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「ウイルスの『存在意義』の解明進む」


時事通信社のニュースサイト「時事ドットコム」の特集で、「生物の進化促進、生態系調節の役割も ウイルスの『存在意義』の解明進む」という記事が、きのう(2020年)6月17日(水)より掲載されています。

新型コロナウイルス感染症「COVID-19」(COrona Virus Disease 2019)では、政治家たちからも「ウイルスという敵」や「ウイルスとの戦い」といった発言が聞かれるように、ウイルスを「敵性あるもの」と見る向きが強くあります。

いっぽう、記事ではウイルスが、生物たちに進化をもたらしたり、生態系の均衡を保ったりする役割をもっているということに光を当て、研究成果の例などを示しています。

記事に登場する東海大学医学部講師の中川草さんは、ウイルスが由来となり生じたと考えられる生物の進化などについて研究しています。記事にもあるように、ウシ科の動物の胎盤のつくりの多様化という進化が、ウイルスの感染によりもたらされたということを解明するなどしてきました。

新型コロナウイルスをめぐっても、京都大学准教授の宮沢孝幸さんと雑誌『実験医学』に「新型コロナウイルスSARS-CoV-2の比較ウイルス学と比較ゲノム解析」という記事を寄稿するなど積極的に情報を発信しています。

ウイルスにも「ゲノム」つまり遺伝子の総体があり、そのゲノムの情報などを解析することが、知りたいウイルスの特徴や進化などを調べるうえで有効な手だてとなります。

中川さんが構築し、公開しているのが「gEVE(genome-based Endogenous Viral Element)データベース」というもの。訳すると「ゲノムをもとにした内在性ウイルス配列のデータベース」といったことになります。「内在性ウイルス配列」は、生物のゲノムのうち、ウイルスのゲノムに由来していたり、あるいはウイルスのゲノムによく似ていたりする塩基配列のこと。

「gEVEデータベース」では、ヒトなど哺乳類19種の内在性ウイルス配列のうち、タンパク質をつくる情報をもちうる部分、つまり対象の哺乳類の遺伝や進化などに関わりうる部分の位置や機能などの情報を提供しています。これらの情報を、すでに知られているその哺乳類の遺伝、タンパク質合成、代謝などの情報と重ねあわせることにより、「内在性ウイルス配列のこの部分が、このような遺伝にかかわっている」といったことを調べることができます。

情報処理技術を応用した生命科学は「生命情報科学」や「バイオインフォマティクス」などとよばれ、進歩のめざましい分野のひとつ。研究対象はさまざまありますが、遺伝子全体を「ゲノム」、またタンパク質全体を「プロテオーム」とよぶように、それぞれの研究対象には「-の全体」を意味する「-オム」または「-オーム」(-ome)という接尾辞がつきます。「ウイルス」(Virus)に対しても「バイローム」(Virome)というよびかたがあり、ウイルスの情報を網羅的に把握するための「バイローム解析」の手だてが、中川さんらによって築かれようとしています。

地球における「しくみ」のひとつと化しているウイルスの営みについて、さまざまな側面から解きあかしていく。このことは、地球における気候や地殻変動について知ったりするのと同列なのかもしれません。

「生物の進化促進、生態系調節の役割も ウイルスの『存在意義』の解明進む」の記事はこちらです。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=202006sss0001

記事での取材と執筆をしました。
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