科学技術のアネクドート

「『小麦粉の芸術作品』、うどんの食感を科学する」


日本ビジネスプレスのウェブニュースJBpressで、きょう(2012年)11月30日(金)、「『小麦粉の芸術作品』、うどんの食感を科学する」という記事が配信されました。この記事の取材と寄稿をしました。 

うどんの麺に必要な材料は、小麦と水と塩くらい。それにもかかわらず、麺によりうどんの味の完成度は大きく変わってきます。しょうゆで食べるかだしで食べるかといったつゆの問題はあるとしても、麺の食感が味を左右する大きな要素になっています。

うどんの麺といえば「コシ」。「コシ」といえば讃岐うどん。ということで、記事では香川県宇多津町に本社をおくうどん製麺機メーカー社長の藤井薫さんに、「うどんの食感」についての研究成果を披露してもらっています。

藤井さんは、商売として製麺機製造業を始めました。仕事に熱心なのでしょう、「製麺機事業の本質は麺の美味しさを極めることだと考え、どのようにしたら美味しい麺ができるかを研究してきました」と言っています。

その成果から生み出された結論のひとつは、「うどんにも二段熟成をするとよい」というもの。

小麦粉をねったあとに一度、うどんの生地を寝かせるのです。そして、その後、うどん生地を圧して鍛えたあと、もう一度、うどんの生地を寝かせるのです。「寝かせる」というのは、うどんをある一定の温度と時間で、そのまま置いておくこと。

こうすることで、一回目の熟成では、うどんから気泡が抜けて透明感を保つ効果や、緊張したグルテンを緩ませる効果などが、得られるといいます。

さらに、二回目の熟成では、生地の酵素活性が促されるため、生地の状態がよくする効果が得られるといいます。

藤井さんは、かつてのうどんが濃い色をしていたことから、熟成という発想を得たようです。濃い色のうどんは、全粒粉によるもの。全粒粉入りのうどんは、酵素活性が早く進みます。香川県には「朝練り即打ち」といううどん打ちの鉄則さえありました。

しかし、いまのうどんの色は白。酵素活性を早く進める全粒粉が含まれていません。そのため、酵素活性を待つ目的で、うどんを寝かせるわけです。とくに二回目の熟成にこのことはいえるといいます。

こうした発見は、長きにわたりうどんの研究を続けてきた成果なのでしょう。ほかにも藤井さんは、「コシ」の秘密や、塩分の秘密を語っています。

これらの話を聞いてから食べるうどんの味は、またちがったものに感じられるかもしれません。

「『小麦粉の芸術作品』、うどんの食感を科学する うどんの味を追究せよ!(後篇)」はこちらです。
讃岐うどんの歴史をたどった前篇「先人の経験が生み出した讃岐うどんの黄金レシピ うどんの味を追究せよ!(前篇)」はこちらです。
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2010年代から生産能力を増強、三菱化学――リチウムイオン電池用電解液・電解質のメーカー動向(3)



三菱化学は、リチウムイオン電池の主要材料である正極材、負極材、電解液、セパレータの4種類の材料の事業をすべて行っています。

このうち電解液については、三重県四日市市の四日市事業所で製造を、また茨城県阿見町の科学技術研究センター筑波エリアで研究をしています。

2010年以降、三菱化学は電解液の製造能力を増強する方針をつぎつぎと打ちだしています。

2010年10月には、四日市事業所での電解液の生産能力を従来の年8500トン規模から、年5000トン増強し、年1万3500トン規模にすることを発表しました。この体制での営業運転開始は2012年2月。投資額は約10億円と発表しました。

さらに2010年のおなじ10月には、英国と米国での製造開始も発表しました。

三菱化学とおなじ三菱ケミカルホールディングス系列の三菱レイヨンの子会社で、英国サザンプトンに本社のあるルーサイト・インターナショナル・グループ社の工場敷地内に電解液製造設備を設立し、合計年2万トン規模の増強をするとしました。

英国では、ストックトンオンティーズに約25億円を投じて年1万トン規模の生産能力をもつ設備を2011年秋までに立ち上げ、また米国でもテネシー州メンフィスに約25億円を投じて年1万トン規模の生産能力をもつ設備を2012年夏までに立ち上げるとしました。

なお、三菱化学は電解質の原料の調達先を探していましたが、2011年6月、ステラケミファとの間での提携を検討を開始したことを発表しました。

検討内容は、「リチウムイオン電池用電解質の欧米における製造拠点の新設検討」と「半導体製造用高純度薬品の日本国内における製造拠点の新設検討」に分かれます。

「リチウムイオン電池用電解質の欧米における製造拠点の新設検討」については、「欧米における電解質供給体制の強化を目的として、欧米での製造拠点新設に向けた合弁会社設立等の事業提携の検討に着手」するとしています。

「半導体製造用高純度薬品の日本国内における製造拠点の新設検討」のほうは、国内での製造新拠点に向けた合弁企業設立などの提携を検討するもの。

さらに2011年9月には、中国での電解液の製造を発表した。江蘇省常熟市に年1万トン規模の生産能力をもつ新会社を設立するとしました。投資額は約25億円を予定し、営業開始は2012年末を予定しているといいます。

三菱化学は2015年時点での電解液の合計生産能力を年5万トンにする目標を立てています。これまでの発表を合計すると、年4万3500トン規模ということになります。つづく。

参考記事
三菱化学 2010年10月18日付「リチウムイオン電池用電解液の製造能力増強について」
三菱化学 2010年10月25日付「リチウムイオン電池用電解液の英国および米国における製造開始について」
三菱化学 2011年9月28日付「リチウムイオン電池用電解液の中国における製造開始について」
三菱化学・ステラケミファ 2011年6月1日付「リチウムイオン電池用電解質および半導体製造用高純度薬品に関する事業提携の検討開始について」
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(2012年)12月1日(土)はキュメンタリー映画「いのち」完成上映会


催しもののおしらせです。

(2012年)12月1日(土)、東京・富士見の法政大学市ヶ谷キャンパス富士見坂校舎で、ドキュメンタリー映画「いのち」の完成上映会が開かれます。

「いのち」は、元NHKエグゼクティブプロデューサーの林勝彦さんが監督となり、2011年3月の福島第一原子力発電所事故によって故郷を追われた福島県民たちに追跡取材をしつづけて制作した映画。林さんは原発事故直後から、福島県に通いつづけ、1年半にわたり福島県民によりそってきました。そして、事故に翻弄される「いのち」を追いつづけてきました。

上映時間は80分。予告の資料に多くは語られていませんが、福島県の住民の姿・表情を映しだすだけでなく、放射線が人体に与える影響の最新情報、専門家の知見などもこの80分のなかに盛りこまれているもようです。

林さんはこれまで科学を題材にした番組を多く手がけてきました。NHK時代の代表作のひとつは、1986年に放送された「NHK特集 調査報告・チェルノブイリ原発事故」。ほかに1993年から1994年にかけて放送された「NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体」のプロデュースなどもしてきました。

科学的にものごとを捉える眼差しと、人びとに寄り添おうとする眼差しが、ひとつの映画のなかでどのように融合されているのか、注目が集まります。

上映会は、13時30分から15時までの会と、16時から17時30分までの会の2回。事前申しこみは不要、料金は無料です。ドキュメンタリー映画「いのち」制作委員会による発表内容はこちらです。
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市場シェアの最上位に君臨、宇部興産――リチウムイオン電池用電解液・電解質のメーカー動向(2)



リチウムイオン電池用電解液の市場で、シェア最上位に君臨しているのが、宇部興産です。

宇部興産は、化成品・樹脂、ポリイミドなどの機能品、医薬、建設資材、機械・金属成形、石炭や電力などのエネルギー・環境をおもな事業分野としている企業です。1897年、「沖の山炭鉱組合」という組合が設立されたことが沿革のはじまりとされています。1942年には、沖の山炭鉱組合、宇部新川鉄工所、宇部セメント、宇部窒素工業の4社が合併して、宇部興産が設立されました。

電解液関連事業は、「機能品・ファイン事業」に含まれています。電解液の製品名は「ピュアライト」。高純度溶剤や炭酸ジメチル(DMC:DiMethyl Carbonate)などを基に電解質を混合した電解液。宇部興産は基礎原料からの一貫生産で、電池の長寿命化をはかっています。

電解液市場への参入は、三菱化学、三井化学、富士薬品工業などのほかの電解液メーカーよりも後でした。まず、電解液の溶媒の一つである炭酸ジメチルを自社技術事業化しています。

これにつづき1996年に「機能性電解液」の研究を開始しました。機能性電解液とは、電池反応で起きる固体電解質界面相(SEI:Solid Electrolyte Interphase)を考慮し、電池メーカーの要求に応じた特性添加剤をふくむ電解液のこと。固体電解質界面相被膜を強制的に生じさせて、電解液成分により被膜がつくられるのを防ぐことで、電解液成分の分解を制御します。

翌1997年に宇部興産は電解液の事業化に成功。1998年には後発企業でありながら最上位シェアを獲得しました。

宇部興産は、2010年5月に発表した2012年度までの中期経営計画のなかで、医薬、ファインケミカルとともに、電池材料の事業を「成長を牽引する最重点事業」と位置づけています。電解液については「開発力とコスト競争力を強化し、セパレータと共に生産能力を増強」するとしています。

2011年1月には、電池事業の営業・開発体制を拡充する方針を発表しました。直後の2月には、電解液とセパレータの両事業を統合し、「機能電池材料ビジネスユニット」として電池材料ビジネスの中核と位置づけています。また、同時に電解液とセパレータの開発機能を統合した「先端エナジーマテリアル開発センター」を山口県宇部市に設立しました。電解液とセパレーターについて、各々別の開発センターで行われていた業務と技術者を統合し、新機能材料の開発、評価、市場開発などの一貫体制を構築するといいます。

