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書評『箱根登山鉄道125年のあゆみ』
あす(2020年)7月23日(木祝)、箱根登山鉄道の箱根湯本駅-強羅駅間で、営業運転がおよそ9か月ぶりに再開されます。2019年の台風21号による路線の被災からの復活です。そこで、箱根登山鉄道を主題にした本をご紹介。

『天下の剣に挑む日本屈指の山岳鉄道 箱根登山鉄道125年のあゆみ』生方良雄著 JTBパブリッシング 2013年 178ページ


箱根登山鉄道の歴史は、1888(明治21)年、国府津-湯本間を結んでいた小田原馬車鉄道にまでさかのぼれる。その後、電車運転の開始、鉄道線ともよばれる登山電車の開通などを経て、歩みをつづけてきた。本書は、発行年の2013年までの、箱根登山鉄道の「125年」を追ったものだ。

著者は1925(大正14)年生まれ元鉄道マン。戦前から戦後にかけて箱根登山鉄道の株主だった東京急行電鉄、また株を受けついだ小田急電鉄に長らくつとめてきた。いわば鉄道の生き証人のような人物が本書の著者である。

著者が撮りためてきた写真や資料がふんだんに本書に掲げられている。急勾配を緩和するための折りかえし地点にあたる北山信号場を撮った写真では、上り電車と下り電車が斜面を行き来しているのが映されている。いかに急峻な斜面を走っているかがわかる1枚だ。

逸話も多く綴られている。たとえば、「出山の鉄橋」とよばれている早川橋梁の逸話には長い歴史と趣がある。

この鉄橋はいまも箱根登山鉄道の撮影適地となっているが、当初の計画ではべつのかたちの鉄橋が架けられるはずだったという。ところが、第一次世界大戦下の鉄材不足で計画が頓挫し、鉄道会社は東海道線の天竜川に架かっていた橋の1連を払いさげてもらい、これを架けた。ところが神奈川県知事から「天下の箱根に古い鉄橋を使うことは自然の美観を損ねる」と注文がついたため、世の中が落ちついたら架けかえるということで了承を得たという。そしていまも架けかえはおこなわれていないが、著者は「箱根の風景に完全に溶け込んでいると思うが、いかがだろう」と結んでいる。

歴史を感じさせる図版と記述の数々で、読者はさながら博物館での展覧会を味わっているような気分になれるだろう。

「定時運行に努め、箱根の交通の主力として活躍していることは、頼もしい限りというほかない」「東京・横浜より早く電車に切り替え、大正時代に日本一の山岳鉄道を建設した」という著者の記述からは、この鉄道に対する愛と誇りが伝わってくる。

『箱根登山鉄道125年のあゆみ』はこちらでどうぞ。
https://www.amazon.co.jp/dp/4533093744
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