材で話を聞きだすという点からもマイナスになります。さらに「具体的には」「いまは思いだせない」がくりかえされると、雰囲気そのものが悪くなってしまうことさえあります。

このような「具体的には」「答えられない」というやりとりを防ぐための策として、事前の準備と質問項目の提出があります。

取材前の予備知識として、これから取材をする相手が、「数値データを使ってものごとを説明することが大切」ということをなにかの媒体に述べているとすれば、取材ではそのことを前提にして、話を掘りさげることができます。

そして、「いまは答えられない」となるとしても、事前に質問したいことを投げかけておけば、取材のために答を用意しておいてもらえる期待はできます。

つまり、取材前に「日ごろ、数値データを使ってものごとを説明することの大切さをおっしゃっていると思います。そのような考えに至ったきっかけやご体験を、具体的にお聞きできればと思っています」と、あらかじめ伺っておけば、具体的な話を聞ける可能性は高まります。

こうした効果を高めるという目的もあるのでしょう。取材をするにあたっては、出版者、あるいは取材対象者、あるいはもの書きから、「事前に質問を」という提案があがる場合もあります。
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長寿の理由に善玉ホルモンのはたらき


「できるならば長寿でいたい」という望みを、多くの人はもっているものです。それは「早死にしたくない」という望みの裏がえしなのかもしれませんが。

長寿を目指すための科学で、注目されている物質に「アディポネクチン」というホルモンの一種があります。1995年、大阪大学の教授だった松澤佑次さんなど、世界の4つの研究グループがそれぞれ発見しました。松澤さんは「メタボリック症候群」という病気の考えかたをうちたてた人物でもあります。

「アディポ」というのは、「脂肪の」という意味の接頭辞。いっぽう「ネクチン」というのは「くっつく」などの意味をもつことばです。

脂肪細胞からは、さまざまな生理活性をうながる物質が分泌されています。これらの物質を「アディポサイトカイン」といいます。アディポサイトカインには、人の体にとってよい作用をもたらす“善玉”もあれば、よからぬ作用をもたらす“悪玉”もあります。

善玉のアディポサイトカインに分類されるのが、アディポネクチンです。とうのも、分泌されると体にとってつぎのようなよい作用が起きるからです。

動脈硬化を防ぐ。傷ついた血管を修復したり、貪食細胞が血管壁にへばりつくのを抑えたり、悪玉(LDL)コレステロールの作用を抑えたりするといった、“火消し”の効果がさまざまあり、動脈硬化を防ぐことにつながります。

糖尿病を防ぐ。食べものを食べたあとに、血液中の血糖値を抑える物質にインスリンがあります。糖尿病ではインスリンが効きにくくなくインスリン抵抗性 が問題となりますが、アディポネクチンにはインスリンの働きをよくする作用があるため、これでインスリンが効きづらいという状況が抑えられます。

こうした作用がわかり、アディポネクチンは長寿をもたらす物質として注目されるようになったのです。

となると、問題は、いかにアディポネクチンを多く分泌するような体をつくるかということになります。

不思議なことに、内臓脂肪が多くなると、アディポネクチンの分泌量が減ってしまい、そのかわりに悪玉のアディポサイトカインの分泌量が増えてしまうといいます。つまり、内臓脂肪の蓄積を抑えておくことが、アディポネクチンの分泌を増やすことにつながるわけです。

動脈硬化は、脳卒中や心臓病といった病気につながる一歩手前の段階にある病気です。アディポネクチンは動脈硬化を防ぐというですので、健康でいられる確率を高めることになりそうです。

参考資料
NHKクローズアップ現代 2014年10月15日放送「“百寿者”知られざる世界 幸せな長生きのすすめ」
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3565_all.html
知っ得? 納得!! メタボリックシンドローム「動脈硬化の鍵・アディポネクチン」
http://metabolic.jp/metabolic03.htm
e-ヘルスネット「アディポネクチン」
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-007.html
e-ヘルスネット「アディポサイトカイン」
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-006.html
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納税のための領収書管理、ようやく電子化の時代へ


「どんだけ前近代的なんだ」「15年は遅れてる!」

これは、電子帳簿保存法という法律が今年2015年に規制緩和されるという報道を受けての、人びとの反応です。

電子帳簿保存法は、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法に関する法律」のこと。1998年3月に施行され、2007年3月30日に最後の改正がおこなわれています。

第一条には、趣旨が書かれてあります。「情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等のため、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等について、所得税法、法人税法その他の国税に関する法律の特例を定めるもの」。

つまり、国の税金にかかわるような文書を、紙でなく電子化しても構わないといったことを定める法律であることが書かれているわけです。

この電子帳簿保存法をめぐって、2014年11月、日本経済新聞がつぎのように伝えました。

「税務調査の証拠となる領収書や契約書の原本を原則7年間保管するよう企業に義務付けた規制を2015年にも緩める方針だ。3万円以上の場合に紙のまま保管するよう求めていたが、スキャナーで読み取って画像データを保存すれば原本を捨てられるようにする」

つまり、3万円以上の額が記された領収書についても、画像として保管をすることができるようになるわけです。

経済団体連合会によると、こうした領収書などの書類を7年間、企業が紙の状態で保存しておくための費用はおよそ3000億円にもなるといいます。

電子情報のとりあつかい量が膨大になったなかで、書類を電子化するのはいまや日常茶飯事。冒頭のような声があがるのも、当然といえそうです。

なお、この法律とおなじように、企業の財務・税務関係の帳票類や取締役会議事録といったような商法で保管が定められている文書を電子的に保存してもよいことを決めた「e-文書法」というものもあります。こちらは2004年4月に施行されました。

参考資料
e-Gov「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO025.html
WebR25 2014年11月7日付「領収書の電子保管『遅すぎる』の声」
http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/jikenbo_detail/?id=20141107-00038929-r25
経理プラス 2014年11月11日付「電子帳簿の規制緩和方針を発表」
http://keiriplus.jp/news_e-receipt/
ウィキペディア「e-文書法」
http://ja.wikipedia.org/wiki/E-文書法
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「小学4年生でも読めるように書いてください」


科学分野のもの書きは、原稿書きを依頼した人から、「小学4年生でも読めるように書いてください」という課題をあたえられることがあります。「小学3年生」あるいは「小学5年生」が読めるようにといわれる場合はすくなく、もっぱら「小学4年生」が読めるようにといわれることが多いようです。

6年生までの小学生を低学年と高学年にわけたとき、4年生から高学年になります。「低学年の子供にも読めるようにとまではいわないが、高学年の子供たちには読めるように」といった意味合いがあるのかもしれません。

このような課題をあたえられると、もの書きはできるかぎり、小学4年生が知らないことばを使わずに、あるいは使ってもわかるように、原稿を書くことを目指します。

たとえば、小学4年生は、まだ「モデル化」という用語や概念をしらないかもしれません。そこで、「まねをするためにかんたんなしくみにしたお手本をつくります」などと説明するわけです。

いっぽうで、「小学4年生でも読めるように」という課題に対しては、「学校の授業ですでに教わっているかどうか」という尺度で、表現のしかたを考えることも有効といえます。

日本では、小学4年生までに習う理科の内容は、文部科学省の「学習指導要領」で明らかになっています。

たとえば、小学4年生では、「乾電池」「骨と筋肉」「水の三態変化」「月と星」といった内容を教えることになっています。「小学4年生でも読めるように」という課題をあたえられたもの書きは、「水を熱であたためて沸くと、水が見えなくなってしまうけれど」といった説明をしなくても「水蒸気」と書けばよいことになります(ていねいな説明をしてもよいけれど)。

しかし、「電流」「植物の発芽」「土地の侵食や堆積」といったことは、小学5年生にならないと習わないため、「小学4年生でも読めるように」とあたえられた課題に対しては、ていねいにこれらのことばを単独で示すことなく、ていねいにその概念を説いていくことが必要になります。

「小学4年生でも読めるように」という課題に真正面から取り組もうとするならば、もの書きは書いた原稿を小学4年生の子供何人かに読んでもらって、読めたかどうかを確かめればよいわけです。

