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「定員」の原則を守るか、覆すかが自治体の課題に


元写真作者:Kiyonobu Ito

台風10号では、九州をはじめとする多くの県で、けが人や停電などが生じました。(2020年)9月7日(月)正午時点で、亡くなった人の知らせはありませんが、連絡のとれない人が出ているとのことで、心配されます。

満員になってしまった避難所が相ついだといいます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19:COrona VIrus DIsease 2019)を防ぐため、自治体が、これまでより避難所ごとの受けいれ定員をすくなくしたためとされます。加えて、「今回の台風はとても強烈だ」というあらかじめの知らせがあったため、いつもより避難をした人も多かったのでしょう。

自治体のなかには、避難所に入れなかった人たちのために、避難所として考えていなかった公民館などを新たに避難所にして受けいれたといいます。台風が迫るなかでの対応は、とても大変なものだったでしょう。

避難所が満員になってしまうという課題は、これからの自然災害でも起きうるものです。

いまのところ、「避難者が定員に達していたが、さらに多くの人が避難所にやってきたため、避難者どうしの間隔を2メートル空けることをあきらめて、定員より多くの避難者を受けいれた」という知らせは聞きません。

このことからすると、多くの自治体は、定員を上まわる避難者を受けいれるよりも、新型コロナウイルス感染症対策に則った定員を守ることを優先しているものといえます。自治体がコロナ対策を踏まえて新たにつくった避難所運営の手引きに「間隔を2メートル空ける」といったことが記されたため、自治体の担当者たちはその手引きに従っているのでしょう。

とはいえ、台風が迫ってくるなかで、避難所に入れないとわかった人たちが、ほかの避難所を探して歩いたり、やむなく家に戻ったりすることには、危険がともないます。その危険は、感染症で健康や命を失うよりも、よりさし迫ったものといえます。

「ここの避難所が定員に達しているからといって、さらにやってきた人たちをとどめておかなければ、危険な目に遭わせることになってしまう。だからとどまってもらおう」という自治体の判断が必要だった、という場合はこれからも生じることでしょう。今回の台風でも、ただ公表していないだけで、そうした対応を粛々ととった自治体はあるかもしれません。

人の命の危険がともなうなか、定めたガイドラインを忠実に守るか、それともその場での判断を下すか……。自治体の意思決定者にとってはむずかしい場面がこれからも生じそうです。

リスクの見かたから判断を下せるような知見を得ていくこと。そして、「私たちはこうしました」といった自治体ごとの経験を集めること。こうしたとりくみが、感染症と自然災害を合わせて考えたうえでの被害をより減らすことにつながるのでしょう。感染症禍での住民避難という前例がほぼなかっただけに、かんたんなことではないでしょうが。

参考資料
読売新聞 2020年9月7日付「台風10号で土砂災害、住宅など巻き込まれ4人と連絡取れず…20万人が避難」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200907-OYT1T50113/
NHK NEWS WEB 2020年9月6日付「避難所満員 夜間の避難は注意」
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kagoshima/20200906/5050011919.html

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