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世界保健機関の「自殺報道手引き」守られていない項目も

写真作者:Chris Harrison

国際連合の専門機関のひとつ、世界保健機関(WHO:World Health Organization)は「自殺防止 メディアではたらく人たちのための資源」という手引きを、自殺予防のための国際協会(IASP:International Association for Suicide Prevention)とともに発行しています。メディアに携わる人たちが、自殺についての報道をするときに、どんな責務があるかなどを記したものです。

2017年に更新された手引きには、「責任ある自殺報道 すぐわかる手引き」という項目を設け、6つの「やるべきこと」と、6つの「やってはいけないこと」を記しています。

やること
 ・どこに支援を求めるかについて正しい情報を提供すること
 ・自殺と自殺対策についての正しい情報を、自殺についての迷信を拡散しないようにしながら、人々への啓発を行うこと
 ・日常生活のストレス要因または自殺念慮への対処法や支援を受ける方法について報道すること
 ・有名人の自殺を報道する際には、とくに注意すること
 ・自殺により遺された家族や友人にインタビューをするときは、慎重を期すること
 ・メディア関係者自身が、自殺による影響を受ける可能性があることを認識すること

やってはいけないこと
 ・自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度に繰り返さないこと
 ・自殺をセンセーショナルに表現する言葉、よくある普通のこととみなす言葉を使わないこと、自殺を前向きな問題解決策の一つであるかのように紹介しないこと
 ・自殺に用いた手段について明確に表現しないこと
 ・自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと
 ・センセーショナルな見出しを使わないこと
 ・写真、ビデオ映像、デジタルメディアへのリンクなどは用いないこと

そして、これらを記したうえで、手引きには「自殺行為に関するメディア影響の科学的根拠」という項目で、報道には自殺行為のリスク要因となる側面と、よい影響となる側面があることが記されています。

リスク要因とは、報道から模倣自殺が生じうるといったもの。上にある「やること」「やらないこと」それぞれも、自殺報道にこのリスク要因があるために掲げられているようです。

また、よい影響とは、好ましくない生活環境にいたものの、自殺の考えに建設的に対処できたような人物についての報道は、自殺行為の減少に関与するということが近年わかってきたというもの。ただし、リスク要因の書きぶりよりも限定的です。

日本における自殺報道のありかたからすると、総じて、「有名人の自殺を報道する際には、とくに注意すること」や「センセーショナルな見出しを使わないこと」などはほとんど守られていません。

参考資料
World Health Organization,International Association for Suicide Prevention “Preventing suicide A resource for media professionals Update 2017”
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/258814/WHO-MSD-MER-17.5-eng.pdf?sequence=1
厚生労働省「メディア関係者に向けた自殺対策推進のための手引き」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/who_tebiki.html
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