しかし、実際のところそこまでやっているもの書きばかりかというと、そうともいえません。せめて、小学何年生のとき、なにを習っているかを把握しておくことは、この課題に対して応えたと姿勢を示すときのよりどころにはなります。

参考資料
文部科学省 2008年3月「小学校学習指導要領」
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2010/11/29/syo.pdf
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「焼き鳥5本以上は要注意、『プリン体』摂取の危険水域とは?」


日本ビジネスプレスのウェブニュース「JBpress」で、きょう(2015年)1月23日(金)「焼き鳥5本以上は要注意、『プリン体』摂取の危険水域とは?」という記事が配信されました。この記事の取材と執筆をしました。

発泡酒や第3のビールなどには、「プリン体カット」や「プリン体ゼロ」といったことを謳うものがあります。「糖質カット」や「カロリーゼロ」という文言にくらべると、「プリン体カット」という文言には、まだ謎が残ります。だからどうなのか、そもそもプリン体とはどのような物質なのか、と。

そこで、プリン体の専門家である帝京大学薬学部教授の金子希代子さんに取材をしました。プリン体の意味するものなどの解説は、前篇の記事でしてもらっています。ごく簡単にいうと、体に欠かせないものながら、増えると尿酸という物質が結晶化することを招き、痛風のもととなる物質となります。

後篇では、具体的にどんな食べものや飲みものにプリン体がどれだけ含まれているのか、また、食生活をどのように送れば痛風を防ぐことができるか、といったことを聴いています。

プリン体は、肉や魚などの食品やビールなどのアルコール類にとくに含まれるということがいわれています。

しかし、食べものや飲みものそれぞれのプリン体含有量を調べると、あることに気づきます。それは、アルコール類に含まれるプリン体の量は、おなじぐらいの分量の肉類や魚介類に含まれるプリン体の量よりもとてもすくないということ。

水は100ミリリットルで100グラムですので、ビールの100ミリリットルは、およそ食べもの100グラムにあたります。

そこで、金子さんたちが調査したビールや食べもののプリン体含有量を見てみると、たとえばビールには100ミリリットル中に5.1ミリグラムや6.9ミリグラム含まれているといいます。

いっぽう食品では、たとえばスルメイカ100グラム中に187ミリグラム含まれているといいます。

ビールでの5.1ミリグラムと、スルメイカでの187ミリグラム。これからするとスルメイカにくらべたら、ビールのプリン体含量はとても少ないという気になります。実際、少ないわけです。

しかし、金子さんは「アルコール自体もまた尿酸値を上昇させるのです」と解説します。そのため、「プリン体ゼロ」といったいアルコール類でも、尿酸値を上げて痛風のリスクを高めることにはなるわけです。そのリスクは低くはなりますが。

そもそも、毎日のようにスルメイカを食べるような人はそうめったにいません。しかし、毎日のようにビールを飲んでいる人は多くいます。しかも、毎日のようにビールを何本も飲んでいる人もいます。

そういうことからすると、食べものにくらべてプリン体含有量の少ないビールであっても、やはり注意しなければならないということになりそうです。

「焼き鳥5本以上は要注意、『プリン体』摂取の危険水域とは? 誤解だらけのプリン体と痛風(後篇)」はこちらです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42960
前篇の「本当は『プリン体ゼロ』ではやっていけない人の体」はこちらです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42898
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「クローブ」の丸ごと玉ねぎを使ったスパイシーカレー――カレーまみれのアネクドート(61)


東京・新宿三丁目は、神保町ほどではないものの、なかなかのカレー激戦地です。

新宿通り沿いには、日本におけるインドカレー発祥の店「新宿中村屋」があります。その道の向かい側には、食べ放題の献立もある「サラムート」。ほかにも、「印度屋」「グランドダージリン」といったカレー屋があり、また、ロールキャベツで有名な「アカシア」にもしっかりカレーの料理はあります。

新宿通り沿い、紀伊國屋書店新宿本店のビルの地下には、地下鉄の丸ノ内線の駅などに通じる地下商店街があります。この通路では、カツカレーなどを出す「モンスナック」がもっぱら有名ですが、カレー店はそれだけではありません。

2011年11月、「クローブ」というカレー専門店が開店しました。せまい地下街のせまい店。席はカウンター席がほとんどです。

この店は、香辛料で勝負をする店とみえます。店長が、せまい厨房で、注文ごとに鍋に火を入れ、ていねいにカレーを作りこんでいます。

多くの客が注文するのが、「丸ごと玉ねぎを使ったスパイシーカレー」。値段もいちばん安く、これが定番のようです。

細かくした玉ねぎを炒めつづけて、香辛料の豊富なルゥと渾然一体化させているのでしょう。玉ねぎの跡形はありません。

カレーには、さまざまな辛さの質があります。甘さを感じさせておきながら、あとからじわじわと辛さが増してくるよう味もあります。

では「スパイシーカレー」の辛さはというと、直接的。舌がルゥと触れあった直後から、香辛料の刺激的な味が訪れます。ルゥに溶けこんだ玉ねぎが、その辛さを中和させているのかもしれません。スープのように緩めのぽたぽたしたルゥです。

献立表にはほかに、「ラム肉仕立てのオニオンカレー」「ホクホクひよこ豆のキーマ」「いろどり野菜を食べるカレー」。カレー専門店だからあたりまえですが、カレーで勝負をしていることを感じさせる献立です。

伝統的なカレー、食べ放題のカレー、大衆的なカレーとさまざまな特徴を売りにする新宿三丁目のカレー店。そのなかで、クローブは味へのこだわりと料理のていねいさで勝負しているようです。

クローブの食べログ情報はこちら。
http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13135095/

ちなみに、クローブが開店する前、ここに「ニューながい」という店がありましたが、この店もカレースタンドでした。カレー店のあとはまたカレー店というわけです。
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エレベータでの別れぎわに機微

写真作者:Karen Mardahl

人は日々、さまざまな機微を抱えながら生活を送っています。

客人として企業などへ行ったときにも、人は機微を感じる場面があります。「エレベータでの別れぎわの間」というのも多くの人が経験する機微のひとつです。

建てものの10階や20階などで商談や取材などの面会が終わったとします。客人はエレベータに乗って1階へ。対応した企業の人はエレベータホールまで見送り。

「では、こちらで失礼いたします」
「また、ご連絡させていただきます。ありがとうございました」
「ありがとうございました」

「…………………」
「…………………」

通常は、帰る客人も見送る対応者も、たがいにお辞儀で頭を下げたまま、エレベータの扉がしまって別れる、ということになります。

しかし、客人にとって、この場面でエレベータの扉をすんなりと締めるという行為は、若干の高度な行為を必要とする場合があります。とくに、はじめて訪れる建てもので、エレベーターにほかの人がだれも乗っておらず、かつ客人が自分一人のみという場合は、とりわ高度な行為を必要とします。

客人は、不慣れなエレベーターの中で、「1階」のボタンと「閉」というボタンをてきぱきと見つけて押さなければなりません。エレベータの右側か左側か、片側のみにボタンがついているものも多くあります。

そして、10階分や20階分も階数のボタンがあるなかで「1階」を見つけなければなりません。

さらに「閉」「開」のボタンは、漢字になっていても、記号になっていても、まぎらわしいものです。

また、「『1階』のボタンを押せばすぐ扉が閉まる」と思いこんでいたところが、「閉」ボタンを押さないと、なかなか扉が閉まらないといったこともよくあることです。

こうしたことから、対応者が「ありがとうございました」とお辞儀をしてから数秒、あるいは下手をすると10秒以上かかってしまう場合もあります。

すると、お辞儀が数秒や10秒以上にわたり「…………………」という沈黙が長くつづくことに。

その間伸びがあったとしても、客人と対応者の人間関係が悪化するなどの影響はなさそうです。おたがいに用事を済ませたあとだからです。

しかし、最後の最後でちょっとだけ格好の悪いことにはなります。そんなとき、客人は「なかなか閉まらないな」という若干の焦りを感じ、対応者は「早く閉めてくれないかな」という若干の急きたてを感じながら、双方は別れゆくことになります。
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“過程の決まっている怒り”は避けがたい