また、海外拠点については、スペインの製造拠点ウベケミカルヨーロッパ社で、自動車や電力貯蔵用途の大型リチウムイオン電池向け電解液の開発体制を整えると発表しました。欧州や北米でのリチウムイオン電池の需要拡大に対応するためのもので、ウベケミカルヨーロッパ内の研究開発センターで、分析装置や小ロット電解液の調合設備を2011年4月から稼動させるといいます。

また、2011年7月、宇部興産は、TDK傘下の香港アンプレックステクノロジー社に対して、宇部興産が保有するリチウムイオン二次電池と電解液に関する特許の一部を認め、ビジネス関係を強めていくことで合意したと発表しました。

アンプレックステクノロジー社は、1999年に設立。フレキシブル形状のリチウムイオン電池事業に強みがあり、おもに家庭用電子機器や携帯情報端末などに同社製のリチウムイオン電池が採用されています。米国アップルコンピュータの「iPad」にも電池を供給していると見られます。

さらに、2011年12月、宇部興産は米国ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーと、リチウムイオン電池向け電解液の製造および販売などを行う合弁会社アドバンスド・エレクトロライト・テクノロジーズを設立したと発表しました。

ダウは、米国ミシガンに本社のある石油化学品メーカーで、160カ国で事業活動を展開している。年間売上は537億ドルで従業員は5万人規模。ダウの生産・販売・研究開発体制や知的財産の管理手法などを活用するため、50%ずつの折半出資を決めたといいます。また、宇部興産はこの合弁会社に電解液の技術をライセンス供与します。つづく。

参考ホームページ
宇部興産「電解液『ピュアライト』」
参考記事
宇部興産 2010年5月18日付「UBEグループ新中期経営計画『ステージアップ2012 新たなる挑戦』について」
宇部興産 2011年1月26日付「電池材料事業の営業・開発体制の拡充について」
宇部興産 2011年7月4日付「リチウムイオン二次電池に関する特許ライセンス契約を締結」
宇部興産 2011年7月6日付「リチウムイオン二次電池向け電解液の合弁会社設立について」
宇部興産 2011年12月15日付「米国におけるリチウムイオン二次電池向け電解液合弁会社設立」
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営業活動に「感情労働スキル」を活かす

きょう、11月26日(月)発売の『週刊東洋経済』に、「感情労働の時代」という第二特集が組まれています。この特集の「『苦手な顧客』に効く、感情を活用した営業」という記事の構成をしました。構成とは、専門家などが語った内容を記事としてまとめることです。

「感情労働」とは、顧客に特定の精神状態をもたらすために、みずからの感情をコントロールすることを職務とする労働のこと。「肉体労働」は「肉体」を必要とし、「頭脳労働」は「頭脳」を必要とするのに対して、「感情労働」は「感情」を必要とするわけです。

航空機の客室乗務員や、医療施設の看護士、福祉施設の介護士などの仕事が感情労働の典型例にあげられます。これらの仕事に共通するのは、自分の感情はさておき、顧客をよろこばせたり満ちたりさせたりするように振るまうことです。

記事では、人材コンサルタントの茂木信幸さんが「感情労働営業」の活用を薦めています。

これまで、感情労働はどちらかというと否定的な文脈のなかで論じられてきました。感情の抑制を強いられる、といったようにです。しかし、茂木さんは、感情労働を営業技術として身につけて、営業活動に積極的に活かすこともできるはずだと説いています。

感情労働営業で必要になるのは、演技。顧客がよろこぶように、意識的に笑顔をつくったり、自分の感情を抑えたりするわけです。

「演技」ということばにも、人をだますような否定的な語感が含まれそうですが、茂木さんは演技をそのようには捉えていません。演じることによって、自分と相手との関係性がもっとよくなればそれでよいという考えに立っています。

記事では、とくに苦手意識を抱かせるような顧客の傾向と対策を、茂木さんが説いています。「自分と顧客それぞれの気質タイプを見極めたうえで、気質の異なる部分を相手に合わせるように演技していく」というのが、その要点。さらに、詳しく、気質の種類や、個別での対策を助言しています。

自分の仕事が営業ではなくても、多くの人の仕事に営業的な要素はふくまれるもの。また、自分の従事する仕事はサービス業でなくても、多くの人の仕事にサービス業の要素はふくまれるもの。「『感情労働営業』は、働くすべての人に効果的なスキルともいえる」と茂木さんは語っています。

『週刊東洋経済』のホームページはこちらです。
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電池のなかの液が電気を生み出す――リチウムイオン電池用電解液・電解質のメーカー動向(1)
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電気自動車などにも使われるリチウムイオン二次電池の需要が増えつづけています。注目されるのは、リチウムイオン電池そのものを製造するメーカーだけではありません。リチウムイオン電池を構成する材料を製造するメーカーの動向にも激しいものがあります。

このブログでは、これまで「リチウムイオン電池正極材のメーカー動向」と「リチウムイオン電池負極材のメーカー動向」というシリーズ記事で、各材料を製造するメーカーの動向を追ってきました。

リチウムイオン二次電池の主要材料として、べつにあげられるのが「電解質」または「電解液」とよばれる物質です。二次電池つまり充電池には、かならず電解質という物質が含まれています。この電解質は、正または負の電気をもったイオンという原子を出します。

充電池では、正極と負極のあいだをイオンが行き来します。たとえば、リチウムイオン二次電池では、充電中にはリチウムイオンなどのイオンが負極へと移っていき吸収されます。また、放電中にはリチウムイオンなどのイオンが放たれて正極に入ります。このくりかえしで、何度も充放電をすることができるわけです。

イオンを出す電解質をふくむ溶液は、電解液とよばれます。多くのリチウムイオン電池の電解質は、液体の電解液の状態で電池のなかに入っています。

いまのところ、リチウムイオン電池用の電解質にもっとも多く使われている物質が、六フッ化リン酸リチウムといわれています。リチウムイオンを含む溶質を用いた有機電解質です。

リチウムイオン電池用電解液の市場は、2008年まで高い拡大率を見せてきました。しかし、2008年秋以降の世界的な不況を受けて、生産量は一時、低迷しました。その後は、電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池などでの需要が高まり、生産量は復調していると考えられます。今後は、電気自動車の普及で、さらに市場が拡大していくことが確実視されています。

そこで、リチウムイオン電池用電解液を製造するメーカーの動向を、各社の報道発表や中期経営計画などから追っていきます。電解液をつくるメーカー、その材料となる六フッ化リン酸リチウムをつくるメーカー、さらにその原料となる高純度炭酸リチウムという物質をつくるメーカーには、どのような企業があるでしょうか。そして、どのような事業を手がけているのでしょうか。つづく。
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「人」と「路線」を「と」で並べる
文章には、ふたつ以上のことばを並列させたものがあります。「11月と12月はいそがしい」とか「雑誌を読むこととインターネットを見ることは情報を得るための手段だ」といった具合です。

これらの場合「と」の前と後にくることばが並列の対象となるわけです。

文章では、わかりやすさを考えたとき、できるだけ並列させることばの形はそろえておくという原則があります。たとえば、つぎのような一文はどうでしょう。

「あすの予定は、部屋の掃除と、買い物に行くことだ」

「と」の前には「部屋の掃除」があり、「と」の後には「買い物に行くこと」があります。ふたつとも行為を示したことばという点では一致しているため統一性はあるようにも思われます。

しかし、それぞれの最後に注目すると「掃除」と「こと」が並んでいることになります。ここも「掃除」に対して「こと」でなく「買い物」とするか、「こと」を並べるほうが、より統一性が高まり、伝わりやすくなるでしょう。

「あすの予定は、部屋の掃除と、買い物だ」
「あすの予定は、部屋を片づけることと、買い物に行くことだ」

並列の対象を統一させることを、度がえししたようなアナウンスが、公共の場にはあります。

JR線を乗っていると、実際につぎのような車内アナウンスが聞こえてきます。

「つぎは錦糸町。亀戸、平井へおいでの方と、地下鉄半蔵門線は、お乗り換えです」

この場合、「と」の前は「亀戸、平井へおいでの方」であり、「と」の後は「地下鉄半蔵門線」となります。

JRの錦糸町駅では、総武線の快速電車から各駅停車に乗り換えれば、亀戸駅や平井駅につくことができます。そのために快速電車に乗っている客に「亀戸、平井へおいでの方は、お乗り換えです」という情報があたえられるわけです。

いっぽう、並列の「と」の後に来るものは「地下鉄半蔵門線」。地下鉄の半蔵門線も乗り換えることができるため、「地下鉄半蔵門線は、お乗り換えです」という情報もあたえられるわけです。

このふたつの情報が結びついた結果が「亀戸、平井へおいでの方と、地下鉄半蔵門線はお乗り換えです」。

「は」という助詞を頼りにして、「方」という人と「半蔵門線」という路線を並べたことになります。

本来であれば、「つぎは錦糸町。亀戸、平井へおいでの方と、地下鉄半蔵門線をご利用の方は、お乗り換えです」あるいは、「つぎは錦糸町。亀戸、平井に停車する各駅停車総武線と、地下鉄半蔵門線をご利用の方は、お乗り換えです」などとすべきです。

しかし、日本語は曖昧であっても通じてしまうもの。車内では、アナウスンスのあとに首をひねるような人は見かけません。

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予測よりも時間はかかるもの――法則古今東西(19)


きょう11月23日は「勤労感謝の日」。勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝しあうとする日です。

勤労に感謝の思いを抱く人もいるでしょうが、より多くの勤労者が抱えるものは、「仕事を予定どおりにこなせるか」という課題でしょう。

忙しい人はもちろん、そうでない人も自分のペースやリズムのなかで、「週末までにはこの仕事は終わらせておきたい」などと考えながら仕事をします。予定をきっちりと決める人もいれば、だいたいこんなものと漠然と思いえがく人もいます。

