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量子ドットの発見でカヴリ賞


2008年から、科学の世界では「カヴリ賞」という賞が創られました。ノルウェイの科学文学アカデミー、教育省、カヴリ財団が共同でたちあげた企業が主催で、ナノ科学、天体物理学、神経科学の3部門に対して賞と賞金計300万米ドルが贈られます。

5月28日に受賞者の発表があり、ナノ科学部門では、カーボンナノチューブを発見した名城大学の飯島澄男教授と、量子ドットを発見したコロンビア大学のルイス・ブラス教授が受賞しました。

量子ドットは、とても小さな「箱」に喩えられます。一辺の寸法は10ナノメートルほど(ナノは10億分の1)。10ナノメートルというと原子数個分の大きさです。

この箱に閉じ込めるものは、電子です。

かつて電子は“粒”でできていると考えられていました。それは事実だったのですが、電子は同時に“波”でもあるということが20世紀前半にわかったのです。つまり、電子は“粒”と“波”の両面性をかねそなえているということになります。

波としての電子は波長が10ナノメートルほど。これは量子ドットの寸法とだいたい同じ。よって電子の波は、量子ドットの箱に閉じ込められると、なかなか身動きがとれなくなります。

この“身動きのとれなさ”は、電子のエネルギーとりかたに影響を与えてきます。

電子は「エネルギー準位」という座ることのできる“座席”のような位置をもっています。どの座席に座るかにより、電子がとることのできるエネルギーは変わってきます。

ふつうの環境だと、電子は長座席のどの位置にも座れるように、エネルギー準位を連続的にとることができます。

しかし、量子ドットの箱に閉じ込められた電子には、長座席は与えられず、指定席制になります。電子のとれるエネルギー準位が飛び飛びになるのです。この不思議な電子のふるまいは「量子サイズ効果」の表れです。

では、量子ドットのなかで電子はその指定席に座るのでしょう。それを決めるのが量子ドットの大きさです。箱の寸法が小さくなるほど、電子は自由に運動できなくなるため、高いエネルギー準位をとることになります。せまい檻に閉じ込められるほど、動物が力をもてあましてしまうようなもの…。

箱の寸法を変えることで、電子が座る座席(エネルギー準位)は変わります。このエネルギー準位の違いに対応させて、量子ドットは外から来る光の吸収波長を変えることができます。小さい量子ドットでは高いエネルギー準位になるため青などの短い(エネルギーの高い)波長の光を、また、大きい量子ドットでは逆に赤などの長い(エネルギーの低い)波長の光を吸収します。

この性質を応用して、太陽光発電の分野では「量子ドット太陽電池」という次々世代の太陽電池が開発されています。

量子ドットをたくさん並べて間隔を近づけると、量子ドットどうしの相互作用が起こり、光の吸収幅をいろいろととれるようになります。これまでの太陽電池では、効率よく吸収できる光の波長帯とそうでない帯がありました。しかし、量子ドット太陽電池では、どんな波長の太陽光も受けとめられるようになるため、より効率的に光エネルギーを電気エネルギーに換えることできます。

ブラス教授の発見した量子ドットは、太陽電池をはじめ、半導体などいろいろな装置に応用ができると期待されて、研究開発が進んでいます。

カヴリ賞の公式ホームページはこちら(英文)。
http://www.kavliprize.no/
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