2006.07.31 Monday
書評『スクラップエコノミー』
当ブログで何度も紹介する石渡正佳さんの著書の一つです。石渡さんは千葉県の職員。不法投棄を取り締まる「産廃Gメン」としての視点から、産業廃棄物処理業界の裏側を告発した『産廃コネクション』(200 年、WAVE出版)で話題をさらいました。
『スクラップエコノミー なぜ、いつまでも経済規模に見合った豊かさを手に入れられないのだ!』石渡正佳著 日経BP社 2005年 248p
2005年、石渡正佳氏は異動を受けて、千葉県印旛地域センターの用地課長という職に就いたそうだ。土木関連の仕事だ。
そんなこともあってか、同じ2005年に上梓した、この『スクラップエコノミー』は、土木行政などの視点で日本経済の実態を暴くといった内容。
第1部(スクラップエコノミー)では、日本の社会の特徴は、壊しては作りを繰り返す「スクラップ&ビルド」にあると指摘する。
例えば、日本人は住宅を27年経つと壊して、また新しい住宅を建てる計算になる。一方、イギリス人は100年間、住宅を壊さずに住み続けるという。
こうしたスクラップ&ビルドの社会では、おカネをじゃんじゃん投資しているにもかかわらず、いっこうに社会資本は貧しいままにとどまるという。GDP(国内総生産、Gross Domestic Product)ではなく、建設的なGDPから破壊的なGDPなどを差し引いて計算したGNW(国民総福祉、General National Welfare)こそが、真の豊かさを表す指標であるとしている。
第2部(スクラップシティ)では、地方分権の必要性にぐっと迫る。
「財源と権限を握っているが、業務を自ら執行する能力がなく、現場からの情報もない」状態の「国」と、「財源を国に依存し、法律や通達やさまざまな基準によって手足を縛られており、情報を生かして自律的な計画を立てる自由がない」状態の「地方」。この二重構造が、税金のムダ遣いを生んでいる指摘。
では、二重構造を無くすにはどうしたらよいか? ずばり「国」を捨てて、「地方」を中心とした日本にしなければならないと、石渡氏は述べる。
「地方が自前の財源を持つことによって予算執行に責任を持ち、現場のニーズに即して迅速に事業計画を立て効率的に実施できるようになり、税金のムダ遣いをなくすことができるようになるなら、地方分権は国民にとって大きな利益になるはずだ」
精神的な部分を満たすという意味で、「真の豊かさ」という言葉がよく使われる。この本では、「真の豊かさ」を精神論に落とし込まず、具体的に数値などにして示している。さらに「真の豊かさ」が、環境に負荷をかけない「持続可能な社会」づくりにも結びついていく。
地方公務員のジャーナリストとは、特異な存在に思われるかもしれない。だが、「公務員が持っている情報」を「社会に還元していくことは社会を変革するひとつのパワーになるはずだ」と考え、地方公務員個人からの情報発信をしている。著者のような存在が、型破りな存在ではなく、情報発信の時代に見合う存在となれば、それは成熟社会に一歩近づくことを意味するのだろう。
『スクラップエコノミー』はこちら。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/482224458X/249-9697270-2293966?v=glance&n=465392
『スクラップエコノミー なぜ、いつまでも経済規模に見合った豊かさを手に入れられないのだ!』石渡正佳著 日経BP社 2005年 248p
2005年、石渡正佳氏は異動を受けて、千葉県印旛地域センターの用地課長という職に就いたそうだ。土木関連の仕事だ。
そんなこともあってか、同じ2005年に上梓した、この『スクラップエコノミー』は、土木行政などの視点で日本経済の実態を暴くといった内容。
第1部(スクラップエコノミー)では、日本の社会の特徴は、壊しては作りを繰り返す「スクラップ&ビルド」にあると指摘する。
例えば、日本人は住宅を27年経つと壊して、また新しい住宅を建てる計算になる。一方、イギリス人は100年間、住宅を壊さずに住み続けるという。
こうしたスクラップ&ビルドの社会では、おカネをじゃんじゃん投資しているにもかかわらず、いっこうに社会資本は貧しいままにとどまるという。GDP(国内総生産、Gross Domestic Product)ではなく、建設的なGDPから破壊的なGDPなどを差し引いて計算したGNW(国民総福祉、General National Welfare)こそが、真の豊かさを表す指標であるとしている。
第2部(スクラップシティ)では、地方分権の必要性にぐっと迫る。
「財源と権限を握っているが、業務を自ら執行する能力がなく、現場からの情報もない」状態の「国」と、「財源を国に依存し、法律や通達やさまざまな基準によって手足を縛られており、情報を生かして自律的な計画を立てる自由がない」状態の「地方」。この二重構造が、税金のムダ遣いを生んでいる指摘。
では、二重構造を無くすにはどうしたらよいか? ずばり「国」を捨てて、「地方」を中心とした日本にしなければならないと、石渡氏は述べる。
「地方が自前の財源を持つことによって予算執行に責任を持ち、現場のニーズに即して迅速に事業計画を立て効率的に実施できるようになり、税金のムダ遣いをなくすことができるようになるなら、地方分権は国民にとって大きな利益になるはずだ」
精神的な部分を満たすという意味で、「真の豊かさ」という言葉がよく使われる。この本では、「真の豊かさ」を精神論に落とし込まず、具体的に数値などにして示している。さらに「真の豊かさ」が、環境に負荷をかけない「持続可能な社会」づくりにも結びついていく。
地方公務員のジャーナリストとは、特異な存在に思われるかもしれない。だが、「公務員が持っている情報」を「社会に還元していくことは社会を変革するひとつのパワーになるはずだ」と考え、地方公務員個人からの情報発信をしている。著者のような存在が、型破りな存在ではなく、情報発信の時代に見合う存在となれば、それは成熟社会に一歩近づくことを意味するのだろう。
『スクラップエコノミー』はこちら。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/482224458X/249-9697270-2293966?v=glance&n=465392