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書評『箱根の山に挑んだ鉄路』
きょう(2020年)7月23日(木祝)、箱根登山鉄道の箱根湯本-強羅駅間で、登山電車の営業運転が再開されました。きのうは、このブログの記事で運転再開にちなんで『箱根登山鉄道125年のあゆみ』という本を紹介しました。“箱根登山電車本”ではこの本と双璧をなすともされるのが、この新書です。

『箱根の山に挑んだ鉄路 「天下の剣」を越えた技』青田孝著 交通新聞社新書 2011年刊 248ページ


神奈川県の小田原市内と箱根町内を走る箱根登山鉄道を、とくに「山を登る鉄道」という視点から紹介している。「山を登る鉄道」というのは、急峻な坂を登り下りする鉄道という意味だ。

著者は「3歳からの鉄道ファン」を自称する元新聞記者。記者らしく、自分で箱根登山鉄道に乗ってみての取材体験を第1章で伝える。しかも、山を登った先にある強羅駅から乗り、ふもとにある箱根湯本駅で降りるという、通常とは逆の伝えかたが通ぶりをにおわせる。「急な勾配を下る際に、転がり落ちようとする車両をいかに一定の速度で走らせるか。ここに運転士の技がある」と述べているように、下りのむずかしさも考えてのことなのだろう。

第1章をふくめ、話の型は、箱根登山鉄道で特筆すべき技術や歴史を軸にしつつ、国内外のほかの鉄道の関連する話題を織りこんでいくといったもの。たとえば、箱根登山鉄道は、平地を走る電車の路線と車輪と基本的にはおなじ「粘着方式」とよばれる走法が採用されたが、これに絡めて、世界の登山鉄道で採用されている、歯車を噛ませた「アプト式」「リッゲンバッハ式」「フォン・ロール式」「ロヒャー式」などの走法を詳しく説いていく。

最後の第4章は、小田急ロマンスカーの変遷を追っている。箱根登山鉄道の話からは完全に独立しているが、このあたりは「ロマンスカーも登山電車もふくめて箱根の鉄道」と捉える読者と「ロマンスカーはロマンスカー。登山電車は登山電車」と捉える読者で印象も変わってこよう。

最後に著者は、スイスの登山電車の数々を見聞した経験などから、「山岳国家でもある日本に、もっともっと本格的な登山鉄道が普及してもいいのではないか」と訴える。裏を返せば、これは箱根登山鉄道は日本では唯一の「山を登る鉄道」であることを伝えるもの。箱根登山鉄道は、現代でなく約100年前の時代だったからこそ、山に挑めた鉄路なのだろう。

『箱根の山に挑んだ鉄路』はこちらでどうぞ。
https://www.amazon.co.jp/dp/B01ABG4RV0
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