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医学の発展に貢献する町「フラミンガム」―sci-tech世界地図(3)


米国マサチューセッツ州ボストンから西に30キロ行ったところに、フラミンガムという人口約3万人の町があります。

1948年9月、この町で医学史に刻み込まれる研究がはじまりました。

当時、米国の“国民病”は心血管疾患、つまり心臓や血管に関する病気でした。すでに高血圧や脂質異常、喫煙などが病気と関係していることがいわれていましたが、たとえば血圧がどれだけ高いと心臓病にどれだけなりやすいのかといった、数値による検証はほとんどされていませんでした。人の体には個性があるもの。ひとりの患者の病気の特徴を調べたからといって、それが多くの人に当てはめられるわけではないのです。 

そこで1948年9月、国立衛生研究所(NIH)の一部門である国立心臓肺血液研究所(NHLBI)が、一つの町をまるごと研究の対象にして、その住民の健康や病気の状態の推移を追っていこうという国家的計画を始めたのです。その舞台となったのがフラミンガム。町にあるユニオン病院にフラミンガム研究所が置かれました。

フラミンガム研究で特徴的なのが「前向き研究」とよばれる研究方法。病気になった人に「いま思えばこれが原因だったのでは」とその原因を後向きに探るのではなく、健康な人がこれからどのような病気になっていくのか、ということを追っていきます。手間とお金はかかりますが、ごくありふれた人がどんな要因でどんな病気になりやすいかが、これで分かるのです。いま医療の世界で、病気の要因という意味で使われている「危険因子」という考え方は、こうしてフラミンガム研究によりつくりだされました。

なぜ、辺鄙な町ともいえるフラミンガムが疫学研究の場として選ばれたのでしょう。それは、地元に根ざした商業や製造業が中心の町であり、住民の入れかわりがあまり激しくなかったこと、国立衛生研究所や心臓肺血液研究所があるメリーランド州ベセスダからほど近いこと、などがあげられます。

市民がフラミンガム研究に積極的に協力をする背景には、米国の医療保険のしくみも関わっているようです。米国の市民は、日本とちがってすべての人が医療保険に入っているわけではありません。疫学研究に協力しているあいだは医療費が免除されるという待遇もあり、保険に入っていない市民の協力をえやすいようです。

研究の始まりから、そろそろ60年が経とうとしています。いまでも、フラミンガム研究は続いており、研究成果は日本を含めた世界中の病気の予防や治療に役立てられています。

フラミンガム周辺の地図はこちら。中央の桃色の地がフラミンガム研究所のあるユニオン病院。


フラミンガム研究の公式ホームページはこちら(英文)。
http://www.framinghamheartstudy.org/
フラミンガムの町の公式ホームページはこちら(英文)。
http://www.framinghamma.org/

参考文献:『世界の心臓を救った町』嶋康晃著 ライフサイエンス社
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