2014.04.30 Wednesday
「パンタグラフも電柱も50メートル」で火花
いまもむかしも「新幹線」といえば「0系」とよばれる、“丸い鼻”をした車両を思い浮かべる人は多いでしょう。1964年10月の開業から2008年11月まで東海道・山陽新幹線で走りつづけました。
かつて、この0系の新幹線が走っているとき、火花がよく散っていました。新幹線が動くための電力を送るための架空電車線とよばれる電線と、その電力を取り入れるためのパンタグラフのあいだで放電現象が起き、火花が散るのでした。
0系新幹線が走りはじめたころ、なぜひんぱんに火花が散るのか、鉄道関係者も原因を把握しきれずにいたといいます。
しかし後にその原因は、架空電車線と新幹線とのある間隔が関係していることがわかってきました。
新幹線のパンタグラフは、2両ごとに規則的に置かれていました。その間隔は50メートルです。
いっぽう、新幹線のパンタグラフに電力を送る架空電車線を支える電柱の間隔も50メートル間隔の設計でした。
両方の間隔が50メートルということは、新幹線が50メートル進むごとに、いつもぴたりの幅でパンタグラフと電柱の位置が重なることになります。
これは、電力を集めるうえではよくないこと。いつもおなじ幅でパンタグラフと電柱が重なっていると、架空電車線とパンタグラフのあいだでの振動のしかたがいつもおなじになり、それが大きくなっていきます。この現象は共振とよばれるもの。
共振によって架空電車線が大きく揺れると、電線の揺れがおさまらないうちにつぎのパンタグラフが通過します。すると、電線とパンタグラフが大きく離れてしまいます。こうなると放電現象、つまり火花が起きることになります。
この原因がわかると、新たな系列の新幹線では改良がはかられました。1992年に導入された「300系」では、屋根の上に「特高圧引通線」とよばれる電線を起きました。それが車両と車両を跨ぐようになっています。
これで、電線とパンタグラフが離れているときでも、車両間では電気の供給がなされるようになりました。電気の供給がなされていると、火花は散りにくくなります。
パンタグラフと架空電車線の技術はさまざま進化し、新幹線が火花を散らして走っている景色も、いまではあまり見られなくなっています。
参考資料
曽根悟『新幹線50年の技術史』
http://www.amazon.co.jp/dp/4062578638
井上孝司『超高速列車 新幹線対TGV対ICE』
http://www.amazon.co.jp/dp/479802273X
Yahoo!知恵袋「0系新幹線が走行するとパンタグラフがスパークしていましたが」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1094131100
ウィキペディア「新幹線300系電車」
http://ja.wikipedia.org/wiki/新幹線300系電車