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横書きの読点、国がまず示したのは「,」


日本語には縦書きと横書きがあります。横書きで文を書くとき、読点をどのように打つでしょうか。「、」でしょうか。それとも「,」でしょうか。

この書きかたをめぐり、日本教育新聞の2018年10月8日付記事に「読点は『,』よりも『、』現状維持派を上回る」という見だしが出ています。

現状維持派といえる「,」よりも、現状維持派でない「、」を使う人が多かった、というのが見だしの要旨といえましょう。

この記事の情報源となっている2017年度の「国語に関する世論調査」の結果報告書には、横書きで文章を書くとき、「。」と「、」を使う人が81.3パーセントであるのに対し、「。」と「,」を使う人が9.5パーセントなど、「、」が「,」を大きく引きはなしている現状が示されています。

しかし、新聞の見だしでは、「,」を使う人のほうが「現状維持派」というのです。どういうことでしょう。

新聞の本文は会員登録なしには見られませんが、政府は戦後の国語政策として、横書きの文では「,」を使うという方法を定めていた経緯があり、そのことを指しているのでしょう。

まず、1946(昭和21)年、文部省(いまの文部科学省)の教科書局調査課国語調査室という部署が、『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)』を発表しています。そこには、「もつぱら横書きに用ひるもの」のひとつに「コンマ( ,)」を掲げており、「出た,出た,月が。」という用例を載せています。

さらに、1950(昭和25)年に文部省が出した『国語の書き表し方』では、「くぎり符号」の使いかたについて、つぎのようにしています。
_____

くぎり符号の使い方は,縦書きの場合と同じである.ただし,横書きの場合は 「、」を用いず,「,」を用いる.
_____

ここでは、横書きでは「、」を用いない、ということをはっきり記しています。

こうした、政府の示す読点の使いかたを起点とすると、横書きで「,」を使ってきた人のほうが「現状維持派」となるわけです。

しかし、政府の定めるものごととはべつに、独自の読点のつけかたを定める組織や機関もあります。

たとえば、共同通信社が2016年に発行した『記者ハンドブック』第13版には、「読点『、』」とあり、読点に「、」を使うということを前提にしています。1994年発行の第7版の段階では「『 ,』は使わない」とまで書かれていたといいます。

国が示すものごととはべつに、世の中で定められた書きかたが市民にも浸透し、その結果、横書きで文章を書くとき、「。」と「、」を使う人が81.3パーセントと多数派になったのでしょう。横書きに「 ,」を使う人が現状維持派であるという認識をもっている人は、もはやすくないかもしれません。

参考資料
日本教育新聞電子版 2018年10月8日付「読点は『,』よりも『、』現状維持派を上回る」
https://www.kyoiku-press.com/post-194076/
文化庁「平成29年度『国語に関する世論調査』の結果の概要」
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/sanko/pdf/kugiri.pdf
文部省教科書局調査課国語調査室 1946年3月作成「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/sanko/pdf/kugiri.pdf
渡部善隆「横書き句読点の謎」
http://ri2t.kyushu-u.ac.jp/~watanabe/RESERCH/MANUSCRIPT/OTHERS/YOKO/ten.pdf
共同通信社『記者ハンドブック 第13版』
https://www.amazon.co.jp/dp/4764106876
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