2011.06.30 Thursday
病院存続のため「3020運動」
スーパーマーケットがきゅうりやトイレットペーパーの値段を決めてよいのとちがって、病院が勝手に「入院した患者にいくら払ってもらう」とか「X線による透視診断をしたから患者にいくら払ってもらう」といった値段を決めることはできません。
病院が行う医療全般について、それぞれの行為に点数が決められています。「1点が10円」として、その点数を積み重ねることにより、病院が得られる報酬が決まるのです。これは「医療報酬制度」とよばれています。
一部の病院では、診療点数を上げるため、「3020運動」という試みが行われています。
「3020」は「30」と「20」にわかれます。
まず「30」の意味は「初診の紹介率30%以上をめざす」というもの。病院の外来に訪れる患者のなかには、ほかの医療機関から「あの病院で治療を受けると効果的だろうから紹介します」と紹介を受けて訪れる人もいます。また、救急車などで救急外来などに運びこまれる患者もいます。これらの患者数が、初診患者のうち何パーセント占めるか、その数値が紹介率となります。
病院が紹介率30%以上の実績をもっていると、入院基本料という診療報酬の基本料金に加えて、いろいろな診療得点が加算されるのです。「1日あたり紹介外来特別加算50点」「1日あたり急性期入院加算155点」など。そのため、「紹介率30%以上をめざそう」となるわけです。
つぎに「20」のほうは、「平均在院日数20日以内をめざす」というものです。「在院日数」というのは患者が入院している日数のこと。この日数をより短くしていこうというわけです。
患者を入院させるときには、入院基本料という診療報酬が病院に入ります。この入院基本料は、わりと点数が高いめ、1人の患者を長く入院させておくよりも、より多くの患者を入院させるほうが、全体としての診療報酬を得やすくなるわけです。
しかし、過度に「20」へのとりくみが進みすぎると、患者を追い出すことになりかねません。このあたりはバランスが大切となりそうです。
病院の収入の大部分が診療報酬の制度で決まるのですから、病院側はいかに診療点数を上げるかに心血を注ぐわけです。もちろん、患者の病気を治すということは大前提にありますが、そのためには病院が存続しなければなりません。
参考文献
高知県医労連「診療報酬の仕組み」
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