2013.06.30 Sunday
唐辛子の辛さは天敵の細菌対策
唐辛子は赤みを帯びていて、いかにも辛そうです。ほんとうのところ、なぜ辛いのでしょうか。
唐辛子が辛い化学的な理由は、唐辛子にカプサイシンという物質が多く含まれているからです。カプサイシンは、炭素元素18個、水素元素27個、窒素元素1個、そして酸素元素3個からなる化合物。人などが皮膚の表面でカプサイシンを受けると、受容体が刺激されてひりひりとした感覚が脳に伝わります。これが、人が唐辛子を辛いと感じる原因です。
しかし、では、なぜ唐辛子はカプサイシンを多くたくわえて、辛さを発する必要があるのでしょう。これには、化学的な理由とはまたべつに、進化生物学的な理由があります。
唐辛子には、天敵といえるような菌類がいます。フザリウムというかびの一種です。唐辛子はこのフザリウムに感染されると、生きのびることがとてもむずかしくなります。唐辛子にフザリウムが感染するのは、唐辛子の実の汁をナガカメムシという虫が吸い、そこに傷口ができるためです。
唐辛子がフザリウムの感染から実を守るには、どうにかしてフザリウムを寄せつけなくする必要があります。そこで、フザリウム対策として、唐辛子はカプサイシンをつくることにしたといわれています。カプサイシンには、フザリウムの成長を妨げるはたらきがあることがわかっています。
唐辛子にも種類により、辛さはさまざまあります。その傾向は、湿度の高いところでは辛い実をつけ、感想したところでは辛い実をつけないというもの。いっぽう、唐辛子の天敵のフザリウムには、水分を好む傾向があります。
つまり、水分が多いところではフザリウムが多くいるため、唐辛子は辛くなる必要があり、水分が少ないところではフザリウムがあまりいないため、唐辛子は辛くなる必要はない。この考えとも一致するわけです。
人は、フザリウム対策としての辛さを、カレーやキムチやトムヤンクンや北極ラーメンなどの辛い料理の香辛料として使っています。唐辛子にとってのフザリウム対策としての辛さを、人は味わっていることになります。しかし、たまにあまりに辛いため、人でもその辛さにやられてしまうことはあります。
参考ホームページ
むしのみち「唐辛子が辛い進化生物学的な理由」
健康コラム「巧妙な仕掛け」
参考記事
AFP 2011年12月22日付「トウガラシ、辛いか辛くないかの決め手は水分」