人の怒りには“過程”があるといわれています。怒りに至るまでの段階や手順というものが、人によりある程度、決まっているというのです。よく「導火線に火がついて爆発する」という喩えは言いえて妙といえそうです。

たとえば、あるもの書きは、食堂で食事をしているとき、店員から「席を移っていただけませんかね」と聞かれると怒り、「もう結構です。お勘定!」と言って、お金を払い店を出てしまうといいます。

店員からすれば、そのくらいのことでどうして怒るんだ、となることでしょう。もはや、この人のなかでは、「席を移ってと言われたら怒る」という過程が決まってしまっているようです。

ある物理学分野の研究者は、取材を受けるとき記者から「なぜ、何々は何々なのですか」と聞かれると、怒りだすようです。「科学の質問で“なぜ”とはなんだ。私がやってきたのは“どうして”に答えることだ。科学者の私になぜ、“なぜ”と聞くのだ」と記者をただすということです。

この研究者には、「なぜ」という問いの答は人それぞれでちがってもよいものであり、「どうして」という問の答は人びとに相通じるもの、という強い思いがあるようです。

もはやこの研究者も、「記者が『なぜ』と言うことばを発してきたら、「私に“なぜ”とはなんだ」と反応するという過程が決まっているのかもしれません。

また、ある材料工学の研究者は、記者の書いた「何々大学が何々を開発しました」という原稿を見ると、怒りだすということです。「大学は人ではない。『開発する』の主語に『大学』をもってくるとはなんだ」と、記者の書いた文を指摘するということです。

新聞記事などには、「何々大学が開発した人工衛星」とか「レンズを使わない顕微鏡を何々大学が開発した」とか、大学を主語にする文章があたりまえのように使われています。

しかし、この研究者からすると、大学は研究者という人間が存在する“器”のようなものであって、意思をもってなにかを開発するのは、大学でなく人こそである、という強い信念があるようです。

そして、もはやこの研究者も、記者が「何々大学が開発した」という原稿を書いてきたら、「大学は人ではないんです」とたしなめるようにするという過程が決まっているのかもしれません。

非礼なことをすれば、多くの人が怒るものです。しかし、多くの人が非礼なことと思わないようなことでも、人によっては琴線に触れて怒るものかもしれません。

「あの先生に『なぜ』とは質問しないほうがいいよ」「あの先生に『何々大学が開発した』とは書かないほうがいい」。このようなことを経験者から聞いていれば、その怒りを避けることはできます。

しかし、ある個人の怒りの過程について、知識として身につけているということはめったにあるものではありません。つまり、ほとんどどうしようもないということがあるわけです。

どうしようもないと思える怒りに対しては、放ってやりすごすのが得策です。

参考資料
鈴木義幸の人を動かす問いの力 2011年6月22日付「不毛な怒りの静め方」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110617/220978/
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内視鏡の技術、日進月歩


外科の手術で、いま欠かせないほど使われている器具に、内視鏡があります。

内視鏡とは、内臓など体の内部を観察するための器械のこと。気管支を観察するのは気管支鏡、腹腔を観察するのは腹腔鏡、眼の脇の部分などを観察するのは眼科内視鏡などと、それぞれの観察する体の部分ごとに、内視鏡のよび名がついています。

内視鏡の技術は日進月歩。最近でも、つぎのような技術革新が報じられています。

まず、胃腸などを調べるための消化器内視鏡では、レンズの直径がシャープペンシルの芯の太さの半分ほどの0.25ミリメートルほどにまで細くなりました。これは、光学機器製造業のオリンパスが開発したもの。

なかでも胃壁などを視るためのレンズの部分は、いまも作業者が経験と勘で加工しているといいますから、職人技が生かされているわけです。

いっぽう、テレビなどでの利用が予定されている、横の画素数が8000画素ある「8K」で患者の内臓を映しだした世界初となる内視鏡手術が2014年11月に杏林大学で行なわれました。メディカル・イメージ・コンソーシアムと杏林大学医学部が協力して行われたもの。

胆嚢に結石ができた70歳代の患者2名に対して、胆石を摘出する手術が行なわれました。執刀医からは、「現在使用しているハイビジョンの内視鏡と比べてより細かい血管が見え,臓器表面の模様や、鉗子などの手術術具先端の細かい構造もくっきりと見える」といった感想が聞かれたました。

さらに、体に内視鏡を入れないで、仮想的に内視鏡とおなじように体内の観察をする「仮想内視鏡」という技術も使われはじめています。

仮想内視鏡で体内を視るためには、コンピュータ断層撮影装置(CT:Computed Tomography)で体内を撮影します。最近は、X線検出器を1列でなく複数に配列した「マルチスライス方式」が使われており、これで鮮明な画像を得ることができます。

体の中を鮮明に撮影できれば、あとはコンピュータ上で、観察したい体内の部分を視ればよいというわけです。この仮想内視鏡は、日本にはまだ数台しかないということです。

今後も、さまざまな方面に内視鏡の進歩はつづいていきそうです。

参考資料
朝日新聞 2015年2月12日付「内視鏡、匠が磨く オリンパス、福島で世界シェア7割」
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11597519.html
オプトロニクス 2014年11月11日付「MIC、8K内視鏡を用いた手術に成功」
http://optronics-media.com/news/20141111/27808/
ダイヤモンドオンライン 2015年2月11日付「本誌記者が実体験 全然痛くないバーチャル内視鏡の威力」
http://news.biglobe.ne.jp/domestic/0211/dol_150211_8973987174.html
病院の検査の基礎知識「狭心症の原因となる冠動脈の狭窄の発見などに活用されています」
http://medical-checkup.info/article/52786132.html
| - | 23:50 | comments(0) | trackbacks(0)
「デニーズ」のマッサマンカレー――カレーまみれのアネクドート(60)


2015年初の「カレーまみれ」です。

ファミリーレストランの料理というと、むかしは老若男女がだれでも食べることのできる、それなりの味でした。しかし、人びとの嗜好をマスで捉えて献立を考えるのは時代錯誤になったのでしょう。最近では、ファミリーレストランでも特徴的なカレーが出されています。

デニーズの「マッサマンカレー」もそのひとつ。

「マッサマン」は、2011年以降のカレー料理の潮流を眺めるうえで、欠かせない鍵のことばとなっています。

このカレーは、タイカレーの一種。「マッサマン」の語源には諸説あるようですが、タイに住むイスラム教徒が食べていたカレーであることから、イスラム教徒を意味する「ムスリムマン」が「マッサマン」に変化した、という説があります。現地では、「カレー汁」を意味する「ゲーン」ということばを冠して、「ゲーン・マッサマン」ともよばれています。

イスラム教の戒律では、豚肉食は禁忌。そのため、マッサマンカレーには、豚肉以外の肉が使われます。デニーズのマッサマンカレーでは鶏肉が使われています。

味は、タイカレーの特徴であるココナッツミルクが多く使われています。したがって、甘い舌ざわりではじまるものの、あとからじわじわと辛さが追いかけてきます。肉やなすやじゃがいもなどの具材よりも、やはりこのルゥに大きな味の特徴があります。

デニーズでは、「最もこだわったポイントは“現地の味に近づけること”」としています。たとえば、ルゥに含まれるタマリンドという植物の果実を現地工場で加工し、ソースにして日本に輸入しているとのこと。

さすがに、ライスにタイ米を使うといったことまではしていませんが、特徴あるカレーを感じさせるしあがりとなっています。

マッサマンカレーは、無印良品のカレー、日清食品のカップヌードル、いなばのカレー缶などでも商品化されています。2011年以降、急にマッサマンカレーが出まわるようになったのには、米国の情報媒体CNN(Cable News Network)Goが2011年7月、「世界最良50の料理」で、このマッサマンカレーを第1位としたことがおおいに関係しているようです。

デニーズでは2014年5月、マッサマンカレーを期間限定で献立に出しました。期間が終わったあとも、復刻を願う客の要望が多く、2015年にあらためて献立に入れたとのことです。

デニーズによる「マッサマンカレー」の紹介はこちらです。
http://www.dennys.jp/menu/rice/massamancurry/

参考資料
ウィキペディア「マッサマン」
http://ja.wikipedia.org/wiki/マッサマン
@DIME 2014年10月29日付「阿部純子のトレンド探検隊 プロに学ぶ『マッサマンカレー』のおいしい作り方」
http://dime.jp/genre/163504/3/
CNN 2011年7月21日付 “World's 50 best foods”
http://travel.cnn.com/explorations/eat/worlds-50-most-delicious-foods-067535
| - | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0)
ヒトラーの“コカ・コーラ忌避”で生まれた代替品、世界の定番に

写真作者:Álvaro Vega F.

