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泥流か土石流かで橋への力のかかりかたが異なることも
九州地方を中心とした豪雨により、大分県九重町の野上川にかかるJR九大線の橋が流されました。近くで大きな音を聞いた人の話からすると、きょう(2020年)7月7日(火)朝に橋は流されたようです。


流される前のJR九大線の橋。写真下のほうが野上川上流
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また、4日(土)には熊本県の球磨川にかかるJR肥薩線の複数の橋も流されたといいます。

橋が流されてしまうと、元どおりに戻すために大きな時間と費用がかかります。採算のない路線などでは、復旧工事をすることなく廃線になってしまうこともあります。

どうして橋は流されるのでしょう。

大雨で水の量が増し、ふだんないような水流の力が橋にかかり、橋がその力に耐えきれなくなって流されてしまう。こうした過程は、思いうかびやすいものです。

いっぽうで、大雨で水の量が増した川が運ぶ「物体」の大きさが、橋が流されるかどうかにかかわっているのかもしれない。そうしたことを示唆するような実験結果もあります。

寒地土木研究所の研究者たちは、実験装置を使って「土石流」と「泥流」がそれぞれ、橋桁のあるところをどのように流れていくかなどを調べました。3ミリメートルから4ミリメートルの粒つぶが混ざった水の流れを「土石流」、1ミリメートルから1.5ミリメートルの粒つぶが混ざった水の流れを「泥流」に見たてたそうです。そして模型の橋桁を装置内に置き、そこに「泥流」と「土石流」をそれぞれ当てるようにしました。

土石流を橋桁に当てたところ、土石流は川底の材料を巻きこみながら橋桁の上流で閉塞したそうです。そして、そのうちに閉塞したところの土砂が流れくだりきったそうです。

いっぽう、泥流を橋桁に当てたところ、泥流は土石流よりも流れくだりくるまでに時間がかかり、絶えず橋桁に力をあたえつづけていたそうです。

つまり、土石流のほうが橋桁へのぶつかり方は激しいものの、短い時間でその衝突の力は衰えるようです。これに対し、泥流は橋桁へのぶつかり方はそれほどではないものの、長い時間にわたり衝突の力が加わりつづけるようです。

研究者たちは「流下物の 粒径によって流体力の作用する継続時間が異なり,ひい ては被災特性も異なるものと推察される」と結論づけています。

土石流と泥流とで、どちらのほうが橋を流しやすいかを明らかに述べているわけではないものの、泥流のほうがむしろ橋に対して力をあたえつづけやすいということが察せられます。

実際の豪雨のときの川の水は、大小いろいろな大きさの土砂も泥も含んでいることが多いでしょう。また、地形によって流れかたも異なってくるでしょう。

今回の豪雨で橋が流されたしくみに当てはめられるかはまだわかりません。ただ、水に混ざる物体の大きさは、どうして橋が流されるのかを考えるときの着目点のひとつになるのかもしれません。

参考資料
朝日新聞 2020年7月7日付「ドゴーンという音、JR久大線の橋流れる 大分・九重」
https://news.yahoo.co.jp/articles/6cf59d02d213ce64922567cc74d106206550a7eb
日本経済新聞 2020年7月6日付「JR九州、観光列車も被害 肥薩線で鉄橋流失 」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61198200W0A700C2LX0000/
伊波友生ら「土石流流下が構造物に及ぼす影響に関する実験的研究」
https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/jg/gijyutu/splaat000001631q-att/splaat000001637q.pdf
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