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「カレー風味」は「カレー」よりも支配的――カレーまみれのアネクドート(132)
これまでの「カレーまみれのアネクドート」はこちら。



「カレーをカレーとして食す」。これは、カレーへの接しかたとしてのまっとうな道でしょう。手づくりカレー、レトルトカレー、店でのカレー。さまざまなかたちはあるものの、「カレーである以上カレーとして食べる」という考えを拒む人はいますまい。

いっぽうで、「カレーをカレー風味として食す」というカレーへの接しかたもあります。「風味」は、もともと「おもむきのある味わい」といった意味のことばですが、「何々風味」と「何々」が前について、「その気配を感じる味」といった意味の接尾辞と化しています。

「カレー風味」で挙げられる料理は、大根煮、肉じゃが、おでん、唐あげ、ポテトサラダ、野菜炒め、麻婆豆腐、ロールキャベツ、スープなどさまざま。つくっている料理に、どこかの段階でカレー粉をまぶせば「カレー風味」となるわけですから、かんたんではあります。よそからきた料理に手を加えることに長けてきた日本人にとって、よそからきて自分たちのものにしたカレーをさまざまな料理にまぶすのも、ごく当然の流れといえそうです。

しかし、「カレー風味」の料理をつくることは、「カレー」をつくることよりも「勇気」のいることです。

カレーをつくろうとするときは、頭のなかで「きょうはカレーだ」という考えがいっぱいになりますから、なんのためらいも起きません。「きょうはカレーだ」と決めたら、あとはカレーをつくるのみです。

いっぽう、「カレー風味」の料理の主役は本来カレーではありません。主役はあくまで肉じゃがであり、唐あげであり、野菜炒めであるはずです。それらの料理を「カレー風味」にしてしまうことに、ためらいがある人はいるはずです。すくなくとも、カレーをつくる場合よりもその率は高いことでしょう。

小さじ一杯のカレー粉を料理にまぶすだけで、その料理のすべてが「カレー風味」を帯びるわけです。隠し味に醤油をたらしたり、みりんを加えたりするのとはわけがちがいます。

食べているものは肉じゃがであったり、唐あげであったりするけれど、舌が感じているのはカレー味。いつもの肉じゃがや唐あげとは、味が大きく異なってきます。

その日の早いうちから、頭のなかで「きょうはカレー風味の大根煮だ」とか「カレー風味の唐あげだ」という考えがいっぱいなっていれば、なんの勇気も要らずに料理にカレー粉をまぶせることでしょう。しかし、「きょうはカレーだ」という考えにくらべて、「きょうはカレー風味の何々だ」は、そう起きるものではありません。

迷いやためらいがあるのであれば、まずは「カレー風味」を避けておくというのも手です。とくに、あとから汁にカレー粉を足すことのできる肉じゃがやロールキャベツなどの料理では、まずカレー風味でない料理をつくって食べ、翌日分にはカレー粉を入れて風味のちがいを味わうということもできます。

カレー粉のもっている「カレー風味」の力は、主役の料理を凌駕するほどに強く、支配的なものです。
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