科学技術のアネクドート

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人工知能に原稿の指摘をされても受けいれない

絵作者:torbakhopper

人工知能に新聞記事などを書かせるという試みは、すでに世界でおこなわれています。

2016年には米国ワシントン・ポスト紙の人工知能記者「ヘリオグラフ」がリオデジャネイロ五輪で短い記事をつくりました。2018年には日本経済新聞の人工知能が上場企業の発表する決算情報をもと文章をつくりはじめました。2020年には朝日新聞の人工知能経済記者「みつけーた」が人間記者との共同作業で記事をつくりはじめています。

ほかにも富士通が記事全文から、180字以内の要約記事や、54字以内の短文をつくる技術を開発するなどしています。

原稿から誤りや読みづらいところなどを見つける人工知能校正・校閲者も現れています。ミラセンシズが2019年より、送りがな違反、誇張表現、誤字脱字などの公正・校閲をする「AIエディター」を提供するなどしています。

いまのところは、事実に即した情報から短い記事をつくったり、書きかたの基準に対して違反がないか見つけたりといった、水準にとどまっているようです。

しかし、これからは創作的にさえ感じられる文章表現で読者の心を動かしたり、総合的な判断力さえ感じられるやりかたで原稿の不備を示したりする人工知能も現れてくることでしょう。

すると、人間が思う「理想の原稿」に対して、人工知能の校閲者がこんなことを言ってくるかもしれません。

「この記事に書かれてある内容には、社会の利益の総体に対してマイナス要因になる可能性が80%の確率でふくまれています。もし、主語を『首相は』としているところを『社会は』にかえることで、その可能性は50%にまで下がるでしょう」

あるいはこうも。

「この記事の見だしと本文だと、会員読者のうち読む人は20%程度でしょう。もし、見だしにある『販売不正の疑惑も』を『販売不正が明らかに』にかえたとすれば、読む人は30%にまで上がるでしょう」

こうした人工知能からの指摘に、人間の記者はどのように応じるでしょうか。

医療の分野では人工知能が患者の病気の「診断」を下すなどして、人間の医師をおおいに助けています。医療には「患者の病気を治す」という大きな目標があり、それにつながるものであれば、人工知能による診断であっても、多くの人間の医師は受けいれることでしょう。

しかし、ジャーナリズムの世界に仮に「社会をよくする」という大きな目標があったとしても、多くの記者は人工知能による指摘を、あまり受けいれないのではないでしょうか。記者ごとに「よい社会」の理想が異なるというわりと立派な理由もあるし、だれにもじゃまされず自分の思うように書きたいという利己主義的な理由もあるからです。

参考資料
DIGIDAY 2017年9月22日付「ワシントン・ポスト、ロボ記者執筆の記事数は 850本/年」
https://digiday.jp/publishers/washington-posts-robot-reporter-published-500-articles-last-year/
日本経済新聞「完全自動『決算サマリー』」
https://pr.nikkei.com/qreports-ai/
朝日新聞 2020年3月23日付「朝日新聞のAI経済記者『みつけーた』がデビュー」
https://www.asahi.com/articles/ASN3L65M6N3KULFA00M.html
ZDNet Japan 2019年7月8日付「富士通、AI活用した記事の自動要約システムを企業向けに無償トライアル」
https://japan.zdnet.com/article/35139603/
PR TIMES 2019年11月20日付「AI校正・校閲ソリューション『AI editor』提供開始のお知らせ」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000048611.html
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