人は、なにかしらの理由で、本物を使う代わりにほかの材料などで本物らしくものを作ることがあります。そうしてできたものは代用品とよばれます。

代用品には「本物には劣るけれど」といった意味あいがついてまわるもの。しかしながら、代用として始まったものが人びとに受け入れられて、定番品になるという場合もあります。

たとえば、「ファンタ」という炭酸飲料があります。コカ・コーラ社から発売されています。このファンタは、コカ・コーラの代用品として作られたといいます。

1940年代、ドイツでは米国で誕生したコカ・コーラがすでによく飲まれていました。しかし、ドイツで国民にコカ・コーラが飲まれることを好まない人物がいました。アドルフ・ヒトラー(1889-1945)です。「欧州文明への脅威」を建前にしていたともいいます。

ナチス・ドイツは、コカ・コーラの原液を輸入することを止めました。これに対して、コカ・コーラ社のドイツ法人は1940年、コカ・コーラの代替品として、乳清を主原料とする炭酸飲料を開発しました。これがファンタです。

日本コカ・コーラのホームページのファンタを紹介するページでは、ドイツのコカ・コーラ社での会議で発された、“Fantasie”(想像力)ということばが「ファンタ」という名の由来になったとのこと。同社の主任が、商品名を考えるうえでは「想像力を使え」と言ったことで、「『ファンタ』にしましょう」とすぐに決まったともされます。

その後、ファンタはイタリアやフランスなどにも広まっていきます。コカ・コーラの味はほぼ基本となる1種類でつづいてきたのに対して、ファンタには、さまざまな味が付けられました。日本でも1958年に、オレンジ味、グレープ味、それにクラブソーダとよばれる炭酸水のファンタが発売されています。

1940年の代替品は、いまもはや世界で炭酸飲料の定番のひとつとなっているわけです。

参考資料
日本コカ・コーラ「製品の歴史 ファンタ」
http://www.cocacola.co.jp/history_/package/fanta.html
All About「今年のファンタの味は何でしょう? 春はファンタの季節」
http://allabout.co.jp/gm/gc/217889/
ウィキペディア「ファンタ(飲料)」
http://ja.wikipedia.org/wiki/ファンタ_(飲料)
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日本人でも圧倒的に「洋式」がお好き


公共施設のトイレで洋式と和式があれば、どちらを使うでしょうか。

用をたすという目的はおなじですが、その達成過程には大きく異なるところもあります。最大のちがいは姿勢のとりかたです。

洋式では便座に腰かけます。和式では腰を下ろします。このちがいは、洋式と和式、それぞれの長所・短所にも結びついています。

洋式では、前の人が使った便座にお尻をつけることになり、これを嫌がる人はいるようです。しかし、しゃがむよりも楽なため、それを好んで洋式を使う人もいます。

和式はこの裏がえし。前の人が使った便座にお尻をつけるということを避けることができます。しかし、用をたすときの姿勢がとてもたいへんだと感じる人もいます。

「トイレは和式と洋式、どちらが好き?」といったことを聞いたアンケートがあります。@niftyの「何でも調査団」が2013年5月、トイレについてのアンケートをとり、5048人から回答を得たもの。

この問いに、「洋式」と答えた人は86%。「和式」と答えた人は4%でした。「どちらでもよい」が9%、「その他」が1%。軍配は「洋式」にあがりました。

洋式が好きという明らかな傾向のほか、このアンケートでは、もう一つ興味深い結果があります。年代が上がると「洋式が好き」と答える人が増える傾向にあったというのです。30代以下では「洋式が好き」が80%なのに、60代以上では91%だったそうです。

和式は洋式よりも昔からあった方式。年配の人のほうが和式に慣れているので、「洋式が好き」と答える人は少なくなるように思われます。しかし、結果は逆でした。

おそらく、年配のほうが「和式はしゃがむのが辛い」「洋式のほうが楽」
と思う人は多いのでしょう。そもそも、和式では、用を足している数分間、重心のかたよった姿勢でしゃがみ続けるわけです。足腰が鍛えられるといえばそうですが、同時に辛いものにもなります。

JR京都駅では、いまも和式のトイレが多数で、「外国人観光客に不親切」などといわれています。

もし、和式トイレを「これこそ日本式」という象徴のために残しているのであれば、やめたほうがよいでしょう。そうではないでしょうけれど。

和式は、慣れていない外国人にとって不便であるだけではありません。日本人にとっても高齢者が増えているため、辛い思いにさせる方式と化しています。実利から考えれば、どちらを多くするのがよいかは、明らかです。

参考資料
@nifty何でも調査団 2013年5月10日「トイレについてのアンケートランキング」
http://chosa.nifty.com/life/chosa_report_A20130510/2/
京都タウン・観光ガイド「京都駅早朝トイレガイド」
http://www.geocities.jp/web8home/kyoto/category0/article090512142723373.html
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「『土日よく寝た』は心だけ 体は寝不足リスクを抱えたまま」


ウェッジ社のニュースサイトWEDGE Infinityで、きょう(2015年)2月12日(木)、「『土日よく寝た』は心だけ 体は寝不足リスクを抱えたまま」という記事が配信されました。「学びなおしのリスク論」の第5回です。

睡眠の問題は多くの人が抱えるもの。日本人の5人に1人は睡眠の問題を抱えているともいわれます。そこで、不眠や睡眠不足といった睡眠の問題が、どのようなべつの問題を引きおこすのかといった疑問を、睡眠の専門家に投げかけました。

応じてもらったのは、国立精神・神経医療研究センターの三島和夫さん。三島さんは、このセンターの精神保健研究所で、精神生理研究部の部長をつとめています。睡眠についての研究成果をつぎつぎと出しており、2014年には一般書として『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人さんとの共著、日経BP)も上梓しています。

タイトルにある「『土日よく寝た』は心だけ  体は寝不足リスクを抱えたまま」というのは、仕事のある平日に睡眠不足で過ごした人が仕事のない土日に「よく寝た」と感じたところで、体には睡眠不足の影響がじつはつづいている、ということを示したものです。

具体的には、寝不足で崩れたホルモンバランスは、土日にすこし睡眠不足という“借金”を返済したとしても崩れたままで、低下したパフォーマンスなども完全には回復しないということです。「睡眠不足を本当に解消するには、例えば1週間にわたって毎日、長時間、寝ないとなりません」と、三島さんは話します。

記事では触れられていませんが、2012年には、「睡眠リズム異常の原因を解明」といった研究成果を世に出しています。昼夜のサイクルと体内時計のリズムが合わないために活動に困難をきたすような病気を「概日リズム睡眠障害」といいます。このうち、24時間という1日のリズムに同調できない症状をもったものを「非同調型」といいます。

三島さんたちの研究チームは、非同調型の概日リズム睡眠障害の患者や実験対象者たちに、昼夜や時刻がまったくわからない隔離実験室内で14日間にわたり生活をしてもらったそうです。

すると、実験対象者にあたる標準的型の生活者たちの体内時計周期は24時間7分だったの対して、非同調型概日リズム睡眠障害の患者たちの体内時計周期は平均24時間29分になったといいます。

