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「生きのこる種とは、変化している環境にみずから気づき、もっとも受けいれ合わせることのできる種のことである」

チャールズ・ダーウィン
画作者:foundin_a_attic

自由民主党の広報がインターネットで発信した「進化論」と題する4コマ漫画が人びとの話題となっています。

この4コマ漫画では、「もやウィン」という登場人物が「ダーウィンの進化論ではこういわれておる」と言いはじめます。続けて、そのダーウィンの進化論でいわれていることとして「最も強い者が生き残るのではなく 最も賢い者が生き延びるのではない。唯一生き残ることが出来るのは 変化できる者である。」と伝え、「これからの日本をより発展させるために いま憲法改正が必要と考える」と締めくくります。

「ダーウィンの進化論」と言っているので、この「ダーウィン」は英国の科学者チャールズ・ダーウィン(1809-1882)のことでしょう。

この4コマ漫画に対して、進化学者の佐倉統さんがツイッターで「変化する者だけが生きのこるというのは誤りです。ダーウィンはそのようなことは言っていません。また、生物進化の理論を憲法のあり方と結びつけるのも何の根拠もない不適切なことです」と反応するなど、大きな反響が見られました。

当のダーウィンは、なんと言っていたのでしょう。

ダーウィンの出身校のひとつでもある英国ケンブリッジ大学の「ダーウィン・コレスポンデンス・プロジェクト」のサイトには「誤った引用の進化」(The evolution of a misquatation)というページがあります。

まず、上の4コマ漫画でも紹介されている引用文については「どんな誤りの引用よりも、この最初のものが広まっている」と述べています。

そして、米国カリフォルニア大学バークレー校のニコラス・J・マツィケが紹介する情報として、ルイジアナ州立大学教授のレオン・C・メギンソンが1963年に著書『アメリカのビジネスのためのヨーロッパからの教訓』のなかで、つぎのように述べたとしています。

「ダーウィンのもともとの進化論によると、生きのこるのはもっとも賢い種ではない。もっとも強い種でもない。しかるに、生きのこる種とは、変わっている環境にみずから気づき、もっとも受けいれ合わせることのできる種のことである」

この引用と、自民党の引用を照らしあわせると、「最も強い者が生き残るのではなく 最も賢い者が生き延びるのではない」というところまでの内容は合っています。

しかし、自民党が引用する「唯一生き残ることが出来るのは 変化できる者である」と、メギンソンが述べた「生きのこる種とは、変化している環境にみずから気づき、もっとも受けいれ、合わせることのできる種のことである」については、内容が異なります。

大きく異なるのは、生きのこることができる種は、自民党の引用では「変化できる者」そのものだとしているのに対し、メギンソンの記述では「環境の変化に合わせることのできる種」としている点です。

つまり、メギンソンの記述がよりダーウィンの言説としてもっともらしいとすれば、「身のまわりの環境が変わっているのに、自分らも合わせられる」種こそが生きのこるということになります。

また、自民党の引用は「唯一生き残ることが出来るのは」としていますが、メギンソンの記述によれば、ダーウィンはこうした種を「唯一生きのこる種」とはしておらず、「生きのこる種」としています。この点も、細かいながら重要といえます。

自民党の4コマ漫画では、引用の中身をあらためたうえで、最後に「世界の変化に合わせて、私たちも変わっていかないと生きづらくなります」などと締めくくれば、まだ反響は小さかったのかもしれません。それでも「生物進化の理論を結びつけるのは不適切」という批判や「ちょっとなに言っているのかわからない」という批判はあったでしょうが。

参考資料
@jimin_koho 2020年6月19日「教えて! もやウィン 第1話 進化論◆嵜焚熟澄廖並海)」
https://twitter.com/jimin_koho/status/1273893819579166720
@sakura_osamu 2020年6月20日発信「遺伝的変異(変化)が進化に重要なのはその通りですが、変化する者だけが生きのこるというのは誤りです」
https://twitter.com/sakura_osamu/status/1273994463539392512
University of Cambridge Darwin Correspondence Project “The evolution of a misquotation”
https://www.darwinproject.ac.uk/evolution-misquotation
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