2010.04.30 Friday
チェーン店で活かされる物理現象
全国展開しているチェーン飲食店でラーメンなどを食べるとき、どの店のラーメンを食べてもほぼ味はかわりません。客の「いつでもどこでもあの味を」という求めに対して店側は答えているわけです。
どの店舗でもおなじ味を保つのにはどうすればよいのでしょうか。まったくおなじ分量の調味料を入れることを定めたレシピをつくり、全店舗が徹底的にそれを守るのも手でしょう。しかし、料理は人がするもの。微妙な調味料の入れかたのちがいも味に反映されそうです。
客の視界に入らないようなところ、あるいは客が店に入っていない時間帯で、「屈折計」や「濃度計」とよばれる道具を使って味を確認することを決めているチェーン店もあります。
屈折計は、液体の濃度をはかるための器具です。利用するのは、“光の屈折”という自然現象です。
ビーカーに入れた割り箸などの棒を水に入れると、水の上と水の下では棒の角度が異なって見えます。さらに、砂糖や塩などを入れてみると、棒の曲がり具合がさらに大きくなることがわかります。小学校や中学校の理科の実験でやった方もいるかもしれません。
屈折計はこの光の屈折の原理を利用したもの。ハンディなものは、小さな望遠鏡のようなかたちをしています。筒のような形の片側に液体の濃さをはかる心臓部があり、もう片側には眼で目盛を覗く接眼面があります。
次のような使いかたをします。
ラーメンの汁など、濃さをはかりたい液体をスプーンなどで少しとって、屈折計の採光板という板に数滴たらす。
採光板を閉じて、反対側の接眼面からなかを覗く。なかには目盛があり、目盛の高さにより濃度の高さを判断する。以上。
液体をたらす採光板はプリズムというガラスでできています。プリズムは、調べたい液体より大きな屈折率があります。
薄い液体をプリズムに垂らすと、液体とプリズムの屈折率の差は大きくなります。屈折率の差が大きいと、液体とプリズムの境目に入ってくる光の曲がり具合は比較的大きくなります。
いっぽう、濃い液体をプリズムに垂らした場合、液体とプリズムの屈折率の差はそれほど大きくなりません。屈折率の差が大きくないと、液体とプリズムの境目に入ってくる光の曲がり具合は小さくなります。
この違いは、屈折計の反対側の接眼面から、眼で確認することができます。液体とプリズムの境界面が、高さになって表われるのです。そこには目盛がついていて、具体的に液体の濃さをはかることができます。
どのような液体でも薄い・濃いは目盛に反映されるので、このしくみは塩分をはかるだけでなく、果物の甘味をはかる糖度計などにも使うことができます。
チェーン店に入って店員が小さな望遠鏡のようなものでなにやら覗きこんでいるのを見た場合、それは店員が味の濃さをはかっているところを覗き見することができたことになります。
参考ホームページ
ウエダ・テクニカルエントリー「研削液濃度管理用屈折計(UTE-MASTER-10M)の取り扱い方法」
アタゴ「製品マメ知識」
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