2010.05.31 Monday
じゃんけんで勝つのを見るだけで脳は反応
かつて「アメリカ横断ウルトラクイズ」という番組で、海外へむかう飛行機に乗れる参加者をじゃんけんでしぼるというゲームがありました。成田空港で荷物まで用意しながら、じゃんけんで負けると日本から“お見送り”となります。
自分と相手の勝ち負けを、その場で決めるためのかんたんな方法がじゃんけんです。絶対的な運で勝負が決まるのでなく、絶対的な実力で勝負が決まるのでもない点がこの方法の特徴といえます。
じゃんけんをする本人であれば、多くの場合、勝てばうれしさを、負ければくやしさを感じることになります。いっぽう、じゃんけんする本人でなくても、ただ勝負が決するところを見るだけで、脳は反応してしまうもののようです。
こんな実験結果が報告されています。映像が映しだされる画面で、下からと上から手を映し、このふたつの手がじゃんけんをします。ふだん人が目で見ている視界とおなじように、下の手は“自分の手”、上の手は“相手の手”と見立てているわけです。
映像を見た被験者の脳がどのように活発するかを実験で見ました。脳が活発に反応するかどうかは、しばしばヘモグロビンという物質の量で調べられます。脳の血のなかのヘモグロビンが濃くなるほど、脳は活発に反応していることになります。
実験の結果、下の手が勝ったときは、脳のなかのヘモグロビンという物質の量が脳の血液に多く含まれることになりました。いっぽう、下の手が負けたときは、逆にヘモグロビンの量は下がりました。また、あいこの場合は、脳の血液のなかのヘモグロビンの量は勝ったときと負けたときの中間となりました。
人の脳には、「ミラー細胞」とよばれる細胞があります。相手が泣いたり、笑ったり、怒ったりしている姿を見ると、あたかもそれが自分の身に起きているかのごとく反応する脳の細胞です。
この実験では、じゃんけんで勝つという望ましい状況を見たとき、とくに脳のミラー細胞の動きは活発になるということを示しているようです。
参考文献
阿部良輔ら「他者運動の結果がミラーシステムの活動に与える影響」
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