しかし、いずれにしても、自分の予想より仕事を終わらせるまでに多くの時間がかかってしまうものかもしれません。

米国の認知科学者ダグラス・ホフスタッターは、自著『ゲーデル、エッシャー、バッハ』のなかで「ホフスタッターの法則」を披露しています。それは、「いつでも予測以上の時間がかかるものである ――ホフスタッターの法則を計算に入れても」というもの。

この格言そのものは、「ホフスタッターの法則」のなかに「ホフスタッターの法則」が入っているという、ホフスタッターが興味の対象としている自己言及の例として紹介されます。

しかし、2文目を除く「いつでも予測以上の時間がかかるものである」だけでも、じゅうぶんに人々の経験からくる法則になりそうです。

一人ひとりの仕事を考える場合、なぜ、たいてい予測以上の時間がかかってしまうのでしょうか。

多くの人が考える「仕事」は「おもな仕事」や「大きな仕事」なのかもしれません。ある人にとって、企画書の提出が“今週の大きな山”だとすると、「週末までには企画書を提出したい」と考えるわけです。

しかし、それ以外の「ちょっとした仕事」や「小さな仕事」は往々にして起きるものです。まわってくる議事録の確認や、1時間ぐらいで済む頼まれごと、メールで届いた質問の返答などなどです。

「おもな仕事」を「1」とすると、これらの「ちょっとした仕事」は、感覚的には「0.1」や「0.4」。つまり「1」としては数えられないわけです。

このとき、「0.1」や「0.4」の仕事を予測のなかにふくめれば、それらもふくめて、「週末までにはここまで終わらせよう」という、より現実的な算段をつけられることでしょう。

しかし、人は「ちょっとした仕事」を、四捨五入により感覚的に「0」にしてしまっているのかもしれません。まわってくる議事録の確認は「0.4」なので四捨五入すれば「0」。1時間ぐらいで済む頼まれごとは「0.1」なので四捨五入するとこれも「0」。「0+0」は「0」なので、予測段階としてすべき仕事にはふくめないわけです。

週末までにメインの「1」の仕事を終わらせることのほかにも、「0.1」や「0.4」の仕事をこなさなければなりません。本当は「1.5」の仕事をする必要があるわけです。

しかし、このうち「0.5」ははじめから切りすてられるため、週末になってみると、「メインの仕事が半分しか終わっていなかった」という状況を招きます。

そういう状況におかれた人はこう感じるでしょう。「予測以上に時間がかかってしまった」。

ホフスタッター自身は、かつてコンピュータのチェス指しが「10年後には人間の世界王者を倒すだろう」と予測されていたのに、10年が経っても「10年後には人間の世界王者を倒すだろう」とあいかわらず予測されていたため、この法則を考えたといいます。

参考ホームページ
ウィキペディア「Hofstadter's law」
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水滴の小ささで「白い虹」


「虹」というと、だれもが紫から赤までの色のついた輪を思い浮かべるでしょう。しかし、自然には「色のつかない虹」もあります。これを「白虹」といいます。どのようにおきるのでしょう。

虹が見える条件は、人が太陽に背を向けたとき、その人の正面のほうに雨などの水滴が浮遊していること。太陽の光が白いのは、いろいろな色の光が重なりあっているため。ところが水滴に太陽の光があたると、白い光をつくっているいろいろな色の光が分散します。そのために、虹が見えるわけです。

白虹が見える条件も、自分と太陽と水滴の位置関係でいえば、虹とかわりません。人が太陽に背を向けたとき、その人の正面のほうに水滴があることが必要条件になります。

色のついた虹でなく、白いだけの虹が見えるのは、その虹をつくりだす水滴が太陽の光をいりろな色の光に分散させないためです。

虹をつくり出す水滴が、ふつうの虹が起きるときよりも小さくて、光の波長とほぼおなじにである場合、光はその水滴に対して分散することなく、そのままの白い光で散乱することになります。ちなみに光をつくり出す可視光線の波長は、もっとも短い紫が380ナノメートルから450ナノメートル。もっとも長い赤が620ナノメートルから750ナノメートルです。

七色の虹が見えるときの雨粒よりももっと小さい水滴が集まると霧になります。つまり、霧のときに、この白虹が出やすくなるわけです。なお、雲が白く見えるのもおなじ原理。これらの散乱現象は、ドイツの物理学者グスタフ・ミー(1869-1957)が研究したことから「ミー散乱」といいます。

英語では、虹を「レインボウ」(Rainbow)というのに対して、白虹を「フォッグボウ」(Fogbow)といいます。直訳すると「霧の弓」。日本語でも、白虹のほかに「霧虹」(きりにじ)とよぶこともあります。

白虹というめずらしい現象は、中国で「白虹日を貫く」という故事成語にもなっています。白い虹が太陽を貫くという意味で、白虹は兵隊を象徴し、日は君主を象徴しています。君主にとっては、白虹は不穏な現象と思われていたわけです。

参考ホームページ
富士通エフ・アイ・ビー「ミー散乱理論」
情報通信研究機構
ウィキペディア「霧虹」
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おかしなジョークに左脳が反応

人が笑う瞬間、体のなかではどのようなことがなされているのでしょうか。

英国の科学雑誌『ニューサイエンティスト』の2010年2月1日号には、「喜劇の回路 脳が冗談を得た瞬間」 (The comedy circuit: When your brain gets the joke)という記事があります。

この記事では、科学者たちの「笑い」に関するさまざまなコメントや研究成果を紹介しています。

米国デューク大学のカーリー・ワトソンは、「ユーモアは、人間の直感的な状況判断能力の産物」と言っています。不調和の埋め合わせをするための「すこし遅れた判断」が伴うとも。本来であればこうなるはずといった予測から外れたとき、そのギャップを直感して笑いは起きるということでしょう。

笑いが起きるとき、脳のなかでどのようなことが起きているのかを研究する科学者もいます。米国ダートマス大学のジョセフ・モランは、実験協力者にテレビの人気コメディ番組を見てもらい、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI:functional Magnetic Resonance Imaging)により脳の活動を観察しました。

すると、おかしなジョークへの反応として、左脳後部の側頭回あたりでの神経細胞の活性があり、とくに左脳下前頭回がもっとも活発になったといいます。

左脳は俗に「論理性をつかさどる脳」といわれます。日本の研究などによっても、この左脳下前頭回が、語学の適性に関係する脳部位であることが知られています。笑いが起きる瞬間には、言語にかかわる脳の部位が活発になっているといえそうです。

さらに、米国スタンフォード大学のディーン・モブスは、大脳辺縁系の腹側線条体という部位を調べました。この部位の活動レベルは、おかしなジョークを被験者が受けたときと一致していたといいます。

モブスは「この部位は、ドラッグ、性交、好きな音楽などを経験したときに得られるさまざまな種類の報酬と関わっている部位」と説明しています。笑うときに喜びや快感が伴うことは、多くの人が経験上、知っています。

笑いが起きた瞬間に体がどのようになっているか。この研究は、これからも開拓の余地がありそうです。

参考記事
『New Scientist』 2010年2月1日付 “The comedy circuit: When your brain gets the joke” 
科学技術振興機構・東京大学 2009年4月28日付「語学の適性に関係する脳部位は左前頭葉の『下前頭回』にあることを解明」
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「電気自動車から電力網へ」は技術的課題

電気自動車は、リチウムイオン電池などの充電池で電気をたくわえておくことができます。そのため、ためておいた電気を自動車を走らせることのほかにも使うことができます。

これは、身近なべつの装置でいうと、ノート型コンピュータとスマートホンの関係とにています。

まず、ノート型コンピュータを充電します。充電しおわったらプラグを外します。そして、ノート型コンピュータとスマートホンをUSB(Universal Serial Bus)ケーブルでつなぎます。これでスマートホンのエネルギー残量が仮にゼロでも、ノート型コンピュータからの充電がはじまり、スマートホンを使うことができるようになります。ノート型コンピュータに蓄えられた電気がスマートホンに移っていくわけです。

ノート型コンピュータを電気自動車に、スマートホンを家に置きかえたらどうなるでしょう。電気自動車をあらかじめ充電しておきます。充電しおわったらプラグを外します。これは電気自動車にとっては普通に走ることのできる状態です。そして、電気自動車と家をケーブルでつなぎます。これで家のエネルギーがゼロ、つまり停電を起こしたときでも、電気自動車からの充電がはじまり、家の電気を使うことができるようになります。電気自動車に蓄えられた電気が家に移っていくわけです。

この電気自動車から家に対する電気の供給は「ヴィークル・トゥ・ホーム」とよばれています。直訳すれば「車から家」となります。

ノート型コンピュータと携帯電話のあいだでは、すでに「コンピュータ・トゥ・スマホ」とでもいうべき電力の融通ができているわけです。「ヴィークル・トゥ・ホーム」でも、原理的には可能と考えられてもおかしくありません。

それでも、「ヴィークル・トゥ・ホーム」には、まだ技術的課題があるといわれています。

いわれている課題のひとつは、電気自動車から電力網への電力供給ができないという点。「スマート・グリッド」といわれるような未来的電力網では、電力をいろいろな方向で融通できるようなイメージがあります。しかし、電気自動車にたまっている電力を、街なかの送電網に戻すことには、まだ技術的な課題があるといいます。

また、充電池の劣化が早くなるという心配もあるといいます。

電気自動車に使われているリチウムイオン電池の材料である電解液は、電圧が高い状態のままで置かれると劣化が進むおそれがあります。日本自動車工業会は、電気自動車を「ヴィークル・トゥ・ホーム」に使うと、「頻繁に充電され、満充電状態で停滞する時間が長くなり、劣化が加速する懸念もある」という問題点を挙げています。

