大学には「一般教育科目」などとよばれる授業があります。学生が所属している学部・学科の専攻と直接的な結びつきがなくても、いわゆる一般教養を身につけることができます。学生たちからは「パンキョー」ともよばれています。
授業のテーマにもよるでしょうが、一般教育科目は、さまざまな学部、さまざまな学年の学生が参加します。履修学生数も、多い場合は100人や200人にのぼることもあるといいます。
この状況は、学生を教育する教員にしてみれば、すばらしいものといえます。さまざまな背景や価値観をもった学生たちが、ひとつの部屋に集まって授業を受けるのですから。ダイバーシティの度合いがとても高い授業といえます。
学生たちがみずから手をあげて、質問や意見を口にするようになれば、さらにすばらしい状況といえます。よき師・よき友と、意見を交わしあえば、学生たちにとってとても価値の高い授業となることでしょう。
しかし、どの大学の一般教育科目の授業も、たいていは教室の後ろのほうから席が埋まっていくもののようです。そして、授業の途中でみずから手をあげて発言する学生はめったに現れません。つまり、授業への積極性があまり見られないようです。
いっぽうで、現代の学生たちは、“現金”な性格のもちぬしが多いともいいます。
そこで、一般教育科目などの授業を担当する教員たちは、「授業が盛りあがるための、ある効果的な制度」を導入する場合があるようです。
「いいかみんな! この授業では、教室の1列目の席に座った人はプラス1点、2列めの人は0.5点を加算するからな」
「手をあげて発言をしてくれた人には、プラス2点、加算しますからね!」
授業に対して積極的態度を示した学生には、評価をつけるときの“追加得点”をあたえるわけです。教員は、どの学生が手をあげて発言したかをいちいち把握しておくのは大変なので、授業時間の最後に学生が提出する出席カードに、「(1列目に座ったので)+1点」「(発言を2回したので)+2点」といったように、自己申告をさせるのです。
このような“追加得点制度”を導入している教員のなかには、「ほんとうはあまりやりたくはないのだけれど」という態度を保持している人もいるようです。これには、学生のやる気を得点という“餌”で引きだすことに対する後ろめたさもあるのかもしれません。
しかし、積極性は、日本の教育において、その人の成績を決めるひとつの大切な項目として、しばしば評価制度のなかで考慮されてきたものです。そうしたことからすれば、積極性のある学生に評価につながる得点をあたえるということは、ごくまっとうなことともいえるのではないでしょうか。