2012.06.30 Saturday
白い粉と白い粉で黄色い麺
中華そばの麺は、うどんやそうめんなどの麺にくらべると黄色みがかっています。なぜでしょう。
よく思われるのは、卵の黄味の色ではないかということ。中華麺には原料の小麦に卵を含めた「卵つなぎ麺」といった麺もあります。しかし、卵つなぎ麺でなくても、麺は黄色みを帯びています。
中華麺が黄色いのは、「かんすい」という食品添加物が使われているからです。
「かんすい」には対応するさまざまな漢字があり「鹸水」「礆水」「鹻水」「堿水」「梘水」「碱水」などと書きます。
麺をつくるとき、原料の小麦粉に水を混ぜるだけでは、滑らかさは出るもののコシは出ません。なお麺のコシとは、しっかりした粘りや弾力性のことで、麺を断面図で考えたときの外側に水分が多く含むものの内側に水分があまり含まないという水分の勾配などで生まれるものです。
べつのほうほうとして、小麦粉を食塩水でこねて麺をつくる方法もあります。しかし、この場合、コシは出るものの、やわらかさはあまり出ません。
そこでかんすいの登場となります。小麦粉に水とともにかんすいを入れて混ぜると、小麦粉の「グルテン」とよばれるタンパク質に作用して、やわらかさとコシの両方が生まれるのです。なお、かんすいは、「梘水」などと「水」の字を使いますが、いまつくられているかんすいはほとんどが白い粉状のものです。
小麦粉は白く、かんすいも白いのであれば、なぜ中華麺は黄色みがかるのでしょう。ここには化学反応があります。
小麦のなかには、フラボンという物質が含まれています。このフラボンに色はついていません。ところが、小麦粉のなかにあるフラボンと、かんすいの成分である炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ性の物質が混ざると、フラボンの構造のうちH基やOH基とよばれるところに、原子の置き換わりが起き、これによりフラボンが黄色くなるのです。
かんすいは、麺にやわらかさとコシの両方をあたえるためのもの。しかし、かんすいにより結果的に黄色みがかった麺の色もまた、ラーメンの風味の大切な要素になっています。
参考文献
「かんすいの市場・法規制」『月刊フードケミカル』2011年第8号
参考ホームページ
岩手らーめんデータベース「らーめんの科学」
ラーメンワンダーランド「かんすい」