「たかだか22分の差」と思われそうですが、「1日が24時間29分」というリズムをくりかえしていたら、本来の24時間周期から、1週間で3時間23分、10日で4時間50分、1か月で14時間30分もずれてしまうことになります。

標準型の生活者たちは、7分ぐらいのずれであれば、毎朝のおなじ時間帯に陽の光を浴びることで、体内時計をリセットすることができ、24時間周期のリズムを刻むことができるでしょう。しかし、29分もずれてしまう人にとっては至難の業といえそうです。

記事のなかでも、個人としてだけでなく、社会としての取り組みが必要だということを、三島さんは説いています。

「学びなおしのリスク論」第5回「『土日よく寝た』は心だけ 体は寝不足リスクを抱えたまま」はこちらです。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4711

参考資料
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部 2012年8月14日「(独)国立精神・神経医療研究センター・三島和夫部長らの研究グループが、睡眠リズム異常の原因を解明 新たな診断法の開発に期待」
http://labo.sleepmed.jp/release/20120814.html
| - | 23:58 | comments(0) | trackbacks(0)
「背山臨水」の理由を物理から読む


「背山臨水(はいざんりんすい)」ということばがあります。山を背後にして、水を前方に臨むような場所、あるいはそこに住むことをいいます。「背山臨水」は、土地の地勢や水勢を占って住む場所を決める古代中国の思想「風水」で、もっともふさわしいと信じられてきた場所のひとつとされています。

ここでいう「水」とは、海、川、湖などのこと。風水術で住むのにふさわしいとされているかは別として、たとえば神戸や横浜などの港町には、背後に山、前方に海といった「背山臨水」に合った場所が多くあります。

人は、「背山臨水」のような場所にいると落ちつくといわれます。占いというと根拠があるのかどうかわからない世界ですが、科学的な見方からすれば、「背山臨水」が落ちつくというのは、ある程度、理にかなっているといえるかもしれません。

背後に山があり、前方に海がある土地で、人はどちらのほうを向くことが多いでしょうか。神戸でいえば、人の体は、山側を向くほうが多いか、海側を向くほうが多いかという問題です。

山が好きな人は山側を向くことが多いかもしれませんが、多くの人はどちらかというと海側を向くはずです。なぜなら、山側よりも海側のほうが低いからです。球を転がせば、低いほうの海側へと転がっていくでしょう。人もまた物体の一種ですので、山から海にかけての道があれば、低いほうの海側へ歩みを進めるほうが、自然体といえます。つまり、重力には抗いづらいということです。

このようなことからすると、高い場所である山のあるほうに背を向けて、低い場所である海のあるほうに顔を向けているというのは、心理にも物理にも適した佇まいといえるでしょう。そこに「落ちつき」感があってもおかしくないはずです。

参考資料
中日新聞プラス 2013年10月8日付「『風水』大好きな韓国人♪」
http://chuplus.jp/blog/article/detail.php?page=4&comment_id=1535&comment_sub_id=0&category_id=224
木下勇「風水」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arp1982/13/3/13_3_51/_pdf
ウィキペディア「四神相応」
http://ja.wikipedia.org/wiki/四神相応
進士五十八『日本の庭園』
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睡眠不足で腹が減る

睡眠不足のとき、無性にお腹が減って、なにか食べたくなるといった経験をした人はいることでしょう。朝の5時から起きて仕事をはじめ、その翌日の未明まで仕事をつづけたある人は、「1日5食になったが、お腹が減ったのでふつうに食べてしまった」と言っています。

一般的に、睡眠不足のときは、からだの分泌物のバランスが崩れて、食欲を増すようになるといわれています。

たとえば、グレリンとよばれる物質があり、睡眠不足のときに多く分泌されるといわれています。グレリンは、胃から分泌されるペプチドという物質のひとつで、成長ホルモン分泌を促すはたらきがあります。そのほか、グレリンには強力に食べることを促すはたらきがあることもわかってきました。

そのため、「睡眠不足になる、グレリンがたくさん分泌される、食べたくなる」という過程が進むというわけです。

いっぽう、レプチンというたんぱく質は、脂肪量を一定に保つはたらきがあるとされています。またレプチンは、グレリンとは逆に食欲を抑えて、エネルギー代謝を活発にするはたらきをもっています。このレプチンのほうは、睡眠不足になると分泌量が減ってしまいます。

そのため、「睡眠不足になる、レプチンがあまり分泌されなくなる、やはり食べたくなる」という過程が進むというわけです。

たしかに、睡眠不足によって、こうした体内物質のバランスが崩れて、食欲が増すということは実際あるのでしょう。

ただし、睡眠不足が食欲を増進させるという理由は、ほかにも考えられます。

睡眠不足ということは、長い時間にわたり起きていることとほぼおなじといえます。人は、睡眠時より覚醒時のほうが代謝量が増えるといいます。ベッドに寝転がって目を覚ましていたときのほうが、ベッドで眠っていたときよりも、およそ1割、代謝量は増えるとされています。代謝量が多ければ、当然、体はエネルギーを欲して、「なにか食べたい」と感じるようになります。

しかも、それだけではありません。たいていの場合の睡眠不足とは、「眠る暇を惜しんで仕事をする」といったように、作業を伴うもの。ふだん体を動かさずに眠っていることを考えれば、睡眠不足のときは作業をすることでも代謝量が増えるはずです。

強力に食べることを促すグレリンの増加。食欲を抑えるレプチンの減少。寝ないで作業することによる代謝量の増加。これらのことがあいまって、睡眠不足の人は無性にお腹が減るのでしょう。

参考資料
Daily Portal Z「寝てる間のカロリー消費量を調べる 研究所にご一泊」
http://portal.nifty.com/special05/08/01/4.htm
知恵蔵2015「グレリン」
https://kotobank.jp/word/グレリン-189055
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「乾布摩擦」から「ラブボディメソッド」へ


昭和生まれの人と平成生まれの人で、「知っている・知らない」にちがいが出るものとして、「乾布摩擦」があげられることがあります。

字のとおり、乾布摩擦は、乾いた手ぬぐいなどで体をごしこしと擦ることをいいます。これにより神経が刺激されるので、気管支喘息の発作を予防したり、皮膚の鍛錬になったりする効果があるといいます。

民間療法の域をでていないものとはいえますが、たしかに皮膚を摩擦すれば、そこに熱が生じるので、なんらかの体への刺激にはなることでしょう。ただし、アトピー性皮膚炎をもっている人が乾布摩擦をやると皮膚の状態が悪くなるため、避けたほうがよいとされています。

昭和時代には、幼稚園、あるいは小学校でも子どもが上半身裸になって、乾布摩擦をしていたものです。

いまも、乾布摩擦が行われているのでしょうか。朝日新聞の過去1年の記事について「乾布摩擦」ということばを含む記事を検索してみると、3件が該当しました。

しかし、「(学童疎開で)朝は起きてすぐ、上半身を乾布摩擦していました」「子どもの頃に通っていた幼稚園では、乾布摩擦を取り入れていた」「保育園児だったころだ。真冬でも上半身裸でマラソンと乾布摩擦をする園で……」と、いずれも過去の思い出を綴るかたちの投稿や記事のみ。ニュースとしてはまったく扱われていません。

小学校では、もはや、男子も女子も裸になって乾布摩擦をするという時代ではなくなっているのでしょう。

しかし、幼稚園ではいまも、おこなわれているところはあるようです。インターネットなどでは、幼稚園のサイトで「乾布摩擦を始めました」という報告の日記を見つけることができます。

片仮名にすれば、“現代版”らしく聞こえるもので、最近では乾布摩擦を発展させた方法を、「ラブボディメソッド(Rub Body Method)」ともよぶようです。NHKの「おはよう日本」が、薄手のシャツを着たまま、乾いたタオルで体をこするという方法を紹介しています。

