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遺伝に必要ない「独立系」、実験で役にたつ

写真作者:Thiago Negrao Chuba

デオキシリボ核酸(DNA:DeoxyriboNucleic Acid)というと、「細胞のなかの核のなかの染色体をなす、遺伝子をふくんだ物質」とよく考えられがちです。しかし、デオキシリボ核酸は染色体をなす物質だけではありません。

おなじ細胞のなかでも、染色体とは独立してあるデオキシリボ核酸もあります。こうした「独立系」のデオキシリボ核酸を「プラスミド(Plasmid)」といいます。自己増殖のしかたも、染色体のデオキシリボ核酸とは独立しています。2本鎖である点は染色体のデオキシリボ核酸とおなじですが、かたちがおもに環状になっている点は異なります。

プラスミドは、生きものが生きていくうえで必要な遺伝子を通常はもっていないため、その存在は必須とはいえません。しかしながら、人間がおこなう実験においては、とても重要な役割を果たしてくれます。

研究者は、生物学や遺伝子工学という分野の実験で、ある生きものやウイルスの特定の部分の遺伝子を増やしたい場合があります。特定の遺伝子をたくさん得ることができれば、その遺伝子をもとにしてつくられるタンパク質をたくさん得ることができ、実験や研究を進めやすくなるためです。この遺伝子を増やすための工程に、研究者はプラスミドを使うことがあります。

プラスミドを、はさみの役割をする制限酵素というタンパク質で切ります。そして、切ったところに、異なる種からもってきた「増やしたい遺伝子」をつなぎます。これを、細菌や昆虫などの生きものの細胞のなかに入れこむと、「増やしたい遺伝子」が増えていきます。

つまり、プラスミドは「増やしたい遺伝子」を、増殖器たる生きものの細胞内まで届ける「運び屋」の役割を果たすのです。

プラスミドを「運び屋」として使う方法は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19:COrona VIrus Disease 2019)を予防するための「デオキシリボ核酸ワクチン」とよばれるワクチンの開発にも使われ、注目を集めてもいます。

参考資料
ブリタニカ国際大百科事典「プラスミド」
https://kotobank.jp/word/プラスミド-161388
日本大百科全書「プラスミド」
https://kotobank.jp/word/プラスミド-161388
研究.net 研究用語辞典「プラスミド」
http://www.kenq.net/dic/78.html
Beyond Health 2020年3月6日付「アンジェスが新型コロナワクチン、抗血清製剤も」
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00004/030500164/
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