2009.10.31 Saturday
“伝統”と“新興”のメディアが選ぶ「巨大プロジェクト」は対照的
雑誌やウェブでは、「何々の10傑」や「何々の10選」のように、「数あるもののなかからこれを選びました」という特集記事があります。当ブログでも毎年末、雑誌『サイエンス』が選ぶ「画期的科学成果」の結果を紹介しています。
この「何傑」や「何選」の選び方には、選ぶ側の文化が反映されるもの。
今年2009年、米国の科学雑誌「サイエンティフィック・アメリカン」と、同じく米国の情報雑誌「ワイアード」が、再生可能エネルギーについての趣旨の似た記事を出しました。ウェブで見ることができます。
サイエンティフィック・アメリカンの記事は6月に配信した「世界の10大再生可能エネルギープロジェクト」というもの。いっぽう、ワイアードは3月にウェブ媒体「ワイアードビジョン」で「世界最大級の再生可能発電プロジェクト5選」を配信しています。
どちらも、次世代のエネルギー供給のための巨大建設プロジェクトを選んでいるわけです。
サイエンティフィック・アメリカンは、1845年創刊。世界最古の科学雑誌。とても伝統があります。また世界で733,000部の発行部数を誇るとはいえ、やはり読者の対象は米国民が主です。
サイエンティフィック・アメリカンは、世界の10大再生可能エネルギープロジェクトとして、次の10個を紹介しました。
・米国テキサス州のホース・ホロウ風力発電所
・英国北海のリンおよびインナー・ダウジング洋上風力発電所
・フランスのランス潮汐発電所
・アイルランドのストラングフォード湾にあるシーゲン潮力発電所
・米国南カリフォルニアにある太陽光発電システム
・スペイン中央クエンカのオルメディラ発電所
・米国カリフォルニアにあるガイザース地熱発電所
・フィンランドにあるバイオマス燃料熱電併給施設アルホルメンス・クラフト
・ポルトガルのウェーブ・パーク
・中国の山峡ダム
米国、英国を中心とした、巨大なプロジェクトが並びます。また、10番目に山峡ダムが入っている点も特徴的。水力発電所も再生可能エネルギーの供給施設であることにはちがいありません。
一方、ワイアードは、1993年に創刊した比較的新しい雑誌。新しい生活様式を提案しています。「再生可能発電プロジェクト5選」はというと。
・フィリピンのレイテ島にある地熱発電所
・インドのドゥーレ近郊にあるスズロン社の風力発電所
・中国に建設予定のオランダ・エネルコン社の風力発電地帯
・インドのハリヤーナーにあるACMEグループの太陽光発電所
・中国青海省に中国科学技術発展集団有限公司と青海新エネルギー有限公司が建設予定の太陽光発電所
こちらは、再生可能エネルギーの新興が目覚ましいアジアに注目しています。記事中には、サイエンティフィック・アメリカンが紹介したホース・ホロウ風力発電所について「発電能力735メガワットのホースホロー風力エネルギーセンターに迫る規模に達している」などとしています。ただし、配信時期はワイアードのほうが以前なので、対抗意識からの表現ではなさそう。
伝統的な雑誌は大国の巨大施設を選び、新しさを売りにする雑誌は新興国の巨大施設を選びました。伝えての文化が色濃く反映されています。
『サイエンティフィック・アメリカン』「世界の10大再生可能エネルギープロジェクト」はこちらで読めます(英文)。
『ワイアード・ビジョン』「再生可能発電プロジェクト5選」はこちら(日本語)。
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