これとは矛盾するようですが、充電池を電気自動車を走らせるため以外にも使うため、電気自動車を使いたいときに電気が足りないといった、本末転倒の状況が起きるのではないかとも心配されているようです。これはノート型コンピュータでひんぱんにスマートホンを充電しているため、ノート型コンピュータに使える電力が限られてしまうようなものでしょう。

「スマート」なエネルギーの使い方は、なにもしないで待っていれば実現するものではありません。

IBM「スマートグリッドが『クルマ』にもたらす新たな使命」
日本自動車工業会『JAMAGAZINE』2011年8月号「充電インフラ整備の現状と今後」
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平衡を保とうとした結果“よい香り”


檜(ひのき)は、よい香りのする木材。マイホームを建てようと夢みる人の多くは、一度は「わが家にも檜風呂を」と思うことでしょう。

檜の材料や丸太を地面のなかに6年間にわたり埋めておいても、芳香のもとになる精油を抽出できるといいます。和歌山県林業試験場が地元の紀州ヒノキを使って行った研究の結果です。

よい香りが檜から出つづけるのは、なぜでしょう。

檜にふくまれている精油の主成分は「フィトンチッド」といいます。このフィトンチッドという物質はいろいろな木がもっている化学物質。木にとっては、外敵の細菌を殺すための武器といわれています。人間にとってはそれが、いい香りになっているわけです。

フィトンチッドは、「揮発性」の高い物質として知られています。揮発とは、常温で液体が気体に変わること。揮発性が高いということは、液体が気体に変わりやすいことをいいます。フィトンチッドは、液体から気体になりやすいのです。

揮発という現象は、気体と液体のバランス関係が変化するなかで起きます。液体にも気体にもなる物質には、「この気体と液体の濃度の比だと釣りあいがとれる」といったような比率があります。この比率は「平衡定数」といわれます。

もし、ある物質がこの比率どおりであれば、理論的には揮発が行われる必要はなくなります。しかし、平衡の状態にくらべて気体の濃度のほうが低いときは、「もっと気体を増やそう」というほうに状態が傾いていきます。これにより揮発が起きるわけです。

フィトンチッドなどの精油は、平行定数が保たれる状態になるべく、つぎつぎと液体を気体に変えていっているわけです。

ただし、揮発性が高いだけでは、香りが出つづけることにはなりません。香りが出つづけるほかの要素として、そもそも液体の量が多いか、またそもそも液体が人の鼻のセンサによく感じられやすいものか、といったこともあります。

揮発性は高い。量は多い。人の鼻のセンサに感じられやすい。しかも人にとってはよい香りに感じられやすい。これらの要素があいまって、「檜からいつまでもよい香り」が実現するわけです。

参考記事
紀伊日報 2012年6月20日付「6年地中でも香りそのまま 紀州ヒノキ」
朝日新聞 2012年5月19日付「ののちゃんのDO科学 せっけんの香りは、なぜ落ちない」

参考ホームページ
教えて!goo「揮発はなぜ起こる」
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チタン酸リチウム負極材の実用化進む、東芝――リチウムイオン電池負極材のメーカー動向(15)


リチウムイオン電池に使われる負極材のメーカーなどの動向を、各社の報道発表や経営計画、また報道などから追ってきました。

リチウムイオン電池そのものを作るメーカーのなかで負極材との関連で注目されているのが、東芝です。東芝の創業は1875年。当時は「田中製造所」という企業名でした。その後「芝浦製作所」へとの社名を変え、1939年には「東京電気」と合併して「東京芝浦電気」に。さらに1984年に「東芝」の社名なっています。

東芝は、負極材に「チタン酸リチウム」という物質を使うことに成功しています。

チタン酸リチウムは、酸化チタンを成分とする金属。負極材でよく使われる黒鉛などの炭素系の物質の代わりになります。チタン酸リチウム負極材の特徴のひとつは、高熱に強いこと。

チタン酸リチウムに含まれる酸化チタンは、炭素系の物質とちがって電導性をもちません。そのため、内部短絡(ショート)を起こしても、熱の急上昇を防ぐことができます。従来の負極材では、置かれる環境が200度以上になると、急に熱の発生量が高くなります。いっぽう、チタン酸リチウムを使った負極材では、熱量の発生のしかたがそれほど急ではありません。

東芝は、チタン酸リチウムをふくむ負極材を「SCiB™」という名で発売しています。同社は「20〜80%の広い充電範囲でハイブリッド自動車用ニッケル水素電池の約3倍の高い入出力性能が得られました。 さらに、低温(マイナス40度)から高温(60度)の広い温度範囲において、従来のマンガン正極溶解による性能劣化が抑制(高温時)され、チタン酸リチウム負極上での金属リチウム析出(低温時)がないので、耐久寿命特性に優れています」としています。6000回以上のサイクル寿命をもつといいます。なお、「SCiB™」の正極材にはマンガン系材料が使われています。

東芝は、電気自動車をつくる三菱自動車のリチウムイオン電池に「SCiB™」が採用されたことを2011年6月に発表しています。また、東芝と関連会社の東芝ライテックは「SCiB™」を用いた家庭用蓄電システムを2012年11月に発売することを、同年9月に発売しています。

リチウムイオン電池の用途先は、かつての携帯電話やコンピュータから、自動車や家庭用蓄電池などへと大型化しています。「SCiB™」は、用途の大型化に向いたリチウムイオン電池として注目されているわけです。了。

参考記事
Electro To Auto Forum「自動車用リチウムイオン電池、気になる安全性 EV、HEVへの搭載が本格化」
東芝 2011年06月16日付「二次電池『SCiB』が三菱自動車の電気自動車に正式採用」
東芝・東芝ライテック 2012年9月10日付「定置式家庭用蓄電システム『エネグーン』の発売について」
参考ホームページ
東芝研究開発センター「ハイブリッド自動車用新型二次電池 SCiB™のセル技術」
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
いつ人物を登場させるか吟味


本や雑誌などの原稿の書きかたのひとつに、「取材した人物に発言してもらう」というものがあります。これは、取材をもとにした多くの記事で見かけるもの。

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「iPS細胞のことを最初に聞いたときから、ノーベル賞になると思いました」。生化学が専門の宮本薫・福井大教授はそう話す。
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このような書きかたです。

取材で得た話をカギカッコ文にして書くと、あたかもその人が記事のなかで話しているような“なまなましさ”を出すことができます。たとえば、上の一文をカギカッコ文を使わずに表現すると、“なまなましさ”が失われてしまいます。つぎのように。

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生化学が専門の宮本薫・福井大教授は、iPS細胞の存在を認識した当初からノーベル賞に値する研究になるという思いをもっていたという。
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人に取材をして話を得ることそのものが、原稿を書くにあたっての高いアドバンテージをもつことになります。すでに記者が知っている知識をあらためて取材対象者が語ったのだとしても、カギカッコの文でなまなましく伝えることができるからです。さらに、取材対象者がとっておきの話を切りだしてくれれば、その生地の価値はさらに高まります。

長文の原稿を書くとき、その取材対象者をどのタイミングで登場させるかは、記者が原稿を書くときのひとつの課題になります。

その取材対象者のカギカッコでの語りを記事の中心に据えるとすれば、中途半端な登場のさせ方をしてはなりません。記事の導入として、さまざまな現状や背景をまず記者が説明しておいたうえで、つまりお膳立てをしたうえで、「この問題に、30年にわたり取り組みつづけている研究者がいる。何々大学の誰々教授だ」といったように切り出すのです。

この後は、その取材対象者のカギカッコ付きの語りを多く織りこんで記事を展開していくことになります。

記事の冒頭を、取材対象者のカギカッコ文で始めるといった手をとる記者もいます。はじめになまなましいカギカッコつきの語りを示して、読者にインパクトをあたえるのがねらいでしょう。とくに、その記事のなかに登場人物はその人だけという場合には適しています。

ただし、長い文章を書くとき、早いうちから取材対象者を登場させてしまうと、息切れをしてしまうことも。そこで、カギカッコつきの語りを置いたあとに、「誰々教授のこの言葉の裏にはこんな背景がある」などとカギカッコでない文を入れて、じっくりと背景を書くといったようなことで、カギカッコつきの語りを輝かせます。

取材対象者を登場させるタイミングがうまくいったとき、その記事は読ませる記事に一歩前進したといえるかもしれません。

参考記事
朝日新聞 2012年10月17日付「山中教授、福井県にも刺激 保存液開発にも一役」
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大阪ガス出資で鐘紡発の技術を発展させる、KRI――リチウムイオン電池負極材のメーカー動向(14)


メーカーではありませんが、ガス会社の出資により、リチウムイオン電池用負極材の研究開発をしている企業があります。

京都市下京区中堂寺南町に本社のあるKRIは、大阪ガスの出資により、科学技術に関する受託研究、分析および試験評価、コンサルティングなどを主な事業としている企業です。旧社名は関西新技術研究所。1987年に創業し、新素材、表面科学、バイオテクノロジー、エレクトロニクスシステム、ビジネスコンサルティングの五つの組織で活動を開始しました。2010年には、材料とエネルギーの二つの分野の体制になっています。

2006年9月、KRIは、ポリアセン系有機半導体(PAS:PolyAcenic Semiconductive material)を材料とする負極材を使って、出力約5倍、容量約3倍の負極を開発したと発表しました。

ポリアセン系有機半導体は、フェノール樹脂を500度から700度で熱反応させることによって得られる「縮合芳香族系ポリマー」という導電性高分子の総称です。1982年に、当時、鐘紡(いまのカネボウ)に所属していたKRI顧問の矢田静邦氏が開発しました。

このポリアセン系有機半導体をつくるうえで重要なのが、ポリアセン系材料の設計技術、さらにプリドーピングという技術です。

「プリドーピング」(Pre-doping)は、「あらかじめ」を意味する“pre”と、「不純物を添加する」といった意味をもつ“dope”からなることば。ここではリチウムイオンをあらかじめ電極中に担持させる技術のことをいいます。1990年代には、すでに鐘紡のポリアセンリチウムイオンキャパシタ(ポリアセン電池)に適用されていました。KRIは2010年9月、リチウムイオン電池のセル製造前に、リチウムイオンを添加することのできる「プリドープ基本技術」を開発したと発表したのです。

