2010.03.31 Wednesday
書評『新エネルギー源の発見』
アマゾンなどのインターネット書店で本を買うと、想像していた内容とかなり異なる場合もあります。大人がこの本を注文した場合もそうなるかもしれません。「なんだ、子ども向けの本か」と。しかし、この本に限っては、それだけでは終わらなさそうです。
大きな判型、大きな活字、そして「図書館用堅牢製本図書」。この本が、学校図書館などにおかれて、子どもに読まれることをねらいとしているのは明らかだ。しかし、大人が読んでも、じつに貴重な読書体験を得られることになるだろう。
新エネルギーや再生可能エネルギーとよばれるエネルギーを中心に、その技術を誰がどのようなきっかけで発明したかが書かれある。
この本は翻訳書で、もともと英国で書かれたものだ。情報は、あまり日本人向けに加工されていない。しかし、日本人の視点に立っていない点が、かえって新鮮さを与える。
たとえば、新エネルギーがたくさん登場する中で、最初に説明があるのは風力発電だ。日本の本であれば、まず太陽光発電となりそうだが、太陽光発電は「太陽エネルギー」の項目内で、太陽熱発電の説明のつぎに出てくる。
エネルギー開発に貢献する科学については輝かしい栄光がある英国だが、こと新エネルギーの技術開発となるとあまりぱっとしない。逆に、だからこそ中立的な視点でエネルギーのことが捉えられているといえそうだ。
さらに、日本ではあまり知られていない新エネルギーの開発話もふんだんに紹介されている。「ゲサ風車」(ブレードが3枚の主流型風車)とか、「ラッセル・オール」(ラジオの技術開発から太陽電池の性質を発見した米国化学者)とか、グーグルで日本語検索をしても検索されないような固有名詞がたくさん出てくる。数ある新エネルギーの“ことはじめ”を、これほど明解に伝える本は日本にはなかったのではないか。
子ども向けだからといって決してあなどってはならない本が出版された。大人が新エネルギーの歴史をすばやく把握するのに最適の児童書だ。
『新エネルギー源の発見』はこちらでどうぞ。
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