2012.11.30 Friday
「『小麦粉の芸術作品』、うどんの食感を科学する」
日本ビジネスプレスのウェブニュースJBpressで、きょう(2012年)11月30日(金)、「『小麦粉の芸術作品』、うどんの食感を科学する」という記事が配信されました。この記事の取材と寄稿をしました。
うどんの麺に必要な材料は、小麦と水と塩くらい。それにもかかわらず、麺によりうどんの味の完成度は大きく変わってきます。しょうゆで食べるかだしで食べるかといったつゆの問題はあるとしても、麺の食感が味を左右する大きな要素になっています。
うどんの麺といえば「コシ」。「コシ」といえば讃岐うどん。ということで、記事では香川県宇多津町に本社をおくうどん製麺機メーカー社長の藤井薫さんに、「うどんの食感」についての研究成果を披露してもらっています。
藤井さんは、商売として製麺機製造業を始めました。仕事に熱心なのでしょう、「製麺機事業の本質は麺の美味しさを極めることだと考え、どのようにしたら美味しい麺ができるかを研究してきました」と言っています。
その成果から生み出された結論のひとつは、「うどんにも二段熟成をするとよい」というもの。
小麦粉をねったあとに一度、うどんの生地を寝かせるのです。そして、その後、うどん生地を圧して鍛えたあと、もう一度、うどんの生地を寝かせるのです。「寝かせる」というのは、うどんをある一定の温度と時間で、そのまま置いておくこと。
こうすることで、一回目の熟成では、うどんから気泡が抜けて透明感を保つ効果や、緊張したグルテンを緩ませる効果などが、得られるといいます。
さらに、二回目の熟成では、生地の酵素活性が促されるため、生地の状態がよくする効果が得られるといいます。
藤井さんは、かつてのうどんが濃い色をしていたことから、熟成という発想を得たようです。濃い色のうどんは、全粒粉によるもの。全粒粉入りのうどんは、酵素活性が早く進みます。香川県には「朝練り即打ち」といううどん打ちの鉄則さえありました。
しかし、いまのうどんの色は白。酵素活性を早く進める全粒粉が含まれていません。そのため、酵素活性を待つ目的で、うどんを寝かせるわけです。とくに二回目の熟成にこのことはいえるといいます。
こうした発見は、長きにわたりうどんの研究を続けてきた成果なのでしょう。ほかにも藤井さんは、「コシ」の秘密や、塩分の秘密を語っています。
これらの話を聞いてから食べるうどんの味は、またちがったものに感じられるかもしれません。
「『小麦粉の芸術作品』、うどんの食感を科学する うどんの味を追究せよ!(後篇)」はこちらです。
讃岐うどんの歴史をたどった前篇「先人の経験が生み出した讃岐うどんの黄金レシピ うどんの味を追究せよ!(前篇)」はこちらです。