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必然的な意匠が「街なみ」をつくる


いまも街なかには、円筒のかたちをした玄関灯が玄関先に備えつけられている家が見られます。白い樹脂でできた覆いの内側には、長形の蛍光灯が入っています。家の人は、薄暗くなると玄関内からスイッチを入れて、玄関灯を灯します。

和風とも洋風ともいえない意匠です。ただし、上下の先端のほうにかけてやや径をすぼませたり、真んなかの胴締めの部分に帯状の線が施されたりしているあたりに、西洋のモダンな意匠が意識されていることを感じさせます。

かつての玄関灯が、このような円筒のかたちをしていたのは、ある意味、必然的だったのでしょう。

昭和時代の照明器具の代表格が蛍光灯。その蛍光灯のかたちといえば、もっぱら部屋のなかで天井に吊るして使う「丸管」とよばれる輪形のものか、さまざまな場所で使える「直管」とよばれる長形のもの。玄関の外で使うとなれば、かさばらない「直管」が優位となります。すると、その長形の蛍光灯を覆うためには、円筒の樹脂の覆いを使うということになるわけです。基本的には「玄関灯とは円筒状のものである」という前提があるなかで、玄関灯をつくる各社が小さな意匠の工夫をしました。

玄関灯に白熱灯などの電球を使っている家もありました。しかし、蛍光灯のほうが電球よりも電気代がかからない場合が多いもの。蛍光灯を覆う筒型の玄関灯は、昭和時代の後期に一斉風靡しました。

しかし、より電気代がかからず、輝度が高く、寿命も長い発光ダイオードが使われだすようになると、「蛍光灯で玄関先を灯す」という必然性はなくなってきました。パナソニックがナショナルの商標だった2008年までは、円筒の玄関灯は販売されていたようです。しかし、パナソニックになってからは、おなじような円筒の意匠の玄関灯は姿を消しています。

いま「玄関灯」と入れて画像検索してみると、立方体や直方体のかたちをしたもの、ランプ灯を模したもの、色硝子で覆ったものなど、さまざまな意匠が見られます。光源が小さな発光ダイオードとなり、意匠に自由が効くようになったことで、玄関灯の多様化が進んだともとれます。

製品の規格や形に制約がある場合は、「こうせざるをえない」という必然的な意匠は起こり、出まわるものです。かつての円筒の玄関灯のように。そうした製品が人びとの目に留まる屋外にあると、それは「街の風景」をつくる要素にもなりえます。

いまも、旧街道ぞいなどでは、かつて一世風靡した円筒の玄関灯が家々の玄関前に見られることがあります。「古い街なみ」を印象づけるものは意外と、こうした生活感を醸す機器なのかもしれません。

参考資料
ジモティー大分版「玄関灯(昔のナショナル製品)
https://jmty.jp/oita/sale-oth/article-90yea
Zai Online 2018年1月19日公開「電気代を一年間で約4万円も節約する節約術を公開! LED電球、白熱電球、蛍光灯それぞれの電気使用量と価格、寿命を比較して、確実に電気代を節約しよう!」
https://diamond.jp/articles/-/156561
Panasonic「ポーチ・勝手口・門柱のあかり 生産終了商品一覧」
https://panasonic.jp/p-db/category/other-light/porch-light/lineup-old.html?pageNo=1
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