科学技術のアネクドート

<< 大根の葉、栄養不足ですぐ黄色に | main | 必然的な意匠が「街なみ」をつくる >>
「出張費がかかるから断念」が減る可能性も

写真作者:Mike Seyfang

新型コロナウイルス感染症「COVID-19」(COronaVirus Disease 2019)を受けて、仕事のしかたが変わったという人は多くいるでしょう。職場やうちあわせ場所に集まって、人と対面で仕事をしていたところが、「ズーム」や「スカイプ」などの遠隔で意思疎通する手だてを使って仕事をするようになる。2020年に入ってから、こうした経験をしはじめた人はかなりの数いるのではないでしょうか。

記者の取材も、遠隔でおこなうことが増えました。取材とは、記事をつくるために、その分野に詳しい人や、直接かかわりのある人に話を聞くことをおもにいいます。

取材対象者に取材を受けてもらえることになり、取材の日時が決まったら、記者は取材対象者に、取材日時や固有番号が記された「あなたを予約されたZoomミーティングに招待しています」という見出しの招待メールを送ります。そして、その日時がきたら遠隔で取材をします。

遠隔の取材では、自分の机のうえにさまざまな資料を広げておいたり、話を聞きながらコンピュータのテキストエディットに取材対象者の話したことばを打ちこんだりと、対面の取材ではなかなかできないことができます。自分を撮るカメラに映りこまない空間を自由に使えるがために。

その一方で、遠隔の取材では、取材対象者に話を聞いたあと研究室を案内してもらったり、取材対象者がどんな場所で日々過ごしているのかを肌で感じたりといったことはできません。また、たまたまその場にいあわせていたべつの人にも話を聞くといった予定外の副産物的な取材も生じにくいものです。

つまり、遠隔の取材にも一長一短があるわけです。

遠隔の取材が取材方法のひとつとして定着することになったときの大きな変化のひとつが、「遠方にいる人にも取材を申しこみやすくなる」といったことではないでしょうか。もっとも大きな変化のひとつともいえそうです。

たとえば、ふだん関東で日々過ごしている記者が、北海道や沖縄まで行って取材するというのは、よほどの理由がないかぎりはしづらいものです。出張費がかかるからです。費用が編集部もちであっても自腹であっても。

しかし、遠隔の取材は「遠くまで行く」ということを要らないものにします。出張費がかかるためできないはずの取材も、「遠隔で」という方法が認められればできてしまうわけです。北海道大学の研究者にその人でなければありえない取材をする。琉球大学の研究者にその人でなければありえない取材をする。こういったことが、遠隔の取材があたりまえになれば、できるようになります。

取材だけでなく、仕事のしかた全体として、遠隔によるものが世に定着するのかどうかはこれから定まってくることでしょう。その過程では「人と直接に会うことが礼儀」とか「濃厚接触は避けるべき」とか、さまざまな見かたが、それぞれ重みづけをされて、考えに入れられていくことになります。社会や仕事のありかたをめぐる大きな分かれ道といえます。
| - | 23:27 | comments(0) | -
コメント
コメントする









CALENDAR
S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< July 2020 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで (JUGEMレビュー »)
サイモン シン, Simon Singh, 青木 薫
数学の大難問「フェルマーの最終定理」が世に出されてから解決にいたるまでの350年。数々の数学者の激闘を追ったノンフィクション。
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
amazon.co.jp
Billboard by Google
モバイル
qrcode
PROFILE