番組に出演した新潟大学医歯学総合病院の渡邉真弓さんは、「こすることで血流をよくする効果が期待できます。自分でこするので、手を動かす、血管の中の血液を動かすというダブルの効果で、皮膚をこすると血流がよくなります」と効果を話しています。

参考資料
朝日新聞 2015年2月4日付「フォーラムさいたま『寒い!』」
朝日新聞 2014年10月21日付「Photo東海の記憶 1972年 笠松の松枝保育所」
朝日新聞 2014年4月24日付「(ひととき)白い水平線、飲み干す息子」
のぞみ幼稚園「乾布摩擦が始まりました」
http://www.nozomi-koi.jp/diary/news1387.html
NHKおはよう日本 2014年4月1日(火)「けんコン! ラブボディメソッド(乾布摩擦)」
http://www.nhk.or.jp/ohayou/kencon/20140401.html
| - | 23:43 | comments(0) | trackbacks(0)
テレビの解像度、日進月歩(下)


いまのテレビより解像度の高い「4K」、さらに解像度の高い「8K」のテレビが実用化されていきます。しかし、たとえば4K相当の解像度のテレビを視るには、4Kのテレビがなければならないかというと、かならずしもそうとはいえないようです。家電製造業などの努力により、従来のテレビで高解像度の映像を見るための技術が開発されているからです。

この技術を、一般的には「アップコンバージョン」といいます。たとえば「フルHD」とよばれる縦1080×横1920ピクセルの画面解像度のテレビで、縦2160ピクセル×横3840ピクセルの4Kの映像とおなじようなきめ細かい映像を視ることができるというのです。

たとえば、パナソニックは、テレビの「ビエラ」の一部製品に「4Kファインリマスターエンジン PRO」という技術を搭載しています。これは、まず映像の周波数から映像撮影時の解像度を自動判別する「原画判別」、そして映像での劣化した輪郭部分をすっきりさせる「リマスター超解像」、さらに模様のある領域の細部を復元したり、模様のすくない領域の映像ノイズを抑えたりする「ディテール超解像」という三つの過程を組み合わせたものといいます。

ソニーも、「4K対応ブラビア」に、「4K X-Reality PRO」とよんでいるアップコンバージョンの技術を使っています。ソニーは、映像ノイズを低減させるほか、データベース型超解像処理や、カラーマネジメントも駆使して、4K映像へのアップコンバージョンを実現させているとしています。

すでにこうした製品は実際に売られており、アマゾンのカスタマーレビューなどでは「画質はかなり良いです」「4Kの放送をこんなに安くみれるのは感動」などと、評判はかなりのもののようです。

こうした技術を使えば、実際の4Kの解像度をもつテレビよりも安い価格で、4K相当の映像を視ることができるようになるわけです。これが、4Kテレビが当たり前になる前段の過渡期での製品となるのか、それとも4Kテレビと併存するような製品となるのか。どちらにしろ、消費者には選択肢があたえられたことになります。

参考資料
パナソニック「4Kファインリマスターエンジン PRO」
http://panasonic.jp/viera/hexa_chroma/remaster.html
ソニー「KD-65X9200A」
http://www.sony.jp/bravia/products/KD-65X9200A/feature_2.html
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テレビの解像度、日進月歩(上)


映像表現の技術は、より解像度の高い方向へと進んでいます。1980年代末から1990年代にかけて、「ハイビジョン放送」という、それまでのテレビに走っていた525本の走査線にくらべて、2倍以上の1125本の走査線が走っているテレビが話題となっていました。

また、ハイビジョン放送もですが、走査線が650本以上ある放送の規格は「HD(High Definition)」とよばれます。1990年代に放送が始まったハイビジョンのほか、地上デジタル放送やBSデジタル放送も、走査線が1125本。HDに含まれます。

ちなみに、「フルHD」とよばれる規格もあります。これは走査線が1080本で、縦1080×横1920ピクセルの画面解像度の規格です。つまりフルHDは、HDの一部ともいえるわけですが、走査線が720本や768本の画面解像度よりも、高いということを示すために、テレビメーカーなどが、縦1080×横1920ピクセルの解像度に「フルHD」というよび名を付けたのです。

しかし、HDやフルHDはもはや、一世代前の規格と化しています。

走査線数が2160本で、縦2160ピクセル×横3840ピクセル、つまり従来のフルHDにくらべて、縦も横も2倍のピクセル数がある「4K」の規格が使われだしています。横のピクセル数が約4000個であることや、従来のフルHDにくらべて総画素数が4倍になることから、「4K」とよばれています。

2014年6月からは、放送局や電気製造業などからなる「次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)」が、4Kでの放送を始めています。2015年3月からは、124/128度通信衛星(CS:Communication Satellite)放送やケーブルテレビでも4Kの放送が始まります。

しかし、テレビに詳しい人であれば、4Kの先にさらに「8K」が待っていることも知っていることでしょう。

8Kの走査線数は4320本で、縦4320ピクセル×横7680ピクセル、つまり4Kにくらべて縦も横も2倍のピクセル数があるわけです。

8Kでの放送は、2018年に衛星(BS:Broadcasting Satellite)放送で始まるという計画が、総務省より発表されています。

日進月歩でテレビ映像は高解像度化が進んでいくわけですが、この技術進化とともに、「一つ前の規格の映像で、新しい規格の映像を遜色なく見よう」とするための技術が開発されています。つづく。

参考資料
ウィキペディア「ハイビジョン」
http://ja.wikipedia.org/wiki/ハイビジョン
IT用語辞典「フルHD、フルハイビジョン」
http://e-words.jp/w/E38395E383ABHD.html
知恵蔵2015「4Kテレビ」
https://kotobank.jp/word/4Kテレビ-189238
AV Watch 2014年9月2日付「8K放送は2018年開始、'16年に4K BS放送も。新ロードマップ策定」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20140902_664692.html
| - | 19:04 | comments(0) | trackbacks(0)
「ウェアラブル・センサが導く、人間の“新たな法則”」


経済情報の共有サービス「NewsPicks」の連載記事「為末大の未来対談」が、(2015年)2月5日(木)、新たなシリーズに入りました。今回からは、為末大さんが、日立製作所中央研究所の矢野和男さんと対談を繰りひろげます。今回の記事タイトルは「ウェアラブル・センサが導く、人間の“新たな法則”」

矢野さんが2014年に上梓した著書『データの見えざる手 ウェアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』が話題になりました。人が身につけるセンサと人工知能を使えば、これまではわかり得なかった人間関係、企業の儲け方、社会の事象などの“法則”がわかるようになる、といった内容です。

矢野さんの著書でも、今回の為末さんの対談でも、とりあげられている事例のひとつに店舗内の「好感度スポット」の特定というものがあります。

あるお店が、店員と客が店のなかをどのように移動するかを動線として測りました。そして、その計測データを、「H」という日立の人工知能で解析しました。

すると、店員が手の空いているとき、店内の“ある特定の場所”にたたずむと、店の売上が確実に上がるということがわかったのです。そのたたずむ場所が「好感度スポット」。好感度スポットに店員がたたずむ時間が10秒増えるだけで、客の購買金額が145円も増えることがわかったといいます。

要点は、人の動きをつぶさに観察しデータ化することと、そのデータを人でなくコンピュータが分析することにあります。

人によるデータ分析には、「その客観的なデータをどのように料理するか」といった点で、やはり経験や直感が使われるものです。しかし、経験や直感では決して見つからないような“法則”もありうるわけです。

「H」のような人工知能を使えば、人の直感では思いもしないような法則を導けるかもしれない。それを体現した事例のひとつが、上の「好感度スポット」の特定というわけです。

これまで人が社会における事象を調べるとき、「相関関係」と「因果関係」を区別しようとしてきました。「Aの増え方とBの増え方は一致する」という関係が相関関係です。「Aが増えるからBが増える」という関係が因果関係です。

人工知能が社会の事象を解析するとき、「因果関係」はかならずしも見つかるわけではなさそうです。それでも、たしかに「相関関係」はあるということが、客観的にデータ解析で示されるわけです。