これにより、リチウムイオン電池の正極のみに存在したリチウムを負極にも導入することができ、正極材・負極材の選択幅が広がるといいます。

この技術は矢田静邦氏が鐘紡時代に開発したもの。KRIは矢田氏を中心に、さらにプリドープ技術の研究を進めました。

発表された技術開発では、従来のセル内プリドープとちがって、セル製造の前段階の電極を製造するときに、リチウム金属を加えて混合します。活物質や導電材などを溶剤と混合して混練する既存の工程のなかで混合するため、短い時間で均一に、正極材料と負極材料にリチウムをプリドープできるといいます。

KRIは、開発された基本技術の特徴として、「電極製造時の使用溶剤の選定、雰囲気調整は必要なものの、既存工程で電極製造が可能となること」「電極製造時にプリドープ電極が得られることにより、既存工程でセルの製造が可能となること」「通常の銅箔、アルミ箔集電体が使用可能であること」をあげています。つづく。

参考記事
KRI 2006年9月26日付「次世代スーパーパワーリチウムイオン電池用『超高出力負極』を開発」
KRI 2010年9月29日付「電極製造時にリチウムイオンをプリドープ可能な『新規プリドープ基本技術』を開発」
| - | 23:57 | comments(0) | trackbacks(0)
顔も見ていない人との待ちあわせの失策リスク高し


まだ顔も見ていない人とどこかで待ちあわせをするとき、“顔を見ていないからこそ”のちょっとした失策もしてしまうことがあります。

話しかけてみた人が合う人ではなかったということはよくあるでしょう。

「わたし、佐藤といいますが、鈴木さんですか」
「いえ、ちがいますけど」
「あ、すいません、失礼しました」。

まだ顔さえ見ていないのだから、待ち合わせ時刻にそれらしき人がいれば、声をかけるのも無理はありません。

そうこうしているうちに、待ち合わせ場所に向こうから笑顔で手を振ってくる人が来ました。「まちがいない、鈴木さんだ」と確信して、こう言うのでした。

「ああ、どうもどうも! 鈴木さんですね」

しかし、手を振ってきた人は、じつは背後にいたべつの人に笑顔で手を振っていたのでした。

このちょっとした失策には、若干の恥ずかしさをともないます。おそらく、笑顔で「鈴木さん」を出むかえる顔と体の準備をしていたことでしょう。それが、合う人とはべつの人だったとなると、やはり恥ずかしさが込み上げてくるものです。「鈴木さん」とまちがわれた人も、一瞬、居心地が悪くなるかもしれません。

確率的には低いものの、もっと大胆なちょっとした失策も考えられます。またもや、べつの人が、待ちあわせ場所にやってきました。

「佐藤さん、ですか」
「はい、佐藤です。鈴木さんですね」
「そうです。どうもお待たせしました」

こうして、「佐藤さん」と「鈴木さん」は待ちあわせに成功……したかに思えました。しかし、近くの喫茶店に入って、しばらく話をしているのですが、どうも話が合わないのです。

「今回の件は、いろいろとお手数をおかけいたします」
「あ、ええと、先週いただいたメールの件ですかね」
「メール、えっと、しましたっけ、メール……」

なんと、待ちあわせ場所で「鈴木さん」はべつの「佐藤さん」に、「佐藤さん」はべつの「鈴木さん」に合ってしまい、そのままべつの人とは気付かぬまま喫茶店まで入ってしまったのです。ある物書きの話によれば、「これと似たことが実際にあった。取材の趣旨説明までしたところでべつの人であることがやっとわかった」と言います。

待ちあわせとは、緊張を強いられるもの。その緊張状態が、ちょっとした失策に加担してしまうのでしょう。
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産業技術総合研究所と酸化チタン材料を共同開発、石原産業――リチウムイオン電池負極材のメーカー動向(13)


リチウムイオン電池の負極材を製造する各メーカーの動向を、プレスリリース、経営計画、報道などをもとに見ています。ここまでの12回は、おもに炭素を材料に負極材を製造する会社の紹介でした。

負極材の材料は、炭素以外にもあります。そこでここからは、おもに炭素材料以外を材料に負極材をつくっているメーカーの動向を見ていきます。

石原産業は、酸化チタンや酸化チタンなどを原料とする機能材料、農薬、医薬品、有機中間体、化粧品などを営業品目とするメーカーです。1920年、石原廣一郎がマレーシアのスリメダン鉱山を開発するため、大阪市に南洋鉱業公司を設立したのが沿革の端緒となっています。

1934年には、合資会社から株式会社に変更し、三重県に紀州鉱山を開設しました。1950年代からは三重県四日市市を中心に各種工場を建設し、1954年に硫酸法による酸化チタンの工場を完成させています。酸化チタンは、塗料や顔料などの着色剤のほか、光触媒や太陽電池にも使われている物質です。

石原産業が、まだ開発段階ながらリチウムイオン電池負極材として着目しているのも酸化チタンです。同社は酸化チタンを材料にした開発を産業技術総合研究所とともに進めてきました。

2010年10月の共同発表によると、酸化チタン負極材は、チタン酸リチウムと同程度の電圧をもつことから負極材料として高い安全性が期待され、さらにチタン酸リチウムに比べて高容量であることから、高いエネルギー密度の電池が得られるといいます。

このチタン酸化物は、化学組成を変化させる手法である「ソフト化学合成法」によって合成されます。チタン酸ナトリウムを出発原料とし、60度の条件下で酸処理を行い、水素、チタン、酸素の元素からなる前駆体をつくります。その後、200〜300℃程度の温度で加熱し、チタン酸化物をつくります。

このチタン酸化物を用いた重放電の実験では、10サイクルにわたり、ほぼ可逆的な充放電容量を達成することができたといいます。発表では「チタン酸リチウムと同等の良好なサイクル特性」としています。

この共同研究では、産業技術総合研究所が低温合成プロセスのひとつであるソフト化学合成法を適用したチタン酸化物の合成などの研究に取り組んでいました。そのなかで、チタン酸化物を見いだし、その合成方法とリチウムイオン二次電池電極材料への適用について検討を行っていました。

石原産業が負極材を実用化するまでの過程としては、電機メーカーなどにサンプル出荷を行い実用化への課題を抽出し、さらに化学組成、結晶構造、粉体特性の最適化などを進めていくと見られます。つづく。

参考記事
産業技術総合研究所・石原産業 2010年10月25日付「リチウムイオン二次電池用の新しい負極材料を開発 新規チタン酸化物で高容量化を実現」
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手で触れて物質のつくりを実感する
人が目にしているものを細かくしていくと、分子が組みあわさった化合物がすがたを表わします。しかし、人はその化合物を眼で見られるわけではありません。ひとつひとつの化合物があまりにも小さすぎるからです。

目に見えない化合物のつくりがどうなっているかを実感するには、どうしたらよいでしょう。

電子顕微鏡などの顕微鏡で見るといった方法があります。しかし、顕微鏡は必需品ではありません。顕微鏡で物質を見るには、持ち主に使うことをお願いしたり、物質をセッティングしたりといった準備が要ります。

「カメノコ」とよばれる六角形の環などの化学構造を、えんぴつで紙に描くという方法もあります。しかし、化学構造を見て物質のかたちを実感できる人は多くはありません。

球や棒などの材料を組みあわせて、分子模型を組みたてることもできます。米国の化学者ジェームズ・ワトソンと英国の化学者フランシス・クリックは、二重らせん状になっているデオキシリボ核酸(DNA:DeoxyriboNucleic Acid)のつくりを、球と棒の材料を組みあわせてつくりました。しかし、物質の構造が複雑あるいは大がかりになるほど、球や棒でつくることもむずかしくなっていきます。

コンピュータのシミュレーション技術を使えば、物質の構造を全方向から観察したり、ある分子を結合させたりすることはできます。とはいえ、それもあくまで画面のなかでの話。この方法では、構造を手で触るようなことはできません。目で見ての実感にかぎられます。

より身近に、いろいろな物質のかたちを、肌で感じるとることはできないか。そのような望みをかなえるものとして、3次元印刷を利用した分子模型の作製技術が開発されています。

(2012年)11月11日と12日に東京・青海の日本科学未来館などで行われた「サイエンスアゴラ」では、日本コンピュータ化学会が、物質の立体模型を展示していました。



この立体模型は、北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科教授の川上勝さんが3次元印刷技術を応用して開発した骨格構造作製技術によりつくられたもの。模型はシリコーン樹脂でできていて、物質を構成する分子のパーツが磁石や凹凸で結合します。

いっぽう、形の合わない分子のパーツどうしは凹凸が合いません。きちんと分子どうしが合致して化合物ができていることを、手にとって理解することができます。

立体模型をつくる技術は、これまでもなかったわけではありません。しかし、材料に石膏を使うなどしていたため、硬くて脆く、気軽に物質の構造に親しめるものとはいえませんでした。

いっぽう、3次元印刷を応用した立体構造作製技術では、3次元印刷で分子表面のかたちを“殻”としてつくってから、その内部にシリコーン樹脂を流し込み、樹脂が固まったら殻を壊してシリコーンのみにします。必要により色もつけます。

手にとって物質の構造がわかる物体。目に見えないさまざまな物質に対して「こんな形をしているのか」「こんな分子で組み合わさっているのか」といったことを、手にとって理解することができます。これから理科教育の現場などで使われる場面がより出てくるかもしれません。

