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子どもの夏、長いようで、短いようで、長かった。


「子どものときのほうが夏の時間を長く感じる」とは、よくいわれること。この感覚は「ジャネの法則」とともに説明されることが多いです。

フランスの心理学者ピエール・ジャネは、叔父の哲学者ポール・ジャネの発案から「年月の長さは、年齢が低いほど長く、年齢が高いほど短く記憶される」と唱えました。これがジャネの法則です。

たとえば、10歳の小学生が8月を過ごすとします。彼にとって、その年8月の31日間は、約3650日分の人生における31日。いっぽう100歳のおとしよりも同じく8月を過ごしますが、その方にとっての31日間は、約36500日分の人生における31日間。

これまでの人生に比べると、同じ31日間でも10歳の子どものほうが相対的に長くなります。これが、子どもが時間を長く感じることの理由とされています。

日本でポール・ジャネは、このジャネの法則の親として知られることが多いですが、世界的にはトラウマとよばれる精神的外傷の研究や、「精神分裂」「潜在意識」などの造語の親として知られています。

また、別の精神的作用として、なにかを覚えるような体験が多いほど、そのときの時間が長かったと感じることもあるそうです。法則名はついていませんが、仮に「初体験の法則」とよんでおきます。

たとえば、子どもにとっての8月は、虫とりをしたり、バーベキューをしたり、登校日にはプールで泳いだりと、ふだん学校でやらないことが目白押し。脳に入力するようなできごとが多いほど「あのときの時間は長かったな」と思えるのだそう。

しかし「初体験の法則」は、一見つぎの話と矛盾めいています。たとえば、工場ラインで流れてくるパンにクリームを塗るアルバイトをくる日もくる日もするとします。単調な作業の日々。よほどの甘党でもなければ「ああ、終了時刻まで長いな」と感じることでしょう。

覚えることが多いと時間を長く感じる「初体験の法則」があるいっぽうで、覚えることもない単調な作業をくりかえすと長く感じるわけです。

しかし、この二つにはちがいがあります。それは、過去をふりかえって「あのときは長かった」と感じるか、いまを起点に中心に「時間が長い」と感じるかのちがいです。つまり「覚えることが多くてあっという間に時が経っていった」という状況は、時間がたつと「あのときは長く感じた」と変化するようです。

「ジャネの法則」により、もともと子どものころの時間は長く感じられるということに加えて、「初体験の法則」から、とくに昼の時間も多く日にちも多い夏休みは、初体験のできごとがたくさんある。この二つから「子どものときのほうが夏の時間を長く感じる」を説明することができそうです。

おとなが夏を長く感じるには、日々、新しいことに取りくむしかなさそうです。ただし、新しいことに取りくんでいる瞬間は、やはりあっというまに感じてしまいそう…。
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