2013.10.31 Thursday
ホンダ、CIGS型太陽電池で事業計画達成ならず
本田技研工業(ホンダ)の子会社で、太陽電池を作り売っていたホンダソルテックが、2014年春に事業を終わらせることを、きのう(2013年)10月30日(水)に発表しました。
ホンダソルテックは、2006年12月に創業しました。ホンダが太陽電池に進出したということで、当時、大きな話題になっていました。
ホンダソルテックがつくってきた太陽電池は「CIGS型」とよばれるものでした。
太陽電池の主流は、主材料にシリコンという物質だけを使った「シリコン系」とよばれるもので、電気のやりとりを担うp型半導体とn型半導体それぞれにシリコンを使っています。いっぽう、CIGS型では、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)というよっつの物質を化学的に結合させたものをp型半導体に使います。そのため、CIGS型太陽電池は「化合物系」とよばれる太陽電池のひとつに位置づけられています。
このCIGS型の太陽電池では、発電の層が薄いのが特徴でした。その厚さは2から3マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリメートル)。シリコン型太陽電池の数十分の一の厚さで済むといいます。ホンダは「太陽電池を少ない原料でつくることで、貴重な地球資源を有効活用しています」とうたってきました。
今回、ホンダソルテックは事業を終わらせる理由を「シリコン価格の下落に伴うシリコン結晶系太陽電池パネルの値下げなど、ソーラーパネル業界の著しい競争環境の変化の中で、当初の事業計画達成の見込みが立たず、これ以上の事業継続は困難と判断いたしました」と説明しています。
ホンダソルテックがつくってきたのとおなじような「化合物系」の太陽電池をつくっているのが、昭和シェル石油グループのソーラーフロンティアという企業です。同社が手がける太陽電池は、「CIS型」というもの。ガリウム(Ga)が使われていませんが、銅、インジウム、セレンを化学的に結合させる方法は、ホンダソルテックの太陽電池のつくりかたとにています。
ソーラーフロンティアは、2011年までに、宮崎県内に第一、第二、第三工場を建てました。年間の生産能力は合計で1000メガワット。これは原子力発電所1基分とだいたいおなじ規模になります。
いっぽう、熊本県内にあるホンダソルテックの工場の生産能力は、およそ30メガワット。生産能力の点では、ソーラーフロンティアの規模にくらべると、とても小さいものでした。
ソーラーフロンティアが事業を続け、ホンダソルテックが事業を終えるのは、規模のちがいによるものなのか。それとも「著しい競争環境の変化」は、ソーラーフロンティアなどの企業も直面しているのか。
いずれにしても、日本の太陽電池製造業は、今回のホンダソルテックの“事業終了”を、大きな関心をもって受けとめていることでしょう。
ホンダによる10月30日付の報道発表「太陽電池事業子会社 ホンダソルテックの事業終了について」はこちらです。
http://www.honda.co.jp/news/2013/c131030d.html
参考ホームページ
ソーラーフロンティア「ソーラーフロンティアの歴史」
http://www.solar-frontier.com/jpn/aboutus/history/index.html
NEDO「シリコンを使わない新しい太陽電池を大量生産へ 昭和シェル石油株式会社」
http://www.nedo.go.jp/hyoukabu/jyoushi_2009/showashell/index.html