そうなると、「Aが増えるからBが増える」といった「因果関係」をわざわざ探る必要もなくなってくるかもしれません。「とにかくAを増やせばBが増えるのだから、それでいいじゃないか」となるわけです。

記事の読者の感想にも「もともとある仮説をデータで検証するのでなく、データから全く新しい相関関係に気づき、因果関係を導き出す。これがビッグデータの本質的な価値なのかと」といったコメントが見られます。

為末さんと矢野さんの対談は木曜更新であと複数回、続く予定。スポーツ分野におけるビッグデータ活用や、近い将来に実現しそうなことなどが語られていくかもしれません。

「為末大の未来対談 第5回 ウェアラブル・センサが導く、人間の“新たな法則”」はこちらです。
https://newspicks.com/news/815401/

この記事の構成を担当しました。
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
木も「骨と肉」から


人のからだというものは、しばしばべつのもののたとえに使われます。「骨と肉」は、その最たるもののひとつかもしれません。文章作法などでもよく、「骨組みをつくってから、肉づけをする」といったことがいわれます。

森林や植物の分野にも、「骨と肉」のたとえで説明されるものがあります。

木の中身を顕微鏡などで見てみると、一種類の物質でなりたっているわけではないことがわかります。「骨と肉」の関係をなす物質があるわけです。

「骨」とされるのは、セルロースです。炭素原子6個、水素原子10個、酸素原子5個でつくられる炭水化物で、天然界で植物をなりたたせている物質の3分の1は、セルロースといわれます。セルロースは繊維素ともよばれます。


セルロースの構造式
画像作者:Slashme

たしかに、草や木が重力に逆らって天に向かって伸びていくとき、「骨」の役目を果たすような物質がなければ、ふにゃふにゃとして地をはうだけになってしまいそうです。

いっぽう、「肉」とされるのは、リグニンとよばれる物質です。木のなかには2割から3割ほど含まれています。とくに「肉」のたとえのなかでも、リグニンは「筋肉」にたとえられることが多くあります。

リグニンも、炭素、酸素、水素の原子でなりたっていますが、多くの原子が連なって、複雑な3次元のつくりをしています。


リグニンの構造の例
画像作者:Karol007

セルロースやリグニンからなる質感をもったものを、人はいわゆる「木材」と認識するわけです。しかし、人はセルロースやリグニン、また木をなりたたせるほかの物質を、分けることもできます。

たとえば、セルロースの比率を高くしたのが紙です。セルロースの繊維を水と混ぜてパルプという原料をつくり、これを砕いて溶かしてから形づくります。

さらに、近ごろはセルロースが束状になっているのをほぐしてやって、ナノメートルの寸法まで細くした「セルロースナノファイバー」とよばれる物質への注目もたかまっています。軽くて強く、しかも資源となる木は地球上に多くあるため、セルロースナノファイバーをつくるための費用もさほどかからないからです。

参考資料
森林総合研究所 研究の“森”から 2004年1月30日「樹木を化学の目で観る」
http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kouho/mori/mori120/mori-120.html
ウィキペディア「セルロース」
http://ja.wikipedia.org/wiki/セルロース
ウィキペディア「リグニン」
http://ja.wikipedia.org/wiki/リグニン
日本製紙グループ「セルロースナノファイバーの製造技術と用途開発」
http://www.nipponpapergroup.com/research/organize/cnf/index.html
スーパー大辞林
| - | 23:49 | comments(0) | trackbacks(0)
異なる周波数の問題に“根本療法“でなく“対処療法”
2011年3月の東日本大震災では、福島第一原子力発電所が止まり、関東地方などで電力が足りなくなりました。「計画停電」で寒い思いをしたという人も多くいました。被災地の寒さにくらべれば、まだよかったかもしれませんが。

このとき話題になったのが、原発事故の影響を受けなかった西日本の電力を、東日本であまり使うことができなかったという問題でした。中部電力の管轄地域より以西と、東京電力の管轄地域より以東では、電気の周波数がそれぞれ60ヘルツと50ヘルツで異なるためです。電力の周波数とは、交流電源のプラスとマイナスが1秒間に切りかわる回数を指します。

この周波数のちがいは、1896(明治29)年、東京と大阪で異なる周波数の発電機を取りいれたことに端を発します。はじめは電力のサービスもごく小さなものだったため問題にならなかったのでしょう。ところが、日本中で電力網が整備されていくにつれ、周波数の差は大きな課題になりました。

そんな日本で、2016年4月に「電力小売市場の自由化」が始まる予定です。これは、これまで東京電力や関西電力などの「電力10社」とよばれる大手企業が地域ごとに電力の発売を独占していた状況をあらためるもの。新たな電力事業を始める企業は多く現れると見込まれています。消費者のほうからすれば、どの電力事業者の電気を使うかを、自由に選べるようになります。

すると、西日本の電力事業者がつくった電力を、東日本の消費者が使うといった状況も起きてくるわけです。東京電力などの大規模な電力事業者も、電力小売市場の自由化によって、西日本の地域に電力を売るといったことができるようになります。

「周波数のちがい」の壁はどうなるのでしょう。

異なる電気の周波数を変換することは技術的にはできます。交流の電気を一旦、直流にし、さらにまた交流に変えることで、60ヘルツを50ヘルツに、あるいは50ヘルツを60ヘルツに変換することができます。

実際、50ヘルツの地域と60ヘルツの地域の境目には、1965年に佐久間周波数変換所という「周波数変換設備」がつくられ、量は少ないながらも周波数の変換作業がおこなわれてきました。当時の能力は30万キロワットでした。


佐久間周波数変換所
写真作者:NARITA Masahiro

その後、東日本大震災による電力不足や、電力小売市場の自由化への動きなどを受けて、電力事業者が周波数変換設備の能力を高めてきました。2013年には、合計120万キロワット、変換できるようになっています。

電力小売市場の自由化が決まり、電力事業者はさらに周波数変換設備の増強をしています。2020年度には、沖縄電力をのぞく電力事業者9社が、1320億円から1410億円ほどをかけて、合計210万キロに増やす予定です。

日本中の電気の周波数を揃えるといった“根本療法”でなく、“対処療法”で電力小売市場の自由化を迎えようとしているわけです。それもそのはず、根本治療をするとなると、電力事業者の設備を交換するだけで10兆円も必要になるといわれています。

参考資料
中部電力でんきのあした 2014年5月30日付「60Hz⇔50Hzの周波数変換で、西と東の電気をつなぐ東清水変電所」
http://dna.chuden.jp/converter.html
資源エネルギー庁 2013年10月「電力小売市場の自由化について」
http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/pdf/seido1206.pdf
日本経済新聞 2013年1月23日付「電力9社、周波数変換設備を増強 電力融通で」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD230HL_T20C13A1TJ0000/
資源エネルギー庁 2012年3月7日「50Hzと60Hzの周波数の統一に係る費用について」
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/chiikikanrenkeisen/002_03_00.pdf
| - | 22:41 | comments(0) | trackbacks(0)
「鬼門」を信じる人も、信じない人も

写真作者:Ignat Gorazd

2015年のきょう2月3日は、冬と春の境目「節分」です。

節分に、いまも人びとは豆をまいて鬼を退治しようとします。これはもともと平安時代、大晦日に盛大におこなわれいた「追儺」(ついな)とよばれる鬼はらいの行事に端を発しているとされます。

鬼は、人が創りあげた想像上の妖怪です。人は、鬼というものにいろいろな意味を設けたのでしょう、鬼のいそうな“方角”も定められています。これが、いわゆる「鬼門」です。

鬼門は、鬼が出入りする方角とされています。鬼は人畜に害をもたらすものとされているので、それが出入りする門となれば、不吉な門とされるわけです。

中国の「陰陽五行説」という世界観にしたがうと、鬼門は北東の方角。日本の家についても、北東に玄関をつくるなどすると不吉なことが起こるのではないかと、陰陽五行説をもとに日本で発展した陰陽道を信じる人たちは心配し、玄関を北東側に置くのを避ける場合があります。

