2014.08.31 Sunday
住み家の工夫で四季変化に耐える――人という名の“住む”動物(6)
猿人の暮らしの場、樹上から地上へ――人という名の“住む”動物(1)
肉食獣を避けて洞窟を住みかに――人という名の“住む”動物(2)
マンモスやトナカイの骨を柱に住み家を建築――人という名の“住む”動物(3)
三内丸山遺跡に竪穴住居と掘立柱建物あり――人という名の“住む”動物(4)
木柱、煉瓦塀……風土が構法を定める――人という名の“住む”動物(5)
木々の豊富な日本では、木造の住み家が多く建てられてきました。しかし、江戸時代や明治時代までは、家々に電気やガスが通っているはずもありません。春夏秋冬の四季があるなかで、人びとはさまざまな工夫を凝らして、自然変化に対応する居住空間をつくってきました。
光を採り入れるために、町家などでは「高窓」をこしらえました。高窓は、普通の窓より高い位置にある窓のことです。窓を高くすることで、太陽の光を部屋の奥まで導くことができます。また、地面で反射した太陽光を、屋根の軒の裏側でさらに反射させ、その反射光も高窓から採り入れるといった工夫をしました。
高窓
夏場は、暑さをしのぐことで快適さを求めようとしました。窓の工夫では、夏場に吹いてくる風の方角に向いた壁に、窓を設けました。室内のごみなどを外に掃きだすための「地窓」とともに高窓を利用して、地窓から入り込んできた風を、上昇気流で高窓から送りだすといったことをします。
また、風とおしをよくするため、風が通るところに部屋を連続的に配置させる「続き間」にしました。必要に応じて、ふすまや障子で仕切ることで、部屋を分割することもできます。1階と2階のあいだの天井をなくして空間を広く確保する「吹き抜け」も、おなじように風通しをよくする効果があります。
続き間
いっぽうで、冬になると寒さへの対策が大切になります。高窓などから差しこんできた太陽光からの熱を、なるべく家の外に逃がさないようにするため、蓄熱性を高めます。たとえば、家壁や部屋壁を、土を塗り固めてつくった「土壁」にするといったことがあげられます。「雨戸」にも蓄熱効果があります。
座敷の外側に板敷の「縁側」を設けるのも、寒さを和らげる効果があるといいます。居間が家のいちばん外側に接するという状態を避けられるからです。
また、部屋の床を四角に切って、そこで火を燃やす「囲炉裏」によって暖をとる家もありました。煮炊きなどの料理も、囲炉裏でできます。
囲炉裏
これらの工夫は、人びとが四季の変化に対応して、なるべく快適な生活をすごしたいという必要から生まれたものです。つづく。
参考資料
日本の住まいの知恵に関する検討調査委員会編『今に生きる日本の住まいの知恵』
http://www.amazon.co.jp/dp/4890678166
肉食獣を避けて洞窟を住みかに――人という名の“住む”動物(2)
マンモスやトナカイの骨を柱に住み家を建築――人という名の“住む”動物(3)
三内丸山遺跡に竪穴住居と掘立柱建物あり――人という名の“住む”動物(4)
木柱、煉瓦塀……風土が構法を定める――人という名の“住む”動物(5)
木々の豊富な日本では、木造の住み家が多く建てられてきました。しかし、江戸時代や明治時代までは、家々に電気やガスが通っているはずもありません。春夏秋冬の四季があるなかで、人びとはさまざまな工夫を凝らして、自然変化に対応する居住空間をつくってきました。
光を採り入れるために、町家などでは「高窓」をこしらえました。高窓は、普通の窓より高い位置にある窓のことです。窓を高くすることで、太陽の光を部屋の奥まで導くことができます。また、地面で反射した太陽光を、屋根の軒の裏側でさらに反射させ、その反射光も高窓から採り入れるといった工夫をしました。
高窓
夏場は、暑さをしのぐことで快適さを求めようとしました。窓の工夫では、夏場に吹いてくる風の方角に向いた壁に、窓を設けました。室内のごみなどを外に掃きだすための「地窓」とともに高窓を利用して、地窓から入り込んできた風を、上昇気流で高窓から送りだすといったことをします。
また、風とおしをよくするため、風が通るところに部屋を連続的に配置させる「続き間」にしました。必要に応じて、ふすまや障子で仕切ることで、部屋を分割することもできます。1階と2階のあいだの天井をなくして空間を広く確保する「吹き抜け」も、おなじように風通しをよくする効果があります。
続き間
いっぽうで、冬になると寒さへの対策が大切になります。高窓などから差しこんできた太陽光からの熱を、なるべく家の外に逃がさないようにするため、蓄熱性を高めます。たとえば、家壁や部屋壁を、土を塗り固めてつくった「土壁」にするといったことがあげられます。「雨戸」にも蓄熱効果があります。
座敷の外側に板敷の「縁側」を設けるのも、寒さを和らげる効果があるといいます。居間が家のいちばん外側に接するという状態を避けられるからです。
また、部屋の床を四角に切って、そこで火を燃やす「囲炉裏」によって暖をとる家もありました。煮炊きなどの料理も、囲炉裏でできます。
囲炉裏
これらの工夫は、人びとが四季の変化に対応して、なるべく快適な生活をすごしたいという必要から生まれたものです。つづく。
参考資料
日本の住まいの知恵に関する検討調査委員会編『今に生きる日本の住まいの知恵』
http://www.amazon.co.jp/dp/4890678166