参考記事
北陸先端科学技術大学院大学「3D印刷技術を応用した新たな分子模型の作製方法を開発 複雑なタンパク質の構造、機能の直観的な理解が可能な教材、研究用ツールに応用」
参考文献
本間善夫「カガク×アートで見る生体分子、そして 3.11」『サイエンスネット』第45号
| - | 21:10 | comments(0) | trackbacks(0)
2020年に世界シェア4割目指すとも、韓国ポスコ――リチウムイオン電池負極材のメーカー動向(12)


海外のリチウムイオン電池負極材メーカーでは、韓国のポスコが注目されます。

ポスコは韓国最大規模の製鉄企業です。熱延鋼板、厚板、線材、冷延鋼板、電気鋼板、ステンレススチールといった各種金属材料の製造などをおこなっています。

1973年、日韓基本条約による対日請求権資金と、八幡製鉄および富士製鐵(2社は1970年に合併して新日本製鉄、いまの新日鉄住金に)それに日本鋼管(いまのJFEスチール)による技術支援により、国営企業として設立されました。設立当時の社名は「浦項総合製鉄」。

その後、同社は事業を拡大して、2000年には民営化を果たし、ニューヨーク、ロンドン、東京の証券取引所で上場もしています。

2011年5月に、ポスコがリチウムイオン電池負極材事業に進出することがわかりました。忠清南道燕岐に年間の生産能力2400トン規模の工場を段階的に新設し、新工場をグループ会社のポスコケムテックが着工。投資額は190億ウォンです。

ポスコケムテックは、ポスコから負極材の主原料になるコールタールという物質の供給を受けることができます。コールタールは、石炭から石炭ガスやコークスをつくるときに生じる黒くて粘り気のある油状物質のこと。

韓国の経済報道によると、ポスコケムテックはロードマップ(計画表)をまとめており、実際に負極材を生産するのは2014年からとされます。そして2020年には世界シェア4割を目指すといいます。

なお、ポスコは三菱商事ともコールタールの供給契約を結んでおり、ポスコの生産するコールタールを三菱商事が受けます。つづく。

参考記事
日本経済新聞 2011年5月16日付「リチウムイオン電池材料、ポスコが参入、韓国に年産2400トン工場」
ソウルジャパンクラブ「ポスコが二次電池素材分野で日本企業と協力(KRN)」
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創刊50号、継続という大きな課題も


きょう(2012年)11月11日(日)、東京・青海の日本科学未来館で「どうつくる・使う? 家庭や学校で役立つ科学誌」という題の討論会がありました。会の主催は科学技術振興機構『サイエンスウィンドウ』編集部。毎年、この季節に科学技術振興機構が開いている「サエンスアゴラ2012」の催しもののひとつです。

『サイエンスウィンドウ』は、2007年1月に科学技術振興機構が創刊した科学雑誌です。理科が苦手だけれども理科を教えている小学校の先生などをおもな読者対象にしています。最新号の「2012年秋号」は、創刊から50号となりました。

会では、雑誌の利用者や関係者がそれぞれの立場から、活用事例を発表しました。

まず神奈川県逗子市の“世界一小さな科学館”「理科ハウス」の学芸員の山浦安曇さんと、地元逗子市立池子小学校理科専任教諭の大谷拓実さんが、この雑誌の活用例を紹介。「理科ハウス」は、『サイエンスウィンドウ』を、岩波書店の『科学』などとともに図書閲覧室に置いており、来館者がなにを最初に手にとるかによって、どのような接しかたをするかの参考にしているといいます。

また、小学校の先生は職員室で回覧するとともに、理科室に過去号を置き、各号の研究者へのインタビュー記事などを自身のノートに貼りつけて授業などに活用しているといいます。

東京都立府中第二中学校主幹教諭の青木久美子さんは、教え子の中学生たちに『サイエンスウィンドウ』を読ませたときの感想などを紹介。「絵や人が多く登場するのがよかった」「科学のことがわかってよかった」といった感想があったといいます。青木さんは、同誌の編集委員でもあります。

大学のデザインの授業で『サイエンスウィンドウ』を活用している教授もいます。日本大学芸術学部デザイン学科教授の木村政司さんが、サイエンスコミュニケーションデザインの実習授業で「科学に興味のない人にいかに興味をもってもらうか」といった論の題材に同誌を活用していると発表しました。

それぞれの発表者が口々にしていたのは、「デザインのきれいさ」でした。表紙にその号の特集を象徴するようなデザインをカラーで表現して、まず読者の目をひきつけます。誌面も全面カラー展開で、用紙のボリュームもしっかりしています。

課題として上がったのは、発行を続けていけるかどうかという重大なものです。創刊当初は月刊誌でしたが、いまは年4回の機関誌に。編集長の佐藤年緒さんによると、政治の変化により予算が減り、全国の学校に配送する費用の軽減せざるをえないという事情があるといいます。

同誌アドバイザーの一人である自然科学研究機構岡崎統合バイオサイエンスセンター兼生理学研究所教授の永山國昭さんは「この雑誌が文化的なものになりつつある中で、予算面は読者のみなさんが支えていくしかない。そのためにはネットワークが必要」と訴えました。

民間企業が科学雑誌を出すとき、採算をどのように保つかは重要な課題となります。独立行政法人がが出す『サイエンスウィンドウ』では、営利活動は原則的にできません。目指されるのは、読者が「この号を読んでよかった。ためになった。授業で活用できた」といった読後にもたらされる価値の総体が、一号にかける制作費を上回ることでしょう。

制作者の情熱と読者の反響が、雑誌を支えつづけています。

科学技術振興機構『サイエンスウィンドウ』のホームページはこちら。過去号をダウンロードして読むこともできます。
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秋田を拠点に主力事業化へ、住友ベークライト――リチウムイオン電池負極材のメーカー動向(11)



住友グループ系の住友ベークライトも、リチウムイオン電池負極材の製造を手がけています。

住友ベークライトは、情報通信材料、自動車製品、回路・電子産業資材、フィルムシート、医療機器などの製品を製造・加工している企業です。

社名にある「ベークライト」とは、成型樹脂や接着剤などに使われるフェノール樹脂というプラスチックの商標名。1907年に、ベルギー生まれで米国で活躍した化学者レオ・ベークランド(1863-1944)が発明しました。これを、ベークランドの親友だった日本の化学者の高峰譲吉(1854-1922)による仲介で、いまの第一三共にあたる三共合資会社が日本での専用実施権を得て、品川工場で試作を始めました。

1932年に三共合資会社のベークライト部門が独立して、日本ベークライトという会社になりました。そして1955年に、住友系列の住友化工材工業と合併して、住友ベークライトとなりました。

リチウムイオン電池負極材関連では、2011年1月にこの分野への参入が報じられました。負極材分野では新規参入企業といえます。静岡県藤枝市の静岡工場に5億円から10億円規模の投資をし、サンプル出荷のため小規模な生産ラインを設置すると報じられました。1700度から1800度で、ベークライトの原料のひとつであるフェノールを焼成することで、電池の出力や蓄電量を高められるといいます。

さらに2012年1月には、同社が負極材を量産化すると報じられました。3月までに10億円を投じて、秋田県秋田市にある関連会社の秋田住友ベークに生産設備を導入すると報じられています。さらに、2015年度に売上高約60億円の主力事業に育てるとも伝えられました。

住友ベークライトの負極材関連事業は、経済産業省の「低炭素型雇用創出産業立地推進事業」に2010年に採択されています。補助金の額は8億円です。この事業の実施場所は秋田市。秋田を生産拠点にして、負極材事業を発展させていくことが考えられます。つづく。

日経産業新聞 2011年1月5日付「リチウムイオン電池、住友ベーク、負極材参入、5〜10億円投資、今春サンプル出荷」
日本経済新聞 2012年1月17日付「住友ベークライト、電気自動車用電池部材を量産」

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「わっはっは」に「不一致」「解放」「こわばり」の諸理論


笑いには、笑おうと意識して「にっこり」と笑うものと、おかしくて思わず「わははっ」と笑ってしまうものと、ふたつあるといいます。

意図的に「にっこり」するほうは、笑っておくほうが相手との関係性が円滑になるために、人がつくりだしたものであるとされています。愛想笑いはその典型的な例でしょう。自分の顔を笑わせるという投資あるいは自己犠牲して、相手によい感じをもたれようとするわけです。

いっぽう、思わず「わははっ」と笑ってしまうのは、なぜなのでしょうか。

これにはいくつかの理論があります。

まず、予想と現実との不一致、あるいは食いちがいが起きるときに、笑いが起きるとする「不一致理論」があります。

日本近代文学者の羽鳥徹哉は、概念や予想や期待と、現実が食いちがったとき、その現実が概念や予想や期待が内包していた緊張を緩めるものであれば、笑いが生じると述べています。

たとえば、小学校で児童が「先生!」というべきところ「お母さん!」と言ったのを聞いて、クラスメートがどっと笑うといったものは、この不一致理論に当てはまるでしょう。

また、心が解放されるときに笑いが起きるという「解放理論」もあります。

実験心理学者の苧阪直行は、解放理論を「解放理論では、感情や緊張が高まった心的状態が一転して無意味なことがらに帰する場合、行き場を失った心的エネルギーが笑いによって解放されると説明する」と述べます。

ひょっとすると、時代劇『水戸黄門』で、悪代官退治のあと水戸黄門が「はーっはっはっはっは」と笑っていたのも、緊張状態からの心的エネルギーの解放を意味していたのかもしれません。

古典的なところでは、フランスの哲学者アンリ・ベルクソンの「機械的こわばり理論」があります。

人は生きるという行為をしなやかにこなすはずであるのに、機械的に自動進行するような要素を生じさせると、そこに笑いが起きるというのです。「こわばったもの、ぎこちないもの、機械がこしらえたようなもの、惰性的な物質を思い出させるもの」と「笑い」を表現します。

さまざまな理論があるということは、思わず笑うという行為にさまざまな理由があるということでしょう。しかし、さまざまな笑いの理由に共通する、さらに深い理論があるのかもしれません。「笑いの大統一理論」が解決される日はくるでしょうか。