一般的に、ある方角に対して逆の方角は、「寒い北に対して暖かい南」「日が昇る東に対して日が沈む西」のように、その方角から想起する印象も逆のものになりがちです。

しかし、鬼門については、北東に対して逆の方角にあたる南西も「裏鬼門」とされていて、鬼門とともに忌まわしい方角とされています。

これは捉えかたによっては当然かもしれません。鬼門が北東を向いて建っていれば、その門を鬼が出入りするのだから、鬼は南西方向にも行き来することになります。つまり南西も「裏鬼門」とよぶにふさわしい方角となるといえます。

鬼門や裏鬼門という存在を信じる人は、その信心によって、自分の行動のしかたを定めることができることでしょう。

いっぽう、鬼門や裏鬼門という存在を信じない人は、その信心のなさによって、自分の行動が限定されず自由に動くことができるでしょう。

鬼門や裏鬼門を、信じる人もいれば、信じない人もいます。しかし、「鬼門」は、「日馬富士、鬼門の4日目超えた」のように、比喩表現として多くの日本人に使われていますから、それなりに存在感があるものといえましょう。

参考資料
スーパー大辞林
実用日本語表現辞典「鬼やらい」
http://www.weblio.jp/content/鬼やらい
| - | 22:15 | comments(0) | trackbacks(0)
プリンの代謝産物が激痛のもと
ビールや発泡酒などの飲みものには、カロリーや糖質のほかに「プリン体」の含有量をすくなくしていることを売りにしているものがあります。

プリン体とは、炭素原子(C)5個、窒素原子(N)4個、水素原子(H)4個からなる物質「プリン」を基本構造にもつ塩基のことをいいます。ですので、特定の一種るの物質を「プリン体」というのではありません。

実際、プリンそのものがプリン体であるほか、デオキシリボ核酸(DNA:DeoxyriboNucleic Acid)を構成する「ATGC」からなる4種類の文字のうちの、「A」にあたるアデニンや、「G」にあたるグアニンなども、プリンを基本構造にもっているためプリン体です。ほかによく知られている物質では、コーヒーやカカオの実などにふくまれるカフェインもプリン体の一種です。

このプリン体のひとつに、尿酸があります。尿酸は、炭素原子(C)5個、水素原子(H)4個、窒素原子(N)4個、それに酸素原子(O)3個からなります。つまり、酸素原子3個以外は、プリンとおなじ原子でできているため、尿酸もプリン体です。

食事で体に摂りいれられたプリン体は、体のなかの化学反応である代謝によって、イノシン一リン酸(IMP:Inosine MonophosPhate)という物質になり、さらにキサンチンという物質になります。キサンチンは尿から排泄されますが、残ったキサンチンがからだの中で酸化して、尿酸になります。つまり、プリン体の最終代謝物が、プリン体の一種の尿酸というわけです。

尿酸もまた、尿から排泄されていきますが、からだの中でつくられすぎたりすると、血液中の尿酸の量が処理しきれないようになります。処理しきれない尿酸は、血液中に溶けずに結晶になります。


尿酸が結晶化したもの
写真作者:Bobjgalindo

この尿酸の結晶は、画像で見るとよくわかりますが、とても刺々しいかたちをしています。この結晶は、血管のなかではふだんいない邪魔者ですので、これを排除しようとする働きが起きます。

そこで出動するのが白血球です。しかし、白血球は尿酸に対しては手の施しようがなく、むしろ白血球が出すいろいろな物質で、その部分が膨れあがってしまいます。これで激痛が走ります。いわゆる「痛風」です。

なお、「プリン体」の「プリン」の綴りは“purine”であり、お菓子の「プリン」(pudding)とは別ものです。プリン体のほうの「プリン」は、ドイツの化学者エミール・フィッシャー(1852-1919)が、ラテン語で「純粋な」を意味する“purum”と、「尿酸」を意味する“uricum”を組みあわせて、“purin”とよびはじめたことにちなみます。

参考資料
実験医学online「なぜ,ヒトは病気になるのか? 2」
https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/evolutionary_medicine/vol2n1.html
ウィキペディア「プリン塩基」
http://ja.wikipedia.org/wiki/プリン塩基
ウィキペディア「プリン(化学)」
http://ja.wikipedia.org/wiki/プリン_(化学)
日経BPnet 2014年10月20日付「なぜ痛風はあんなに痛いのか 原因と対策」
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20141016/420337/
慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科「高尿酸血症と痛風」
http://www.keio-emn.jp/explain/07.html
| - | 20:14 | comments(0) | trackbacks(0)
工業地帯の学校にその地ならではの校歌


校歌には、その学校がどのような土地柄にあるのか、どのような文化や風習を重んじているのか、つまり風土がどのようなものであるかが反映されます。

たとえば、海辺の臨海工業地帯にある学校の校歌には、やはり臨海工業地域としての風土が校歌の歌詞に反映される傾向があります。いくつか見てみますと……。
_____

流れゆたかな 沼田川こえて のぞむは伸びる 工業地帯 なびく煙に 心がおどる 歌えよ 働け 仲よく行こう 愛がふくらむ 少年われら
広島県三原市立田浦小学校校歌 作詞 米山愛紫 作曲 渡辺浦人

ならぶクレーン 轟くエンジン 空は工場の けむりがなびく のびゆく日本の 息吹をうけて あすの世界の 文化をひらく 深川五中の パイオニアズわれら われら われら
東京都江東区立深川第五中学校校歌 作詞 森田繁治 作曲 岩田一九郎

学び舎の 窓にひびく 鉄うつ音 埠頭の汽笛 あふれる力 強い心 腕組み合って 楽しく学ぶ ぼくらは 大島小学生
川崎市立大島小学校校歌 作詞 川島竹馬 作曲 深山桂
_____

日本が殖産興業や高度成長などの気運に包まれていた時代、工業は公害や環境問題といった悪い印象よりも、むしろ希望の象徴として捉えられていた向きが大きかったのでしょう。それらが歌詞に反映されています。

しかし、なかにはその後の公害問題に対して人びとが心にもつ感じかたを考えてか、工業的な雰囲気を醸しだす校歌の詞が改められるといったこともあります。詩人の谷川俊太郎さん(1931-)は、三重県の四日市市にある公立高校の校歌の作詞に携わりましたが、校歌が生まれたあと、みずからの手で歌詞を改めたといいます。
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炎をあげるスタックが 限りない未来を照らす 夢はらむ高みのかなた この空は宇宙へ続く 新しい力を持って
1978年までの三重県立四日市南高校校歌 作詞 谷川俊太郎 作曲 武満徹

心にひめた問いかけは 限りない未来を目指す 夢はらむ高みのかなた この空は宇宙へ続く 新しい答を持って
1978年からの三重県立四日市南高校校歌 作詞 谷川俊太郎 作曲 武満徹
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校歌がつくられたときの時代の雰囲気が、時代の移りかわりによりそぐわなくなった場合、校歌の歌詞を残していくか変えていくかは、賛否のわかれる問題かもしれません。

しかし、その土地にかかわる光景や情景を想像できるような校歌は、時代や世代を超えて趣あるものとして人びとに受けとめられていくものでしょう。

建築学にかかわる研究者の一人は、地方に出張して地元の人びとに出会ったとき、自分の出身校の校歌を歌うそうです。すると、地元の人びとも育った小学校の校歌を合唱。“校歌の交換”となり、親睦が深まるといいます。

参考資料
三原市田野浦小学校校歌
http://www.city.mihara.hiroshima.jp/site/es-tanoura/kouka.html
江東区立深川第五中学校校歌
http://www.koto.ed.jp/fuka5-chu/kouka.html
川崎市立大島小学校「学校の概略」
http://www.keins.city.kawasaki.jp/2/ke200901/syoukai/gakkousyoukai/gakkousyoukai.html
四日市再生 公害市民塾「四日市南高校の校歌も変わった」
http://yokkaichi-kougai.exp.jp/contents5/school/siohamakouka.htm
| - | 22:06 | comments(1) | trackbacks(0)
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