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再生紙と新品の紙、環境の利点に大差なし


製紙会社が「再生紙です」とうたっていた紙に、古紙があまり使われていなかったことがわかりました。

ちかごろの紙では、画像のような表示のほかに、「R100 古紙配合率100%再生紙を利用しています」といった表示も見かけますね。ところが、再生紙はがきの古紙配合率を満たさなかった製品を供給した会社が、日本製紙連合会加盟38社のうち6社あったそうです。また、基準を決めていないものの誤解をあたえるような製品を供給した企業などもありました。

日本製紙連合会は、このようなことになった原因をつぎのように説明しています。
多くは、白色度・印刷適正等要求される品質基準が高まり、また、高品質古紙の入手が困難となる中で、技術的な対応ができないまま、古紙配合率の基準を守ることよりも品質を維持することを優先させたためであったということでございます。そのほかには、技術的対応が困難であることの確認をおろそかにしたまま、売上シェアを維持するために受注を行ってきたという回答がございました。
「環境のため」と、再生紙を使ってきた人にとって、この事態はいささかがっかりかもしれません。

いっそのこと、この機に、再生紙そのものがそもそも利点ばかりかといったことも考えたほうがよいのかもしれません。

まえに、日経BPオンラインで『紙のなんでも小事典』(紙の博物館編)という新書を評したことがあります。本を読みかえすと、「再生紙のメリット、デメリット」というみだしを見つけました。ちなみに、この章を書いた方は本州製紙から真丸特殊紙業へと渡った人。この2社は、このたび発表をした日本製紙連合会には加盟していません。

本では、まず「原料からパルプができるまでに使うエネルギーを計算すると、圧倒的に古紙パルプが有利です」としています。パルプとは、紙のもととなる繊維です。新しいパルプでつくった紙にくらべて、たとえば古紙9割の段ボールでつくると、使うエネルギーは15%で済むとのこと。これを読むと、やはり古紙を使う利点は高そうです。

けれども、そのつぎからは「ただし書き」や「しかし書き」が長くつづきます。

まず、新しくパルプをつくるときも、古紙からパルプをつくるときも、排出したエネルギーは再利用されています。その分もふくめて計算すると「総合エネルギー消費量の差はかなり縮小されます」。つまり、エネルギーの出入り全体のことを考えれば、新しくパルプをつくっても、古紙からつくってもそう大差なくなるということです。

「考慮すべき問題」がもうひとつあるそう。それは、古紙を使うほどパルプをつくるときに出る二酸化炭素の量が多くなるという問題。「古紙パルプだけを原料にする場合には、化石燃料由来の二酸化炭素排出量が二倍になっています」とのこと。

また、古紙を使うほうが安いと考える人もいるかもしれませんが、「とくに上質紙に用いる白色度の高い古紙パルプでは、総合的にフレッシュパルプとどちらが低コストかは一概にはいえません」とあります。このたびの問題では「技術的な対応」が追いつかなかった点をことの原因としているようです。しかし「再生紙を使わないほうが安上がりだったから」という費用面での原因はなかったのかと、疑いたくなります。

こうした偽装問題では、消費者の信頼を裏ぎったという点がかどとなります。そもそも古紙の再生そのものが行われるべきものなのかどうかを論に発展するでしょうか。

日本製紙連合会「再生紙年賀はがき等紙・板紙製品の古紙配合率等に関する実態調査について」はこちら。
http://www.jpa.gr.jp/file/release/20080125015344-1.pdf
『紙のなんでも小事典』はこちらで。
http://www.amazon.co.jp/紙のなんでも小事典-ブルーバックス-1558-紙の博物館/dp/4062575582/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1201278741&sr=1-1
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