参考文献
宇津木聡「笑いと涙のもとは対人関係にあり」『Rikejo』第5号
羽鳥徹哉「笑いの本質、分類、意義」『笑いと創造 第一集』
アンリ・ベルクソン『笑い』
苧阪直行『笑い脳』
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コークスメーカーが負極材事業に新規着手、日本コークス工業――リチウムイオン電池負極材のメーカー動向(10)


石炭を空気遮断のうえ高温で分解し、期待の成分をとりのぞきます。残った固体は光沢のあるコークスとなります。冶金材料として、また、鋳物や合金鉄用の燃料として、さらには中華料理の燃料としても、コークスは使われます。

このコークスを製造してきた企業が、日本コークス工業です。同社は、コークスのほか、石炭、化工機、資源リサイクル、物流などの各種事業をおもに行っているメーカーです。なかでも、コークス事業を事業の中核としてきました。

日本コークス工業は、三井グループ系の企業で、1889年に三井組が官営三池炭坑の払い下げを受けたことが沿革のはじめとなっています。国内石炭採掘事業からは、1997年に撤退しています。

2010年4月に、住友商事との合弁で、リチウムイオン電池負極材の製造や販売を目的とする「日本パワーグラファイト」という企業を設立しました。資本金は2億円で、出資比率は日本コークス工業60%、住友商事40%です。

日本パワーグラファイトが製造する負極材は、電気自動車やプラグインハイブリッド車用のリチウムイオン電池、それに携帯電話やノートパソコン用のリチウムイオン電池などに使われるとされています。

日本パワーグラファイトは、2011年2月、福岡県北九州市若松区内の響灘臨海工業団地に負極材の新工場を新設し、生産能力を従来の年300トン規模から年700トン増強し、合計で年1000トン規模にすると発表しました。敷地面積は9000平方メートルで、稼働開始は2012年3月としている。経済産業省の2010年度「低炭素型雇用創出産業立地推進事業」の補助対象事業にも採択されています。

日本コークス工業が発表している「2013年3月期中間期 決算説明資料」によると、リチウムイオン電池負極材の事業は新規事業の位置付け。「新規事業として事業環境を見守りつつ、拡大に努める」としています。つづく。

参考記事
日本コークス工業 2011年2月28日付「『日本パワーグラファイト』の『リチウムイオン二次電池用負極材』新工場建設について」
参考資料
日本コークス工業「2013年3月期中間期 決算説明資料」
| - | 23:58 | comments(0) | trackbacks(0)
グルテンでコシ、でんぷんでモチモチ……小麦から麺へ


細ながいかたちをしている麺を見れば、だれもが「麺だ」と認識することでしょう。しかし、麺が麺になるより前の段階では、麺はつぶつぶのかたちをした粉の状態でした。どのように、粉は麺へとかわっていくのでしょう。

人びとが食べている麺の多くは「小麦」でできています。小麦はイネ科の作物で、一粒系、二粒系、普通系とあるなかで、普通系のパンコムギがもっとも多く栽培されています。麺でいうと、普通系の小麦はパスタ、二粒系の小麦はうどんやそうめんの原料となります。

小麦粉には「グルテン」というたんぱく質が含まれています。グルテンは、さらに「グリアジン」と「グルテニン」というふたつたんぱく質で構成されています。グリアジンはどちらかというと丸く、グルテニンはどちらかというと線状のかたちをしており、水分の介在でグリアジンとグルテニンがからまって網目構造をとるようになると、グルテンになるのです。

このグルテンは、麺のコシを強くするのに一役買っています。グルテンを多く含む小麦粉を「強力粉」といい、あまり含まない小麦粉を「薄力粉」といいます。ことばの語感からも、強力粉はコシが強そうです。

ということで、小麦粉が麺になるには水分が大切になります。小麦粉に水分を加えることを「加水」といいます。小麦粉のなかに、水分をどれだけふくめるかを率で表わしたものを「加水率」といいます。水を加えるほど、グルテンがよくできるため、加水率の高い麺はやはりコシの強い麺になります。

このほか、小麦には炭水化物であるでんぷんもふくまれています。このでんぷんがお湯の中で熱せられると、でんぷんが糊のようになる「アルファ化」が進み、麺にモチモチ感が加わるのです。

これらの小麦が麺へとかわっていく過程は、洋のパスタ、中のラーメン、和のうどんで、ほぼ共通しています。

参考ホームページ
河原太八「『ホワイトナイル』ビール(黄桜)のエンマーコムギ(改訂版)」
ローソン「つけ麺文化研究所 麺の基本4要素」
| - | 23:50 | comments(0) | trackbacks(0)
住友グループの負極材事業を整理、中央電気工業――リチウムイオン電池負極材のメーカー動向(9)



リチウムイオン電池の負極材メーカーの動向を、企業のプレスリリースや中期経営計画、各種報道の情報をもと伝えています。

中央電気工業は、合金鉄事業、焼却灰リサイクルなどの環境事業、2次電池負極材などの機能性材料事業、それに土木建築事業などを手がけているメーカーです。1906年、越後電気の前身である上越電気が設立したことが会社の歴史の発端となっています。1922年に越後電気と松本電灯が合併して、中央電気工業となりました。

リチウムイオン電池負極材事業は、2009年まで住友金属工業が行ってきた事業を承継したものです。2009年10月、二社は、中央電気工業が住友金属工業の黒鉛事業を継承し、住金モリコープを100%子会社化することで、住友金属グループ内に分散している2次電池材料事業を集約・統合すると発表しました。中央電気工業は、リチウムイオン電池負極材を機能性材料事業に入れています。

この再編により、住友金属工業の15人の従業員が中央電気工業に移動しました。また、住金モリコープの従業員は当時51人。住友金属工業から事業を継承したねらいとしては、経営資源の集中により研究開発を効率化させることがあると見られます。中央電気工業にとって住友金属工業は筆頭株主に当たります。

2010年1月には、中央電気工業が負極材として使う黒鉛の生産能力を、新製法により2015年にも4倍に増やすということが報じられました。このときまでに、中央電気工業は大阪市の大阪黒鉛工場で、月100トン規模で黒鉛を生産しています。

報道では、敷地に余裕がないため、総額20億円を投じて、実証プラント建設し、月産400トン体制を整えるといいます。黒鉛の生産設備が導入されるのは新潟県妙高市の妙高工場。電池会社からの再評価を経て、製造工程を変更すると報じられました。また、妙高工場ではニッケル水素電池用の負極材の増産工事も行われました。つづく。

参考文献
中央電気工業「住友金属グループの二次電池材料事業の戦略的統合について」
参考記事 2010年1月5日付「リチウムイオン電池負極、黒鉛生産能力15年に4倍、中央電気、新製法で」
| - | 23:32 | comments(0) | trackbacks(0)
「つま先で着地」が幅を利かす時代に


皇居のまわりや川ぞいなどを走ることが、長いこと流行になっています。そして、流行が続けば続くほど、「こう走るとよい」といった走りかたをめぐる“論争”も長びいているようです。

その論争とは、「かかとで着地したほうがよいか、つま先や足裏全面で着地したほうがよいか」というもの。

走るとき、左足で地面をけると、右足が前に出ます。そして、宙に浮いた右足を地面につけます。おなじく、右足で地面をけると、左足が前に出ます。そして宙に浮いた左足を地面につけます。

これを連続的にくりかえすことで人は前に走っていきます。

足を地面につけるとき、最初に地面と接する足の部分はどこであるのがよいのでしょう。この問題をめぐって、「かかとで着地したほうがよい」という論と、「つま先や足裏全体で着地したほうがよい」という論があるわけです。

どちらのほうが「よい」のか。この論を考えるとき「なにをもって理にかなった走りかたとするか」を考えることは大切です。

走るときに目指すべきこととしてよくいわれるのは、効率よく走るということ。エネルギーをむだには使わず、走ることにエネルギーを集中的に使えば、よりすくないエネルギーで走ることができます。

効率のよい走りを考えたとき、かかとから着地することは得策ではないといわれます。かかとから着地して、つま先で地面をけりだす一連の動作では、足裏と地面との摩擦力が大きくなり、その分、むだなエネルギーを費やすからです。感覚的には「ズリッ、ズリッ」と地面を擦りながら走るといったことでしょうか。

この点、つま先または足裏全体で着地するときは、「コツッ、コツッ」とすくない摩擦力で走ることができるとされています。

「体に負担をかけずに走ることが理にかなった走りかた」とする考えかたもあります。マラソンなどの長距離走は、体への衝撃が蓄積されていくもの。その衝撃をすこしでもすくなくすることは、けがを防ぐことにもつながります。

体への負担を考えたときも、かかとから着地するのは得策ではないといわれます。ベンチから飛びはねて地面に着地するときを考えてみるとわかります。かかとから着地をするとかかとの骨からからだに対して相当な衝撃がからだに伝わるはずです。

いっぽう、つま先から着地したときは、つま先のしなやかさが緩衝材のような役割をしてからだへの衝撃を抑えてくれます。これと同様のことが、走っているときの着地にもいえるというわけです。

これらの理由で、じょじょに「着地はかかとでするよりも、つま先や足裏全体でしたほうがよい」という考えかたが、走者のあいだに浸透してきています。

参考ホームページ
フィットネスレポート「無理なく続けるランニング ランニングフォームVOL.3 着地」
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
韓国企業と合弁で量産開始、JX日鉱日石エネルギー――リチウムイオン電池負極材のメーカー動向(8)



リチウムイオン電池の正極材料メーカーを紹介した記事のなかで、JX日鉱日石グループのJX日鉱日石金属を紹介しました。負極材料のほうを、おなじグループのJX日鉱日石エネルギーが手掛けています。

