2012.05.31 Thursday
降りられても乗れない電車が深夜を走る
電車の遅れについてのデータはあまり明らかにされていません。
それでも「時間帯別の電車遅延発生率」といったデータがあるとすれば、もっとも率が高くなる時間帯は午前0時などの深夜になるのは明らかです。終電車が遅れがちだからです。
終電車は、駅で接続するほかの路線に遅れがあるとき、定刻に駅を出発しません。遅れている電車に乗っている客の乗りかえを待たずに終電車が駅を出てしまうと、客が家路につけくなってしまうからです。定刻より30分や1時間も遅れて出発する終電車もあります。
終電車が大幅に遅れると、奇怪な電車と化すことがあります。
たとえば、御茶ノ水駅と千葉駅のあいだを走るJR総武線各駅停車の終電車は、遠くの千葉駅行きが0時32分発。千葉駅ほど遠くない津田沼駅行きがそのあと0時46分発。
しかし、秋葉原駅にとまる京浜東北線というべつの路線の遅い時間帯の電車が大幅に遅れると、つられてこの千葉駅行き終電車や津田沼駅行き終電車も大幅に遅れます。
まれに、総武線各駅停車の千葉駅行き終電車が、後発の津田沼駅行き終電車の発車定刻より遅い時刻に秋葉原駅を出発するといったことも起きます。たとえば、午前1時、秋葉原駅発。
この場合、秋葉原から先の駅で津田沼駅方面の電車を待っている人たちにとって、この千葉駅行き終電車が津田沼駅行き終電車を兼ねることになります。この千葉駅行き終電車は、ふだんの津田沼駅行き終電車よりも遅い時間帯を走るわけですから。
とはいえ、津田沼駅行き終電車が走らないわけではありません。ダイヤグラムの編成上、千葉駅行き終電車が秋葉原を出発したあとにも、秋葉原駅に大幅な遅れをもって到着する京浜東北線の終電車があるからです。
そのため、津田沼駅行き終電車が定刻より1時間7分遅い、午前1時53分に秋葉原駅を出発したとします。
すると、この津田沼駅行き終電車は、秋葉原駅で乗りこんだ客を乗せながらも、回送扱いになります。1本前の千葉駅行き終電車が、ふだんの津田沼駅行き終電車の役割を果たしたとみなせるため、秋葉原より先の駅で津田沼駅行き終電車に客を乗せることはありません。つまり回送扱い。
実際、各駅の表示板でも「回送」と表示されます。
津田沼駅行きでありながら……
回送扱い
「終電車でありながら回送電車」という電車に客は乗って家路につきます。降りれても乗ることはできない奇怪な電車がつぎいつ走るか、だれも予測することはできません。