科学技術のアネクドート

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通路側の2人が話しだす。窓側の2人が黙りだす。

写真作者:Cassiopeia sweet

電車で2人ずつ向かいあって座る「ボックス席」が減りつつあるといいます。じつは、ボックス席の車両のほうが、7人が横に席る「セミクロス席」の車両よりも座れる人数でも、車両全体の定員でも多くなるという話もあります。しかし、ボックス席の空間は狭いため、4人席のところを2人や3人で座ることも多く、効率がよくないと見られているのかもしれません。

もちろんボックス席は4人席ですから、4人が座ることもよくあります。たとえば、「窓側にもともといた2人づれが向かいあって座り、通路側にはあとからやってきたべつの2人づれがおなじく向かいあって座る」といったことでボックス席に4人が座っていることもよくあります。

さて、この「窓側の2人」と「通路側の2人」のボックス席では、「対話」という点では、どのようなことが起きうるでしょうか。

はじめから座っていた窓側の2人は、「3時に着くから、あと20分ぐらいだね」「そだね」などと対話をしているかもしれません。そこに、新たに通路側の2人がやってくるです。この通路側の2人は、窓側の2人よりも多弁だったとします。

「ねぇねぇ、ぼくちょっと、心配なんですけど、今度のシフト、うまくいきますかねぇ」
「あたしもそれ思ってたざ。なーんかビミョーだよねー。やっぱりあのリーダーの彼さ、リーダーっていうよりもサブで支えるほうに徹したほうがチームはまとまると思うんだよねー」
「やっぱそうですよね。ぼくもそんな気がしてて。むしろ新入りのバイトさんのほうが、いかにもリーダー役やりたそうな雰囲気だしまくってましたよね」
「うん、うん。顔に出てた! でもさ、エリマネはなぜか気に入っているんだよね、彼のこと……」

このような通路側の2人の対話が展開されているあいだ、ずっと窓側の2人は黙りこくっていました。窓側の2人が黙りこくっていたのは、この4人がけのボックス席という「小さな世界」において、通路側の2人による対話が、場の雰囲気を支配するようになったためでしょう。

ここで黙ってしまった窓側側の2人は、通路側の2人との関係性を「他人の2人どうし」として認識している以上、まちがっても「シフト」「リーダー」「エリマネ」といった、通路側が口にしていることばを発することはなかったのではないでしょうか。「通路側の2人の対話のじゃまになることはしない」「紛らわしい対話をして、ボックス席で微妙な空気をつくらない」といった自制心がはたらくためです。

その後、通路側の多弁な2人は、電車が途中の駅に到着すると、乗りかえのためボックス席から去っていきました。

そして、窓側に残された2人は、ふたたび対話を始めるのでした。「あと5分ぐらいだね」「そだね」と。

参考資料
livedoor NEWS 2018年10月21日付「減りつつある電車のボックス席 乗車人数や掃除の手間を重視か」
https://news.livedoor.com/article/detail/15477345/
はまれぽ.com「相鉄線にどうしてボックス席が採用されているの?」
https://hamarepo.com/story.php?page_no=1&story_id=2149
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