JX日鉱日石エネルギーは、石油製品の精製・販売、ガス・石炭の輸入・販売、石油化学製品の製造・販売、電気の供給、それに燃料電池や太陽電池や蓄電装置などの開発・製造・販売を主な事業内容とする企業です。主力製品に、家庭用燃料電池「エネファーム」が、また、主力サービスにガソリンスタンドの「エネオス・サービスステーション」があります。

1888年、新潟県刈羽郡に日本石油会社が創立され、また、1905年、赤沢銅山が久原房之助に買収されました。この二社を源流とする新日本石油とジャパンエナジーが2010年7月、石油精製販売事業を統合・再編し、JX日鉱日石エネルギーとなりました。

リチウムイオン電池負極材関連事業は、韓国の石油大手の共同事業という形で開始しました。

日鉱日石エネルギーは2011年2月、韓国のGSカルテックス社との合弁企業として、2010年4月に韓国亀尾市に設立したパワー・カーボン・テクノロジー社にて、リチウムイオン電池負極材事業を行うことに合意したと発表しました。両社の出資比率は50%ずつです。

発表によると、山口県和木町にあるJX日鉱日石エネルギー麻里布製油所で製造される石油コークスを、パワー・カーボン・テクノロジー社で約1000℃で熱処理することで、リチウムイオン電池用負極材としてソフトカーボンを製造するといいます。

ソフトカーボンは、黒鉛に比べて結晶性が低く、負極材としては放充電速度が優れているとされる素材です。

2012年5月にJX日鉱日石エネルギーは、パワー・カーボン・テクノロジー社の竣工式を行い、7月から負極材の商業生産を開始することを発表しました。「早期に販売数量2,000トン/年を達成し、更なる拡大を目指す」としています。つづく。

参考記事
2011年2月28日付「GSカルテックス社とのリチウムイオン電池用負極材の合弁事業について」
JX日鉱日石エネルギー 2012年5月24日付「パワー・カーボン・テクノロジー社 リチウムイオン電池用負極材工場の竣工式について」
日本経済新聞 2011年2月28日付夕刊「車載電池部材、JXエネ、韓国で生産、GSカルテックスと合弁」
| - | 23:54 | comments(0) | trackbacks(0)
ふだんの姿はふだんの日に


11月、大学をはじめとする学校の「オープンキャンパス」がいたるところで行われています。

オープンキャンパスは、その学校に入学を希望している人たちに対して、大学のキャンパス内を公開して、学校により興味をもってもらおうとする催しもの。模擬授業をおこなうほか、入学試験についての相談会も開いたりして、大学側は盛り上げようとします。学園祭とおなじ時期に行うことも多いため、いっそう盛り上がることでしょう。

しかし、受験生や家族たちにとって、オープンキャンパスでの“盛り上がり”が、しばしば大学選びの不都合になることがあるともいいます。

大学側としては、受験生や入学生を確保するため、自分たちの魅力を存分にアピールして「この大学に入ってみたい」と思わせることが、オープンキャンパスの目的としてあります。

人間関係でも、自分を人にアピールするための特別な日となれば、その人はふだんしないような服で着飾ったり、ふだん行かないような飲食店に予約を入れたり、話が盛りあがるねたを準備したりしがちなもの。

大学のオープンキャンパスでも、おなじように特別な準備があると考えてよさそうです。たとえば、模擬授業ではその大学のエース級の人気講師が講義をすることがじゅうぶんに考えられます。

特別な日に振るまう姿と、ふだんの日に振るまっている姿がおなじかどうか。これを見極める方法はかんたんです。ふだんの日に振るまっている姿を見ればよいのです。

大学によっては、一般に公開している大学付属博物館などがある関係上、平日のふだんの授業がある日に一般の人も入ることができるところも多くあります。また、一般の人が入れない場合も、「ふだんの大学の様子を見学したいのですが」とあらかじめ大学側に相談すれば、応じてくれる場合もあるでしょう。

もちろん、オープンキャンパスで「盛りあがっているときの大学や学生の雰囲気」を味わうことも、むだではないでしょう。しかし、大学であれば4年以上、高校であれば3年、その学校と長く付き合っていくのですから、ふだんの姿を実感して大学選びを決めるのは得策といえましょう。
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電炉向け炭素を負極材に、昭和電工リチウムイオン電池負極材のメーカー動向(7)


昭和電工は、石油化学事業、化学品事業、無機事業、アルミニウム事業、ハードディスク事業、エレクトロニクス事業、先端電池材料関連事業などをてがける化学工業メーカーです。1908年に、日本沃土の母体となる房総水産が設立されたのが、沿革の端緒となっています。

リチウムイオン電池の材料を手掛ける先端電池材料部では、負極材、カーボンナノチューブ、カーボンコート箔のほかに、燃料電池向けのカーボンセパレータやカーボン集電板などの開発・製造も行っています。

1996年に、正極材および負極材の導電性助材としてカーボンナノチューブを販売してきましたが、開発時に培ったリチウムイオン電池の評価技術や、人造黒鉛電極事業における高温黒鉛化技術などを活用し、「リチウムイオン二次電池用人造黒鉛負極材」(SCMG:Shape-Controlled-Micro-Graphite)の製造も行ってきました。

「SCMG」は、電炉向けに使う黒鉛電極の原料となる結晶状の炭素素材を使った負極材。従来比1.5倍の電池寿命と、1.5から2倍の急速放充電特性を昭和電工は特徴にあげており、環境対応車向け電池や蓄電池といった大型リチウムイオン電池に適しているといいます。すでに、量産されている電気自動車にも採用されているといいます。

製造拠点は長野県大町市の大町事業所で、2009年までの生産能力は年1000トンでした。同社は2009年4月、急速放電特性やサイクル寿命を向上させた黒鉛負極材の開発を発表し、大町事業所の生産能力を年1000トン増やし、年2000トン規模にするとしています。2012年までに、負極材の生産能力増強のため総額20億円の投資を行う見込みとも、発表しています。

2010年12月には、2015年までの中期経営計画を発表しました。その中で「事業展開の加速と強化」をはかる事業として、ハードディスク、発光ダイオード、石油化学とともに電池材料を据えている。具体的には、「大型リチウムイオン電池向け高性能負極材を販売開始」としています。

最近では、2011年7月にも、SCMGのさらなる増強を発表しています。1年間での生産能力を、この時点では「1000トンから3000トンへ」増強すると発表しています。これにより、「粉砕工程など各工程のボトルネック」が「解消」されるともしています。つづく。

参考記事
昭和電工 2011年7月19日付「リチウムイオン二次電池部材の能力増強について 負極材SCMG、正負極添加剤VGCF、電池包材用アルミラミネートフィルムを増産」
参考文献
昭和電工 2010年12月1日発表「中期経営計画(2011年〜2015年 ペガサス」
| - | 21:40 | comments(0) | trackbacks(1)
ケータイに電話がかかってくるとうろうろしだす
駅のホームや企業のロビーなどに、携帯電話で通話しながらあたりをうろうろ歩きまわる人がいます。

「はい、もしもし」「ああ、どうもお世話さまです」「ああ、あの件ですか、いや、じつはですね……」と、通話相手に話しかけながら、あたりをあっちへ向かい、こっちへ向かい、またあっちへと向かいます。駅のホームでは、狭い通路を行ったり来たりする人もいます。

ある人が、携帯電話で話している人の動きから動線をつくってみることにしたそうです。すると、つぎのようになったようです。



なぜ、人は携帯電話で通話しているとき、うろうろ歩きまわるのでしょう。

歩きまわる通話者は、たいてい自分の携帯電話に電話がかかってきた人のようです。自分のほうから電話をかけている人が、通話が始まってから歩きまわりはじめるというのは少ないようです。

ここには「その場から離れたい」という心理が働いているのかもしれません。電話をかけるほうの人は、人のいないところを探してからかけるため、その場にとどまります。しかし、電話がかかってくるときは場所を選べません。公共の場での通話は、自分自身も聞かれるのは嫌だし、人にも迷惑に思われがちです。そのため、電話がかかってくると、まず、その場からは離れようとするのでしょう。

とはいえ、駅や企業のロビーでは、その場から離れたところにも別の人がいます。すると、新たに現れた人(ほんとうは自分から近づいていった人)からまた遠ざかるのでしょう。向こうへいったら、こっちへ戻ってくるのは、このような心理なのかもしれません。

そのような通話者が本当に人のいないところまで行くかというと、そうはなりません。駅のホームから改札を経て外に出たり、ロビーからドアを開けて外に出たり、といったことまではしません。かぎられた場所のなかであっちへ行ってはこっちへ戻り、をくりかえすことになります。

携帯電話で通話しながら歩いているとき、本人は無意識で気付いていないことは多そうです。話の内容に集中すると、自分が見ている景色や、自分がとっている行動には心が行かなくなります。注意散漫です。

「ヤフー知恵袋」には、「携帯に電話があると、事務所なのに、必ず、うろうろする上司が居ます。社員の周りを回って、みんな困っています。上司に、何と言葉をかければ気がつくでしょうか」といった主旨の質問があります。

質問に対して、回答者から「一回同じことをしてみればどうでしょうか」という提案があり、質問者は実際にやってみたようです。

「やってみました。無反応でしたが、仕事終わりで2時間ほど説教されました」とのことでした。orz。

携帯電話会社はホームページなどで「歩行中の使用は、周囲への迷惑になるとともに大変危険です」と使用上の注意を掲げています。

「歩行中の使用」に加えて、「使用中の歩行」にも注意を促したほうがよいのかもしれません。「携帯電話がかかってきたとき、歩き出すのは周囲の迷惑になるとともにあまり意味のない行為です」と。

参考ホームページ
ヤフー知恵袋「携帯電話の通話中、何故歩き回るのでしょうか?」
NTTドコモ「携帯電話のマナー」
| - | 22:30 | comments(0) | trackbacks(1)
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