2013.08.31 Saturday
核攻撃を受けたときのため予定稿を用意
テレビ局や新聞社などの報道機関は、あらかじめ「こんな大きな事件が起こるかもしれない」と考えて、ほんとうにその大きな事件が起きたときすぐ対応できるよう、予定稿という原稿をつくっておくことがあります。
1970年代、英国放送協会(BBC:British Broadcasting Corporation)は、自分たちの国が核兵器により攻撃を受けたときに、国民によびかけるための予定稿をつくっていました。この予定稿は、2008年まで英国立公文書館で保管されていましたが、秘密にしておく期間が解けて、英国放送協会がおおやけにしたものです。
「これは戦争時の放送サービスです。わが国は核兵器による攻撃を受けました。通信が著しく破壊され、被害者の数や損害の規模はいまのところわかりません。できるだけ早くつぎの情報をお届けするつもりです。その間、この周波数に合わせたまま、落ちついて家のなかにいてください」
予定稿は、このような緊迫感あふれるよびかけで始まります。そして、身のまわりにあるものの使いかたを具体的に示します。
「水はトイレで流すために使ってはいけません。ふたたびトイレを使ってよいといわれるまで、ほかの方法で対処する必要があります。水は、飲むためと食べものを調理するためだけに使ってください。水は命です。むだづかいをしないでください」
「食べものを残すようにしてください。14日間かそれ以上にわたり食べものをもたせる必要があるため、配給はごくかぎられています。もし家のなかに新鮮な食べものがあるならば、むだにしないためそれらから使ってください。缶詰の食べものはもちます」
これらの身のまわりにあるものの使いかたを具体的に示したあと、「もう一度、大切な点をくりかえします」として、外に出てよいといわれるまで家のなかにとどまっていること、ガスや燃料の栓をしめて、すべての火を消すこと、水は飲むためと調理するために使うこと、などを伝えます。
そして、最後につぎの原稿でしめくくります。
「この放送を2時間後にふたたび行います。この周波数に合わせたままにしておいて、再び放送されるまでは電源を保つためラジオのスイッチを切ってください。これで放送を終わります」
この放送をくりかえすことで、すくなくとも英国放送協会は核攻撃によっても壊滅していないということを示して、国民に安心感をあたえるというねらいもあったようです。
公開されたこの予定稿について、「永遠にこの予定稿が使われることがないことを望む」といった声が聞かれます。
英国放送協会がつくった、核兵器攻撃を受けたときのよびかけに使う予定稿はこちらで見ることができます(英語)。
参考記事
AFP BB News 2008年10月4日付「BBC、核攻撃時に放送予定だったアナウンス原稿を公開」