2008.08.31 Sunday
生物が“性”をもちはじめる決定的瞬間
生物には、DNAなどの入った核をもつ「真核生物」と、核をもたない「原核生物」とにわけることができます。分類的に原核生物は細菌や藍藻だけで、他のすべての生物は真核生物です。もちろんわれわれ人間も。
私たちよりももっと原始的な真核生物に「クラミドモナス」という植物がいます。緑藻に属する単細胞の鞭毛虫です。生物学の世界では、よく実験に使われる“モデル生物”のコナミドリムシとして有名です。
クラミドモナスに対して、米国の生物学者レイモンド・ジョーンズは実験でこんな“仕打ち”をしてみました。
クラミドモナスは単細胞なので、みずからの体を倍に倍にと分裂させて増やしていきます。栄養が入った液体の中でクラミドモナスを分裂させていくと、クラミドモナスはどんどん増えていきます。
ここでジョーンズはある程度まで増えたクラミドモナスを見ると、光も温度も変えずに、液体から窒素だけを取りさってしまいました。
窒素は、クラミドモナスにとっては生きていく上で必要不可欠な物質です。なぜなら窒素はクラミドモナスがタンパク質をつくりだすための素材だからです。
では、窒素を奪われたクラミドモナスは、どうなったのでしょう。
彼らは、単細胞として単体で活動するのをやめて、隣のクラミドモナスとくっつきあうようになったそうです。そして、くっつきあったクラミドモナスは、かたい殻をつくってその中に閉じこもってしまいました。
この接合したクラミドモナスは、ふたたび環境がよくなると、殻の中で2匹が4匹に分裂して、その後、殻を破って出てくるそうです。
このクラミドモナスの行動は、性のない生物が、有性生殖をしはじめる瞬間を描いているものとされています。
真核生物には、生きるために必要なDNAを1セットもつ「ハプロイド」と、2セットもつ「ディプロイド」にわけることができます。ジョーンズの行ったクラミドモナスの実験からは、生物の進化の歴史ではハプロイドからディプロイドが生まれたということがいえます。
参考ホームページ
en Special Interview「生物、この複雑きわまるもの[中]」団まりな
http://www.shiojigyo.com/en/column/0508/main3.cfm
生物史から、自然の摂理を読み解く「飢餓外圧への適応、同類合体(接合)及び生殖の登場」
http://www.biological-j.net/blog/2007/07/000241.html
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