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従業者は「期待を超える」ことをしなくてよい

写真作者:David Santaolalla

とある大手企業の広告に、「期待を超えなければ、仕事ではない」という宣伝文句が見られます。「お客さんが抱いている期待を超えたサービスを提供しなければならない」といった意味にとれます。

お客さんからしてみれば、依頼先が、自分の抱いていた「このくらいはやってくれるだろう」という期待を超えてサービスを提供してくれれば、「おお、こんなことまでしてくれるのか。ありがたい」とうれしく感じるでしょう。「ただし今回はお客さまのご期待を超えた仕事をしましたので、サービス料を追加させていただきます」などとあとから言われないかぎり……。

では、従業者の受けとめかたはどうでしょう。自分の働いている企業が世に向けて「期待を超えなければ、仕事ではない」とうたっているとしたら、従業員たちは、これをどう捉えればよいでしょう。

企業においては、従業者側と使用者側のあいだに労働契約などの契約が結ばれているはずです。つまり、労働者側が「労務を提供します」と約し、経営者側が「それなら報酬をあたえます」と約する契約が結ばれているはずです。

もし仮に、この契約に「客の期待を超えることができない場合は、仕事をしたとはみなさないものとする」と盛りこまれていれば、従業者たちは「期待を超えなければ、仕事ではない」という契約内容にのっとって仕事をすることが責務となります。つまり、労働として「期待を超える」ことを常にしつづけることが使用者側から求められているので、それに応じなければなりません。

しかし、契約内容に「客の期待を超えることができない場合は、仕事をしたとはみなさないものとする」といったことを盛りこむ企業は現実的にあるでしょうか。まずもってありますまい。労働基準法にある「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」という原則に違反するおそれさえあります。

「客の期待を超えることができない場合は、仕事をしたとはみなさないものとする」という内容の雇用契約が結ばれていないかぎり、従業員たちは客の期待を超える必要はありません。客側と企業のあいだでなされた「いつまでにこれだけのことをします」という約束がきっちり守れるようにはたらけば、従業者は「仕事をした」ことになります。

もし、「期待を超えなければ、仕事ではない」とうたう企業に就職することを考えている人は、会社説明会などの場で「御社においては、期待を超えなければ仕事とはみなしていないと聞いていますが、労働契約ではどのようになっていますですしょうか」と聞いてみたらよいのではないでしょうか。

そのときの企業側からの答えが納得の行くものであれば、その企業で従業者としてはたらくことに向いているかもしれません。

いっぽう、企業側からの答えが不十分だったり、違和感を覚えるものだったりすれば、その企業と縁はなさそうです。

参考資料
デジタル大辞泉「期待」
https://kotobank.jp/word/期待-50805
デジタル大辞泉「労働契約」
https://kotobank.jp/word/労働契約-152462
e-GOV「労働基準法」
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000049
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