2010.06.30 Wednesday
「仕上げは朝にやってくる」
朝というと、たいていの人にとって一日の仕事などがこれから始まろうとする時間帯です。しかし、朝に“しあげ”がなされるできごとが、人の体のなかでは起きるといいます。
朝の7時ごろから9時ごろまでの時間帯は、脳卒中で倒れる人がとりわけ多いといわれています。
脳卒中は、脳の血管の異常で、細胞が死んでしまう病気。具体的な病気としては、血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れる脳出血がおもにあります。高血圧や、脂質異常症などの生活習慣病が脳卒中のおもな原因です。
人が脳卒中になるまでには、血管の中での過程があります。
高血圧や脂質異常症などの人の血管は、壁にプラークというどろどろした脂肪のかたまりが引っかかりやすくなっています。プラークが壁にじょじょにこびりついていくと、ぼろっとはがれるときがあります。
プラークがはがれた壁には、血小板という血液の成分(上の写真)が寄ってきます。皮膚の傷ついたところに集まって修復しようとします。皮膚から血が出たとき、かさぶたができるのは血小板の働きによるもの。これと似たことが、プラークがはがれたあとの血管の壁でも起きるのです。こうしてできた固形物を、血栓といいます。
かさぶたを想像すればわかるとおり、血小板が集まった表面はかたくなります。これと似たものが血管の壁に血栓としてできるわけです。血管は血液の通り道。道の途中に堅い血栓ができれば、血が流れるじゃまとなります。
そして、この血栓で血管が詰まると、脳梗塞となり、それより先の細胞に酸素や栄養が運ばれなくなり、細胞が死んでしまうわけです。半身不随などの重い後遺症が起きる場合があります。
プラークがはがれて血栓ができるという現象が起きる時間帯として多いのが朝です。人は朝、目覚めると活動するために自然に血圧が急に高くなります。
血圧が高くなると、血の流れ方が急に速くなり、これがプラークをはがす引き金となります。
夜から朝にかけて、血管の内側にじょじょにたまっていったプラークがぼろっとはがれて血栓ができ、脳卒中が起きる。この「仕上げ」の作業が行われるのが、朝というわけです。
「朝の仕上げ」を考えれば、朝の急激な活動はなるべくなら避けたいところ。しかし、通勤ラッシュやきょうもあしたもつづきます。
| - | 23:59 | comments(0) | -